太胡瓜始末記

あんなものに手を出すことになったのは、某・尊敬し奉る知人のせいだった。

「太胡瓜、漬物にしたらどうだろう?」
そ〜んなこと言われたって、私は胡瓜も漬物も好きではない。つまり、本来は
知ったこっちゃなかったのだが、なんせ相手は尊敬し奉る知人、なのであった。

以前も書いたが、私は園芸関係でボランティアする方のことはさっさと尊敬する
ことにしている。ましてや、場というものを提供くださるほどの方となりゃー、
そらもう骨抜きに尊敬し奉って当たりまえ、なのであった。タテマエとしては。

彼の事情説明によれば、太胡瓜は紀ノ国屋で見つけたとのことである。
インターネットや本屋では加賀野菜の関係レシピは入手できないものなのか。
いやー多分、「そうそう、こいつってば金沢に住んでたんだっけ〜!」ってな、
一種たりらりらん、な気分で軽く聞いてみただけなのだろう。

既に書いたが、私は胡瓜も漬物も、あまり好きではない。
その昔、胡瓜農家の知人から胡瓜を 1箱、まるごといただいたことがあって、
その時は手に入る限りのレシピで胡瓜料理を作ってみたものだが、それ以来、
買ったことさえも、ない。畑で作ってみようともしなかったくらいである。

しかし、当人に向かってそうは言えない。
なんせ、「尊敬し奉る」知人なのである。いくらなんでも、一応のところは、「は、
それでは私の出来る範囲で調べさせていただきます。」ってことになるやんけ〜。

その後、なんかのついでに「酢の物、あんかけ、炒め物。」と答えたような気がする
が、詳しくは覚えていないし、第一これじゃ全然答えになってない。
そう、根が怠惰なもんだから、気ノリしない限り、いくら尊敬されたところで
たいして意味がないのである。

その後、このHPを立ち上げた。そして、転勤になるだろうと思っていたのに転勤
にならなかった。こうなりゃしょうがない、おまけの 1年はHPのネタを兼ねて、
私なりの金沢案内をこなしていこう、ということにした。実は私、ここで初めて、
太胡瓜を「現実に」手にしたのである。

で、ハマったわけだ。ハマったはいいが、困ったことになった。尊敬し奉る知人
から、こともあろーにファクシミリで資料まで届いてしまったのである!げげっ。
敵さんもそこそこイイお年である。資料やモノをたんなる個人の楽しみで終わらせる
ような人間に寄越すほど、ヒマであるわけがない。多分。

結局、自分がそう考える以上は、手持ち資料だけでも掘り起こし、とりあえず何か
でっちあげるしかなくなったのであった。面倒くせーと言いながら書いたのが、例の
太胡瓜とマンゴーの話である。しかし、自分が好きでもあり興味を持って眺め続けて
きたマンゴーと違い、胡瓜の方の話はと言えば昨日や今日から始まったことであり、
なおかつ資料頼りの話で、スカスカしていて面白くもなんともない。

あれは元来、胡瓜を育てたこともあれば、漬けたこともある人が書くべき話で
あり、そういった人が太胡瓜に出会って色々試したならば、もっと面白いものに
なったはずである。そして、しょせんはにわか胡瓜研究家、後になってみたら
「手持ち」の中でさえも、資料の発掘不足がわかったりした。いかに胡瓜に興味が
なかったことか。(^^;)懺悔懺悔、と。

よくある話で、私の場合でも、失敗というのは、一番肝心なところに出現する。
書きながら嫌だったのは、華北系、華南系、シベリア系、と書いたところで、
華南系胡瓜を見たことも食べたこともない、ということだった。

資料の発掘不足はまさにその場所にすっぽりとハマった。去年のサカタの会報に、
沖縄の在来野菜についての連載があり、その中に、モーウイと呼ばれる華南系胡瓜
が載っていたのである。

