ねこのこしかけ
隣の不良ムスメが今朝も来た。というのは、通いのネコのことである。
彼女は所謂プチ家出を繰り返している。しかし、やはりネコに糧を得る術はない
らしく、腹が減ったら帰るらしい。
飼い猫でもないこいつに、お尻の躾をしたというのが私の長らくの自慢だった。
しかし相手はしょせんネコである。隠れてやる、くらいのことなら仕方ないとも
考えていた。しかし先日、久しぶりに目の前で現行犯、である。名を呼んだら、
とりあえず地面をひっかくのをやめた。しかし尿意は止まらないらしい。
今度はもうちょい遠くの、別のところでやろうとしやがった。
怒って走り寄ると、ぱっと逃げてツツジの向こうから目をまん丸にしてこちらを
伺っている。ゲンコツをお見舞いしなければならないのに、手が届かない。
ええい、これでもくらえっ!!
と、ぶん投げたのは砂利石。ネコなのに脱兎の如く走り去った。
で、どこへ行ったのかと言えばはす向いの家の駐車場である。隅に座って、こちらを
伺っている。どこかへ行けばいいのに、長々とうちの門の方を伺っていた。
そして、どうなったか。関係を築き上げた証拠に、にも関わらず翌朝、またネコは
やって来るのだ。ぶんにゃらぶんにゃら、何か言う。はいはいと言って、なでる。
なでながら、ふと考える。このネコはなんと言っているのか。
「昨日石を投げたのを少しは反省したのかい?」
「普段はあんたもいい奴なのに、庭で目の前でオシッコするとキチガイのように
なるんだから、困ったもんだ。あれさえなけりゃと思っているもんだよ。」
「ま、いつものように背中をなでたらいいよ。あんたは結構上手だから、少しの
ことは我慢してあげないとね。」
相手はネコだから。ええ。多分、こんなものだろう。(^^;)
先日は、裏庭に行ったら何をしていたのか、前足一歩踏み出したポーズのまんま、
凍り付いた。当然、その足下の地面にはひっかいた跡が。
「見つかってしまった」ネコは、仕方なく裏庭に面している自宅に帰ろうとした。
が、ネコはそういうときに限って素早く動かない。ここでこちらが立ち去ったら、
どうなるかは目に見えている。
業を煮やして、早よ帰れとばかりにお尻をぐいと押してやったら、
「にゃあ」と言った。ただたんに鳴いたのではない。文句をたれたのである。
ネコが。私に。
しかしここ数日は、ネコがうちを訪れる回数が減っている。
はす向いの家が増築を始めたので、そっちで大活躍しているのだろう。
ナワバリの見まわりを兼ねて、職人さんにお弁当をねだっているのじゃないかしら。
するとまた帰宅が晩くなるのだが。
xxxxxx
知人と人の悪口で盛り上がりながら、結局一致したのは、「感動が欲しい」という
ことだった。わざわざ家を出てくるのはそのためなのに、問題の人は全然これぽちも
面白くなくて、自慢話ばかりなのである。つまらん、ああつまらん、と。
感動や発見、「おもしろーーーいい!!」という気持ちに「らぶ」である。
すると相手は男でも女でも関係ない。モノであっても犬、ネコでも良い。
当然のことながら、数多く出会うのが望ましい。
「あの人って、きらーい。どっかに持って行ってくれる人には一生恩に着る〜。」
とまで嫌う人にも「らぶ」な部分はあったりするし、逆に一生恩に着ることがある人に
せよ、「らぶ」な部分が全然ない人もいるだろう。義理は義理で、らぶではない。
何でこんな話なのか。ある日道を歩いていたら、蚊取線香の匂いがしたのである。
ふりかえるとそこはピエールの家のガレージで、その中には大きな大きな、
見たこともない、直径50cmくらいのサルノコシカケが!!
その下には新聞紙、その横には蚊取線香。本人はいなかった。
ピエールは多分、このサルノコシカケを分析すべくいずこからか預かったのであろう。
分析にはもちろんその全てを使うわけではなく、少し削って使うことになる。で。
ピエールのお家は新しい。その家の中でそんなものを削ったらマリーに怒られる、
でなくば自分がきれい好きなのかもしれない。とにかく、そんなわけで蚊取り線香と
共にガレージに行き、今はと言えば何かとりに行ってるかなんかでそこにはいない。
余所様のガレージの中をじろじろ見るのは良くない。
それで私はさっさと立ち去ったのだが、頭の中は好奇心で渦巻いている。
あんな大きなの、どこで採取したのかというのもさりながら、サルノコシカケの
成分にその大きさは関係があるのか、大体、問題の成分とは何か。
なんて面白そうなんだろう。
それで私は改めて、ピエール、というよりはサルノコシカケの大きさにしばらくの
間、「らぶ」なのであった。