リロケーション・システム
実家に手伝いに行った。
リタイアした叔父と叔母も犬連れで手伝いに来ているとのことだったが、
ド田舎のこととて、犬は喜び山駆け回り、翌日は疲れ果てて起きて来なかった
そうである。犬が筋肉痛かいって、北陸の熊同様、うちの実家では猪や猿も出ている。
嗅いだことのない匂いに、身体もさりながら神経も疲れたのだろう。
リタイアしての田舎暮しは流行っているらしいが、叔父夫婦はUターンの田舎暮し
である。今更こんな暮しが出来るだろうかと皆で危ぶんだが、しょせんはUターン、
そして叔母は園芸好きであった。・・・あまりの規模にちょっとパニック気味だが。
ただ、少々勝手が違うところがあって、それは人のつきあいの濃さである。例えば、
オマエが焼いて来たお菓子を半分持って挨拶に行こうと母が言う。その家では誰一人
甘いものを食べない。しかし、個人の嗜好に関わらず、モノはあるにこしたことが
ない。家は広く、そして「ちょっとした来客がいくらでもあるから」。
言われて見れば、田舎ってそうだった。山の中や海辺だからと言って必ずしも
静かに暮せるわけではないし、例えそれを選択したところで、そうすることはあまり
楽しいことではないのである。結局、私の手作りのお菓子は、とりたての野菜や、
海からあがったばかりの魚介類のお返しになるわけだ。
都会育ちの叔母は、戸惑いながらも「食生活はこちらの方が豊かよ。」という結論に
達したらしい。「新鮮だから、素材をどうこうする必要がないのよね。」
・・・逆に言えば、それだから田舎では「料理」が育たなかったりするのだが、欠点を
言い募るよりは利点を楽しむ方が早い。
静かというなら、通勤圏に住むこちらこそが静かに暮している。
人づきあいの窓口は殆どお向かいの奥様に任せてしまい、自分は庭の中にいる。
自分が選んだ人以外は、誰も直接、私のところには来ない。
深山幽谷は我が家の中にあったのである。
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活字中毒者の御主人を持つ人と出会った。
そういう人々がいるとは話には聞いていたが、実際見るのは初めてである。
彼女も本は嫌いではないらしいが、御主人は並の本好きではなく、先日は故郷の
富山からお父上がトラックを運転して来て、本をひきとっていったと話してくれた。
「私はいつも手に汗を握り、この人は一体これからどうなるのだろうかと思いながら
生きて来ました。」バクチ好きとか言うのではなく、これはただの本好きに対する
描写である。そして、ただでさえ好きなのに、被害を広げたのは例のアレだった。
海外赴任していた彼女夫婦が「帰国したら、ブック・オフが出来ていたんです」。
ブック・オフの始末の良し悪しについては私も同感である。まともに読みたい
本は本屋で定価で入手するにせよ、うちには100円で入手できたバカ本(良くこんな
企画が通るよなあ、「間取りの手帖」とか!)が塔になっていて、しかし面白いのは
確かなので捨てるもあたわず、いっそ話が通じる人々のために1箇所に「バカ棚」という
スペースを作ってしまおうかと思うくらいなのだ。
残念なのは、うちにはトラックで本のお迎えに来てくれる人はいないということだ。
というわけでこちらはDIYのグチをかましてみた。家の中は無骨で重たい家具
ばかり、DIYの何がいけないのかといえば材料がぴったり終わりになることがない
ため、中途半端な、ゴミともそうともつかない状態の材料で家中に残ることなのだと。
すると彼女は、「そうですか、どこでも夫は好き勝手をやるものなのですね。」
と言ったのである。いや、好き勝手をやってるのはうちのとアナタの御主人だけで
あって、「どこでも」と決め付けたら怒り出すご主人様は腐るほどいると思うが。
これは是非、もっとお近づきに・・と思ったが。
その彼女に、「雨ノ森さんて、面白い人ですね。」といわれたときには、ちょっと
答えに詰まったのであった。