匂う話

 ここ最近の私は匂っている。
草月の先生がミニアチュールを作ろうと言い出したからである。
ミニアチュールとは何か。フランス語で、「微細」みたいな意味だったよーな。
アバンチュールとかサロメチールとか思い出すが関連はない。英語で言うところの
「ミニチュア」であろう。何故わざわざフランス語なのかは、ようわからん。

 教室には非常に活けやすいミニアチュール用の小さな花瓶がある。
が、先生は花瓶から自分で作ってみろという。身の回りの小さな容器に、植物系の
何かを貼り付けて作り、それを使って活けろという。花瓶から手作り、というのも
なんだが、やるとなればその容器とやらから探さねばならない。

 自慢じゃないがモノ作りは苦手である。
それに元々、花を活けるなんてしゃらくさい行為からして気恥ずかしい。
外で咲いてるのをちょん切って家の中に持ち込んで針の山にぐさぐさ挿して、
「どう、きれいでしょ?」と言われても。「お花でおもてなし」と言われても。

 それで何故習い始めたのだと言えばそんなことはどうでもよく(ほほほほほ)、
とりあえずは身の回りの器を探さねばならない。で、目をつけたのが香水入れのカゴ
だった。もちろんカゴではなく、カゴの中にためていたミニチュアの香水ビンに
目をつけたのだが。(くどい!)

 香水の容器がオシャレでないわけがなく、だからカゴの中は宝の山(実際は、
宝の小山?)となるはずなのだが。問題があるとすれば容器には名前が書いてあるから
隠さねばならないこと、あと、未だに中身が入っているということ。
既に変質している可能性があるということ??

 変質してたら捨てるしかないが、変質してなかったら使うしかない。
それでなんだか私は数年ぶりに香水をつけて歩くことになったのだ。しかし、香水を
つけたところでしょせんは私、行く先が変わるわけではないのですね。
スーパー、ガーデンセンター、本屋。たま〜〜〜〜〜に、デパート。

 香水がなくても良い環境で、あえて私は香水と関係することになったのだ。
香水に興味をなくして久しく、カゴの中にはまだ中身の入ったビンが沢山残っている。
使わねばと思うと頭が痛い。このペースで行くと、日常的に香水を使用しないと
間に合わない。(あれ?スーパー行くのって、非日常??)

 うちの先生はボキャ貧なのか生徒をバカにしてるのか、本当は芸術だの表現行為だの
始終考えているくせに、普段は「オシャレにやりましょう。」の一言で済ませている。
この状況は芸術でもなければ表現行為でもなく、そのうえオシャレでもない。
元々「オシャレ」よりは、「ウケる」の方向が好きなのでいいんだけどさ。

 にしても、物言わぬ香水が、気の毒ではある。なんで私のところにいるかなあ。

                xxxxxxx

 「あっ!」という声の次には通いのネコの名が。
そして、「おいでっ、さあおいでっ!」と切羽詰った声で呼ばわっている。
当時私は疲れて横になり、もーろーとしてたので夫の声かと思ったが、後で聞いたら
夫ではなかった。どうやら、本宅のご主人が飼い猫を呼ぶ声だったらしい。

 しかし何故、飼い主ともあろうものがネコなで声とは程遠い声で切羽詰って
自分のネコを呼ばねばならないのか。多分、あまりに久しぶりに見る自分のネコで
あり、一方で心配していたからではないのか。

 週末にご主人が連れて帰宅する犬と会うのがイヤさに、通いのネコは週末になれば
プチ家出をしてウチに来る。自分がもらって来たネコが家によりつかない気分が
どんなものかはわからないが、それでもお隣のご主人は飼いネコに対する責任感、
を持ちあわせてはいるらしい。

 奥方の方は、「本人(猫)の好きにするんじゃなーい?お腹が空けば帰って来る
わよ〜」程度の気持ちでいて、実際、ネコは犬さえいなくなればさっさと帰宅し、
奥方に甘えている。しかし、心配するご主人の方には顔も見せない。
だってご主人たら、犬とセットなんだもん。

 少し以前、ご主人はネコを抱き上げてちゅっとやったりすると聞いたことがある。
先刻まで自分のお尻をナメていたかもしれないと思えば、中々大胆な行為である。
しかし、彼なりにとても可愛がっていることはわかる。

 そして、してみれば当のネコはご主人の心配をよそに、ますますご主人から
遠ざかるに違いない。なんとなれば、ご主人は同じようなことを犬にもしてる
はずだからである。ご主人はネコにとって、激しく・・・犬臭いはずだし。

 ネコは別宅の我が家をうまいこと利用している。
ドライ・フードだけとはいえエサももらい(飽きた頃に犬がいなくなる)、たまには
お泊りをしては午前2時に外に出せとわめき、なんせ敵というものがいないのが
判明しているので、昼間っからあお向きにバンザイした格好で熟睡したりする。

 この状態は、当分続きそうだ。
少なくともウチでは犬を飼う気はない。