家が見つかってから、何ヶ月になろうとしているのか。
家は「見つける」のでなくして、「買うもの」でもあるのだが、「家は住めればいいから
なるべく広い庭で、なおかつ通勤圏」という条件を考えてみれば、やはりそれは
「見つける」ものであった。

 家を買う理由はと言えば、「いきなり会社が社宅を縮小しようということに
なって、それで家を買うことになったんですよね。」という、不動産屋によれば
「今現在、お家をお買いになろうかという人々の、一番ありふれた理由です!」
とのことであったが。

 「やっちまったよ一戸建て」なるマンガがある。これは30になるやならずの
女の漫画家がふと思いついてから「一人用一戸建て」を建ててしまうまでの話で
ある。一時話題になったから知ってる人もいるかもしれない。
もうこれがハマりにハマった。

 例えば、「土地を買うのはお見合いに似ている」と著者は言う。
私も確かに似ているとは思った。で、釣書(不動産広告)から条件が良い(希望に
近い?)相手を探して10人(軒)と会いに言ったわけで。(^^;)それにしても、
条件の良い王子様のことを「事情により格安」なんて表現するのはいかがなものか。

 話によれば、探して探して探しまくって、やっと見つける人もいるらしい。
しかし、広告を見て、物件を見てまわっていれば、「相場」は大体見えてくる。
夫の会社勤めがまだ残っていれば、自ずから範囲は決まっている。
(・・これを、「恋愛と結婚とは違う」といった話に持ちこむには無理がある?)

 知人に、「散歩してくる」と言って出て行き、帰って来たときにはマンション
買ってきてた、という人がいた。こういうのって、限りなく一目ぼれってやつ?
見合いったって、相手には値段だけがあって意思はないが。

 そして買ってからそこを離れるまで100%満足なんてことは普通の結婚と同じで
殆どあり得ない。「結婚は、期待しない方がうまくいく」のだそうである。
家も、最低限はきっちり決めて、買ってから後のことは期待しない方が
うまくいくのかもしれない。

 うちはけっこ〜決断が早い方だったと思う。伊藤理佐なる著者は、ぐずぐず迷って
いて、お終いにゃ「惚れこまないと、土地は買えません」と担当者に言われる。
担当者の買ったマンションは当初の希望と全然違っていたのだが、にも関わらず、
坂の上にあって、近くに公園があって、自分は「その坂を上って家に帰りたい」
と思い、そこに決めたのだそうである。

 私は坂には興味はなかった。それよりも、平地が良いと思っていた。
例えば、クヌギなんかの木陰となっている、田んぼの横の舗装されていない小道を
自転車で家に帰ったり、友達をたずねたいと思っていた。庭は、道からの視線より
上にある方がいいなと思ってもいた。

 夫は、坂を下ったところにある家を買う気にはなれないと以前から繰り返し言って
いた。地盤がどーのこーのと言ってはいたが、それにも増して本当に大事なのは空が
大きく見えること、なのだと私は知っている。宝の持ち腐れだった天体望遠鏡を
使いたいのだ。

 結局は、坂のてっぺんに近くて、自転車なんか使いようがない、庭はと言えば
外から丸見えという物件となった。で、家はやっぱり色気とハッタリまるきりなしの
古家である。そして、見に行ったときには、売主が色々置いているものだから、
不動産広告を見なおすほど狭く見えた。

 「おじいちゃんが植木や家庭菜園が好きだったんですよ。」
売主夫人にそう聞いたときは、しめた!と思った。てことは、地面にヘンな
建築廃材は埋まってない。地面もけっこー作ってあるかもしんない。だが、夫人は
続けた。「あの、増築部分の下が昔、家庭菜園だったところです。」いやん、もう。

 しかし、普通の古やぼったい家で、おまけに不思議な間取りだが、土地や家の素性
としては悪くなかった。先代のおじいちゃん、現在の夫婦、それに娘達と、住み
つづけてきたところなのである。そして改築ではなく、増築がなされていた。
そのときには全ての床板をめくってみたという話だ。

 担当者は、この時代に家を買うことになるというのがまず、幸運だと言ったが、
幸運は多分、友人知人が家を買ったと聞いても、「敵は機が熟したらしいな。」と考え
ていられたことだろう。「うちも」と考えることもなく、まして「負けてはいられない」
と考えることもなかった。(こーゆー性格って、時に欠点だったりするが。)

 家や周囲の表情を、何度か見に行った。
坂の上にある家なので、下りていく道によって全然表情が違う。一つの方向からは
畑や竹やぶ、そして昔からあるらしい大きな農家、その向こうは川で、渡ったところ
に国道が見えて、そのまた向こうにまたゆるやかな、家の立ち並ぶ丘が見える。
反対方向に下りると、街が眼下に広がる。

 考えてみれば、自分の実家だってこんな感じの場所にあった。
夏は、坂をくだってアイスを買いに行ったもんだ。今年の夏からは、同じようにして
アイスを買いに行こう。さすがにこの年だから、アイス食べながら帰るのは控える
ことにしよう。自転車はあきらめよう。アイス食べながら自転車に乗るのはいくら
なんでも危ないし。(←!?)

 ところで、決めたのが2月で手付金を打ったのが3月だったか、それからまだ
引っ越していないのである。なんでも、家が売れたとたんに売主が息子夫婦と住む家
を建て始めるとのことで、最初の引渡し契約は6月半ばだった。
文字通りの「永すぎる春」ですとある人に書いたが、通じたかどうか。

 結局、なんだかんだで1ヶ月早く入居できることになり、気ぜわしい今日この頃、
自分ながら何が嫌と言って、まだ引っ越してもいないのに、植物ががんがん
増え始めたということなのである。少し押さえなければ。いや、ここで押さえたら、
家を買った意味がない。しかし、あまりトバしすぎるのも・・・。