冬の情景

 灯油の季節である。
これまでは、ガスのファンヒーター1つで過していた。それはDK専用となった。
だいたい、天井が高くて無意味にだだっぴろいこの家では、それだけでは間に合わない。
で、前の家主が置いていった大きなFF式の石油ヒーターを、有難く使わせてもらっている。

 ガスと違い、灯油は自分で調達しなければならないが、幸いここは家の前を
灯油を売る車が通る。このあたりの灯油売りはアナウンスではなく、オルゴールの
音である。聞こえて来ると、タンク持って門に走る。

 今のところ、家の前を通ってくれる車の曲目は、3種類確認している。
それは「七つの子」であり、「80日間世界一周」であり、「月の砂漠」である。てことは
一応選択の余地があることになるのだが、今のところ買うのは大体、「月の砂漠」の
車から、となっている。何故か。

 まず、「七つの子」の車の場合、テーマがカラスなので避ける。あの、ゴミを
漁ったり、いたずらをするカラスが、山にはなんと「7つの子」まで隠し持っている
という内容だからである。そのうえ作詞者(野口雨情)ときたら、山に行って
カラスの巣を見て来いとまでそそのかしている。そんなことをしたら、怒った
カラスに攻撃されて、ケガを負うに決まっている。だというのに、なんと物騒な
ことをすすめるのか。そんな曲を流す車から買うのは、私の良識が許さない。

 それでは、「80日間世界一周」は、どうなのかと言えば、曲の内容としては悪く
ない。しかし、車のスピードが適切でないのである。早すぎる。呼びとめる間もなく
走り去ってしまう。最初は、ああさすがは「80日間世界一周」と感心したのだが、
今では運転手はバカではないのかと思っている。寒い中、玄関を出て門に走ると、
車は既に後姿。勝手に世界一周してこいっつうの。ぷりぷり。

 てなわけで、「月の砂漠」を流している車から買うことになる。曲のイメージも、
旅のラクダが両脇に油のつぼをさげて行商してるみたいで、悪くない。本当の
ところは石油はタンカーで運ばれてくるし、おまけにそのへんに座礁しては海岸線や
海鳥をねとねとにしていると知っていても、だ。

 本当のところは、必要なときに適切なスピードで家の前にやってきて、安く
灯油を売ってくれるのならなんでもいいはずなのだが。灯油屋が、カラスが大好きで
実は養殖までしている、なんてこともないだろう。・・多分。

 ラクダだって本当は相当イヤなヤツで、乗る人が気に入らないと、いやがらせに
ゲロを吐きかけたりするらしい。でも、だからなんだというのか。ちょっとした
遊び、つうか、ムード、つうか。そう、たんに私はカラスよりラクダの方が好きだ
というだけのことなのだ。

 でも、一缶あたり50円や100円違ったら?
いや、30円違ったら、私はラクダを裏切るかもしれない。
ラクダに義理はないことだし、まあその、しょせんは遊びだからである。
すまんな、ラクダ。安く売るんだぞ、ラクダ。

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 見覚えがないメール・アドレスのe-mailが届いた。
タイトルは「感想文」。「こんにちわ」や「はじめまして」だと開けようかどうしようか
迷い、ほとんど削除するが、これなら開かないわけにはいかない。

 いやあしかし、開けて読んでみて私、ぶっとぶことになったのである。
それはなんと、「貴方は霜と霜柱の区別がついていないのではないか。」
というご指摘メールだったからである。

 へ?霜は上にのっかってるあれで、霜柱は持ちあがるアレざんしょ?
とは思ったのだが、先方様が示してくれた私が園芸の方に載せた文章を改めて
読んでみれば、確かに霜も霜柱も一緒くたであった。「うちでは」という一言を
挿入して、一言書くのを忘れたことにしたかった(我ながら姑息ではあるな)が、
それでも文章続かない。

 大体事実からして、この庭の霜柱に驚いて、霜というものが頭の中からなくなって
いた、というもので。(はい、区別がついてないのではなくて、忘れてたんです)
これに比べりゃ誤字・脱字も失敗のうちに入らないってくらい、恥ずかしい失敗
だった。

 ところが、恥じ入りつつe-mailを読み進んだ私は、またまたぶっとぶことになる。
文章の署名の下に記された、HPのアドレスつきの勤務先が、なんとなんと、
「図書館」だったのである。

 ご立派な書物が沢山ある図書館の中にいて、私ごときの文章にかかずらわって
下さるとは!そう思ったら今度は非常に誇らしく、うれしくなったのだが。
・・・しかし、恥ずかしい事実には何の関係もないのであった。
いやあ、私ってこんなにバカだったんですか。知らなかったなあ。

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 新年会に行こうとしていた。
メンバーは、忘年会と同じであった。それはいいのだが。
私は忘年会のときに、何を着ていったのかを、すっかり忘れていたのである。

 私の世代の場合、「昨日と同じ服」とくればイコール「外泊不良娘」のことである。
しかしいくらなんでも、私が不良で忘年会から新年会までよそに外泊し続けてると
考える奴はいない。

 いないだろうがしかし、気になるといえば気になる。
が。思い出せない以上は、どうしようもない。というわけで、新年会なりに
とりあえず飲食に妨げがないような格好をするわけなのだが、もしかしてテーマが
同じなら、着ているものも結果的には一緒じゃないのか。

 だが、夫はさくっと言ったのである。「大丈夫だよ、誰も覚えていないから。」
「そ、そうよね。大体、着ていった当人だって覚えていないんだもの。」
「そうだよ、写真見てぎゃっと言うだけだよ。」 ばこん。

 そう、何故かオフミで写真撮ったりするんだよなあ。何で皆、ハンドル・ネーム
まで使っておいて写真を撮るかなあ?あたしだったら、「雨ノ森さんですか?」
と聞かれたら、別の人を指差しちゃうぞ。夫なんて、「なんのことですか?」
と、とぼけるつもりでいるんだぞ。

 そんなことを考えながら会場に向かったのだが。
会場に入るやいなや、「これ、この間の写真!」そう言って持って来てくれた人が
いたのである。

 顔は凍りつくはお礼も出て来ないは。おそるおそる写真に目を落とした私。
さて、私は同じ洋服を着ていたでしょうか?

 T口さん、その節はお写真、誠にありがとうございました。