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芸術祭参加作品だという。これまで15回の上演を数える猿之助の『加賀見山再岩藤』では、お柳の方、またはおつゆを演じていた笑也さんが、今回は珍しく花房求女という男役で登場した。単純に考えると、二代目尾上は笑也さんの役どころだろうと思うんだが、笑也さんは尾上を演じたことがない。玉三郎が尾上を演じているから、笑也さんが譲った形になったのかしらとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。良く分からん。

前回の上演まで、猿之助は七役の早替りを演じていた。今回は何を思ったか、四役で済ませている。多賀家当主大領、岩藤の亡霊、望月弾正、又助の四役である。大詰・第一場で岩藤の亡霊と弾正がかぶるが、これは弾正に岩藤の亡霊が憑依していると考えられるため、無理がない。しかしながら、大詰・第三場で、岩藤の亡霊に立ち向かう大領の登場は、お粗末だった。弾正の立ち腹切りで幕にしておけば、格好良く終れたのにと思う。

10月14日土曜日の私は、序幕で燃え尽きた。ニ幕目と大詰はメモを取る気力も失せてしまっていたもんね。猿之助の宙乗りに脱力したからだ。

序幕・第六場は最低だった。この芝居に登場する岩藤は、亡霊で怨霊でほとんど妖怪と言っても良いだろう。その岩藤が、桜満開の山々の上空を散歩しながら、多賀家の館へと向かう。猿之助得意の宙乗りである。悠長に、たらたらと、呆けたように、三階席へと移動するのだ。

岩藤はねえ、怨霊なのよ。怨霊の美しさは、醜悪であることそれ自体を意味する。「成仏などするものか!!!」と叫ぶ岩藤こそが美しいのである。悠長に空中散歩なんかしている場合か。さっさと消えろと叫びたくなったぜ。どうして客が喜ぶのか、私には理解不能だわ。薄々感づいてはいたんだが、猿之助のファンにとって、岩藤の亡霊は岩藤の亡霊である前に猿之助なんだわ。

私が玉三郎を見る時、同じように役柄ではなく玉三郎という役者を見ているのかもしれないが、無批判に拍手喝采する気は毛頭ないぞ。猿之助のファンなら、猿之助が間抜けに見える演出を、是とするべきではないだろう。どうしてあんなことするのかね。本当にあれで、楽しいのかい?

更にもう一点。岩藤の亡霊は二代目尾上を「尾上」と呼ぶが、二代目尾上は岩藤にとって終始一貫して「お初」でしかない。「お初」で通すべきだった。そして唯一、草履打の場で、サディスティックな歓喜に酔う岩藤が、お初を「尾上」と呼んだなら、その興奮ぶりが窺えて観客は楽しめたのではないかと思う。

この項はアップするかどうか迷ったんだけど、体調が悪いのではと心配されるのも癪なので、アップすることにしました。当り障りのない劇評が書けないのは、力量不足に違いないわね。嗚呼、しんどい。

猿之助よ、あれじゃ芝居が台無しだと思うぞ。

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