| Kabuki
Review by Sekidobashi Sakura
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こ い に ょ う ぼ う そ め わ け た づ な |
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恋女房染分手綱 |
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2004年9月歌舞伎座 |
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『恋女房染分手綱』は、近松門左衛門作の『丹波与作待夜の小室節』を、吉田冠子と三好松洛が改作した時代物人形浄瑠璃で、今回上演されたのは『恋女房染分手綱』の十段目に当たる、通称『重の井子別れ』である。この場面は『丹波与作待夜の小室節』の同場面を忠実に再現しているが、この前後を調べてみると、近松門左衛門作の先行作によりながらも、由留木家のお家騒動を物語の縦軸に設定しており、時代物としての深みを表現することに成功している。 由留木家の家臣伊達与作は、若殿右馬之助が馴染みにしている祇園の芸子いろはを身請けするための金三百両を、同家の家臣鷲塚八平次に奪われたことで、家中を追われた。重の井の父親が切腹する結果をもたらした、与作と重の井の恋を密告したのも、この八平次であった。重の井は許され、調姫の乳母として取り立てられた。 一方、与作は馬子となって、奪われた三百両の調達に苦慮している。実は与作を慕っていた祇園の芸子いろはは、関の小万と名を変え宿場女となり、与作を助けていた。与作は、いろはの父親が年貢を支払えないために牢に入れられると聞いて、これを助けるために博打をし、結果、借金を増やしてしまう。この後、重の井と三吉の母子の対面と別れとなるわけだ。 調姫の一行に同行することになった三吉は、道中与作と知り合う。三吉が我が子と知らないまま、与作は三吉に調姫の御用金強奪を唆して、結果、三吉は捕らえられる。重の井の尽力と周囲の助力があって、与作と三吉は許され、三百両の調達も果たし、その上悪者八平次が成敗されて大団円となる。幕。 お家騒動というからには、八平次は由留木家乗っ取りを企んで、忠臣である家老の子与作を陥れようとしたわけが、もう一人、大物の黒幕の存在が欲しい雰囲気はある。また、大団円とは言っても、与作にはいろは/小万の存在があり、重の井は調姫と共に江戸住まいとなる身。与作の帰参が叶ったとしても、三吉/与之助の将来がどうなるのかをも含め、親子三人で生活するというのは、どう考えても無理な話だ。以上のようなことを考えると、『重の井子別れ』の場面だけが、単独で上演されることが通例になっているのは、残念なことだと思わずにいられない。是非とも、通しで観たい芝居である。 先行作である『丹波与作待夜の小室節』は、時代物ではなく世話物として分類されている。以下に、『丹波与作待夜の小室節』の物語をご紹介しよう。 江戸の入間家に嫁入りが決まった丹波国由留木家の調姫は、この結婚を嫌がって、江戸下りを承知しようとしない。困った周囲が馬子の三吉に道中双六をさせて調姫の機嫌を取りつつ、江戸に向かった。この時調姫に同行していた乳母の滋野井が三吉に褒美を渡そうとした時、三吉が離婚した夫与作との間にできた我が子であることを知る。調姫の乳母であるという立場から、滋野井は三吉に母であると名乗ることができないまま分かれた。 今はすっかり零落れてしまった与作は、馴染みの遊女関の小万の父親が、年貢を支払えないために、牢に入れられると聞いて、これを助けるために博打に手を出し、結果、借金を増やしてしまった。関の宿に泊まっていた調姫一行の中に、三吉を発見した与作は、調姫の御用金を盗み出すように唆す。結果、三吉は捕まった。与作は小万と一緒に死を決意するが、滋野井の尽力によって三吉共々釈放される。幕。 これを読むと、与作が余りにも駄目な男に思えてくる。『恋女房染分手綱』の方が、登場人物たちの人間関係、事件の因果関係を、明確にしていると言えるだろう。しかしながら、物語が簡略化されており、分かりやすいことを考えれば、作品の評価は観客の嗜好によるかもしれない。私は、『恋女房染分手綱』の方が好きだけどね。 さて、今月の歌舞伎座観劇は、9月4日土曜日夜の部で、演目は『恋女房…』『男女道成寺』『蔦紅葉宇都谷峠』の三本。今回重の井を演じたのは芝翫で、腰元若菜を演じた橋之助の父である。三吉を演じたのは、その橋之助の長男国生8歳で、調姫を演じたのは橋之助の兄福助の長女佳奈8歳だった。今月は橋之助の次男宗生6歳、福助の長男児太郎10歳も出演しており、夜の部『恋女房…』の後に演じられた『男女道成寺』には、福助と橋之助が兄弟で競演/共演していた。更に橋之助の三男宜生2歳が初舞台というわけで、歌舞伎座は中村家総出演のお祝いムードに満ちていた。その『男女道成寺』の最中、宜生の初舞台を報告する挨拶の口上があり、ペタリと座った宜生が平伏する様子に、観客は沸いた。2歳である。 『恋女房…』が終わってから弁当タイムとなったが、「東京極上あんぱん¥180」を食べていると、直ぐ後ろで何やら聞き覚えのあるある声がした。見ると、女優の三田寛子さんではないか。如何に鈍感な私であっても、ここまで至近距離だと、気がつかないわけにはいかないし、見間違えようもない。三田寛子さんは、私の後ろの席に座っていた婆さんに挨拶していたんだな。どこの婆さんか知らないが、御大家の奥様なんだろうと思わせる挨拶ぶりだった。 三田寛子さんは、夫橋之助はNHKに出演していたため、今年は歌舞伎座での出番がなく、今月は久しぶりの出演となったが、12月にも出ることになった。子供たちの今後共々、よろしくお願いしたいと言っていた。NHKというのは、『御宿かわせみ』のことかなあ。一瞬『新撰組』に出演しているのかと思ったが、違うよね。大変だなあ…、などと思いっきり他人事だ。舞台だけでなく、客席でも面白かった一夜だった。 最後になったが、中村芝のぶちゃんが腰元として登場していたのは、嬉しかったな。久しぶりに、可愛いかったぞ。幕。(2004,9,4) |
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