冬は長靴
金沢への転勤が決った時、真っ青になった。
金沢といえば、雪。私は、雪は大好きだ。大好きだがしかし、雪には慣れてない。
雪道では、必ず転ぶ。雪が降るたびに、外へ出るたびに転んでいたのでは、身が
保たない!!
が、よくしたものでこちらの店には、雪道用の転びにくい加工を施した長靴が
たくさん売られているのであった。私は冬用の長靴を買った。そして、一度使って
みたら、雪が降るたびに頼りっきりになった。ふと気がついてみたら土地の人は
そこまでゴツいのは履いてなかったが、だからなんだというのだ。
こちらに来て驚いたことの一つは、金沢の主な道には融雪装置がついているという
ことだった。それはどういうのかと言えば、地下水をくみ上げて撒き散らし、雪が
降るそばから雪を融かしてくれるという内容である。最初は、雪を融かす為に水を
出しっぱなしという状態に驚いた。確かに道の雪はあるよりない方がよろしいが、
雪がこんなに高くつくとは知らなかった。
で、雪を融かしてくれるのはいいのだが、道の雪全てを融かすことが出来るわけ
でもなく、その水が道の脇にシャーベット状態で溜まってたりして、雪の日に
外出しようとしたら、やはり長靴ナシでは出られないのであった。
そんなわけですっかり慣れ親しんだ長靴ではあったが、弱点があった。
それは、オシャレではないということ、しょせんは長靴だということである。
初めての金沢での誕生日の朝、雪だった。暖地で生まれ育った私としては、
悪い気分ではない。のんびりと外へ出た。そして、徒歩で兼六園へ向かった。
雪の兼六園を散策しながら、どうしようかと考える。いっそどこかでいい景色を
見ながら雪見酒でもやってしまおうか。へっへっへ。
どこかとは、どこか。そう言えば、某ホテルの最上階は和食屋になっていた。
一度そういうのをやってみたかった。ここは、やれるうちにやっておかねばならぬ。
・・・だが、私の足元は長靴だった。長靴って、屋内を歩くとキュッキュッっと音が
して。けっこうカワイイのを買ったつもりでも、しょせんは長靴なのだ。
で、どうしたのかと言えば。
近江市場に行った。市場の中の店は、まーこう言ってはナンだが、どれだけ流行って
いたところで、本当の一部を除き観光客用である。そういう店のひとつに入り、
刺し身と熱燗で、一人誕生日を祝うことになったのだ。一度はこういうやさぐれた
こともしてみたいと思ってはいたが。いやー、まさか長靴のおかげでかなうとは
思わなかった。雪まみれの長靴もなかなかいい味を出してくれて。まったくもう。
結局、雪が降ってる間は、融けるまではオシャレな場所には行けなくなった。
が、別に行く必要もないし、行きたくなったら、融けてから行けばよろしい。
私は雪景色の方を堪能するため、山の方に向かうようになった。