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あどりぶ・寄席
エーッ、毎度ばかばかしいことは最初に、おことわりしておきます。
当初、ハテナのレコードに続いてビギナーに入れようと宿屋の仇討ちを書いていたら、ズイブンと長くなってしまって
これがいったい、なんになるのか自分でもわからないのだけれど、すこしでも笑っていただければと思ってアップ
してみました。タイトルも別段、意味がないのだけれど、うーんナニやっているんだろう?

         これまでのお題目。ただいま十席までは、お蔵入りしております。
その十三席・ ライヴは蔵で。(蔵丁稚、から)
その十二席 ・ モーニンてんつ。  (軒づけ、から)
その十一席 ・ 聴かせてやろうと云うのに。(寝床、から)
その十席 ・ レコード投げ。(愛宕山、から)
その九席 ・ はてなのレコード。(はてなの茶碗、から)
その八席 ・ 身代わりふとん。(吹き替えむすこ、から)
その七席 ・ 無茶苦茶の湯。(茶の湯、から)
その六席 ・ 泥棒の災難。(仏師屋盗人、から)
その五席 ・ 知っていやがった。(ねこの茶わん、から)
その四席 ・ 仏壇の唄(たちぎれ、から)
その三席 ・ 名盤の釘ざし(そこつの釘、から)
その二席・カレハックション?? (くしゃみ講釈、から)
その一席・JAZZ.HOTELの仇討ち (宿屋の仇討ち、から)

※誤字脱字があれば管理人まで、お知らせ下されば助かります。宜しくです。



その十四席・拍手がこわい(饅頭こわい、から)


人が沢山集まりますと色んな方が居られるもので、十人十色と言われるように
好みも違えば、好きに嫌い、苦手に不得意、濃いに薄いに・・・まっ、それぞれの
違いがあるものでして。
同じ方が同じ話で時間を過ごしても新しい発見なんてものは中々望めません。
で、気性の違う連中が集まっての、これからが話でございます。

「まぁ、酒呑むかって一声かけたら、こないに大勢来るもんやなぁ」
「ところで、今夜の話題は?」
「さいな、先月のライヴの後に呑んだときに決めてあったやろ、」
「先月ともなると覚えて無いのが、私の得意」
「そないな得意があってたまるかって」
「思いだそーとしても出てこない」
「まぁ忘れたンなら仕方が無いわなぁ、ところで」
「さいな、ところで」
「忘れたお前さんが調子のええ相づち打ちないな」
「なぁ、旦那さん、そないなイケズ言わんと、はよー教えておくれやす」
「おっと、本題本題、実は今日の話題やが、あんたの好みはナベサダが一番でっしゃろ?」
「はぁぁぁ〜〜〜ぃぃぃ」
「これまたノリのええ返事でおますなぁ、それでもって、こっちの方はナベサダは二番の好み」
「そうでおます、一番はなんと言っても、ヒノテルでごわす。」
「あんたはんは両雄ビッグの片割れが好みなんでおますか」
「おいどんは薩摩の生まれでごわす」
「それが、いったい何の関係がおますねんや?」
「わいの一番は、なんちゅーてもタケキヨでっせ。」
「そやったなぁ、あんたはホースやキースで酒呑んでるんやったなぁ」
「あの演奏前に、ボロンボローーーンと弾きながら音の入り口を手繰り寄せる、あれがええ」
「そや、なんちゅーても人が良さそうで」
「で、あんたはんは、どなたが好みで?」
「わしは、なんちゅーても白羽大介」
「それは古い吉本の芸人やがな」
「あのスネタ仕種が、色っぽくてゾクゾクして・・・」
「オモシロクはあるけれど、ゾクゾクって気味の悪い言い方でっせ」
「そんなこと言うたら、いゃ〜〜ン、いゃ〜〜〜ン」
「・・・・それは別人でんがな、寂しい末路で気の毒な」
「そこの後ろに居る、あんた、好みはなんでございます?」
「拙者か・・・拙者は、おぼろ月夜が好きでござる」
「ぉぃぉぃ・・・変なのが居るで」
「おぼろ月夜の夜に独りふらふらと酔いに任せて夜道を歩くのでござる。」
「そら、気持ちがええことやろけど」
「多少は千鳥足、歩いていれば何やら脚に風呂敷き包みが当たりに候」
「落とし物でもあったんでっか?」
「さよう、怪しげなるこの包を紐解けば、小判に大判、金銀ザクザク溢れんばかり」
「そら凄い落とし物や、で・・それをどないしはったんで?」
「無礼者!拙者がネコババ致すとでも考えておるなら手打ちに致す!!」
「いえいえ、こらスイマヘン、あまりに予想外な出来事でおますから」
「む・・ついついと興奮いたした、許されよ。して、この包を奉行所に届け出致し、落し主が
現れんことをひたすら祈る」
「それだけの大金、落し主の身にもなったげなはれな」
「むむ・・・拙者、武士とは言えど日々の浪人生活に疲れ、ついこのような浅ましい考えに」
「それも無理はございません」
「失礼仕って、この場で切腹を致そうかと」
「切らんでええがな、誰でも大金は欲しいもんでっせ」
「左様か浅ましきは拙者だけではござらぬのか」
「あんたが腹切ったら、わてかて切らなあかんがな、いちいち気にせんときなはれ」
「かたじけない、拙者、感極まって泣けて来たでありんす」
「ありんすって、あんた・・ほんまにお侍さんでっか?」
「マイマザーが遊郭に勤めておったゆえに・・・」
「けったいな、お侍さんやで。それで、その包みはどないなりましてん?」
「どのようにも成らぬが、その落し主とやらが現れずに拙者のものになるのが一番好きでござる」
「そら、誰かて、そーやないか、そんな大層なものやのーて、ミュージシャンで誰が好きかって・・」
「それなら、牧シンジのウクレレが好きでごさる」
「あ〜〜あ〜〜いゃんになっちゃった、驚いた」
「そそ・・それでござる」
「あんた、もー帰ってもええわ、誰かおらんのかいな。へーーって驚くような」

