D.I.Y.

 「裸にエプロン」といえば、えっちな格好のアンケートをやったとすれば
上位にランクされること間違いなし、だそうである。なんだそりゃ、何の話だ
それが一体どんな展開を呼ぶのかと言えば他でもない。

 「お金で解決しようとは思わなかったんですか、アナタ。」と、鼻持ちならない
セリフのアンケートをやったとすればこれまた上位ランク入り間違いナシのセリフが
この私の口からもれたという話しなのである。

 随分強引な導入部だがそれはともかく何があったのか。
夫がまた手作り癖を出したのである。パソコン使って図面書いて、A3がプリント
出来るプリンター(夫の自慢だ)で図面をプリント・アウトして、青葉台のドイト
に何度か通い、その結果、社宅の1部屋はまるで木工所のようなのである。

 最初は食卓と椅子を替えようという話だった。それからパソコン机と本棚も
やることになって、隣のパソコンの画面が白いってことは図面ひいてるなあと
ぼんやり眺めているうちに、ある日材木がどどどっと届いたのである。

 食卓と椅子。話によると世間の新婚というものはぴかぴかの品物に囲まれて
始まり、10年後くらいに一気にそれらが壊れるのだそうだ。うちは一人暮し
どうしが持ち寄って結婚したので、どっちもあてはまらなかったが。

 さすがに食卓はどちらも大きいのは持っていなかったので、ハンズで
材料を買って夫が組み立て、塗装したのだった。今使っているパソコン机&本棚も
その頃に作ったものだが、今でもすごいと思うのは、コレを2DKの社宅で
組み立てたという事実。

 だって普通の大きさじゃない。パソコン机では二人そろって作業?出来るし、
本棚は同じ横幅でその上に乗っかっていて当然私の身長より高く、棚ではなく
本棚だからそこには本が満載されているのである。

 類は友を呼ぶものなのか何なのか、この本棚はうちに来るオトコの子達の絶賛の
的だった。棚の真中が本の重みでたわんでいるにも関わらず、だ。夫よりパソコン
を使用している時間が長い私は、大地震が来たらこの本棚と共に死ぬ確率が高い。

 しかし、どうせなら新しくするのは食卓と椅子だけにしておけば良かったものを、
この机&本棚を加えてしまったので部屋の木工所化は進化した。そして、なくなり
がちな休日に作業するはずなのに、テロ事件関連で余計休日はなくなり、作業は
遅々として進まない。

 本棚とパソコン机から始めたわけだが、これが終わっても食卓と椅子が控えて
いる。ヤスリがけして塗装、またヤスリがけしてニス塗り?あうううう・・・。
このままでは木工所で正月を迎えてしまうかもしれないという危機を感じた私は、
要らないと言われながらも無理やりヤスリがけをするようになってしまった。

 だって、製品が出来あがったところでそれだけでは済まない。入れ替わりに、
今ある机と本棚、食卓と椅子を捨てなければならないのである。粗大ゴミは2週間に
一度、4日前に連絡して期日の前日夕方に出さねばならないということはつまり、
その日までは同じ機能を果たす大型のものが2つ、今の間取りに鎮座ましますわけ。

 片付かないのは割と平気、というよりは片付かない元凶とも噂されている私
であるがしかし、そんな私でさえ耐えられなくなってきて、もう少し人間らしい
暮らしをしたいと思ったある日、家具売場を通りかかってしまったのである。特売
になっていた美しい食卓のセットの値段にあきれた私の口からもれたのが、
くだんの言葉なのであった。

 あまり口には出さないにせよ、出来れば「お金で解決」したい人は少なくない。
夫があまりに器用で何でもなおしてしまう為、新しいものが買えないと言って嘆く
奥様方もその部類である。だが、それくらいならマシではないのか。うちなんて、
長々と1部屋を潰したり畳に塗料を落としたと言って大騒ぎしているのである。

 そう言えば思い出したが、結婚した頃、うちにはまだ高価だったビデオがあった。
夫の親友が組み立てたもので、なんと中身むきだし。流行りのスケルトンとかいうの
ではなくて、カバーがないのである。なんでも秋葉原で欠陥品を3台ほど買ってきて
使えるところをあわせては1台組み立てる、という遊びの結果だそうだった。

 技術力とは恐ろしいもので、これが出来れば、当時20万円近くしたビデオが
7000円かそこらで出来るのである。「2つ出来たから、1つあげるよ〜。」というの
が彼の言葉だったそうで。私は素直に感動したし、カバーさえあれば普通のビデオ
になるのに、というスケベ心には、「秋葉原で売ってるけど、7000円するよ!」という
夫の言葉が見事フタをしてくれた。

 今、ビデオはTVに内蔵されている。技術力のある人間が選んだおかげで、その
ビデオはベータだった。宣伝とは恐ろしいもので、技術の人間が嘆くなかVHSが
世の中のビデオの大勢を占め、だがやっぱり技術力は恐ろしいもので、それじゃ
ソニーは左前になったのかといえば、殆どの特許はソニーが持ってるから全然平気、
とは当時ソニーの人から聞いた話である。ああそうかい。

 で?故障をなおすくらいならまだしも、モノ作りをしようとしたら、部屋が片付く
ことなどないのであった。見たことはないが、ビデオを組み立てて遊んでいた
彼の部屋だってネジだのコードだのでぐちゃぐちゃだったに違いない。そして、
カバーのないビデオを部屋に置くくらいなら20万円出した方がマシ、という人が
いないわけがない。

 たまの休日を使い、塗るのが早すぎたの良く見ると色がいまいちだの、おしまい
には「設計の不備は運用でカバーするもんなんだよ。」と来る。社宅、というよりは
狭い集合住宅に住まざるを得ないという現実は、運用それじたいが設計思想で
なければいけないと思うのだが。

 ビデオも本棚も食卓も、見る人全てが驚いてくれた。
しかし、うらやましいと思ってくれたかどうかは、不明である。いや、うらやましい
とは思ったかもしれない。ただそれは本棚そのものの存在ではなく、それが象徴する
何かであった、と考えている。