2008年 夏のこと
アテネ・オリンピックの時、キタジマ・コースケ、に興味はなかった。
むしろ「チョー気持ちいい」という言葉で、恥かしいヤツだとも思った。
水泳をするようになったのはそれから少し時間が経ってからで、それも別に
彼のせいではない。
ある日、ゴーグルを忘れた。仕方なく売店で買おうとしたら1種類しかなかった。
そのゴーグルは「北島康介推奨モデル」とやらで、安くない。でも、それしかなかった。
そのゴーグルは、私の骨格に合っていたのかいなかったのか、プールから上がった
あとも眼窩に痕が残った。長々と。それは予備ゴーグルとなった。
水が怖かった私は、呼吸がラクなブレストから始めた。慣れてから、教室にも行った。
クロールもブレストも「伸びる泳ぎです」と教えられた。運動オンチなので、そう
言われたところで直ちに知識と身体が一致するわけでもない。
それが北京オリンピックの水泳の映像でやっと納得出来たのである。
ひとけり3m、で悠々と泳いでメダルをとったキタジマ・コースケは、私を納得させて
くれた故に「恥ずかしいヤツ」から「素敵な方」に昇格した。
北京でキタジマ・コースケは私がイヤイヤ買ったのと同じゴーグルを
つけてもいた。キタジマ・コースケの目の周囲にゴーグルの跡が残っていたかどうか?
装着している時間も短かかったようだし、大丈夫だったのであろう。
表彰台のキタジマ・コースケは一番上に立っているにも関わらず、一番小さかった。
「あの人って、小さいんだねえ」とプールでは知人達と話をした。後で、何かで
知った。彼の身長は、178cmであると。
小さいんじゃなくて、大きくないだけだった。どちらかといえば十分、だった。
キタジマさん、すいません。
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お盆休み、姪の大福は夫にべったりくっついていた。
なついちゃって、夫から離れない。その間、うるさい盛りの孫に手を焼いてきた母は
「大福が来ているのにこんなにラクだったことはなかった。」と言い、
母親である妹と私と3人で四方山話に花を咲かせた。
その母もさすがに気がとがめたのか、「そろそろ引き取りに行こうか」と言い出した
頃、夫が大福を連れて2階から下りてきた。「今日はこれからどうするの?」と4歳に
なった大福が夫に予定を聞いている。夫は「夕方になったら温泉に行く。」と答える。
そうなれば、「大福も行く!」ということにならないわけがない。
そこにおばあちゃんがおっとり刀で登場するのである。
「大福はこれからどうするって?」 「あのね、にーにー(おじさんの呼び名)が
温泉行くって言うから、大福も行く!!」
「温泉に?二人で行くの?」「うん、二人で行くの!」
「大福はそれじゃ、どっちのお風呂に入るの?男湯?女湯?にーにーが女湯に入るの?」
うっ、と大福はつまったそうである。そしてしばらく悩んだ末に導き出した結論が
「ねーねーを連れて行く。」きっぱり。
何がすごいかって、誰も私に温泉に行くかどうか聞いてくれるヒトはいないという
ことである。大福は「連れて行く」つもりになっているし、母は母で大福に向かって
「ねーねーが行ってくれるかどうか聞いて見た?」とは言ってくれない。
そんなわけで「ねーねー」と呼ばれている私は大福に連れられて??
夫と3人で温泉に行くことになる。(あたしゃ「ねえや」か、っつーの!)
車で10分ほどのところにある温泉はその日、あきれる程混んでいた。近くに海水浴場
があるので、皆、そこから直行してくるのである。
裸の身体が如実に「海水浴帰りでーす」と言っている。
あのヒトの背中、何の模様だろうと見ていたらお湯の一流しで霧散霧、なんだ砂浜の
砂だったんかい、とか。小学校2〜3年くらいの女の子の、見事に割れた腹筋
なんてのも見たが、これは海水浴とは関係ないか。
で、お風呂から上がったら大福は、「ジュースを飲まなくては。」と言い出した。
脱衣所を出たところで周囲の人々が美味しそうに何やら飲んでいるのを見たらしい。
別に飲まなければならないことはないのだが、つべこべ言っても。それで、
「混んでるここより、外のお店で買っておいで。」と夫に押し付ける。
店から出て来た大福は「とろけるマンゴー」という缶ジュースを手にしていた。
「とろけるマンゴーなの?こんなの飲んで大福がとろけたらどうしようか。」
だがこいつは大きすぎるように見えたそれを全部飲みきったあげくに、
「あーあ、大福はとろけちゃったよー!」と言うのである。
また少し大きくなってしまったのであった。