なにが好きかという話も、色々でおますが
なにが怖いちゅーのも人それぞれで、これがまた面白いもので、こちらがナンデそんなものが怖いネン
と思いましても、誰かさんにしたら、これ以上の怖いものはない、また反対ってこともありますわなぁ。

「おーこれは今日は見掛けんなぁと思っていた、あんた、そー、そこのあんた」
「はい、ちょっと時間に後れまして、あいすみません」
「たしか、あんた・・・歌のヘレン・オチさんだしたなぁ」
「さいで、おます」
「いつもエエ声聞かせてくれて、有難うさんでおます」
「とんでもございません、リクエスト採用の際は一曲ゴマンエン」
「はっははは、おもろいひとやで」
「さいな」
「で、ヘレン・オチさんに尋ねまんねんけど、あなたの怖いものってなんだんねん?」
「いえいえ、別に怖いものなど・・・」
「えらい気丈夫なこと言いはりまっけど、何か一つはありまっしゃろ?」
「そないに膝詰めまでして聞かれると、無い事も無いンですけど、こればっかりは堪忍しとくれやす」
「いいや、堪忍なんかしまへんで、皆が寄り集まって自分の恥をさらしている場で一人逃げ様なんて
許しまへんでぇ〜〜言いなはれ言いなはれ」
「もーこればかりは口に出すのも怖い」
「あんたが、そないにまで怖がるとは余程のもんやな、ますます気になりまんがな」
「皆さんに注目して頂いておりますさかいに・・・言わんわけには参りまへんなぁ・・実は・・」
「さいな・・・実は・・・」
「拍手が怖い」
「拍手って、あの登場のときや歌い終わるときのハクシュで?」
「わーーー、それ聞いただけでも怖くて怖くて」
「そら、あんたも毎日の努力が、お客さんの拍手で天国と地獄の違いを肌で直に判るさかいに」
「さいな、お客さんは正直で、今日は明日はって毎日が真剣勝負のステージですよって」
「そら体調の出来不出来で、たまには不調なときもあるやろし」
「わて、拍手と口にしただけで寒気がしてきて、お先に失礼します、どーぞ宜しゅぅに」

と、ヘレン・オチさんが帰って行ったのを見届けて、旦那さんが皆を前に
「板の下は地獄なんていう厳しい世界で生きているさかいに、拍手の反応には敏感になっている
ンでっしゃろな、どないだ、これから彼女の家に皆で行って練習の声を聴きながら盛大な拍手で
元気付けしてあげようと思いまんねんやが・・・」
「そら、良ろしおまんがな、やりましょやりましょ」
「最初は少なくやで・・・・そしたら彼女も、こらガンバラナと、もっとよぉーなるやろ」

皆さん、ヘレン・オチさんの家の前に集合しまして、窓から洩れる練習の声を聴きながら
少しや沢山やの拍手をしましたところ・・・・いやに静かになりまして
「おい、どないしたんやろ・・・歌声が聞えんようになったがな」
「怖い拍手で元気無くしたんやろか?」
「トイレかもしれへんで、トイレに入ると携帯が鳴るって言うてたし」
「姿も見えんし、歌ってる時でないと拍手したって、拍子抜けやしなぁ」
「どないしたんか・・あんさんチョット家の中を見て来ておくれやす」

で、使いのモンが家の中を覗きまして様子を見ると、ヘレン・オチさんスネークマンショーのCDを
聴きながら、出入り橋の金つばを食べながら大笑いしてはりまんがな
その様子を見て使いのモンが
「さっきの拍手で歌うの止めはったんですか?流石によほど怖いようでおますなぁ」

「いいえ、もっと怖いものがありますねん」
「それはなんでおます?」
「沢山の御祝儀が怖い」


その十三席・ライヴは蔵で(蔵丁稚、から)

一年は早いもので葉月の夏の真っ盛りを越えまして長月神無月に霜月と下って、いよいよの師走。
この頃になりますと何は無くとも忠臣蔵を語らずして日本の正月は来ないと言われるほどに一年の
厄払いのように流す涙の物語でございます。

「定吉は未だ帰らんか?ン帰った、ほたら、こっちへ通しなはれ」
「へい、旦さん、えらい遅ぉなりまして」
「おまえさん、いったい今迄、何処へ行ってはったんでおます?」
「旦さんの、お使いで島之内の田中屋はんまで行っておりました」
「出て行ったんは何時でおます?」
「朝の10時前くらいでおましたやろか・・」
「で・・・いま何時で?」
「へい、もぅかれこれ夕刻の五時くらいかと」
「船場から島之内まで用事があって、なんでそないに時間がかかるんでおます?」
「それが旦さん、向こうへ行って、あちらさんの返事を待たされまして遅ぉなったんで」
「あぁ、そうか・・・して、そのお返事は?」
「いまうちの旦那様が留守致しておりますので帰りましたら、こちらから返事に伺います」
「それから?」
「それで終いでんねん」
「たった、それだけの返事で今までかかったと言うことは・・・・」
「さの言うことにゃ」
「合わさんでも宜しおまっしゃろが、おまえさん・・・はははは〜〜ん、ライヴでんな」
「違いまんがな、そんなライヴなんて見てはおまへん」
「隠してもアカン、さいぜん向かいの方が来て、お宅の定吉はんを曾根崎で見掛けたと聞きましたで」
「ちがいまんねん」
「違うって、船場から曾根崎と島之内とでは方角が反対やおまへんか、ライヴに行っていたに違いない」