何も知らないと思ってはいたが、写真を見てみれば、確かに私はこの現物を那覇
のスーパーで見たことがあった。しかしその時は、黄土いろの地色に変なカサブタ状
傷痕みたいなのがついている、紡錘形のへんなもの、といったかんじで、とても
じゃないが胡瓜とは思えなかったのである。

変な言い方かもしれないが、華北系、シベリア系と来るなら、あれさえ食えば
一段落することになる。話の都合からすれば、出来れば胡瓜の原種かそれに近い
ものを入手し、毒とかハンパじゃない不味さを覚悟で食うことになるのだろうが、
これこそは本当の胡瓜研究家、胡瓜が好きでたまらない人々にまかせたい。

そして私は文句たれたり悪口書きながらも、良い機会を与えていただいたことには
当然!感謝している。例えば華南系胡瓜を見つけたとして、かの知人を思い出さない
わけがない。問題は現物と巡り合うのがいつになるかわからないということである。
が、かのセンセイは長生きしそうな気がするから大丈夫だろう。←なんとなく確信

ここで、最初の話に戻る。
「太胡瓜は漬物に向くかどうか?」という質問である。酢の物、あんかけ、炒め物
とはどこにでも書いてあったが、「漬物」とは書いてなかったところを見ると向かない
のかもしれないし、やってみたら案外美味しいのかもしれないし、でなかったら書く
までもないほどの常識中の常識なのかもしれない。←このへんが漬物嫌いの限界

そう思いつつご近所の酒屋の奥様に聞いてみたら、明るく「しますよー!」
という答えが返ってきた。最初っからこの人に聞けば良かった。が、そーだろう。
冬場に野菜がないところでは、食べられそうな限り、何でも漬けてみるらしいから。

そして、出来上がったものは、余程変なことにならない限り、または、余程変な
ことになっても、それが味覚レベルの問題で済み、食べた人が変にならない限り、
食べる。(現在のご家庭レベルにおいては、「まずいものを作った責任をとる」と表現
したりするが)ご家庭料理、ひいては郷土料理とはそんなもんであるという現実を、
私はすっかりこんと忘れていた。ほーんと、美化すりゃいいってもんじゃないよな。

太胡瓜や片うりの季節である夏には、かの知人にお会いすることはなかった。
今年が最後と思えば、しょうがない。覚悟を決めた私は市場にでかけ、太胡瓜と
片うりを知人のために求めた。地元で買う地場野菜は当然安価で、送るとなると送料
とのイタチごっことなるのが悔しく、さりとて傷がつくのはもっと悔しく、ブーブー
と文句を言いながらエアキャップやら新聞紙で1つ1つ大切に包んで送ったものだ。

結局、「漬物に向くかどうか」という質問の答えは、丸1年を経て、結局はご自分で
試し、得ることになったのである。これだったら、最初っから単刀直入に
「金払うから送って〜!」と言って下されば話は早かったのだが。言うまい言うまい。

ところで、なんだかなんだ言っても太胡瓜は、加賀野菜として有名である。需要
もあれば供給も広いのか、6月末から9月末まで、探せばどこかで売っている。
が、片うりはそうではない。8月を挟んで、入手できるのは 大体 2ヶ月間である。
そして、片うりのサイズは一定していないことからわかるように、どうやら本当に
地場でしか流通してないらしい。

そういう意味では、片うりの方こそ、調べてみる価値があるのかもしれない。
それともあれは、胡瓜に詳しくない私が知らないだけで、日本全国どこにでもある
ものなのか???ともあれ、胡瓜の季節は終わってしまった。

私自身は来年は転勤であり、現物と出会うことなく、金沢に別れを告げることに
なるだろうと思う。これを読んだ誰かが、いつかどこかで「なるほどこれが」と思って
いただければ、幸いである。ちなみに太胡瓜は、私の知る限り、郷土料理屋では
見ることがない。湯涌温泉あたりの小さい宿で、予約すれば話は別かもしれない。

Special thanks to : Mr.Wada & Mrs.Kashida.