a書評

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書名:砂の女

著者:安部公房 出版社:新潮文庫 価格:\476 


安部公房は、西欧の大学では、必読書となっているとか…。合衆国在住のメル友、レベッカさんに薦められて、初めて読みましたよ。彼女は、この小説を、実存主義文学と位置付けているが、私の印象では、シュールレアリスムの味がする。英語を始めとする外国語に翻訳されている日本文学は、尽く、実存主義文学であると言われているような気がするが、これは気のせい? 主人公は、砂に埋もれなくても、自宅や職場で、同じような閉塞感を感じているわけだから、わざわざ行方不明にならなくても良かったのではないかと思う。女の存在感のぶよぶよさ加減が、ひたすら不気味に感じてしまった。実際、面白かったわ。レベッカさんに感謝。
(2003,10,15)

書名:ピエタ 死をめぐる随想

著者:ジョージ・クライン 出版社:紀伊国屋書店 価格:\3000 


スウェーデン在住のハンガリー人医師の、死に纏わる経験的エッセイ。これは、もう読んでとしか言い様がない。もの凄いインパクトがあったわ。感服いたしました。文学、芸術に造詣の深い著者が、様々な局面から、死について考察している。天才とは、何ぞや…。そんなことを考えさせる一冊である。今年の、グランプリは、ほぼこれに決定。文句なく、殿堂入りです。
(2003,8,4)

書名:化学の結婚

著者:ヨーハン・V・アンドレーエ 出版社:紀伊国屋書店 価格:\2700 


秘密結社の代名詞、薔薇十字団の四大基本文書を収録した一冊。日本語に翻訳されているとは知らなかったぜ。面白いというより、奇妙だな。以前から関心を持っていたのだが、薔薇十字団という名前のエキゾティックな雰囲気に惑わされていたという印象がある。これらの文書を読みたいという、積年の望みがかなったわけだが、あんまり薦めないよ。
翻訳者である種村季弘氏の詳細な解説には、とっても感心したけどね。(2003,7,2)

書名:ロマン

著者:ウラジーミル・ソローキン 出版社:国書敢行会 価格:\2500/\2400 


何とコメントしたら良いんだか…。前半は、所謂ロシアの文豪の作品を思わせる流麗な文体で、牧歌的な農村の風景が描かれているのだが、その後半、突然殺戮が始まるのだ。独房入りの一冊。
興味のある人だけ、読んで後悔してください。嗚呼、好奇心は、ほどほどに…。(2003,6,17)

書名:虚数

著者:スタニスワフ・レム 出版社:国書敢行会 価格:\2400 


実際しない書物の序文と、スーパー・コンピュータ
GOLEMの講義録を収めた一冊。先に出版された『完全なる真空』の続編で、序文だけでなく、件の書物それ自体を書けと言いたくなるほど面白い。バクテリアに英語を教えるなどという発想が、どこから湧いてくるのか、本人に聞いてみたいもんだ。ともかく、読んでみなければ、この本の面白さは分からない。近頃の若い者は、『惑星ソラリス』さえ知らないようだが、レムの天才を知ることは、決して無駄なことではない。是非とも、ご一読いただきたい。(2003,6,1)

書名:疎外の構造

著者:アンドレ・ゴルツ 出版社:合同出版 価格:\890 


面白かった。自己と他者の関係を相対的に考える時、疎外の構造が明らかになる。この論文に先行して、もっとパーソナルな視点から書かれた論文があったが、これはその論文を社会学的に一般化した論説を展開しているそうだ。同じようなことを、以前、私も書いた覚えがあったが、私はその問題を一般化しようとは思わなかった。この論文の基となった、『裏切者』も読んでみたいと思っている。
(2003,5,13)

書名:アースシーの風

著者:アーシェラ・ル・グイン 出版社:岩波書店 価格:\1800 


『ゲド戦記』の
5冊目。『ハリー・ポッター』人気が、ファンタジー作品に対する評価を高めたのは事実のようだ。今回、ゲドには活躍の場がない。死者がきちんと死ねるように、冥界の囲いを破壊するという物語だ。テハヌーは竜となり、人間界を去った。悪夢に苦しむハンノキが、死んだ妻と共にこの世を捨てた場面を読んだ時には、病院の待合室で泣いてしまったわ。外伝も翻訳出版の予定だという。年老いてしまったゲドにも、もう一働きして欲しいもんだと思う。是非とも、続編を期待したい。(2003,4,15)