「それでは白状しまっけど、行く途中で、お母さんとバッタリ出会いましてな、何処へ行きなさると問いま
したら、千日前の法善寺の水掛不動さんに、お参りしてお百度踏むって言いますよってに、なんでそな
いなことしまんねん、と問いますと去年の暮れから、お父っあんが腰が抜けたように外へも出られへん

車引きですやろ、それでは飯の食い上げでおます、どーか良くなるようにと願懸けすると言いまっさかい
それでは一緒に行くと言いますと、お前さんは旦那様に仕える奉公の身、おツトメに支障があっては困る
って言いましてんけど、旦那さまには、此れ此れ然々と説明して堪忍して貰いますよってにと言いまして
一緒にお参りしてましたんでおます」

「ほほーーそういう訳でおますか、それやったら私も納得できる話しや」
「そーでおますやろ」
「去年の暮れから寝たきりでおますのか?」
「へい、さいでおます」
「なら盆の頃に、うちの定吉が御世話になりますと挨拶に見えた方は、あれはいったい誰でおますねん?」
「さぁ・・・・誰でおまっしゃろ」
「なぶってるんや、おまへんで、これ!ええ加減な事を言いなさって、またライヴに行ってたんやろ!」
「行ってまへんがな、旦那様はなんぞと言うたらライヴへ行ったやろって申されますが、わてライヴ嫌いで
おまんねん」
「お前さん、ライヴ狂いと思ってましたけど、へー嫌いでおましたか」

「そらも〜わて、ライヴなんて大嫌いでおます、ライヴと聞いただけでも眩暈しますよってに」
「へーそーでおますか、えらいライヴが嫌いでおますねんな、そらええこと聞いた、実は佐助はんが来てな
あまりにも楽しそうにライヴの話しをするもんやさかい、わても長い間行ったこと無いから明日にでも行こう
かと思ったところや、この際やさかい店のものを連れて行くんで留守番を誰にして貰うおうかと思案してたんで
おますがな、お前さんが其れほどライヴが嫌いやったら丁度ええ、明日の留守番をして貰いまっさかい」

「あぁ、さよか、それならわたいも、お弁当持って付いて行きます」
「いやいや、弁当もついてのライヴやさかい持っていかんでも宜しおますよってに」
「・・わて、坊んのお守りに」
「坊んのお守りは乳母がおりますよってに、お前さんは来んでもええ」
「ほな・・・わて履き物の番にでも」
「履き物を代えたりしまっかいな、嫌いなものに連れて行って眩暈でも起こされたら叶わんさかいに
店の留守番宜しゅ〜〜ぅ、頼みます土産は必ず買うて来るさかいにな、佐助はんも言うてたけど今度の
ライヴはええそーな芝居で言うたら忠臣蔵の五段目みたいやそうで、途中からやなしに全部聴けると思
うと、わくわくして来まんなぁ
あれに出てくる猪、前足を川嶋哲郎がやって後ろ足を今売出し評判の野瀬栄進、こら日本一の猪でおま
んがな」

「旦はん何をアホなこと言うてまんねん、あの猪は前座のアマチュアがやりまんねんで一流のミュージシャン
が、かぶりものなんかしますかいな」
「お前さん、そんなこと言うけどな、野瀬のHPの画像見てみ、力哉ちゅーのが乳にお猪口をくっ付けたりして
結構笑わせまんで、あの方も超一流やおまへんか」
「旦さん、判ったように言いまっけど、佐助はんに聞いただけでおまっしゃろ、わては現に今見てきたんでっせ」

「それみなされ、どうせこんな事やろと思ぅとりました、わしかて猪を一人でするくらい判ってますがな、うまい事
引っ掛かって白状しなはったなぁ」
「あぁ〜しもた・・はかる、はかると思いしに、かえって茶瓶にはかられた〜〜〜」
「何を言いくさる、さぁこっちへ来い、我慢にもほどがおます、今日はお仕置きに蔵の中にほりこんでやる」

「わー堪忍しとくれやす旦さ〜ん、、あのわたい今度の日曜にはアマチュア楽団のお披露目がありまんねん、
これから練習しとーおますよってに、それだけは御勘弁を、それさえ済めば蔵でもお嬢さんの床にも入ります
よって」
「あんさん風呂にでも入るような口調で言うてくさる、さぁーこっちへ来い」

ダダをこねて嫌がる丁稚の定吉を、旦那さんが引っ張り込んで蔵の中へ閉じ込めます。

「旦那さま〜練習だけはさせておくれやす、せっかく楽しみ見つけて今日まで頑張って来たんでっさかいーっ
この蔵、夜になったらタヌキが出るって噂でっせ、狸が出て来て相撲とろなんて言うらしいやおまへんか、
わて狸と相撲取るの嫌やで、どーでも入らないかんのやったら、せめて今日の練習だけはさせておくれやす〜
今日の練習さえさせて貰ろーたら、おとなしゅー入っとりますよってに・・・なーーーも〜〜〜し・・・・あ〜〜〜〜

