その2:8/8立山黒部アルペンルート

  というわけで、白山スーパー林道はたんに雨のなか通っただけで終わってしまっ
たのであった。宿泊場所が遠かった為に途中で雨がやむのを待ってるわけにも
いかず、距離をかせがなければならないというテイタラク。

  ついでに言えば、絵ハガキ送るつもりの尊敬し奉る知人の住所さえも、うちに
忘れてきたのであった。私が何か企んだところで、どーせこの程度であると思えば
少し悔しい。じゃなくて、安心してくださいね、ってか。それもまたどうかと思う。

  翌朝は、うまいこと晴れた。気合いを入れてゴハンを食べたが、何食べたかは、
忘れた。さして覚えてないということは、国民宿舎なりの線をクリアしていたのだ
ろう。そうそう、卵が温泉卵だったことを思い出す。ところてん、が朝食について
きたのには驚いたが、考えてみれば、標高1000m内外と言ったところで富山まで
ほんの 1時間なのである。夕食のお刺し身もいい線いっていた。

  有峰湖近くの亀谷温泉の宿を出て、立山駅に向かう。ナビゲーターによれば、看板
がなかったせいで道に迷ったが、そうでなければモノの15分のはずだった。たどり
ついてしまったのはスキー場であったが、さすが日本アルプスの北アルプス?

  だって、越中、立山だというのに、スイスの山小屋みたいな建物があるんだもん。
あの中で、昔はカレーで、今はチーズ・フォンデュなんか食ってるんだろうかと思っ
たりして。でも、朝食は絶対ごはんとお味噌汁だろうし、お漬物だって欠かさない
だろうなあとも思ったりして。

  道に迷えばココロも迷う。そして立山駅。車を無料駐車場に置く。ここから先は、
マイ・カーというやつは入れないのである。公営のケーブルカーやら高山バスやら
トロリーバスやらロープウェイやら乗り継いで、日本アルプスをつっきって富山と
長野を結ぶ、この無茶な道が、立山黒部アルペン・ルート。文明ってコワイ。

  この道、日本どころか世界有数の豪雪地帯にある。冬期はお休み。積もった雪は
ブルドーザーで除雪し、4月下旬に開通するが、当然その頃は雪原状態。それから
徐々に雪が溶けたり溶け残ったりしながら夏になり、高山植物は7月に入ってからで、
10月になると紅葉、10月下旬には雪が・・。(^^;)その昔、8月に富士山に雪が降り
初雪かそれとも名残り雪かで論争になったと聞いたが、それに比べればまだマシか?

  今回は室堂まで行く予定で往復チケットを買い、列に並ぶ。
立山町じたい、既にそこはかとなく涼しい。ここからケーブルカーに乗って 7分で、
500mの標高をらくちんにクリア。降り立つのは美女平駅。また少し涼しい。ここから
今度はバスに50分乗って、標高 2450mの室堂へ。駅には、本日の室堂の朝5時の気温
は、7℃である旨の表示あり、マジにびびる。

  しかし、同じバスの人々は 7℃らしい服装をしてるわけではなく、ただ山歩き用の
服装か、でなくばそれなりにひらひらしてないという程度の服装をしてるのみ。
室堂に着いてみれば、涼しいといわれればそうかもしれないが、陽射しは強く寒いと
いうほどではなかった。

  ブナの森や大きな杉など横目にバスはS字カーブを登って行くのだが、昔は
女人禁制だったというのがさもありなんと言うかんじで、幽霊さえもいない。
さびしいどころか、こんなところに人間が立ち入る方が、おかしい。そんな山を
バスで私達はきゃーきゃー言いながら登っているのであった。(^^;)

  室堂。バスが到着したのは日本一標高が高いところにあるホテル立山 2450m。
これから先に行く場合、トンネルを通る立山トロリーバスで10分、そのあとは
立山ロープウェイに乗り換えて 7分で黒部平駅、それから黒部ケーブルカー5分で
黒部湖駅、それから関西電力トロリーバス16分で長野・扇沢駅。文明ってコワイ。

