太胡瓜とマンゴー

  朝、ちりんちりん音がすると思ったら、ラジオ体操の時間を知らせて歩く、
カネの音なのであった。このあたりでは小学生のお当番が毎朝カネを鳴らして
通りを歩くのである。3度めの、金沢の夏となった。

  実は、太胡瓜が、佳境に入っている。
うまくてたまらん。それが佳境に入っているということである。
どうせなら、太胡瓜のおかげで私の食生活は佳境に入っている、というべきか。
何でもいい。胡瓜なんである。食ってなんぼというものだ。

  あの後、「つるぼけ胡瓜」と書いたが、何か変だ何か変だと思っていたら。
つるぼけというのは、つるばかり伸びて実が着かない状態をいうのではなかったか
と思い出した。やばい。つるについたまま熟しきっちゃった、という意味では
なかったような。げげ。これだからうっかり者の評判から逃れられない。

  一応は調べておかにゃと思って、「つるぼけ」の意味を探した。しかし、そんな
野蛮な用語を解説してくれる資料は、私の本棚にはなかった。図書館まで行くべきか。
金沢といえど、暑いのに。誰か教えてくれ。起こる原因も。窒素過多だっけ?

  ちなみに、「沖縄でつくる楽しい家庭菜園:沖縄出版」という本によれば、胡瓜は
つるぼけを起こしても着果数は変わらないのだそうである。(まばらに着くの?)
そして、「野菜探検隊 世界を歩く:文春文庫ビジュアル版」では、日本でも成熟した
胡瓜を煮て食べる地方がある、とのことであった。なーんだ、食えるんじゃないの。

  胡瓜はヒマラヤのふもとが原産で、インドから海路を通って沿岸部を北上し
伝わったのが華南系、シルクロードを通って伝わったのが華北系という話ではある
が、「探検隊」と小学館の植物事典では品種を増減させながら中国にたどりつき、
雲南省あたりで南と北方向に別れ、やがて日本に伝播した、という説を出している。

  江戸時代の日本人が食べていたのは、最初に伝わった華南系で、熟した胡瓜を
煮て食べていたそうである。明治になってから華北系が導入され、現在の胡瓜は
殆ど華北系から作られた一代雑種、とのこと。

  ・・・そうしてみると、上記の成熟胡瓜煮の場合、使用されるのはどっちの胡瓜
なのか??胡瓜と料理方法共に残されているのか、華北系胡瓜を作るようになって
みても、料理は同じなのか、それとも華北系は未熟果として生食するのも良いが、
世に知られてないだけで、実は、完熟してもうまいのか。いやはや。

  それはともかく、うちで局地的に佳境に入っている加賀太胡瓜の場合は華南系、
華北系のどちらでもないらしい。シベリア系と呼ばれるピクルスに適する小さい品種
があって、それと、こちらの胡瓜が交雑したものだといわれている。

  交配、改良して作られた、のではなく「交雑」と言うと、勝手にデキてしまった、
みたいに聞こえるのだが、料理の本には「交雑」と書いてあったのである。

  それが本当なら、素晴らしい交雑結果(シャレ?)が出たわけで、加賀太胡瓜は
その名の通り、5cm やそこらで収穫される他のシベリア系とちがい、20cm 以上にも
成長する。ピクルスには出来ないだろうが、むっちりとうまい。煮るととろりとして。
今日も明日も太胡瓜だ。和え物にしてくれという話も出ているが、無視。却下。

  加賀太胡瓜の結果数は少ないとあるが、なんせ1コあたりが太くて大きいから、
1株あたりの重さ収量にしてみれば、たいして変わりはない。多分。(^^;)そう、私は
既に太胡瓜の味方となっている。

  シベリア系、というだけあって、日本海側の地方にはあちこちにシベリア系を
親にして品種が細々と残っているらしい。
今では隣県富山の所属になってしまったが、元は加賀百万石の領地であった高岡
にも高岡太、という胡瓜が存在し、加賀太胡瓜同様、アンカケにしたり魚と一緒に
味噌汁に入れたり、サシミのつまにも使われるとのことであった。