誰も居てへんのか返事も無いで、次第と暗ろーなってきたがな、えらいことしたなぁ・・・ライヴが盛り上がって・・
最後が終ったときに急いで帰ったらよかった、ほたら横に居たおじいさんが、アンタえらくJAZZが好きやねんな
この後のアンコールを見て行きなはれ、これが評判のものらしいよってに、なんて言うもんやから、アンコール・・

それくらいやったら直ぐに終るやろと思ったのが間違いやった・・・評判のアンコール、芝居で例えたら忠臣蔵の
六段目やがな、大名と武士のまた腹の切りようが違う、同じ役者が腹切り分ける、ここを見てやらんとミュージシ
ャンが可哀相や・・・なて上手いこと言うもんやから、ついうかうか〜〜〜と聴いてしもうた、腹へってくるしトイレ
も行きたいのに我慢して帰ってきたら、この始末や・・・あーーーー旦那さま〜〜〜〜〜」

蔵の中に閉じ込められた佐吉どん、腹が減って叫んでも誰も返事が無い、日が暮れてくるのに寂しい思いをして
おります。
「あーまさか、こないな事になるとは思いもせずで聴いたけど六段目みたいなところ今ひとつやたなぁ、
どっちかと言うと四段目みたいなところがええなー、なんべん聴いてもああいうところが好きやなぁ、
身うちがしまるな、昔は通さん場ちゅーて、あの幕が開いたら誰も出入りを差し止めたらしいなぁ、
それだけの値打ちはあるわ、JAZZが分からんちゅー方に誰でも知ってる忠臣蔵の話しで例えると、
ちょっとでもJAZZが知られるかと思って説明するとや、
あの長い長い一幕、下座を使わずに、チョボの三味線一本でもたせるという立派なもんや、

幕が開くと塩谷判官館の場、
上手に上使が二人、石堂右馬之丞と薬師寺次郎左衛門、石堂ちゅうのはエエおっさんやけど、薬師寺は憎
たらしいなぁ、あれ赤くて恐い顔やがな、・・・判官さんが、そこへスーっと出て来て、チンと座る。
これはこれは御上使とあって、石堂殿薬師寺殿、お役目ご苦労に存じ候、何は無くとも御酒一献、・・・
ちゅーたら薬師寺が、何御酒、それはよかろう。
この薬師寺、お相手仕る。・・・が、今日上使の趣き聞かれなば、御酒も喉へは通りますまい。
ダァアッハッハッハーーー・・・・憎たらしそうに、こいつが笑うんやなぁ。石堂がこれをこう制して・・・・
懐から書き付けを取り出す。ツーーっと開く、「上意」と声がかかる。判官さんそれへ、ピターっと平伏しはるんや。

{一つ此度、伯州の城主塩谷判官高貞儀、場所柄日柄もわきまえず、私の宿意をもって高ノ武蔵守に刃傷に
及びし段、科軽からず、国郡没収の上、その身は切腹申しつくるものなり}{御上使の趣、慎んで承る上からは、
何はなくとも御酒一献}{これさ、これさ、判官殿、またしても御酒御酒と、自体此の度の科、しばり首にも及ぶ
べきところ、我が君の有り難き御情けで切腹仰せつけらるる上からは、早々用意しかるべきはず、見れば当世流
の長羽織、ゾベラゾベラとしめさるるは、判官殿には、ははぁ血迷うたな。
但し、狂気ほば召されたか}{身不肖なれども判官高貞。血迷いもせぬ、狂気も仕らん。今日上使と聞くよりも、
かくあらんことかねての覚悟。ご両所御覧下され}

すーっと着物を脱ぐと、下には真っ白、死に装束の用意が、ちゃーんと出来たぁる。諸士が二人出て来て、畳を
二枚裏返してその上へ白い布を敷く。四隅にシキビを立てる。その上へ判官さんがチーンと座ると、上手から力弥
が三方の上へ九寸五分をのせてしずしずと持って来る。
判官さんの前へ据えて下からずっと見上げる。上から見下ろす、眼と眼ぇぇぇ、いつまで経っても力弥が、ジィーっ
と見てるもんやさかい、行け・・行けと眼顔で知らすけど、力弥下からいやいやする。
三べん目にグーっと睨み付けられて、しおしおと立って下手へ控える。

