誕生日がきて

1年ぶりに誕生日が来た。
なーんちゃって、通常、誕生日ってのは1年に一度めぐってくるものである。
が、だからなんだというのか。私の周囲におけるここ最近の「誕生日」というものは、
自分がまた一つ年をとったことを呪う日、のようになっていて、これ、とんでもない
間違いである。

誕生日は、生まれてきたことを祝う日なのだ。それならば、毎日が誕生日でも
良いではないか。すると私は一体いくつ?なんて話はともかくとして、呪うよりは
さっさと楽しむことを考える方が早いに決っている。(;^^)/←ちょっと強引?

「私が生まれたことを祝いなさい。どーだ、私が生まれてきて良かっただろう?」
って、ここまで言う奴もそうそういないと思うが、「わかったわかった」と言って
くれる人がいるのをもっけの幸い、プレゼントは宅急便で届き、その夜は食事に
行くこととなる。

一応、しちゅえーしょんというものがあるので、いつもとは違う姿をして行くの
だが、しかし、行く店はいつものビストロ。その店への全幅の信頼は、このような
形でハネ返って来るのだった。だが、オシャレしていくとマダムが喜んでくれる。
他の客は驚く。しかし、一度これをやってしまうと次からは落とせなくなって困る、
なんてのは別の話。

家を出るときポストに入ってた友達からの手紙を読みながら夫を待つ。
「城下カレイに比べればフグなんざ比べ物にならない!」とまで書いてくれるのは
いいが、これからフランス料理食べるという時に、変な巡り合わせかもしんない。
でもま、いっか。余計にお腹すいたような気がするし。

ほどなく、夫到着。席は既に半分埋まっていたが、それからはお客が続々と入って
きて、あっという間にすべての席が埋まった。この店とは、客が来なくて主が
煮詰まってた頃からのつきあいだが、何と言う様変わりだろうか。
主、忙しそうだから、代わりにうれし泣きを・・あ、そのパテ、も少し厚めに・・

どの席の客も、料理も楽しんでいるがそれ以上に会話を楽しんでいる。若かろうが
年長だろうが、その調子に一つの下品なところもなく、いい客層にも恵まれたんだ
なあとうれしくなる。あ、サラダ、もうひときれ多めに・・

と。店のドアが開いて、スーツを着た銀髪の西洋人紳士が入ってきた。
「ホテルから場所を聞いてやってきた。」とのことだが、英語である。
この人ってば一体何者?外国に行ったこの年齢の西洋人ってホテルでゴハン食べる
とばかり思っていた。

既に店は満席である。急遽カウンターを整理、そこに座らされた。
主が英語でメニューの説明をする。やがて西洋人は、箸を使って食べ始めたが、
「魚介類が好きで」なんぞと言っている。あら、ほんまもんの旅行者?でも、地元で
ない西洋人(変な言い方だが金沢にはいくらでもいる)が、たった一人でこんな
ところまで来たのって、初めて見たんである。

兼六園の坂を茶髪や金髪の、しかし体型的に難があるダサい集団(余計なお世話
ですね)が歩いているなあと思ってたら、ほんまもんの西洋人団体様だった
ことはある。髪は黒いが、なーんか違うなあと思いつつ道で追い越そうとしたら
中国人一家だったこともある。でも、たった一人というのは珍しい。
金沢の、何が目当てがここにいるのだろうか?

そのうち、カウンターの隣に座っていた若いカップルの男の子の方が何やら彼と
会話を始めた。おかげで盗み聞きしたり夫と別の話をしたりで、楽しい食事となる。
が、その後最後まで店に残ったのも、紳士と我々と、その若いカップルだった。

店のお得意らしい若いカップルとは、こうなると身内のような気分で、雑談ついで
に、いまいちわからなかったことを聞き出してしまう。それによると、かの紳士は
O.E.C.D.関連の仕事をしていたがこのほどリタイアし、日本三大庭園を訪ねて
旅行中、なんだとのことであった。ほほう、庭目当てか。

で、何で彼はここまでたどりついちゃったわけ?
彼が持ってるのは「JAPAN」というタイトルの見覚えがある旅行ガイドブックだった。
それはDK、つまり英国の「DORLING KINDERSLEY」社のやつで、うちには同じ会社の
「LONDON」がある。

たかだか店を出して 2年半のこの店が、そのガイドブックに載っている。何故この
ガイドブックに載るのか。何か覚えがあるのか?

主によれば、以前イギリス人女性がやってきて根掘り葉掘り聞いていったそうで、
多分あれだろうとのこと。彼は仏語と英語を操るから、その点でも載せるには相応
しいけど、それではそのイギリス人女性にこの店を教えたのは誰かと言えば、それは
わからない・・。

イギリス人紳士は、ホテルからバスに乗ってやってきて、またバスに乗って
ホテルに帰って行った。ホテルは駅前の日航か全日空だとして、ここから5ポンド
ほどなのに、とは多分その場にいた全員が思ったであろう。←何故かポンドに換算
してあげるあたりが、笑える。

それにしても、なんでこんな時期に来るかなあ、兼六園だから松だけ見に来たか
なあ、もしかして、雪吊り目当てか?だったら、5人扶持の松は唐崎の松よりすごい
んだけどなあ、夏なら夏で、兼六園の苔もきれいなのになあ、梅だってまだなのに
なあ、兼六園にはそこしかない有名な桜だってあるのになあ、もう少しすれば能登の
方ではミスミソウが自生地で咲くのになあ、そこまで行かなくとも、ショウジョウ
バカマにカタクリにエンゴサクにクサボタンにツリフネソウにアキチョウジに、
コンニャクの花だって彼らにしてみりゃ感動モノだが、花だけじゃなくって、シダ
だっていいのにねえ。

通りすがりの彼は、かわいそうだなあ。ここまで来るなら、いっそ3年くらい
暮させてあげたいもんだよなあって、一人盛り上がれる私は、結果的にここで随分
イイ思いをしてきたことに、気がつく。(^^;)

家に帰ったら、DKの本が何冊もあることがわかった。
旅行案内書と言ったところで、私の持ってる LONDON は図解の多い絵本みたいなもの
で、他にはハーブの本なんかも。逆か、絵や図解が多くてきれいでとっつきやすい
本だからこそ、私が持っているのだ〜。(^^;)

今では日本版も出ている 「CROSS SECTIONS」もDK社のぶんがある。
これはけっこー有名な絵本で、何かのおりに九州に住む植木屋さんの知人も持って
いることを知って、なんかうれしかったことまで思い出した。



いろんなことが重なって、良い誕生日となった。
蒔かぬ種は生えぬ、とは言うが、生きてること、行動することが種子を撒くことに
なるのを自覚し、なお、気がつくことがなければ何の収穫も得られない。
というわけで、毎日、生きていることを祝えますように。