晩春の金沢食料事情

  転勤があるとばかり思っていた。
しかし、昨日の時点ではっきりしてしまった。残留、である。
少なくともあと1年はここを離れなくて済むし、あと1年はここに縛り付けられる
ことになる。どっちでもいいと思わせる金沢ではない。どっちも嫌と思わせて
くれる金沢なのだ。離れるのも嫌、一緒にいるのも嫌。いやあ、濃いねえ。

  昨日は久しぶりに食事に行った。「あまつぼ」。「いたる」でもよかったが、
ちょっと時間が遅すぎた。「あまつぼ」も「しゃもじ屋」も食べ物もさりながら、客扱い
がいい。「しゃもじ屋」は私の基準としては食べ物の量が少なめだが、それは考えよう
で、観光客としてアレもコレも食べてみたいというときにはその方が救いとなる。

  その日はあまつぼで「立山」飲みながら、あんきも煮、岩牡蠣、ホタルイカの沖漬け
などが肴。まだ岩牡蠣は出始めたところで、小さいし、「若い」という感じがある。
夏になってからまた行くか。ビール券ももらったことだし。ふふふ。

  冬の間は白子焼きに寒ブリなんか食べていたけど、春なら春で全然違うお楽しみが
ある。山菜の天ぷらはお約束だが、もう少し前ならもっと美味しく感じたことだ
ろう。この土地ならではの季節の食べ物を精一杯楽しむのも、宿題としよう。

  しかし、何故「立山」か。「手取川」でも「菊姫」でも「萬歳楽」でもいいはずなのに。
近所の酒屋の奥さんによれば、ある日ご主人が配達から帰って来たら、自分んちの
塀に、立山ばかりが5本、のっかってたそうである。泥棒が倉庫に入り込んで塀の上
に酒を載せ、さて道の方にまわってお酒をいただいて帰ろうかとしたらご主人が
帰ってきてしまったので、逃げたらしい。残ったのは、塀の上の立山。

  ワインもお酒も泡盛も、いくらでも銘柄がある。どれにしようかと言ったところで
全てを試すわけにもいかず、普通は甘いか辛いか、それから名前の良し悪しとか
思いいれとか、そんなことから選択されるのだろうと思う。

  「菊姫」を飲んでもいい。「萬歳楽」でもいい。しかし、その「立山」ばかりをもって
行こうとした泥棒の話は頭から離れがたく、おかげで「お酒、何がありますか」と
聞いてその中に「立山」が入っていれば、「それじゃ、立山。」と言ってしまうのだ。

  一度秋田で「太平山」を飲んだ。秋田の知人は「あんなの、そのへんにある酒だよ?」
と余計なことを言ってくれたが、その時はうまかった。買って東京に送ったが、
東京ではたいして美味しくなかった。なるほどこういうことかと思った。

  これでいくと多分、東京で飲む菊姫も萬歳楽も手取川も立山も、おいしくない。
それじゃどうするか。ここにいる間に、がんがん飲むしかない。はっはっは。

  つい最近、鯛が豊漁だそうで、安かった。先日私はそこそこの鯛を1尾まるごと
720円で買って台所をウロコだらけにしたのだが、翌日また夫が近江市場から
1尾買ってきたのには驚いた。「1000円だったぞ。観光客が安さに驚くなか、その
前で3枚におろしてくださいって言うの、気持ちよかったなあ。」ってアンタ・・。

  「2日続けて鯛食うか?普通?」と言ったら、「毎日でもいいじゃないか。」だって。
毎日鯛で、いいわけないだろうが!鯛だって B級グルメ扱いされて、どんなに悔し
かろうか。まったくもう。でも、美味しく食べた。めで鯛。

  金沢ならではの食もそうだが、中華の方も相変わらずである。
今、私はメニュー作りのお手伝いをしている。いや、とうに出来てはいたのだが、
不完全だったのだ。漢字の新字を使って、実にわけのわからんものになっている。

  ダンナの奴は「誰もこれに対して言わないなら、おれたちが手伝うしかないじゃ
ないか!」と言ったが、こいつが一人称複数形で言うときは、結果的には二人称単数
が働くことになるのだ。

  メニューは、よくみれば海鮮も肉も野菜も豆腐もちゃんとまとまっているのだが、
その旨書いてない。これでは、「魚と肉の他に、野菜料理もいただきましょうか?」
といった流れにならない。いや、普通の人がそうやってメニューを決めているか
どうかは知らないんだけどさ。

  そして、4人集まれば、1人くらいは「本格」中華なんてコワイ、という人がいる。
麻婆豆腐や酢豚はマスターがラーメン同様嫌うメニューだが、だからってそういう
人を腹ペコで帰していいのかと言えば、いいわけがない。他とダブっても、
「おなじみメニュー」というコーナーを作るべきだ。

  お馴染み料理に関しては、出来れば「ここまで来てこれを食うか?しかし、美味い
のだ。おかげでどうしても、中華を知らない一般ピープルを卒業できない。」ってな
キャプション入れたい。入れたいがしかし、やめとくべきだろうな。惜しい。

  そんなこんなで、あと1年。(多分。)
やろうと思ったことを、端から片づけようと思い立った今日この頃。
何でも、受けて立とう。せっかくここにいるのだから。