石堂小膝打叩きという、チョボで、
{あっぱれなる御覚悟、感じ入ってござる。この期に及び申し置かるることあらば、また承る・・・・のもござろう}
と、力弥にかけて言う。
{この期に及んで申し残すこととてなけれど、ただ殿中にて刃傷のみぎり、本蔵とやらに抱き留められ、無念}
{ああ、いや、御用意よくば御心静かに}
デーーン、デーーンと床の三味線が雨だれというやつを、ドーンドーン。
それに合せて、肩衣をはねて、前へ十文字にこいつを、こう敷くのは、腹を切ったときに膝が崩れんようにとの用心
のためやそうな、着物を脱ぎ・・・・下着をひろげ・・・・お腹をずーーーっと・・・・。
{力弥、力弥}
{ははーーっ}
{由良の助は}
{未だ参上仕りませぬ}
{存生の対面せで、残念じゃと伝えい}
{はぁーーっ}
左手で九寸五分を取上げて、右手で三方を後ろへ回して、お尻の下へグーっと敷く
これは腹切ったときに膝が乱れんようにする為らしいですな、短刀を右手に持ち代えたら、もう口はきけんという。
左手に九寸五分を持ったまま
{力弥・・・力弥}
{ははっ}
{由良之助は}・・・・・・・力弥もぅ辛抱たまらん、お父つぁん、なんでこないに遅いネンと花道の付け際まで来て
{仕りませぬ〜〜}
{対面せで、無念と伝えぇいぃぃ}
{ははははぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ}
{御両所御覧下されい}
九寸五分を右手に持ちかえるなり左の脇腹、ツーーっと突き立てるのが切っ掛け。
花道の揚げ幕がサーーーっと開くと出てくるのが国家老の大星由良之助。
気は上擦ってしもたぁる。
袴の紐を結び結び、バタバタバタバタ〜〜〜〜〜〜っ
花道の七三まで来たところで{うへーーーーー}
石堂が膝を乗り出して
{おお、聞き及ぶ国家老、由良之助とはそのほうか、苦しゅうない近う〜近う〜っ}
{はははぁぁぁ}
喜んで由良之助が側へ行こうとしてヒョイとち見ると、御主君腹を召している。
{しもた}という思い入れがあって内懐に手を突っ込むなり腹帯をひとつ、グイーーーっと締め直すのが切っ掛け
床の三味線が、ツーン。つつ。ツン、ツン、ツン、ツっ、ツっ、ツっ、ツーーー。
{御前}
{・・・・由良之助か}
{ははぁ}
{待ち兼ねた・・・・・・・・}
ええとこやけど、だんだん、腹も減ったけど、やっぱり今度のライヴの練習が気になってきたがな。
わて練習もせんで出来るような才能なんかあれへんで、ああこんな時間が勿体無い、せめて楽譜の五線譜を
見ていたい、なぁ旦那さん、飯食わせて練習させとくなはれ、。
あっ、お清どん、一寸ちょっと。
握り飯でも作って持って来てぇなぁ〜〜〜アカン、知らん顔して行きよった。
ええわい、もーこーなったら頼まれても食うたれへん、食うたるかい、意地でも食えヘン。
ここで飢え死にして死んでもたるわ。
パァーっと世間に評判が立つぞぉ、立ったら新聞に載るぞぉ新聞に。
新聞記者ちゅーたら上手いこと書きよるさかい、横暴にして封建的な雇い主、才能ある使用人を餓死せしむる
とかなんとか書きよるで。
こら、そのときになって定吉さん頼むさかいにJAZZの練習してくれ言うても遅いぞ、今のうちや旦さん・・・・
なぁ、せめて課題曲の譜面だけでも見せてぇなぁ・・・・あー腹も減ったなー、芝居の真似してたら腹へってる事も
今度のライヴのことも忘れるのや・・・そや芝居の真似してよ。
この倉には色んなもんがあるさかいに、あぁ・・・ここに三方があるわ、三方が。
ほいで、旦さんの葬礼差しがあって、ほいここに浄瑠璃語るときの肩衣があるがな、こいつをここにこう・・・・
こうやってな、この葬礼差し、わーよぉ光っとるがな、ほな、こいつを手拭いで巻いて、これをここに乗せて
{御両所、御覧下され}

・・・と、定吉さんが蔵の中でやりだしたら、女中のお清どん、やきり気になるかして、可哀相に定吉どん蔵の中で
どないしてるんやろ、と物干しに上がりまして窓越しに蔵の中を見ますと、薄暗い中でピカピカ光るものを、お腹に
突き立てようとしてる、そらもー、お清どんも驚いて、慌てて旦那さんの部屋に駆け寄りまして

「あーまー旦那さん落ち着きなはれ」
「なんや、お前が落ちかんかいな、慌てて飛び込んで来て何がおましたんや?」
「蔵吉どんが定の中で」
「そらアベコベやがな」
「その定吉どんが蔵の中で、刀抜いて、おなかを切ってはります」
「えー、定吉が腹切ってるってか、あぁなんてことするんや、ええ・・・ああ・・よほど今度の日曜の練習が気になって
るんやなぁ、そこまで思い込んでいるとは知らなんだ、これ番頭どん、ああ言うときはお前が中へ入って口利きする
のが役目やおへんか、命まで奉公にとりとうない、情けない気になりよったのかも、早ぉ、定吉の楽譜の入った鞄や
御飯を持って行っておくれやす、お膳なんか間に合いまへん、おひつごと持って行くんや」
「旦さん、それはオマル」
「ややこしい所に、オマルなんか置きないや、おひつをこっちに貸しなはれ」

旦那さんも余程慌てたのか、おひつを抱えて、パタパタパタパターーーー
蔵の中を開けるなり、楽譜の入った鞄と、おひつを差し出して
「御膳と五線(譜)〜〜〜〜〜」
「蔵の内でか
「はははぁ」
「待ち兼ねた」」


浅野匠守とか大石蔵之助などをミュージシャンにしてしまおうかと思いましたけど、やはり話しが忠臣蔵ゆえに
冒涜になるかと、落語の本筋をまんまに引用しながら、ちょっとの工夫でまとめました。
討ち入り日が、もう深夜にに迫ってまして、やっつけ仕事〜〜〜(笑)


その十二席・もーにんテンツ(軒づけ、から)

JAZZという音楽、なかなか一般・・平素の生活をしておりますと馴染みの薄いものだと
常々として感じるものでございますが
「ご趣味は、何ですか?」
「はい、音楽です。」
「そ〜ですか、で・・・どんなのを聞かれるので?」
ここまではスンナリと進みまして、
相手が中年の方だと、演歌などと言ったら身を乗り出してきて、これからカラオケに行こうよ
なんて誘われたりすることもありまして

