発熱、コーヒー、ロシアの憂鬱

 風邪が長引いている。
一月四日にそれと自覚したままで、ニ月に入ってしまった。

 「それがうちの体温計、電池がきれちゃっていて。大体がとこ、熱なんて
あるならあるってわかればいいわけで、まともな数値なんてどーでもいいじゃない?
でも久しぶりに計ってみようかって気になって、それで出して来たのが婦人体温計。
計ってみたら驚いたのなんの、目盛りがそのまんま、一本の銀色の棒に
なっちゃって〜。」

 そう聞いて、怒ったのは妹である。
「お姉ちゃんたら、バカじゃないの?それじゃ42度以上あるってことじゃん!」
いや妹よ、普通の体温計では42度くらいが上限かもしれないけど、婦人体温計の場合、
38度が上限なのだよ。だから、38度以上はあったかもしれないが、必ずしもそれが
42度以上だったかどうかはわからない、ということになる。

 ・・・世にもくだらない姉妹の会話は続く。

 「でも、熱のせいなのか自分ながら行動がヘンだったんだよね。医者探すのは
かったるいから薬局に行くんだけど、ふと気がつけば、わざわざ遠いところにある
安売り薬局に足運んじゃってるし〜、スーパーで子供を叱ってるお母さんの言葉を
無意識に真似してるし〜、で、その挙句にズワイガニのメスを売ってるのを見つけて、
ちゃんと重さやらなにやら検分して買って来て。フラフラしながら茹でて、きっちり
箸で食べられるほどに処理してんの〜。」

 つきあいきれぬと思ったのか、やがて妹はおごそかに、なお鼻でせせら笑う音を
添付して、こう言った。「おねえちゃん、そんなのは並の高熱だね。」

 ・・・そう言えば妹は、なんと42度の高熱を出したことがあるのだ。
私は子供の頃に39℃を出したことがあるが、オトナになってからは、38度5分どまり
である。元々妹は昔から身体が弱く、薬箱とお友達だったが、大人になってまで
42度も熱を出すとは、ここまでくればもう、タダモノではないのではないか。

 確かに42度と38度とでは、同じ発熱といえども重みというものが違う。
そう思えば、延々と続く妹の病気自慢を聞きつつ、ここしばらく妹には一目置く
ことにしたのであった。・・・戦ってもしょーもないし。

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 朝の仕事が、舞い戻ってきた。
それが何かと言えば、コーヒーを入れる、という仕事である。

 夫は最初、朝のコーヒーは家で飲んでいた。
家を買ったら、駅までの時間的な関係もあり、家では夜にしか飲まなくなった。
それでもコーヒーが飲みたい夫は、その分をしばらく最寄駅のカフェで調達して
会社に出勤してたのである。

 しかし、不具合が出現する。カフェでコーヒーを入れてくれる紙コップが運搬途中
ぐしゃぐしゃにこぼれる、のである。不具合をそのままにしておかないのが
エンジニア(本当かよ?)、夫は自宅から小さな魔法瓶を持って行くことにした。

 そんなんありかと思いきや、「これに入れてくれ!」と魔法瓶を出したら
相手はにっこり笑ってうなづき、カップ代金20円を引いてくれたらしい。
そして、紙カップの頃は、「ありがとうございました。」だったのが、
「いってらっしゃいませー!」という声で送り出してくれたのである。

 夫は、「・・・何かに似てる??」と思ったらしいが、会社に到着する頃には
気がついていた。もしかすると、同じ「いってらっしゃーい!」なら、家から
コーヒーを持って来ても同じなのではないか、ということである。

 そんなわけで、朝、コーヒーを入れる仕事が私に戻ってきたのであった。
しかし会社に行くってのに、なんか遠足に行くみたいですなあ。
ある朝、勢いでおにぎりまで作ってしまったら、どうしよう。

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 最寄駅のホームセンターに行くたびに、ついでにペットショップも
眺めてしまう。値段をつけられた小さいものが、各々のケージの中で遊んだり
寝転んだり、ゴハン食べたり、トイレをしたり。見れども飽かぬ、ただし、
ちゃんと売れて回転してるかぎりは、だが。

 大きくなって三万円も値引きされてるのに、見るたびにお腹を上にして、
でろーーーん、と寝ている犬、なんてのもいる。営業、なんて言葉が犬ネコにあろう
はずもない。しかし、ただでさえ大きくなってるというのに、そんないかにも
バカそうな姿で寝ていていいものかと思えば、見てる方の胃が痛くなるぞ!

 以前ここで、既に予約の入っているロシアン・ブルーのネコを見たことがある。
片手に乗るような小ささで、何がなんだかわからないのか、ぽけっとした顔で
座っていた。(走りまわるほど発達してなかったのかもしれない??)
その、途方にくれている感じが、なんとも言えず保護してあげたい気持ちになった
ものである。

 そのネコがいなくなって数日後、また1匹、ロシアン・ブルーの子猫が入った。
私は、前回のネコのように右から左に売れると思って安心して見ていたのだが、
これが中々売れない。一方で、それなりに大きくもなる。おかげで私は久しぶりに
見に行ったとき、親類のおばちゃんみたいなことを口走ってしまった。
「あらまあ、しばらく見ない間に大きくなって〜・・。」
さすがにあのときは、自分の口が憎かった。

 数日前、今度こそ売れてるんじゃないかとドキドキしながら見に行った。
ネコは、ケージの中で丸まっていた。とうとう、値引きもされていた。
そしてネコは、ながーい尻尾のその先をくしゅくしゅかみながらこちらを
上目遣いにじっと見て、それから眠り始めたのだった。