約物に強くなる(1)
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「文系な」あなたに贈るパソコン使いこなし講座


●おしらせ(2005.10.26)

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 約物(やくもの)ってご存知ですか? 『広辞苑 第4版』(岩波書店 1991年)を見ると、「(印刷用語)文字・数字以外の各種記号活字の総称。句読点・括弧類・圏点・漢文用返り点など」と書いてあります。要は、テンやマル、かぎ、かっこなどの記号類を一まとめにして指す言葉。ちなみに「圏点」とは「傍点」のことで、わたしもはじめて知りました(笑)。

 ここでは、パソコンで使える約物のうち「区切りの意味で使う記号類」についてお話ししていきましょう。

■区切りの意味で使う記号類
 区切りの意味で使う記号類には、次のようなものがあります。

《表1》区切りの意味で使う記号類
  呼び方 シフトJISのコード番号
テン 8141
マル 8142
コンマ 8143
ピリオド 8144
中黒、中点(なかてん)、中ポツ 8145
コロン 8146
セミコロン 8147
クエスチョンマーク、疑問符、みみだれ 8148
エクスクラメーションマーク、感嘆符、あまだれ 8149

■句読点の組み合わせ
 ふだん私たちは句読点として「、」と「。」を使っています。でも、印刷物を見ると、「,」や「.」も使われていることに気づくはず。これらの使い分けは、一般的には次のようになっています。

・縦組みの場合……「、」と「。」
・横組みの場合……「,」と「.」(または「,」と「。」)

 日本エディタースクール編『標準 編集必携』(日本エディタースクール出版部 1987年)によれば、横組みの場合「テン・マル方式では式の終りや文献の終りにつけられるピリオドと混在するので,適当ではない」(p. 43)とあります。たとえば――
……すぐれた入門書はKen Ruthven, Nuclear Criticism, Carlton, Melbourne University Press, 1993。また、第2次大戦後に……
こんなふうに和文と欧文が混ざる(印刷の世界では「混植」と言います)場合、テン・マル方式(やコンマ・マル方式)では見栄えが悪いというわけですね。ただ、私自身はあまりこだわってはいません。もっと言えば、基本的に日本語で書かれている文章はすべてテン・マル方式でいいんじゃないの、とすら思っています。実際、このウェブサイトは横組みですが、テン・マル方式でやっています。

■句点の打ち方
【問題】
 句点の打ち方として正しいものを、下の3つの例から選びなさい。
 (a) 「今日はいいお天気ですね」
   「ええ、そうですね」

 (b) 「今日はいいお天気ですね。」
   「ええ、そうですね。」

 (c) 「今日はいいお天気ですね。」。
   「ええ、そうですね。」。

【答えと解説】
 句点は文の終わりに打つ、という一応の決まりはありますが、実際にはさまざまな打ち方が許されています。日本語には「正書法」(正しい表記の仕方)がないんですね。ここに挙げた3つの例は、どれも「間違いとは言えません」。したがって、答えは(a)(b)(c)。

 現実には、(c)のように見た目のうるさい打ち方をする人はほとんどいないでしょう。しかし(c)のように打っても、それは間違いではない、ということなのです。となると、自分なりの打ち方を決めるしかありません。

 おすすめしたいのはこんな打ち方です。

(1) 会話の場合は「 」の外側に句点を打たない
(2) 会話以外の場合で、「 」や( )などで文が終わるときは句点を打つ
(3) 「 」や( )などの中に入る最後の文については句点を打たない

 取り立てて意識しなくても、これくらいのことは誰もがやっているでしょう。もっとも官公庁の文書は、「 」や( )などの中に入る最後の文についても、律義に句点を打っています。

 ついでに、

(4) 箇条書きには句点を打たない

としてもいいかもしれません。このウェブサイトでは、箇条書きには句点を打っていません。お気づきでしたか?

■読点の打ち方
 読点ははるかにやっかいな存在です。句点と違って、一応の決まりすらないんですから。

 しかし実際に文章を書く際には、句点と同じく、自分なりの打ち方を決めなければなりません。とりあえず参考になるのは時事通信社編『最新用字用語ブック 第2版』(時事通信社 1997年)でしょう。一部を紹介しておきます(p. 521-522。なお『最新用字用語ブック』は第3版が刊行されました。第3版ではp. 519-520)。
・息の切れ目や読みの間を考えて打つ。
・語句の列記には読点を打つ。
  例 富も、名誉も、家庭も捨てるつもりか。
・誤読、難読の恐れがあるときは、読点を使う。
  例 水ぬるむ春、雨が大地を潤す。
・文頭で接続詞やこれに準ずる語句を使ったときは、その後に読点を打つ。
・時、場所、方法などを示す語句が文全体を限定する場合は、その語句の後に読点を打つ。
・「…で集会、」……のように名詞形で切った場合は、読点を付ける。
・「 」を助詞の「と」で受け、主語や修飾語が入る場合は読点を打つ。
・和歌、俳句、川柳などには普通、読点を付けない。
 かなり細かく決めていて、まさに経験則の集成という感じですね。新聞記事を書く際のマニュアルとしては、たぶんこうするしかないのでしょう。ただ、「どうしてそこに読点を打つのか」という本質的な問いについては、十分に答えているとは言えません。

