「子どもがかわいそう」って、ほんとなの?〜別姓夫婦の子どもたちのアンケート調査結果概要〜
すすめよう! 民法改正ネットワーク(38 団体)
1 はじめに:調査の意図
国会で議論が進んでいる選択的夫婦別姓だが、本年の臨時国会では、夫婦別姓選択制など民法改正は成立しなかった。本年8月には、5年ぶりに夫婦別姓選択制については世論調査が発表され、夫婦別姓に賛成が反対を大きく上回った。しかし、「夫婦の名字が違うと子どもへの好ましくない影響がある」と答えた人も、依然として66.0%だった。こういった数字を論拠に、夫婦別姓選択制に対しては、「別姓にすると子どもがかわいそう」という反対論も散見される。本当に別姓夫婦の子どもたちはかわいそうなのだろうか。そこで、別姓夫婦を両親に持つ子どもたちに、「すすめよう!民法改正ネットワーク」がアンケート調査を行った。もちろん、この調査は社会学的調査に基づくものではない。しかし、故意に誘導するような質問は行っていないことをみていただきたい。客観的な研究機関がこうした調査に着手することを希望するが、そういった調査が行われるまでのあいだの資料として役立てていただきたい。
2 調査の方法
別紙のようなアンケート用紙をすすめよう!民法改正ネットワークの参加団体にFAX、EMAIL等で配布し、参加団体の会員の子どもたちに書いてもらった。また、関連メディアからもアンケート回答者を紹介してもらった。9月中旬に配布、11月中旬に締め切った。
3 回答数、回答者、回答者の地域
調査の結果、33通の回答を得た。このうち、子ども本人の記入によるものは25通、親による代筆は、8通である。
回答者の年齢 4歳から、29歳まで 中心は、10歳から20歳。
回答者の地域 北海道から、宮城、茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、愛知、大阪、岐阜、兵庫、鳥取、福岡までに広範囲にわたっているが、関東が多い。
4 回答の概要、
■あなたは両親が別姓で何か困ったことよかったことがありましたか、友だちに何か言われたことがありますか
「別にない」(10歳男) 「別に何かあったことはありません」(17歳女) 「友だちに説明するのが少しめんどくさい」(12歳女) 「友だちになんで表札が二つあるのと聞かれたことがある」(9歳男) 「小学生のころはいちいち説明するのがめんどうだった」(23歳女) 「お母さんと連絡帳のサインが違うのがいやだったけど、今はちがってもいいと思うようになった」(8歳男) 「別に困ったことはない。友だちにかっこいいと言われた。私も名字を変わりたくない、と言われた」(14歳女) 「小さい頃はいやだった。友だちに質問攻めに会い、何か悪いことをしたようにこそこそしていた」(20歳女)
・・・困ったことが特にないという子どもが多く、次に友だちに説明するのに、めんどうだった子どもはいる。説明がめんどうだった子どもも、時間がたつにつれ、問題が解消しているようだ。また友だちから肯定的な反応も返ってきている。
■あなたは両親が別姓であることをどう思いますか
「ごく普通のこととして考えている」(17歳男) 「良いことだと思います」(不明) 「いいと思う」(10歳男 )「子どものころから別姓があたりまえで私にとってとても大切で大好きな父と母と妹です」(23歳女性)
・・・などという答えが多く、子どもたちが両親が別姓であることを自然に受けとめている様子が伺えた。
■名字がいっしょでないと家族のつながりがなくなるという意見がありますがどう思いますか
「どこからそんな発想が」(14歳女) 「(そういう考えが)疑問だと思う」(10歳女)「うちは、家族三人でべたべたしています」(10歳女) 「名字がいっしょでないだけで家族でないのなら、そんな家庭は名字がいっしょであっても幸せになれない」(17歳男) 「そんなこと、地球がなくなっても絶対ない」(不明) 「結婚する前だって、姓が別々で仲良くしているのに、結婚してから名字が別々でつながりがなくなるなんて、そんなことばかげているとおもいます。現にうちは仲がよい家族だと思います」(12歳女) 「子どもの頃から別姓が当たり前だと思っていたし、私にとってとても大切で、大好きな父と母と妹です」(23歳女) 「もともとうちの家族は一部仲がよくないので、同じでも違っても別にかわりありません。家族の仲がよければ、姓がちがっても仲がいいだろうし、仲が悪ければ姓が同じでも仲がわるいことに変わりはないと思います。