よくしたもので・・・
ある日、二ヶ月の赤ん坊を前にして、九九を唱えてみた。
(乳)幼児教育とか、そんなつもりはさらさらない。抱きあげろと敵はむずかるし、
こちらはと言えばいよいよ重くなってきた赤ん坊を抱き上げるのが辛かったのだ。
赤ん坊はどうしたか。ぴたりと静かになり、目を見開いてこちらをうかがって
いる。当然この赤ん坊が算数が好きとかなんとかいうのではない。たんに、
自分の目を見据えて呪文のようなものを唱えてもらう、といった経験が物珍し
かったので、驚いて泣き止んだにすぎない。
が、こちらは面白かった。というのも、この年齢になってからの九九である。
怪しい。3×8はいいが、8×3はするりと出て来ない。可逆性があるのをいいこと
に、口では8×3と言いながら頭の中で3×8を思いだして答えをいう始末。
よどみなく、しかも間違えないようにとやっていると、敵さんのまっすぐな視線を
受け止め切れず、こちらの視線が宙をさまよってしまう。結局、赤ん坊は寝る
でもなく、やがて九の段が終わったときには、改めて抱っこを要求して泣き出して
しまったが。短時間ながら目的だけは達したことになるのか??(^^;)
帰宅した夫にその話をしたら、夫は、掛け算には可逆性がないものもあって、
A×Bの答えが必ずしもB×Aになるとは限らない場合があり、それを発見したのが
ガロア(仏・決闘で死ぬが、その間際まで論文書いてたよくわからない人。そこまで
論文が大事なら決闘なんてやるな。)であり、それが群論という考え方の基礎に
なるのだと言った。
で、そこまで解説してくれる夫に、「3×8はいいけど、8×3の方の答えが
すぐに出て来ないのよねえ〜。」と言ったら、「21だろうが、バカたれ。」
という答えがすぐさま!返ってきたのである。
うむ、「バカたれ」といわれることに否定できない部分があることは認めよう。
だが、それならそれで、夫は「お間抜け」と言われることを甘受すべきではないのか。
エンジニアのくせに、掛け算間違えるかあ?間違えた方がこんなに居丈高〜。
そしてそれだけならまだ良かったのだ。後日夫にこの文書、つまりガロアについて
書いたと言ったら、「あー、あれってどこか間違えてたみたーい。ちゃんと調べるから、
upするのはちょっと待っててねー。」と言うではないか・・・!!
どうしたらいいのか、私の夫ときたら、もっとずっとマシなものだと思って
きたのに、「間抜け」のうえに「ホラ吹き」であることが判明したのである。
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今年も正月には「お客」を呼んだ。
「お客」はダンナと同じ部所で、正月だというのに仕事で帰れなくて、
うちで飲んで夜遅くなっても帰りつける場所に住んでいる、という人々である。
同じ部所だから、集まるのは技術屋ばかりである。
技術屋の理屈はいつもすがすがしい。「猪のお肉、大丈夫ですか?」と聞けば、
「大丈夫もなにも、食べたことがないので判断のよすががありません。」と来る。
じゃあ一度食べてみましょうね、というわけでいそいそと台所に走る。
猪なんて怖くて食べられない!という人はいくらでもいるので、一応牛も用意して
ある。しかし、暮れに届いた大量の猪を夫が燻製にしたので、出来ればそちらから
片付けてもらいたいのだ。←どこが「おもてなし」だ!
食べ物に、何を優先するか。猪が食べられない人というのは、安全を優先している
のだろう。食べたことのないものに手を出さない、というのはそういう意味である。
彼らにとって、猪肉を食べている私などは、エスキモーとか、とにかく遠い遠い
世界の人なのではないか。
助かることに、その日のお客様たちは味覚を優先してくれた。
今年も鯛のカルパッチョを出したが、刺身を(オリーブ)油まみれにするなんて
気持ち悪い、とも言わずにあっという間にたいらげてもらえた。
逆か。前にも書いたが、そういう人々しかウチには来ないのか。ははははは〜。
もちろん、味覚以前、というのもすがすがしいかもしれない。
夫は、ブータンに技術協力で行ってた人に、ブータンの食べもの、飲み物について
聞いてみたが、はかばかしい返事が返ってこなかったという。どうやら完全に、
食べ物に興味がなかったらしい。
もっとも、そうでなければブータンなんぞに二つ返事で行くことは出来ないのかも
しれない。それはそれでありがたいことではないか。こういうときに、「よくした
もので・・・」という言葉が使われるのである。それは「好都合」なんて言葉よりずっと
含蓄に富んでいる。
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「どこで洋服を買うのか」
夫は、若い女の人と話をするときにこれを聞いてみるらしい。ところが新年会では、
初めてこの質問を男の人にすることとなったのである。
彼の話によれば、「季節の変わり目になるとそのへんの大きなスーパーに行き
まして、サイズさえ合えばいいという感じですかねえ。あとはユニクロを愛用
してます。」とのことであった。
割と普通の答え、と言えるかもしれないが、私としては残念であった。
彼はオシャレに興味はないが、何かをそれなりに着なければならないとは感じて
いて、でも面倒くさいのである。40過ぎて独身で、恵まれた体格と年収がある
くせに、それでも彼はオシャレに関しては甲斐性なし、なのであった。
というわけで、面倒くさいなら季節の変わり目にはパパスにでも行って、お店の
おねえさんに一週間分くらいの洋服をみつくろってもらいなさいよ、その方がずっと
早い、と唆すことになる。店は当然、「パパス」に限らず自分の生活様式とかけはな
れることなく、言い訳がつきそうなものが一式そろうところならどこでもいい。
それは秋葉原に専門職のマニアックなオタクがいるように、デパートの中にも
専門職にしてマニアックなオタクがいるのだから、面倒ならちゃっちゃと金を払って
解決するという手もあるよ、という意味だ。楽しみでもないものを、わざわざ時間を
無駄にして自分でやることもなかろうがと。本当にやるかどうかはともかく。
ところで、「洋服をどこで買うか」という質問に、傑作な答えをくれた
女の子がいたそうである。
「大体、丸井とかですね。でも私ってほら、田舎モノですから〜、こちらに来た当初、
あちこちにある丸井の看板を見て、『おいおい』ってナンのことだろうかと思って
いたんですよ〜。そしたらなんのことはないファッション・ビルなんですよねえ。」
・・・同じような間違いで、「小田急OX」のことを「小田急まるぺけ」だと
思っていた人がいたらしいが、そいつとこのコは違う。このコはたんに技術系、
だからなのである。男の子に混じって実験実験また実験で青春を過してしまうと、
ここまですがすがしい(人によっては極端、と表現されそうな気がするが)女の子が
出来あがってしまうという意味なのだ。
もはや反射的に、こんな子達こそ幸せになってほしいと思う私である。
このコ達に比べれば、私の足は地についていたことがない。