| Kabuki Review by Sekidobashi Sakura |
く ろ て ぐ み く る わ の た て ひ き
黒手組曲輪達引
| 2006年5月歌舞伎座 |
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1858
(安政5)年に江戸で初演された、河竹黙阿弥の世話物作品。四世市川小団次が、歌舞伎十八番『
助六
江戸 歌舞伎十八番『助六由縁江戸桜』と言えば、誰もが知っている人気狂言である。歌舞伎十八番自体が、市川家の芸ということもあり、助六は団十郎だったり海老蔵だったりと、秀麗な容貌の役者が演じるのが常であった。2004年6月に歌舞伎座で上演された時も、海老蔵襲名披露公演として、十一代目海老蔵が助六を演じた。 さて、幕末の名優四世市川小団次は、器用な役者だが小柄だった。その小団次のために、『助六由縁江戸桜』を河竹黙阿弥が書き替えて、演技の腕を存分に発揮させたのが、この『黒手組曲輪達引』だという。事情が事情だったので、『助六由縁江戸桜』のパロディが満載されており、知っている人にはかなり楽しい舞台構成になっている。知らなくても、それなりに楽しいのは、河竹黙阿弥の筆力によると言っても過言ではないだろう。面白いことは確かだが、イヤホンガイドの解説が、些か五月蝿くなるのは仕方がないかもしれない。つまり、『黒手組曲輪達引』の新左衛門が『助六由縁江戸桜』の意休、紀伊国屋文左衛門が助六の母万江の役回りであることなどを、劇中で細々と説明することになるわけだ。 序幕で演じられた白玉と権九郎の『忍ヶ岡道行の場』では、大店の番頭であるものの、男としては冴えない権九郎を演じた役者が、二幕目以降では当代きっての色男助六を演じるという趣向が、見所の一つとなっている。初演当初は、所謂助六役者としては難があったと思われた小団次が、趣向を変えた助六を演じたわけだが、時代を経て、『黒手組曲輪達引』の助六が、助六役者の幅を示す役どころとして位置づけられるまでになった。眉目秀麗で長身な助六を、小柄な小団次が演じることの面白さに着目し、それを逆手に取ったというわけだ。 同じく序幕で、白玉の情人伝次を演じたのは海老蔵だったが、折角登場したのに、さっさと白玉を残したまま、花道を駆け去ってしまうのだ。その後、いつ再登場するのかと、心待ちにしていたというのに、それっきり出番はなかった。淋しいじゃないのおおお!!! そう思わせる役者を、助六役者と言うのだろうが、今回助六を演じたのは菊五郎だった。しかしながら、頭に矢が刺さったカルガモの着包みを被って、『ツァラトゥストラはかく語りき』ってのは、やり過ぎの感があった。権九郎の三枚目ぶりを演出するのが、この場面の見所なわけだが、助六役者というのは大変なもんだと思ったね。 芝居の最後で、助六と新左衛門が切り結びながら、決着をもないまま幕となるのは、双方の役者のファンが東銀座駅構内、或いは銀座近辺で、乱闘に及ぶのを避けるためというもっともらしい理由が語られているが、歌舞伎役者というのは、それほどまでに大した存在なのであろう。そういう乱闘騒ぎに、巻き込まれてみたいもんだと、危ないことを考えた消化不良の一夜だった。助六役者の苦悩は続く…。幕。(2006,5,4) |
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