「それが、その〜JAZZ・・・・などを・・・」
なんて、恐る恐る・・・「この方にこんな事言っても判らないだろうなぁ〜」・・と、思いながら
返事をすると・・・
「へぇーーーー」
だいたい・・・この「へぇ〜」で、感じるものです。もぉ話題が続かない
「そ〜ですか・・・」
で、終わっちゃう。
せめて、グレン・ミラーでもベニー・グッドマン辺りの名前でも言って貰えたなら映画の話し
に変えて行けるのですが・・・・へ〜・・・そ〜ですか・・・・で、終わっちゃう。
中には、私も好きなんです〜っ・・・・なんて調子を合わせて来るのが居ますけど、そんなの
信じてはイケマセン。
ひたすら、JAZZを愛する者は「孤高」に誇りを持って生きる覚悟をしないと甘く見られるもの
でございます。
なんて、自棄のヤンパチ、自虐のローソクでございますが・・・

ひとつ進んで楽器など出来たら良いなあ〜なんて思われる方も中には居られまして始めたり。
コードのひとつも押さえられなくても一曲の旋律でも弾けたら、これ・・・・バカのなんとやらで
家の前を人が通る度に、そこばかり弾いたりしている方も居られるかもしれませんが・・・

よく映画館がテレビの進出で潰れたなんて言いますが、その映画も隆盛を誇る時代の裏に、
芝居小屋、また寄席などの客の入りが悪くなり閉鎖が相次いだことが知られていないですよねぇ。

あまり娯楽も無かった時代、義太夫語りなどは今で言うスマップのようなアイドル的な存在だ
ったように伝えられておりまして、最近のように電波で全国が結ばれるような時代でありません
から義太夫とか浄瑠璃とか色んな呼び名が各地に生まれ、どれがどうなのか日本人でありなが
ら実のところ私も、よくはわからない。

で、歌を一曲でも覚えたらカラオケの店に行って歌ってみたくなるように、当時、語りの一つでも
覚えたら、どんなもンだいと自画自賛、ひとに聞いて貰いたくなるのは世の中の常、時代が変わり
ましても、この手の方は、そこらに居るようですが
ここでは、その当時のような方がJAZZのプレーヤー気分になりたいばかりの迷惑な話しでござい
ます・・・・

B 「居てるか」
A 「いやまー久し振りやないか、生きてたンかいな」
B 「見ての通り、こんなに元気や、医者もあと二年は生きられるって言うてくれてるがな」
A 「二年って心細いで」
B 「そらまぁ冗談やけど、さいきん、ちょっと凝っててな・・こちらにも御無沙汰や」
A 「凝ってるって、なにに?」
B 「これに凝ってるんや・・(・・・と、頬を膨らませる)」
A 「おたふく風邪でも貰ったんかいな」
B 「このトシこいて、そんなのになったら笑われるがな、ここ膨らませたら大体判るやろ、ラッパや」
A 「トランペットのことかいな?これまたエライこと始めたんやなぁ、で、どの程度のものなんや・・・・」
A 「あんたに分かり易く説明したら、忠臣蔵で言う五段目ちゅーやつかな?」
B 「ほーっ五段目ちゅーたら四段目の上・・・」
A 「ちゅ〜より六段目の手前」

A 「??・・・・・って同じことやないのかえ?」
B 「そーでもある」
A 「ややこしいこと言うわんとき〜ぃな」
B 「山崎街道・・・JAZZで居うたらベイズン・ストリートちゅーのがディキシーに出てきまんなー」
A  「で、途中で飽きんと、なんとか楽しんでるんか?いつもアンタは最初だけやけど・・・」
B 「やってるやってる〜〜」
A  「ジミー大西しとるがな」
B  「先週も発表会ちゅーて出たがな」

A 「おまえみたいな半端な奴が人様の前へ出て習い事の発表するってか?、
   そこの師匠も、よぉ出しよったな」
B 「そや、発表ゆーたら人前に出ないかん」
A 「そら、当たりまえや」
B 「それ聞いたらハズかしなって」
A 「おまえも、まともな感情があるわけや」
B 「で、止めますわ・・・ちゅ〜たら先生がな、義太夫みたいに御簾内で、しはったらエエなんて
   ゆーたもんやから、つい・・・その気になったんや。
A 「ほいほい、なるほどな、御簾内やったら、外から、おまえさんが演ってるとは気が付かんし見え
   へんから、やり易いちゅーわけや」
B 「ところが、こっちからは、あっちが・・・よぉぉぉ見える」
A 「さいな、そーいうもんや、ところで、おまえさんに人前に出て迄やりたいって気があるんやったら
  、ひとつ話しがあるねんけどな・・・」
B 「借金忘れてくれるんかいな?」
A 「あほ言うてるんやないで、実はな、町内の老人慰問に素人芸でも見せて楽しんで貰おうと
   軒付けちゅーもんをやってるんやが」
B 「なるほどなーそれを見せて早よ殺すつもりなんや」
A 「人聞きの悪い事をアッサリ言うもんやないで、ひとつそれに参加してみらたどーや?」
B 「その軒付けてなんや?」
A 「他人さんの家の軒下に立って芸事を聞いて貰うんや」
B 「それやったら、まるで乞食みたいやな」
A  「あほ、恵みものが欲しゅ〜て演るわけやないがな、知合いなら義理もあったりで下手な芸事
   でも辛抱して聞いてくれて、下手でも上手い上手いとベンチャラ言われて勘違いするけれど、
   そこへ行くと他人さんなら嫌なものは嫌、下手なものは下手とハッキリ言うてくれる。
   それにや暗い軒先で演るもんやから何かを見ながらする訳にもイカン頼るものが無いから必死
   になるがな、ええ勉強になると思わんか?」
B 「なるほどなぁ」
A 「それに中にはエエ人も居てな、こんな結構なものを聞かせて貰えて嬉しゅーございます、
   さっさ中へおアガリ下さって、もっとゆっくり聞かせて下さいなんて事もあって、帰りにはウナギの
   茶漬けが出たそうや」
B 「へーーーそんなことがあるんかいな、わてウナギの茶漬け食べれたら死んでもええ」
A  「死んだらアカンがな、行く気になったか?そーか仲間に入れて欲しいと頼んだろか?」
B 「今晩の予定も無いし、これからでも行けまんのか?」
A 「そやな、もうぼつぼつ日暮れやから、そろそろ集まり出す頃やと思うんやが外の様子は、どんな
   もんやろかな?  おお、丁度ええ、あそこに四〜五人集まってるやろ・・あれがその連中や」