写真1:『日本語とテンの打ち方』  「どうしてそこに読点を打つのか」――この問題について本格的に論じた書籍はあまり多くないようです。私が参考にしたのは、岡崎洋三『日本語とテンの打ち方』(晩聲社 1988年)でした。「読点の打ち方は、文章表現という技能に興味と向上心があってなおかつ論理的な明晰さを追求する人にとってのみ問題となる」(p. 181)と主張する著者は、語順と読点の関係に着目し、こんなことを言っています。
・かかる言葉と受ける言葉の関係を明確にするために読点を使い、両者の関係が明確であれば特に読点を必要としない(p. 39)。
・読点の必要度とは「分かつ」ことの必要度なのである。そういう風にみていくと、「分かつ」必要性の最も高いものとは、言葉のかかり受けを明確にするテンだ(p. 47)。
 『日本語とテンの打ち方』はマニュアルではありません。しかし、「どうしてそこに読点を打つのか」という問いには、かなりのところまで答えてくれます。一読すれば、あなたの読点の打ち方(さらには文章の書き方)も変わってくるでしょう。

 じゃあ私自身はどんな打ち方をしているかというと……残念ながら、いまだはっきりとした「方針」をつかめないでいます。一つだけ心がけているのは、「読点が多くなりすぎないようにする」ということ。これには理由があって、かな漢字変換ソフトの設定を「句読点で変換する」にしているからです。

 「句読点で変換する」設定にしていると、どうしても読点が多くなりがち――このことに気がついたのは、パソコンを使うようになってしばらくたってからでした。私と同じように設定している人は、自分の書いた文章を見直してみるといいでしょう。読点が意外に多いなあ、と感じるかもしれません。

 なお『最新用字用語ブック』と『日本語とテンの打ち方』は、公共図書館で閲覧できると思います。一度ご覧になることをおすすめします。

■中黒の使い方
 中黒の使い方には、比較的はっきりとした決まりがあります。

(1) 単語や語句を列挙する際の区切りに使う
(2) 外国語の名前やワード(語)の区切りに使う

 (1)の例としては「過去・現在・未来」などと書く場合が挙げられますし、(2)の例としては「サイバーパンク・メトロポリス」などが挙げられるでしょう。

 では、「ネットスケープ・ナビゲータ」と「インターネット・エクスプローラ」を列挙する場合は? これはもう読点を使うしかないんですが、助詞の「や」でつなげるなど、書き方を工夫した方がいいでしょう。

 中黒にはもう一つ、

(3) 箇条書きの冒頭につける

という使い方もありますね。

■コロンは縦組みでは使わない
《図1》図1:縦組みにしたコロン  コロンは基本的に欧文で使われる記号です。でも、和文で使いたいこともあるでしょう。たとえばこんな文。

  場所:箱根山頂上

 これを横組みにするなら、何の問題もありません。では縦組みにするとどうでしょう? 《図1》を見てください。

 「コロンが90度回転してくれれば……」なんて思っている人がいるかもしれませんね。確かに「JIS X 0208」の「附属書4」では、90度回転した縦組み用コロンも「参考」として掲載されています(規定されているわけではない)。しかし縦組み用コロンを持っている書体(フォント)は、現実には限られてしまうのです。

 私のパソコンにある主な和文TrueTypeフォントについて、縦組み用コロンの有無を調べてみました。

《表2》縦組み用コロンの有無
  フォント名
縦組み用コロンがある JS明朝、JSP明朝、JSゴシック、JSPゴシック
縦組み用コロンがない MS明朝、MSP明朝、MSゴシック、MSPゴシック、ヒラギノ明朝体シリーズ、ヒラギノ角ゴシック体シリーズ、HG丸ゴシックM-PRO、DFPPOP体

《図2》図2:縦組み用コロンと3点リーダー  縦組み用コロンを持っているのはJSシリーズのフォントだけ。つまり、一太郎などジャストシステムの製品を持っていなければ、90度回転した縦組み用コロンは使えないわけです。

 そもそもコロンは欧文で使われる記号です。このことも合わせて考えると、縦組みにする原稿でコロンを使うべきではありません。コロンにしたい部分は、「…」(3点リーダー)などに置き換えましょう。

 縦組み用コロンと3点リーダーを並べてみたのが《図2》です。左の90度回転した縦組み用コロンより、右の3点リーダーの方が落ち着いて見えると思います。もっとも最近では、《図1》のように不細工な組み方をした印刷物も見かけるようになりました。「90度回転していないコロン」は、フォントによっては位置が下側にずれてしまいます。それでもいい、ということなのでしょうが、私としては「何だかなあ」という気分です(笑)。

■!や?を組み合わせた記号
 印刷物では、!や?を組み合わせて1文字にした記号も使われています。「!!」(二つあまだれ)や「??」(二つみみだれ)、「!?」(ダブルだれ)ですね。これらの記号は、「JIS X 0208」では規定されていません。

 二つあまだれなどの記号を使いたい場合は、半角の「!」や「?」を組み合わせましょう。なおダブルだれの並び順は、「!?」と「?!」のどちらでも構いません(出版社や編集者の好みによるようです)。


【参考文献】
・本多勝一『日本語の作文技術』朝日文庫 1982年
・玄光社編集企画室編『クリエイターのための印刷ガイドブック1 基礎編』玄光社 1986年
・日本エディタースクール編『標準 編集必携』日本エディタースクール出版部 1987年
・岡崎洋三『日本語とテンの打ち方』晩聲社 1988年
・デザイン編集室編『編集ハンドブック 第6版』ダヴィッド社 1990年
・時事通信社編『最新用字用語ブック 第2版』時事通信社 1997年
・時事通信社編『最新用字用語ブック 第3版』時事通信社 2000年


[2000年 3月 1日]
[2000年 5月 8日修正]


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