つまり、つながりに、姓が同じ違うは関係ないと思います」(14歳女) 「名字が一緒でないと家族のつながりがなくなる」なんて、おかしな話やわ。そんなんやったら、自分の子供が結婚して名字が変わった瞬間に『これで赤の他人です』って家族の縁が切れるんかってかんじやわ。そんなこと普通ないし。あと、名字一緒の家族でも、家庭崩壊とか虐待とかになってるやん。そんな家族の方が、つながりないやろ!ってかんじやわ。それにムチャクチャゆうたら、名字なんか関係ないし、人間も動物も名前があったら十分や。ほんま、ショーもない意見やわ、別姓夫婦の家庭は全部ばらばらで、日本または世界中の別姓夫婦の家族が何万人と崩壊してるワ」(不明) 「うちの家は、きょうだいで名字がちがう。でも私は自分の名前が好きだし、きょうだいも好きだ。名前がちがっても我々は仲がいい。それよりも『甘えを変えたら子どもがかわいそうだ』なんていう意見はどうがんばっても理解できない。そんなことを吹き込まれる子どもの方がかわいそうだし、今の自分の名前ではない自分もかわいそうだ」(13歳男)
自由意見
▼将来結婚するときにどうするか
「お父さんとお母さんは、大学の時から、ずっと仲良しでけっこんしたあとも、お母さんが自分の名前を、変えたくないから、別姓にしているんだとお母さんはいつも、私や弟たちに言っているし、回りの人に聞かれたときも言っています。私も大人になって、結婚するとき、名前を変えたくないです」(10歳女) 「私はたとえ好きな人ができても、同姓にはしたくない。私の名字は長い歴史をもち、大切な私の先祖の思いをうけているのだ。そして、好きな人の名字にも歴史があり、先祖の思いがあるはずだ。それを、どちらかの名字に無理矢理変えるというのは、片方の今までの人生や歴史や先祖や、その人の人格を否定するのと同じだと思う。でも、一緒にしたい人がいるんなら、それはその人たちの自由だと思う。とがめることじゃない。ただ、私はいやなのだ」(15歳女) 「私も将来、人生を共にしたいと思う人ができても、自分の名字を捨てて、相手の名字に変えたくはありませんし、相手にも自分の名字に変えてほしいとは思いません。それは、相手の名字に変えてしまうことで、今までの自分を消されてしまうような黄がするからです」(23歳女)
▼家庭の中のことについて
「ぼくとお姉ちゃんは、学校から帰ったら、米をあらって、洗濯物をたたまなくては、なりません。けっこう子どもの役目が言われて困るんだけどお母さんはみんなで暮らしているんだから、やらなきゃなんないのって言います。・・・うちの暮らし方は、お手伝いのほかは、好きなので親が決めてやってることはそれでいいと思います」
5 回答から読み取れるもの
両親が別姓の子どもたちは、それほどの不利益を受けていない。友達に説明するのがめんどうだというのが一番多い意見だろう。一番嫌だったと答えている女性もこうしたことであり、時間とともに解消している。さらに、別姓についてはいいと思う、自然だと言う答えが多く、子どもたちが自然に受け止めている姿が浮かんだ。親から説明を受けている子どもがほとんどだと推測され、そのことを納得している様子が伺えた。
別姓だと家族のつながりがなくなるという意見をほとんどの子どもが否定していた。家族のつがなりと姓がいっしょであることは別のことだ、ということをいろいろな言い方で伝えようとしているが、それぞれが自分で考えた結論なのだろう。
将来別姓にしたい、と言う考えの子どもが10代後半から20代にかけて数人いた。こうした回答からも、別姓である両親について、子どもたちが肯定していることが読み取れた。
6 全体として
男女共同参画会議基本問題専門調査会が10月にまとめた「選択的夫婦別氏制度に関する審議の中間まとめ」には「周囲からの偏見を受けることで子どもが不利益をこうむるという懸念は(中略)制度に対する理解が広まるにつれ偏見は解消される」と述べ、「政府が制度の趣旨や意義について適切に広報活動を行うことが重要」としているとしている。本アンケート調査を見ても、別姓夫婦を両親に持つ子どもたちが、深刻な問題を抱えているというよりは、周囲に知られていないので、質問が来るという種類の「めんどう」であり、これは、法改正が実現し、適切な広報活動と教育活動により、問題とならなくなるのではないかという印象を受けた。さらに、これらの子どもたちが困難を抱えるかどうかは、両親の別姓そのものに由来するものではなく、周囲の理解による流動的なものであるので、本質的な問題とはいえないと思われた。こういったことを踏まえて、選択的夫婦別姓の論議をすすめていただきたいと願う。
2001年12月18日