女二人遠方より来る

 元来はブランドに関係のない私が、ティファニーに行った。
というのは、淡水パールのグレード・アップを狙ってのことである。雑誌に載って
いた淡水パールが、手持ちのヤツより良さそうだったのでそれに買い替えようと
したのだ。

 今、持っている淡水パールのネックレスは何を隠そう(本当は隠した方がいいかも)
那覇三越で一万円、それも15年以上も前に購入したもので、値段なりに気楽につけて
いたものである。しかし、お気楽すぎてさすがにヨレってきた。そして、やはり
一万円だけあって、このままつけ続けてはいけないような気がする。

 しかし!!私はこのねじってつけるタイプの淡水パールのネックスレスが好き
なのである。洋服でも気に入れば同じのが欲しいと思ってしまう私であれば、
ネックレスだって同じようなのが欲しいのである。ただ、この場合はパールの
状態を少々グレード・アップしなければならない。

 で、雑誌でそのネックレスを見たときには、「これだ!!」と来たわけだが。
ティファニーでうやうやしく見せてもらったそれは、御立派すぎたのであった。
さすがはティファニー、たかだか淡水パールのくせにそのへんの真珠よりお値段が
張るだけあって、パールの品質が非常に上質で、組み方にも工夫が凝らされている。

 これを、「夏に重宝する1本」と呼ぶような生活はしていない。
というわけで、お金はあってもお互いの都合が合わなくて買えなかったのである。
ティファニーに入ったのが既に間違いだったのだろう。

 で、夫に話したら、笑われた。くやしいので、ダイアモンドのネックレスの件に
話を替えた。あの流行は終わったと思っていたが、どうも皆下げているような気が
する。もしかすると私もあれをぶらさげなければいけないのか、でなくば、いっそ
あれを持たない人々とつきあった方がいいのだろうか。

 「いや、そういうことでもないだろう。」と夫は答えた。
「ダイアモンドをぶら下げるのはやめるよう、皆さんを説得するべきではないのか。」
そう言うだけ言って、すたすた別の部屋に行ってしまったのである。

 部屋には、私の忍び笑いだけが残った。

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 沖縄在住の義姉とその娘が遊びに来るという。
夫はウィークデイのこととて、忙しい。それで私が代わりに御案内申し上げることに
なった。それはいいのだが、彼女達にとって何が面白いのかわからない。
義理の姪の好物を私は覚えている。それはモロゾフのチーズケーキだ。
しかし、あれを腹一杯食べさせるわけにもいかない。

 幸運なことに、ホテルの場所は築地の近くだったので、場外でお寿司を食べる。
ランチ・セットに大トロのステーキを付けただけだし、その大トロとて3人で1皿
である。しかし、必要なのは「話のネタ」なのだ。

 大トロなんて良く考えてみれば私も食べたことがない。
あまりに伝説になっているうえに、今度は本当に美味しいのは中トロだの、昔は
トロは捨てていただのと話だけでお腹一杯で、食べる気になれなかったのである。
大事な夫の身内の接待なので、仕方なく私もつきあって食べた。ほほほほ。

 それにしても、最初の方こそ義姉も義姪も楽しんでくれたが、お腹が一杯になって
くるにつれて、思い出すのはお刺身やお寿司が好きな子供や孫のことである。
彼らにも食べさせたいという話になる。山上憶良の二人連れを接待している気分。

 「カメラがあるなら撮影するけど。」そう言ったら、「こんな現場写真、バレたら
子供達に何を言われることか!」って、なんとバカなことを。そんなもんは、ヨメが
わけのわからんやつで、無理やり連れて行かれた挙句に御馳走?山盛りにしてくれた
ので、オマエ達のことを思い出して泣きながら食べたと正直に言えばいいのに。
ま、騙されるわきゃーねえか。ははは。

 その後、銀座に連れて行く。しかし、義姉達が銀座と聞いて思い浮かべるのは
「ピーコのファッション・チェック」であった。沖縄でもあれは放送されていて、
子供や孫達と一緒に見ているのだそうである。それで、東京に行くと言ったら
子供達は、TVで悪口言われるから、銀座には行かないでねと真剣な顔で言った
とのこと。

 番組を見ながら子供達は、「はー、なんであんなしてお金かけてオシャレした人達の
ことをあんなに悪く言うかねえ?」とドキドキしたり不思議がったりするらしい。
オシャレしてるんだったらホメてあげればいいじゃない、なのに・・というその
思考回路が、既に沖縄の人のもので、なんかうれしい。

 子供達の心配をよそに、良くも悪くもTVカメラの人々には出会わなかった。
もう食べられないというのをケーキ食べさせて、丸の内まで戻り、はとバスに乗せた。
これから横浜の夜景を見て、中華街を回るのである。翌日は、ディズニーランドで
朝から晩まで過すことになっていて、子供達に持たされたお土産リストは全て
ディズニー系なのだそうだ。

 未だにディズニー・シーにも行っていない私が持たせたお土産は、築地で買った
くるみの佃煮であった。これは金沢で覚えて、お正月には必ず出すようになっている。
沖縄にはないし、一度で覚えて忘れることがない。なんのことはない、私の好物
であった。