通いのネコと夏

 うれしそうに砂地を掘り返すして今まさにトイレをせんとする「隣の」ネコに、
バンドエイドの箱(カンではありません、念の為)を命中させたワタクシ、であった。
もう来ないかもしれないと覚悟しつつ全速力で逃げ帰るネコの後姿を見送ったのに、
夕方になって、ネコはまたうちにやってきたのである。

 夫に呼ばれて見に行くと、掃出し窓の向こうから、こちらをじっと見ている。
どれどれと出て行って、午前中のフォローも兼ねて、よしよしとなでてやる。
このネコは首輪の周囲をかいてもらうのが大好きで、のど鳴らしまくり、となる。

 そこまではいいのだが、満足したあとまでかいたりなでたりしていると、こいつは
いきなり機嫌が悪くなるのである。つまり、振り返りざま、いままでなでていた手を、
がぶりとやられることになる。「もういいってのに、うるさいよっ!」って感じ。

 もちろんネコは、「何すんのよアンタは!」てな怒声と共に素早くゴツンとお見舞い
されることになるのだが、その日はなんだか、ネコの様子がいつもと違った。
「よしよし」から、「がぶり」までの時間が短く、それにしては尻尾を巻きつけて甘え、
いつまでもいつまでもぴったりとくっついている。

 そこまでしても、顔はなんだかひねこびている。午前中、叱ったのをまだ根に
持っているのかと考えたが、それだけならわざわざうちに来るわけがない。
と、気がついたのは、ネコの身体から立ち上っているシャンプーの香りであった。

 つまりこいつは、午前中は私に叱られ、午後は風呂に入れられてしまったのである。
ぷりぷりしながら自分の家を出て、せめて私になでさせてやろうと思ったか、
でなければ家出のつもりか、とにかくうちまで来て、よりどころのない気分で
私に甘えたり、あたったりしているのであった。

 うぷぷぷ、カワイイ・・


・・・・・・・・

 自分の親より年上の知人によれば、「ここ最近、いきなり暑さに弱くなって
しまった」とのことであった。それだけならまだしも、「痩せているので夏は得意
だったのですが。」と、そこまで書いてある。

 な〜にを言ってんだかなあと、ついついツッコミ入れたくなる。
しょせんは凡人なら、夏場の生産性などはエアコンを使ってあげるものだ。実際、
暑い国に作った工場では、エアコン入れたらいきなり欠勤や遅刻がなくなったという。

 つまり、休まず仕事に行った方がお金にもなるし、第一涼しくて気持ちイイと
判断されたのである。暑い国に生まれ育っても、暑さを感じないわけではないという
証拠がここにある。そしたらそのへんの日本人が、暑さに弱いのは当たり前じゃん?

 で、お世辞にも痩せていない自分が夏をどうのりきるかということなのだが。
午前中は家の中でごちゃごちゃやり、午後は昼寝(本当に暑いと寝るのが難しい?)
その後は日陰になった部分を蚊とり線香と共に草むしり&作業。

 もちろん、それだけでは済まない。例えば汗をかくからと言って水分補給に
冷たい麦茶ばかりを飲んでいると胃はまともに動こうとしなくなる。夏こそは
熱いお茶、食べ物は唐辛子系。それでもぐったりしてきたら、マルチ・ビタミン。
でないと、草むしりから立ちあがったとたんに倒れそうになる。(^^;)

 知人が私の年齢だった頃には、昼寝もさりながらマルチ・ビタミンなぞ想像も
出来なかったであろう。普通の人々は、夏場にスタミナつけるという話になれば
ウナギでも食べて、精をつけた気持ちになっていたはずだし、それでなんとか秋を
迎えてたはずなのだ。

 それで済んだのは、知人がいうところの「若かりし頃の夏」は、今よりずーっと
すごしやすかったから、である。知人は、「年をとって夏に弱くなった」のではなく、
たんに、「年をとって普通になった」だけなのだ。大体、知人はまだマシなのかもしれ
ないじゃーないか。この調子で行ったら、私が知人の年齢になる頃には、東京の夏は
もっと暑くなっているはずなのである。私の方が同情されてしかるべきではないのか。

 ・・・それにしても、親より年上の人間が、「暑くて大変」と言ってきたのだから、
「秋はもうすぐです。お身体を大切にして、もう少しがんばってくださいね〜。」
とでも返事を書いておけばいいものを、我ながらなんと念の入った理屈を並べ立てて
いることか。(今頃は、時候の挨拶さえ通じないと、文句たれてるかもしれない。)

 違う。この私(どの私?)に、そんな「適当な」ことを書いてくる方が、悪いのだ。
そもそも、私が「秋はすぐそこまで・・」なんて書いてみたところで、誰も
読みゃ〜しないのである。