  しかしその日は室堂近辺を散策して帰ろうということになっていた。
さすがにこの標高になると高い樹木などはなく、周囲はただ茫洋と地形そのままの
景観が広がるのみ。その地形にびったりと張り付いてチングルマだのイワカガミだの
が咲いている。池もあるが、生き物はいない。雪解け水で出来た、貧栄養湖なので
ある。水はあっても、生き物を養えないのだ。清々しいほど空虚である。

  長い階段を降りて地獄谷に向かう。本当にこの階段、長い。あちこちから温泉が
吹き出ているのが見えるが、吹き出ているのは温泉だけではない。有毒ガスだって
吹き出ているから、長い間一箇所に立ち止まってはいけないのである。その日も、
目の前を歩いていた人が、いきなり倒れた。しかし、助けるわけにはいかない。立ち
止まると、自分までガスにやられるから。(途中から大嘘)

  長い階段を上ってくる人もいるが、顔にくっきりと「後悔してます」と書いて
ある。「足に自信があります」という場合、主にその内容は外見や速さをさすが、
ここではその内容が変わってしまう。階段と言っても、コンクリートの普通の階段
ではなく、斜めになった石畳。1時間ばかり、とても良い運動をしてしまった。

  自分もその中の一人なのだから文句は言えないが、人が多い。後で知ったことに
よればそんなのはまだ序の口で、本当のハイ・シーズンはバスに乗るだけで良い
ここどころか、山頂でさえもが列をなし、ヤッホーどころかメガホンで「立ち止まら
ないで下さい」と先を急ぐことを強制されるのだとか。神様、お騒がせしてます。

  余談だが、「ヤッホー」と叫ぶ人って、今でもいるのだろうか。
「ヤッホー」という掛け声は、明治になり日本への近代登山の導入によりひろまった
ものであるが、元はヨーデルからきている・・・というのは今考えた。前近代の登山
ってどんなんだと言えば、そりゃまあ修験道の為に滝にうたれたりするとかで山に
入ったアレのことではないかと思うが、どこが「登山」なのやら。入山、やんけ。
登山という観念は、なかったんだろーなー。でも、本当に?

  高山植物見ながら 1時間以上も歩いて、疲れた。
下山するバスまで 20分ほどあったので、売店でソフトクリームなど食る。
夫はあんまんとコーヒー。こんなところで食べるなら、やはり「霞み」が相応しい、
と気がつく程度の一般常識はあるのだが、生身がうけつけてくれましぇーん。

  帰りのバスの中で、富山県はこの道の整備をするため年間 1億円を使っている
というアナウンスが、入る。道自体は作ったときからそれなりのものにしておくに
せよ、それでもやはり雪はお金をくうのだと納得する。ブルドーザーの除雪だもん。
本当に1億円で足りてるのか???って、逆にそう思っちゃう。

  道を降りていくにしたがって、眺めもかわっていく。生えてるのも背の低い
高山植物から、ナチュラリストの大好きなブナ林に。
ケーブルカーの駅、美女平では外国人が一生懸命記念スタンプを押していた。
いくつもいくつも押しているのを見ると、あれをお土産にするのであろう。
しかしね、日本人の友達への土産にするなら、まんじゅうにしておいた方がいいぞ、
なーんて背中に親切ごかしにつぶやいてみたりして、まあ、私の場合ならまんじゅう
よりは、酒の方が・・・ああ、誰も聞いてない。

  ケーブルカー降りてすみやかに車にもどり、高速使って金沢の家まで 2時間。
余計な野心さえ起こさなければ、立山黒部アルペンルートは近いのであった。
いっそここまできたなら、「なーんか、有り難味がわかないのよねえ、ほっほっほ!」
てのはどうだろう?やっぱ顰蹙かしら。へへん。