書名:マークスの山

著者:高村薫 出版社:講談社文庫 価格:\648/\648 


直木賞を受賞した作品を、わざわざ書き直すなんてことをするのは、高村薫くらいのもんだろうと思う。書き直したとあれば、読まずばなるまい。改作後の作品では、加納兄はその気になっており、合田もゲイまっしぐらという雰囲気。そして、最も印象的だったのは、森くんがすっかり可愛くなっていたことだ。面白いぞ。それにしても、新作を読みたいんですけど…。
(2003,4,7)

書名:ラッキーマン

著者:マイケル・J・フォックス 出版社:ソフトバンクパブリッシング株式会社 価格:\1600 


或るカナダ人の俳優が、自身がパーキンソン病であることを公表し、俳優業を引退してから、既に
5年の歳月が経過していることに、少なからず驚いている。本書は、彼の自伝だが、パーキンソン病だけでなく、類似した神経病、その他の難病を、世間に知ってもらうには絶好の入門書になっている。彼を初めとするこうした難病の患者たちは、彼と同じような経過を辿り、或る認識に到達する。即ち、世界は生きるに値するということに、思い至るのである。既に名を知られているということが、誰かの役に立つと言うのであれば、是非ともそれを効果的に利用して欲しい。今後の彼の活動に、大いに期待し、少しでも多くの難病患者が、元気づけられることを願ったやまない。

「何故、私だけが、こんな病気になったのだろうか」

難病患者の誰もが、一度はこの疑問に取り付かれるという。この疑問に対して、彼は、一つの答えを示している。

「自分が病気になる以上に、他の人が病気になる理由は更にない」

その通りだと思う。難病患者の一人一人に、他にも多くの難病患者が存在し、生きようと努力していることを知って欲しい。幸いにして、私は、上記の疑問を思い浮かべたことがない。だから、私は、病人の気持ちが分からない病人だと言われることが度々ある。本書は、病人の気持ちが良く分かる人物が書いた手記なので、貴方が病気であるか否かに関わらず、ご一読いただきたい。(2003,3,27)

書名:イーサン・フロム

著者:イーディス・ウォートン 出版社:荒地出版社 価格:\1800 


メル友のレベッカさんのお薦めで読んだ本。この世で最も不幸な男、イーサン・フロムの物語だ。私は、この主人公より不幸な男を、実在、架空、いずれにおいても知らない。ぶったまけたね。彼より不幸な男がいたら、お目にかかりたいもんだと思う。『公募ガイド』で募集しても、まず見つかるまい。あれこれ書くよりも、是非読んでいただきたいもんだと思う。文句なく、殿堂入りの一冊だ。(2003,3,13)

書名:The Sailor who Fell from Grace
with the Sea

著者:三島由紀夫 出版社:Charles E. Tuttle Co.


メル友のRichardさんにもらった英語に翻訳された短編小説。日本語で読んだことがないので、オリジナルの題名は不明。中学生を主人公とした、繊細な心理小説である。面白かったけど、結末に不満が残った。しかしながら、三島の作品は、三島の作品であった。三島自身も、殴られるよりも悪いことを知っていたのだろう。世界の評価するMishimaの作品を、堪能したと言っても良いだろうと思う。(2003,3,2)

書名:黄金の羅針盤・神秘の短剣

琥珀の望遠鏡

著者:フィリップ・プルマン 出版社:新潮社 価格:\2400/\2100/\2800


ミネソタ在住の高校生に薦められて読んだ、三部作のファンタジー。私はこれが児童文学だとは思わないね。もの凄く面白かった。子供だけに読ませるなんて、もったいない。『失楽園』を読んだことのある人にとっては、こたえられない面白さがある。訳者の解説にあったように、教会関係者に、『ハリー・ポッター』の百万倍の邪悪だと言わしめたってことは、百万倍面白いってことに違いない。隣の寮とケンカしている場合じゃない。少年少女は、世界を救わなくっちゃね。今年は、面白い年になりそうじゃありませんか?(2003,1,1)

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