  それで思い出したが、沖縄でも刺し身には胡瓜のスライスを添えるのである。
ただし、使うのは普通の胡瓜であり、刺し身も酢醤油で食べるのだが。沖縄に
キュウリが登場したのはいつのことだったのか、昔は別のキュウリがあったのでは
ないか、それとは別に、刺し身に胡瓜を添えるのはいつからなのか、昆布を沖縄に
もたらした北前船となんか関係あるのかなどと、妄想はふくらんで行くのだったが。

  それにしても、たまに調べ物などしてみると、逆に今まで考えもしなかった疑問の
方が増えてしまうのは何故なのか。稼ぎに追いつく貧乏なし、ってやつかもしれん。
だからこそ稼いでいかねばならんてか。ミもフタもないが。

  そして惜しむらくは、この太胡瓜がメジャーでないということである。
同様にして種子は門外不出、な〜んて言われていた茶豆は今や台湾でも栽培され、
冷凍食品となって売られている。金沢を転勤になってしまったらもう食べられない
というのでは、惜しい。紀ノ国屋では 1本 500円だとのことだが、500円も出したら
皮をむくのもためらわれるのではないか。需要さえあれば、供給だって増えるとした
ら。ささやかながら、加賀太胡瓜を応援したいと思うのである。うまいぞ。本当に。
あなたも見つけしだい、食べてみなさい。

  話変わる。実は、ふっふっふ、マンゴーも、佳境に入っている。
この場合は沖縄は宮古島から届いたアーウィン種のマンゴーで、これはアップル・
マンゴーとも呼ばれる。フィリピンから輸入されるこぶりのベリカン・マンゴーに比
べて色が赤く、大きく、丸っこいからアップル・マンゴーと呼ばれるのだろう。が、
そんなことはたいしたことではない。問題は、このアーウィン種のマンゴーが、
ペリカン・マンゴーに比べて格段にうまいということである。←こればっかりやんけ

  元来マンゴーは沖縄ではあまり栽培されなかった。花が咲く頃ちょうど雨季に
入るため、解放状態では果実が実らないのである。施設栽培が行われるように
なり、初めてマンゴーの実が市場に出回ることとなった。

  アップル・マンゴーはメキシコからも多数輸入され、沖縄の完熟マンゴーより
格段に安価に入手出来る。が、当然ながら完熟ではなく、追熟、保存方法も未だ
不完全なのか、水分の抜けきったようなのに当たることが、多い。うまくいけば美味
しいのにありつけるのだが、殆どバクチであり、通常の賭博において儲かるのは胴元
であるという事実同様・・・ま、私はお薦めしない。

  今年の宮古島はことのほかマンゴーが大豊作なのだそうだ。施設栽培が
大々的に始まって、まだそれほど時間は経っていない。那覇市場でも見るように
なって10年くらいだろうか。してみるとマンゴーの木も大きくなって、いっせいに
生産性をあげられるお年頃になったのかもしれない、と考えたりするが、私としては
隔年結果性の方を心配するものである。来年が大不作だったらどうしようー?

  熱帯におけるマンゴーは苗植え付け後、10〜20年しないと結実しないが、日本では
なるべく大きな鉢に植え無加温室栽培すると実生3年めで果実をつけ、インドでは
実生苗を台木に呼び接ぎして5年くらいで結実する、と品種も明らかにしないまま
「果樹の施設栽培:家の光協会」には、ある。未熟果を利用する品種と、一緒に
考えていいのだろうか。

  沖縄のマンゴーはどうしてるのか私にはわからないが、いずれ高さ 20m にもなり
樹齢100年以上も生きるはずである。営利栽培という常識上、いずれは更新される
にせよ、沖縄のマンゴーさん達には是非、達者で美味しい実をつけ続けて欲しいし、
日本という市場の中で生き残って欲しい。というわけで、こんなところから声援を
贈るものなのである。見かけたら、1コ食べてみてねっ。(^0^)/

  ところで、マンゴーが佳境に入ってるのは、うちでは夫だけなのである。
マンゴーはウルシ科、だからなのだろうか、食べるとそこはかとなくかぶれて
しまうのである、私。今年もマンゴーの誘惑に耐えきれず食べて、かぶれが
佳境に入っているのである、私。悔しいのである、私。トホホ。
でも、あまりにうまいので、毎年1コ食べてはかぶれているのである、私。
今年もおいしかったわ。ええ。本当だったら。愛ってば、後悔しないことなのよ。
うわー、古い。