A  「へい、皆さんごめんやす、今夜もこれから回られるので?」
C 「あっ、どーも、いやー全く懲りん性格と言いますか好きなことは止められまへんでなぁ、今夜も行くン
   かいな と・・家の者に呆れ返られる始末で」
A 「よろしおますがな、好きな事にそれ位打ち込んでこそ、いつかは実の生るものと言うもんで、そこで
   相談なんやが、ここに居るワテの知合いを仲間にして貰えんかと頼みに来たわけなんですが、どー
   ですやろ皆さんの披露の合間にでもと、お願いに来ましたんやが。」
C 「そーだっか、こちらにしても一人でも多いほうが心丈夫でおますがな、ほ〜あんさんですか?
  どーぞこちらへ・・で、なにを披露して頂けますんやろ?見るところ余程お好きな様子でおまんなー」
B 「へい、ちょっとジャズ・ラッパを・・それと大好きだんねん、ウナギの茶漬け」
C 「なんや、この前の話しがもう伝わってますのんか、そんな事めったにおまへんから期待しても無いと
  思うたほーが宜しおまっせ」
A 「いやいや結構でおます、いままで何をやっても途中でケツわってた奴でっさかい、芸事に夢中になって
   るだけでも有難い事でおます。」
C 「そーでっか、まぁそのつもりなら付いて来なさるとええ、ほな、ぼちぼち行きまひょか」

B 「それがその急な話しですよって伴奏のベースが未だキマヘンねんけど」
C 「そないなこと言うても夜はどんどんと更けるし待ってられまへんしなぁ」
B 「あ〜困った事になったがな連絡も取られへん」
C 「どーだ、わてらの浄瑠璃の伴奏では?」
B 「伴奏ちゅーたら、その三味線でっか?」
C 「さいな、この方の、お三味線」
B 「まっ無いよりはええかも、ところで、ジャズわかりなさるんで?」
D 「ま〜〜、なんとかなりまっしゃろ」
B 「えらい心強いのか不安なのか判らんのでおますが、何が弾けるんでおます?」
D 「わしは、こ〜見えても、テンツテンテンが弾ける」
B 「おたく、その一つで、えろー偉そうにしてまんな」
D 「それだけやない、ゴホン!それに、チリトテチン」
B 「ふたつも出来まんのか?」
D 「ゴホン!それに今夜は気分がええさかいに、ひとつオマケの・・・トテチン〜トテチン」

C 「そら三つも出来たら急場しのぎには打ってつけちゅーもんでおますがな」
B 「(小声で。。)これやったら無いほうがマシやで」
D 「Bさん何か言わはりましたかえ?」
B 「あ、いえいえ無理を頼んで連れて貰う身でおまっさかい有難いことでおます。」
C 「ほな日が暮れんうちに行きましょ、この辺りで何処をどーのと選り好みをしていたら埒が
   あきまへんよって、この端のお家から始めましょうか、さぁどなたから?」
B 「わて皆さん方の浄瑠璃ちゅーもんを存知まへんよって、先ず聞かせて貰って伴奏の様子を知りたいんで
   おますのやが・・」
C 「ほーそれもそーでおますな、では私から一つ始めることに致しましょう。ほたら、このお家から・・・
   えーーちょっと、お門を拝借致します。」
◆ 「なんでおます?」
C 「素人がなぐさみに、このお門から浄瑠璃やら芸事を語らして貰います」
◆ 「いりまへんよって、帰っておくれやす」
C 「いえ、語ったところで、お代を頂戴するようなことは決して致しません」
◆ 「せっかくでおますけど、うち病人が居りまんねん」
C 「は〜ぁ、♪どなたが、お悪〜ぅございま・・・・す〜ぅ?」
◆ 「母者が高熱でおます」
C 「それはそれは、♪ずいぶんと、お大事に〜ぃぃぃぃーーーっ♪」
B 「浄瑠璃で見舞い言えまんのか?」
D 「(三味線)テンツテンテ〜ン」
C 「こんなときに伴奏なんか入りまへんがな」
B 「で、ウナギに茶漬けは出まへんのか?」
C 「病人が居て出るわけが、おまへんがな、さっ次へ周りまひょ」

