姪々惑々

 田舎の両親が来た。
1泊めはうちに泊まり、翌日は妹のところに行くというので、家まで送っていく。
姪の大福は、幼稚園に入ったばかりである。孫はただでさえ可愛いのに
そのうえ3歳とくりゃー、母は孫を離さない。

 幼稚園から帰ったその服で一緒に写真を撮ろうだの、お友達は出来たかだのと
大福と一緒にきゃぴきゃぴしている。そう言えば私の友人は、子供を産んだら
「生まれて初めて母のねこなで声を聞いた。」と言ってたっけ。

 やがて妹が、大福が幼稚園のお友達と撮ったという写真を出してきた。見ると、
どの子もこの子も可愛い。そう言えば面接試験のときも色白の子供ばかりだったと
言ってたっけ。思わず、「あらま、大福負けてるんじゃない?」と口に出してしまうと、
すかさず妹から蹴りが入る。普段はとろくさいくせに、こんな時だけすばやい。

 母はその写真を見ても、「大福が一番かわいいよねえ。」と言う。
なるほど、叔母とは違い、祖母の意見とはこうなるわけだ!だが、ここで父が
「これが大福だろう?」と写真を指差しながら聞くのである。

 その指先は、写真の中で一番可愛いコをさしていた。

                 xxxxxx

 幼稚園の面接では、「食べ物では何が好きですか?」と聞かれたらしい。
大福は思わず、「桃!!」と叫んだということだった。
面接は「集団」面接だったので、その答えはいったん無視されて、列の端から
あらためて答えさせられたのだという。

 大福の番がきて、「好きな食べ物は?」「・・・もも。」
「よろしい、お答えは変わりませんでしたね。」と先生はほほえんで下さったらしいが。
大福にすれば、理不尽な話だったかもしれない。桃が好きだと言ったのに、桃は
出てこない。聞かれただけ〜、なのである。

 妹の話によれば、最初に聞かれた子はなんとか答え、2〜3人同じことを答え、
4人目あたりに別の答えが出て、大福は自分の番になったら改めて、
「もも」と答えたらしい。

 「桃」でよかったなーとも言える。
子供によっては、「ごはんにカツオブシとおしょうゆかけたの!」とか、もっと
すごいのには、「さとう!」とか答えてくれるらしいのである。

 大体、桃が大福の好物だろうか?
桃も好きだろうが、私が大福の好物と聞かれて思い出すのは
たとえば「梅干し」とか「ゆかりのお握り」とか「らっきょう」とか、ママに内緒で
パパからせしめる「炭酸飲料」とか、そんなもんである。

 叔母としては、「桃」くらいで済んでよかったと思っている。

                  xxxxxxx

 「ネエネエ、これ食べていい?」
そう言って大福が持ってきて見せたのは友人のタイ土産、「ドリアン」を干した
小さなお菓子のパックであった。

 ドリアンといえば、えんがちょの代名詞とも言える果物である。だからもらってから
すぐには開けず、そのへんにほったらかしてあった。大福に見出されたのはインテリア
の一部になろうかという頃、と言ったら言い過ぎかもしれないがとにかく存在を
忘れた頃なのである。

 自分が食べないのだから、大福にあげてもいいのだが、自分が食べたくないものを
ちょうどいいやとばかりに食べさせるのも気がひける。それで私はフェアにことを
運ぼうとした。

 「大福、いいかい?それはね、うんこに似ている果物を干したお菓子なの。
大福が食べたいならいいけど、ねえねえ(私はこう呼ばれている)は大福が
うんこなんか食べたら大福がうんこになるんじゃないかと心配なんだけど、それでも
大福はうんこが食べたいかい?」

 大福がきつねにつままれたような顔をしている後ろで、妹が笑いながら問題の袋を
開けるのが見えた。勇気があるやつだ。が。妹はそのうえそれを口に入れるのである。
やがて妹は言った。「おねーちゃん、これ全然うんこっぽくないよー?」

 大福もそれで安心して手を出す。
やがて食べ終わった大福は私を見上げて、「うんこじゃなかったよ。」と報告して
くれた。「そう、良かったね。」と私も答えた。