ビストロ版:碧羅 (その2)

  私の書き方は実に素っ気無く、しかも飛躍に富みすぎていて、前提条件山ほどでも
あり、わからない人には全くわからないはずであるとは言われていた。
で、そこまで言ってくれるならと、一番わかりにくいかもしれないこれを書き直して
みた。(ちょっと遊びも ^^;)なにかすっぽ抜けてたら質問はメールでよろしく。
知らないことは知らないとはっきり言いますから、大丈夫でえす。

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  それは1年以上前のことだった。
私は例のごとく何か食べようと思って歩いていたが、某交差点近くに新しい
ヨコメシ系の店を見つけ、そこに入ることにした。今は外食といえば和食系にばかり
傾いている。が、当時は金沢はそこそこの都会なのだから、ヨコメシだってそこそこ
のがあるのではないかと思って探していたのである。

  そこそことはどういうのかと言えば、パリのビストロのような店だ。
前菜から始まってスープに魚も肉もというやつでなしに、前菜とメイン(肉 or 魚)
とデザートだけで、出来れば日本人サイズで少量にしてなくて、美味しいものを
心ゆくまで、そして、季節感あり、なおかつお値段お手頃。(^^;)

  これは、結局、金沢においては割烹こそがビストロであり、ここまで来ちゃった
なら、カニ(神保町の井上さん、今は北海道のズワイしかありません。秋口に来て)
だの鯛だの岩牡蠣だのをおとなしく食っておくのが正しいと気がつく前の話であり、
その後日談でもあった。

  その日入ってみた店はビストロというよりはカフェのような外見で、さすがに
椅子がすべて道路を向いて置いてあるなんてことはないけど、白い文字で何やら
フランス語を書き散らしてあるだけのガラス張りだった。

  遅くまで街にいるのはいやなので、早めにお店に入った。その日、何を食べた
かは覚えていない。覚えているのは、3種類の小さな塩だけ。「お好みで使ってくだ
さい。」とハンサムな店主は言うが、そうは言われてもこのラベル、フランス語。
1つは岩塩で、他は、ハーブ入り??他はなんだったか??もう忘れている。

  わからなければなめてみる、というのが正しいと私は思う。思うがしかし、
こういう場所で実行する勇気のある人は少ない。もちろん、わからなかったから
持って帰って来ちゃった〜、なんていう恥ずかしい人もいないだろう。多分。

  店の主人は、受けを狙って塩を揃えたわけではなく、多分こいつに「しゅくれって
なに?」と聞いたら「シュクレですけど??」という答えが返ってくるに違いない。
こないだ入った店で「すすだけ煮って何?」と聞いたら「すすだけ(竹)だけど?」と答
えてくれて。ええ、そういう感じ。(確か「しゅくれ」は砂糖だった??塩は忘れた)

  (・・関係ないけど、岩塩があるところって、植物が全く生えてなかったりする
のかしら。見たことないからわかんないけど。)

  食事のあと、店の主人と立ち話となった。
彼は東京で修行して、海外にも行って来たらしかった。それで私はつい、パリで
食べた料理の話をし、「ここの客はそんなの承知しません。」と言われてしまうのだ
った。もちろん、「だからやっても無駄!」というのではなく、彼の結論は「自分は
これから客を教育しなければならないのです」というものだった。

  実際、金沢にも、年に一度従業員全員でイタリアに行く店がある。
しかしその店で、「東京から転勤して来た」と言ったら、「東京には色々な店があるの
でしょうね。」と暗い顔で言われたものである。存在するのは店だけではなく、
客、でもあるのだが。

  実際は、イタリアに行けば行くほど、彼らも辛くなったに違いない。
彼らは、イタリアで、イタリア料理店をやってるわけではない。立場としては、
ミラノとかフィレンツェで日本食レストランやってるのと同じなのである。生魚を
イタリア人が嫌がるのと同じで、金沢市民にとってはチーズは臭いし、油は必要な
調味料ではなくて、ゲテゲテした歓迎すべからざるものなのだ。

  それはともかくとして、ビストロの店主の話は、料理の話から始まって個人的な話
にまでなってしまった。これはけっこートホホな話だ。私の顔には、「相談事受け付け
ます。飲食関係、尚可」と書いてあったに違いなかった。誰かこの文字、消して。

  一見の客にそこまで話されても迷惑以外の何ものでもないのだが、余程辛かった
のだろう。おかげで私はその日から店の前を通るたびに、店に入ることも出来ず、
さりとて無視も出来ず、とりあえず客が入っているかどうか、そっとのぞき込むこと
になったのである。ちくしょー。一体どんな店になるのか。それとも、潰れるのか。

  それから1年以上経って、何か食べて帰ろうという日に、ふと思い出した。
いくらなんでもほとぼりが冷めたころではないか。しかし、そうっと店に入った
とたん、歓迎されてしまったのである。

  料理は、たいして変わっていなかった。あの日は黒板に書かれたなかから選んだ
が、今回は「おまかせ」とやらにした。前菜が8種類もついている。大体のところは
例の如くだなーと思いつつ食っていたところに登場したのは、豆のサラダ。

  懐かしい。初めてパリに行ったとき、私はレンズ豆のサラダを食べてお腹こわし
たんである。(腹こわしたのも、楽しい旅の想い出さ!)パリは何もかも安くはなか
ったが、その代わり出しただけのものは提供してくれた。レンズ豆は前菜のくせに
大量で、負けるものかと食べ続けたせいで、私はお腹をこわしたのである。トホホ。

  食事の終わり頃、彼は食事の感想を聞きに来た。
豆のサラダが悪かった。がっぽりと飲んでたワインも悪かった。
つまり、私はとっても機嫌が良くなっていたのである。

  ほめたほめた、豆のサラダもさりながらグレープフルーツとカニのサラダも
誉めた。久しぶりの、料理に使われた生クリームだと思って感動したのだが、それは
サワークリームだとのことだった。敵さんはそう訂正する声もうれしそうだった。
私はと言えば、訂正されてもうれしかった。なんせ美味しかったもんで。(T^T)

  それから、前回に書いた通り、店主の話は、勝手に回想に入っていくのである。

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              ・・・かいそう。

  デザートについたコーヒーが冷めるので、私はなんとかして彼を遠ざけたかった。
やっと行ってくれたあと口にしたデザートは、非常に繊細なものだった。そういえ
ば、専門はパティシエだと言ってたんのを思い出した。口中で、えっ!というほど
すかっと溶けていくメレンゲに驚きながらお勘定を支払って帰った。

  お勘定のときに渡されるメレンゲ。前回も出たんだけど、その時はメレンゲかー、
な〜んて馬鹿にして食べなかった。あんとき食っときゃ良かったなあ、なんぞと
1年前のことを後悔したワタシ。馬鹿ですなあ。

  次は、出来ればもっとお客さんがいるときに入って、安穏と食事をしたいと
思った。お店がもっとはやりますように。私がお勘定に行く頃には厨房が大忙しに
なってますように。でも誰もそんなふうには思わないらしい。何故だ?
そのへんが、私にはよくわからない。

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  一番理解しがたく思われるのは、ここまで意地汚くなれる理由、かもしれない。
ついでに言えば、良いお店がないところに住んでこそ、私の料理のレパートリーは
増えてきた。最近停滞しているのはいいことなのかそれとも・・・?