D 「今度は、わてが三味線弾きながら詠わしておくれやす、いちいち門口で断ったりするから、
   あないなことになりまんねん、何があろーと始めてしまえば聞かされるほうも仕方ないちゅーて
   嫌々ながらも聞くもんでっせ」
C 「なるほどなー、そーいうこともあるかも、しれまへんなぁ」
D 「嫌々ながらも聞いていて、そのうちに聞き惚れて、まーまー奥でウナギの茶漬けなと・・・ちゅーわけ
   でおます、ほたらここで春藤玄蕃の出のところを演りますよって」
D 「(テンツテンテーーン、テンツテンテン)♪かかるところへーーーぇぇぇぇーー・・・春藤玄蕃〜ぁぁぁぁぁ
   ・・・・・どーや皆さん、聞き惚れて、しーんとしてまんがな、・・・首見る役は松王丸・・・・断られへんで、
   この調子で行くとウナギの茶漬けでんなぁ・・・
   病躯を助くる〜駕籠乗物ーーー・・・・門口に、かーしーやー・・・御用の方は東へ三軒、近藤まで。
   どーです皆さん、せっかくやから間取りだけでも見て行きまひょか?」
C 「誰が借家探しに来てんねん、空き家やおまへんか、人が住んでないのに断られる訳が無い」
D 「テンツテンテ〜ン」
C 「こんなときに弾かんでもよろしおます」
B 「ここでもウナギの茶漬けは出まへんのか?」
C 「あ〜も〜アンタ、それしか頭に無いンかいな」
B 「他にというたら、一歩譲って、せめてウナギだけで我慢しまっけど・・・」
C 「あ〜も〜頭が痛と〜なる」
B 「うなぎ食ったら元気が出て治りまっせ」
C 「あんた一寸向こうへ行ってて・・・」
D 「テンツテンテ〜ン」
C 「要らんときに弾かんで宜しい!変な奴ばっかりやで」

B 「Cはんが調子悪いンやったら今度は、ワテが出番を引き受けまっさ」
C 「そーして、そーして、この疲れは、しばらく立ち直られへん」
D 「・・・と言うても、この並びでは今迄の経験からもう見込みがおまへんよってなぁ・・・」
C 「それも、そーやなぁ、ひとつ奥の糊屋の婆さん宅で奥の六畳の部屋でも借りて練習しまっか?」
B 「皆さん方の浄瑠璃に入りこんで、ワテのJAZZが染まるか心配でもおまっさかい練習は有難い。」

で、皆さん一行が糊屋の婆さん宅へ向かいます。辿り着きましたら丁度、婆さん独りで食事中でして

C 「へい婆さん、お邪魔します」
婆 「おお、これはこれは皆さん方、今日は何かと忙しゅうて食事を食べ損ないましてな、いま時分に
   おかずを作る事も面倒になりましてな、味噌でお茶漬けを一膳でもと思いまして食べかけたところ
   でおます。」
C 「いや実はな、ここの奥の六畳をお借りして芸事の練習をさせて貰おうかと来たんやが」
婆 「なんじゃと、奥の六畳で皆さん方の芸を披露して貰えますのか、それは有難い事で、どーぞ御上がり」
C 「そうか使わせてくれるか、おーい皆の衆、婆さんからお許しを貰ったさかい」
D 「やはり腰を落とせるのは楽でんなぁ、有難い有難い」
B 「・・で、アンタの三味線、今迄テンツテンテンだけしか聴きまへなんだけど、他にも聴かせて貰えまっか」
D 「へい、よろしおます・・・で、なにを演りなさるので?」
B 「ソバヤの出前持ちでも知っている、もーにん・・・ちゅ〜やつでっけど」
C 「あんた発音が悪いでっせ、モーニンと言わな、じゃずの雰囲気がでまへんで」
B 「そーだっか・・・それなら、オタクの、じゃず・・・も、なんとか成って欲しいけど」
D 「それじゃ・・・・トテチン・・トテチン♪・・・・・・・・・トテチン・・・・」
B 「・・・・・・・・・あかん・・・・出られへん・・・・」
D 「あきまへんか・・・・それやったら、チリトテチン・・・・・・・チリトテチン〜♪・・・・・」
B 「・・・・・、、、、、・・・・・・・・やっぱ、あかんな」
C 「Bはんが、先に出なはれ、後に三味線が付いて行けば、なんとかカッコがつきまっせ」

B 「じゃ・・・・・・ぱっぱ・ぱぱぱぱ、ぱっぱぁ〜〜〜(テンツテンテン、テンツテンテン)」
B 「ぱっぱっぱぁ〜〜〜ぱぁ〜ばぁ〜、ぱぱぱぱぁぁぁぁ〜〜〜(テンツテンテン〜テンツテンテン)」
C 「変な感じでおますけど・・・・」
婆 「あんさんがた、御上手でおますなぁ」
C 「婆さん、べんちゃらはエエで、あんた年の所為で耳が遠くて聞こえへんやろに」
婆 「なんや、よぉ分からんが、さっきから食べている味噌の味が一寸も変わらん」

桂米朝一門の師匠方や上方落語馴染みの古典ですが文献などでは甲乙らの表示がされていますので
ABCなどでは分かり難いかと存じますが、そこは貴方様のイメージで思い描いて下さいませ。
義太夫、浄瑠璃で語られる古典にムリヤリ、ねじ込んだような話しになりましたけど、。


以下、その他の内容は、お蔵に入っております。^^