縄の行方

 台風6号の余波とやらで、暑い。
今回の台風で心配していたのは、お祝い返しに宮古島へ注文していた完熟マンゴー
だった。TVニュースでは被害にあったマンゴーを報じていて、うちの贔屓の農園の
ハウスは大丈夫だろうかと、ドキドキもした。

 その台風が関東にやって来た日は、夫の会社では転勤の内示が出ることになって
いた。それが何を意味するかと言えばその日は「送別会」なのである。台風の中での
送別会、と言ったってちゃんとお店の中でやる(当たり前だ!)のだが、しかし
風雨の中の帰宅を思えば、盛り上がるんだか盛り下がるんだか・・・。

 「台風の日に送別会と決めたわけではなくて、送別会の日に台風が来たんだ。」
と夫は言うが、「奥さんがある人を好きになったんじゃなくて、好きになった人に
奥さんがいたんです。」というセリフを思い出した。

 するてえとこの場合、台風が言うわけですな。
「送別会の日に行こうとしたんじゃなくて、行ったその日が送別会だったんです。」
・・・いいから、もう。そう言って台風の肩を、ぽんぽんと叩いてあげたい。

 ともあれ、夫が家を出た30分後には物干し竿やら重心が高い鉢やら、ヤバそうな
ものは全て片付け終わっていたのだが、心配した母から電話があった。「一軒家の
雨支度はまた違うから・・・」と言うが、そんな電話寄越したことがないのに、
母ったら、トシかしらと心配になる。

 が、そのまた一時間後に寄越した電話は、「完熟マンゴーが食べきれないほど
届いた。」という報告であり、「自分達は食べきれなくても、人にあげるのはもったい
ないし〜。」というノーテンキなものだった。宮古島の農園のハウスも無事だった
らしい。完熟マンゴーは飛行機に乗っかって台風を追い越したわけだ。ぶ〜ん。←?

 台風といえば、集合住宅時代、私は窓辺に置いたサボテンを風で飛ばしてしまった
ことがある。重たいからと放っておいたら、夜中に見事2階から飛んで行ってくれた
のであった。あれは忘れられないが、今の家で隣家の庭までサボテンの鉢を飛ばす
のは、難しい。

 夕方、大粒の雨が降ってきた。庭を、白いものがすごいスピードで走っていった。
例の、「頭の悪そうなネコ」だった。私自身は、普通に過してぐがーっと寝て、
夫の帰宅もものかは、気がついたら太陽いっぱいの朝だった。

 庭をひとまわりしたら、トロ箱一杯に水がたまっていたところをみると、それなり
に雨は降ったらしかった。夫を送りだし、目の前の道路を掃除し終わったところで、
母より電話があった。実家の裏手で土砂崩れがあった、ということであった。

 「・・・道理で胸騒ぎがして。」と母は言った。
それで母はヘンだったのである。母の胸騒ぎは、もっとも近場で敵中したわけだ。
幸いなことには実家の裏手の土砂崩れはたいしたことがなく、土建屋や、電気屋を
含むご近所の協力の下、さっさと片付いてしまったとのことだった。

 にしても、「胸騒ぎ」ってのはどれくらいの関係まで有効なのであろうか。
ロシアあたりで小さな自家用機が落ちたのを「道理で私、胸騒ぎがして・・」と
言い出す無関係なメキシコ人はいないはずなのだが。

 で、前日に宮古島から届いた、おもいっきり大量の完熟マンゴーである。
「食べきれないほどだけど、人にあげるのはもったいないし。」と言ってたのが、
母なのだが、台風が去ってみたら、人にあげなければならないような状態になって
いたのであった。・・・これも胸騒ぎの一環か?(^^;)

 妹からも電話があった。「こないだの誕生日、知り合いがバカラの花瓶を
くれたのね・・・」で、とりあえず私からのお祝い返しの完熟マンゴーを
おすそ分けするのだそうである。

 結局これは、生きていれば、他者との関係とのうえに、自動的に禍福は縄となって
糾われていくということなのだろう。せめて、福の側の色のワラを集めたい。