朝食の変遷

 何故、こうなってしまったのか。
最初の頃、うちの朝食はもっぱらゴハンと味噌汁であった。
だというのに現在、中国風粥が朝食となっている。朝6時には起きて、
たき始める。最近のお粥の具は、義弟がくれたホタテの乾物である。

 それが今朝、昨夜の残りのパエリアを消費するべく、これまたパエリアに
使った、エビの頭でダシをとったスープと共に夫に出したら。
「なんだ・・・お粥じゃないの・・」と夫がぼそっと言ったのである。
朝食には死ぬまで粥を出すと約束した覚えなどないのだが、あまりの落胆の
様に驚いた。

 そもそも、何故お粥を作るようになったのか。
香港に凝っていた頃から、たまには作っていた中国粥だった。で?
そうそう、以前台湾に行った時に面白がって買った五穀パック(と勝手に呼んで
いて、麦とか稗とか米以外の穀物が入ってる)を、いくらなんでも
もう食べなければいかんという話になったのである。

 それで、他に手段とて考え付かない私としては、「それじゃ明日からお粥に
混ぜてあげよう。」ということになったのだ。・・・ちょっと待て、その頃から
朝食はお粥だったのか?いやあ、確かにお粥であった。その会話はここに来てからの
ものだったし、その頃のお粥の中身は、御徒町から夫が箱で買ってきたピータン
であった。

 お粥といえば時間がかかるシロモノ。
忙しいはずの朝に、なんでそんなことをやっていたのか。そうそう、転勤してきた
からだ。転勤直後というのは不思議なもので、何故かいつもいつも朝早く
目がさめてしまうのである。

 どうせ目が覚めたならと、植物の水やりをしたりゴミ出しのかたわら、お粥を
作っていたのだったが、実際、朝ご飯を炊いていたのはもっとずっと前からで、
金沢を出る頃には、既にお粥になっていた。何故お粥だったのか。転勤間際になると
夫は毎晩送別会でいないに等しく、ご飯を炊いても無駄になりがちだからである。

 すると、金沢でも朝早く目が覚めてたわけか?
いや、早いと言えばそこそこ早かったが、出勤時刻も遅かった。

 ところで引越しというのは本当に変なもので、「3度の引越しは1度の火事に
相当する」とか、まことしやかに語られていたりする。確かに引越しのおかげで
溜め込み癖のある私も夫も色々整理を強いられてきたが、しかしこれを問答無用の
「火事」と一緒にしていいものなのか。

 そして、どんなに無駄のない生活をしてるようでも、引越しとなれば捨てたり
新しく買ったりしなければならないものは絶対にある。学校の制服なんかは、同じ
社宅のお子さんがいる人に譲られたりするが、中途半端なのは、食材。以前の社宅
には、開封したものを寄越したと怒ってる奥様もいたな。

 うちは流石に開封したものを他人様にあげることはない。(つまり、捨てる。)
しかし何がどうだろうともらいものは何でもウェルカムな人もいて、もうこんなのは
実に個人のなんとやらである。気にさわったりさわられたりして生きることになる。

 で?辞令が出る前はどうだったのか。確か、パンだった。ご飯ではなかった。
その少し前にりんごのいただきものが続くということがあって、食べても
食べても終わらず、しょうがないのでジャムを作り、このジャムが終わるまで
朝食はパンと定めた。気分は、「りんご消費月間」。

 ジャムを食べ終わった頃に辞令が出たんだっけな。送別会やら何やらで、夫は
夕食を家で食べないのでご飯を炊いても無駄になり、それでいて私は落ち着かない
こともあって朝早く目がさめてしまい、どうせならと朝食はお粥になった。

 転勤してすぐの頃は、久しぶりに会う人達と飲んだりで、夫はやはり帰って
来ない。もちろんこちらも慣れない場所で朝早く目がさめてしまう。それでまあ、
どうせ朝早いならとお粥をたくことになり、ああそうだ、それである日、これまた
どうせならと、台湾の五穀パックをお粥に入れようという話になって。

 で、途中から義弟にもらったホタテの乾物とか、夫が買ってきた1箱のピータン
とか、そんなものも加わって、現在に至るのである。(最初の頃と、つじつまが
合っているでしょうか?)にしても、夫ときたら、お粥の何が気に入ったのか。

 朝、妻が1時間もかけて作ったお粥を食べていると聞くと誰もが驚くらしいが、
その分をとりかえすべく、妻は昼にも寝ているとは言ってないらしい。
「驚く」と聞いたとき、そんな話をする夫にもそんなことで驚く人々にも驚いた、
というよりは「くだらん」と思ったが。

 くだらん、で済むのはこういう「なりゆき」という事情があるからだ。
しかし、けっこー世の中、くだらんことで出来てるのかもしれないと思えば、
いっそここで恩に着せておくのが得策なのかもしれない。しかし、アホくさい。

 五穀パックはもう少しで終わりになる。
転勤は6月だったが、秋深くなって来る頃にはまともな時間に目が覚めるように
なる。そしたら、またご飯と味噌汁の生活になるのだろう。