緑のマンゴー

 通いのネコは、相変わらず元気に好き勝手をしている。
冷夏と言っても時には雨があがり、セミが鳴くときもある。そうなると、ネコの出番
である。ネコは近所中をまわり、セミをとってきて、うちの芝生の上で食べて羽だけ
残し、また、次の狩りに赴く。

 友人に、「自分勝手で生意気なところがアナタにそっくりなので、アナタの名前で
呼んでます」と書いたら、「生意気なのはともかく、私は食べ物にうるさいのであり
まして、セミやイナゴは食べません。」ときた。

 ワタクシの「友達」のくせして、なんと面白くないことを!!というわけで
「一里四方で収穫した自然の食べ物を新鮮なまま、ナマでいただいているなどとは、
グルメの極みです。家の中で調整された缶詰めを食べている余所のネコたちも
うらやましがることでしょう。」と、返した。わっはっは、ざまーみろ??

 お隣のネコの飼い主と、向いの家とは同じ庭師に仕事を依頼している。
この庭師さんもネコが嫌いではないらしい。ある日隣家の庭を見るともなく見てい
たら、庭師は一人の仕事に飽いたのか、ネコに向って「ちゃん」づけで呼びかけていた。
しかし、ネコはネコで振り向きもせず、彼の仕事道具の縄をくわえて余所に
持って行ってしまう始末なのであった。

 庭師さんだけではない。たまに家に来た息子さんは、帰る前にネコを抱こうとして、
それと認められるや一目散に逃げられていた。彼はネコにしてみれば、せっかく楽しく
遊んでいるのに家に連れ戻そうとする不逞の輩か、さもなくば病院なんぞに連れて
行って痛い思いをさせようとする、嫌な奴なのである。隣人の目の前で飼い猫に
裏切られた飼い主の気持ちや如何に。

 私に対しては、どうか。ネコは、私が門扉にかけたハンギング・バスケットの
手入れをするときは足元にいて、お尻の片方を私の足にくっつけたまま、世間を見物
している。御近所の人も、通りすがりの人も、その姿を見て言葉もなく微笑やら苦笑
やらする。笑われるのも致し方ない。ネコはボディー・ガードをキープしている
つもりであり、しかもそれは飼い主ではなく隣の人なのである。

 私だけがネコを呼びつけようとはせず、家に連れ帰ろうともせず、まして病院に
連れて行こうともしない。で、ちょうだいといわれたときには水を出してやり、逆に
ネコに呼びつけられて外に出ていき、相手をするのである。(さすがに自分でも
書いてて問題あるんじゃないかと・・・ ^^;)

 こんな図々しくて傍若無人なネコにも苦手があって、茶トラのでっかいネコが、
時々いじめに来る。何度この茶トラを追い払ったか、わからない。ある日も帰宅途中、
ネコの家の門にその茶トラが堂々と居座っているのを発見、こりゃまたと思いながら
自分の家の門を開けたら、その音で、ぴゅっと走って来た。

 普段は挨拶程度の「にゃー」なのに、その時はしゃべるしゃべる。
何故こんなときに限って家にいないのか、どうして私を置いてこんなに遅くなるのか
と、ネコの事情を知っていればこういう翻訳にもなる。本当のところは違うのかも
しれないのだが。

 ネコはいつもより長々と身体をこすりつけ、普段は耳を動かすだけでしない返事を
してみたりして、そんな時に限ってこその濃密大サービス、であった。

 このネコは、たまに台所の前にあるシダレザクラの幹を伝って、うちの屋根に
昇る。先日妹夫婦が来たときには、目の前をこのネコが斜めになりながらサクラの
幹を下りてきた。都市部ではネコの放し飼い自体が珍しくなってきているところへ、
この始末である。妹夫婦の喜ぶまいことか。

 しかしネコはいかにもネコらしく、呼んでも来ない。そのくせ、うるさいとばかりに
出ていくわけでなく、玄関先にちょこんとあちらを向いて座って待っている。そして
時々、ちらりとふり返るのである。

 その態度には、やっぱりネコだと全員で大笑いし、皆で玄関に出て行って思いきり
ちやほやすることになった。それからネコは門柱の上に乗せられて、私同様の
挨拶を受けて、妹夫婦の車を見送ることになったのである。

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 沖縄からマンゴーを送ってもらうことにした。
今年は義弟の車で帰省すると決まっていたので、義弟へのお車代である。
義弟はマンゴーの話になると、賛美の声が止まらないほどのマンゴー好きなのだ。

 ところが電話をした農家によるとアップル・マンゴーは7月で終わりで、これからは
グリーン・マンゴーの出番だという。げっ、グリーンはアップルより美味なのはいい
が、確かとっても高価だったはず??しかし、びびる私に農家は、「値段は同じ。」
という。稀少価値とも言えるマンゴーなのに、いいのかそれで!?

 どうせならと、送り先を実家に変更、各世帯分として3箱注文する。
(こうやって1箱の注文が3箱に増えるくらいだから、別に問題はないのかも??)
元々が皆の大好物、それが今度は超高級フルーツ屋とか、デパートでしか見ることも
出来ないと来る。集まる場所が一緒なら、いっそ全員で楽しみたい。送料もお得だあ。

 帰省した当日、台所にいた私にいそいそとマンゴーの到着を報せに来たのは義弟
だった。ふと気がつけば、家中からわらわらと家族が集まって来た。結局、家族全員が
見守る中で、箱は開けられたのである。中に入っていたのは、実に美しい緑色の、
アーウィン種よりも大きな果実だった。

 しかし、マンゴー特有の、むせかえるような香りがしない。
同封のリーフレットによると、キーツ種の場合は、追熟が必要な状態で届くらしい。
キーツ種の食べごろの見極め方は、マンゴー特有の香りがたちのぼり、押すと少し
やわらかい感じがしたら、ということになるらしいのだが。

 義弟は、普段の冷静な態度はどこへやら、興奮気味に「1つ食べてみよう!」と叫ぶ。
しかし、それにしてはこのマンゴーは色もさりながら、上品に鎮まりかえっている。
何度も書くが、アーウィン種なら、全員香りにむせてセキ込んでるはずなのに。

 怪しい。そして、欲望のままに動いて損していい金額ではなかった。
「うーん、まだ何の匂いもしないし、固いみたいだから、とりあえず、全部の箱を
開けてみて、全部の中から一番食べ頃のを選んでみましょ。」と提案すると、総員納得。

 で、全員で箱を開けては片っ端から匂いをかぐわけですな。しかしどんなに
かぎまわってみたところで、残念ながらなんの気配もない。やがて一番興奮していた
義弟さえもが、うなだれながら「もう少し待ちましょう。」と言ったのである。

 結局、マンゴーはお盆の飾りに加わって熟するのを待つこととなった。にしても、
マンゴーである。祖父はともかく、祖母は30年も前に亡くなっていて、マンゴーを
見たことがあるかも怪しい。ましてそれ以前の御先祖様とくれば、大パニックを
起こしていたかもしれない。

 生きている人々も、少し緊張していた。お盆の飾りは奥の部屋と決まっているが、
それは縁側の隣で、縁側はもっと奥にあるトイレにつながっている。誰も話題には
出さなかったが、皆、通りかかるときにはさりげなくマンゴーの様子を確かめて
いたはずなのだ。

 こんなにも期待されたマンゴーなのに、薄く黄色が射してきて匂うようになって
きたのは、お盆すぎだった。食べてみてどうだったかと言えば、私はアーウィンより
こちらの方が好きである。香りは劣るものの、甘さと肉質はこちらの方が数段上では
ないだろうか。ただ、家族は皆、アーウィン種のアップル・マンゴーの方が好きだと
言った。ま、お試しあれと書いておこう。

http://www1.odn.ne.jp/aaf07950/mango.htm
http://www10.ocn.ne.jp/~auva/

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