
  

書名:戦争広告代理店
著者:高木徹 出版社:講談社 価格:\1800

友人に薦められて読んだ一冊。面白かった。情報戦という概念が、諜報から、情報操作へと変わってしまったことを実感した。これを読んでいる時点で、国連でイラクへの査察協議が進行中だったので、ミロシェビッチとフセインが私の中で重なり、興味深かった。丁寧な取材に基づいた良書である。(2002,11,15)

書名:エマ
著者:ジェーン・オースティン 出版社:岩波書店 価格:\700\700

前半部分はただの恋愛小説だなあと面白味もないまま読んだが、後半一気に盛り上がった。ところが、最後の最後になって、ファイナル・バトルを期待させながら、登場人物たちの良識がこれを避けてしまい、実に平凡な結末を迎えてしまう。この最後さえ、もっと非常識であったなら、殿堂入りだったのにと残念に思う。良識的な読書家には、お薦めの一冊。ミスター・ナイトリーに愛されているなどという勘違いをするような女に、同情の余地はないという主人公の考察には、全面的に賛成。(2002,9,20)

書名:春
著者:島崎藤村 出版社:岩波書店 価格:\520

この夏、祖母宅でお宝鑑定をすることになった。二度目のことなので、大した品物があったわけではなかったが、亡くなった祖父の蔵書の中に、この本『春』があった。私のお気に入りの一冊だが、世代も時代も違う祖父が、どんな思いでこの本を読んだのか気になり、再読してみた。祖父は、青木と岸本、どちらの登場人物に惹かれたのだろうか。友人のプジョーは、「リベラルだったんだよ」と言う。そうなのか? 私は、祖父のことをほとんど知らない。(2002,9,4)

書名:レイテ戦記
著者:大岡昇平 出版社:中央公論新社 価格:\800\857\876

何故、玉砕なのかと思うことが度々あった。見捨てられた兵士たちが、死んでいった記録である本書を読んで、その疑問の一端が理解できたような気がする。しかしながら、納得したわけではない。太平洋戦争で、唯一地上戦が戦われたのが沖縄であるというが、その事実は真摯に受け止めるとして、他にも地上戦が戦われた戦場が存在したことを、日本人はもっと認識するべきではないかと思う。皇民化教育によって、誰もが何の疑念もなく戦争に突入したという感があるが、当時、人々は常識的な不安を感じていたのだという記述に、認識を新たにした。だからこそ、何故、戦争に向かって爆走したのかを、改めて考える必要があるのではないだろうか。
この本を読んでいる時、15年程前に亡くなった私の祖父が第八師団歩兵第五連隊に配属されていたことが分かった。レイテ島に配備された部隊に、祖父がいた可能性は低い。しかしながら、妙なタイミングではあるので、調べてみたいと思っている。(2002,8,29)

書名:タイムライン
著者:マイケル・クライトン 出版社:早川書房 価格:\1700\1700

量子論を簡単に解説しようとすると、光子の動きを例にあげるのが常道らしい。メル友のWimさんに薦められて読んだ作品。面白かったけど、あれだけ気をもたせていおいて、極秘裏に進められているプロジェクトが、大きなディズニーランドってのは、ちょっとね…。合格ラインは突破しているので、もし貴方がSFファンなら、充分楽しめると思うぞ。ジェイムズ・P・ホーガンも、似たような話を書いていたな。(2002,7,16)

書名:晴子情歌
著者:高村薫 出版社:新潮社 価格:\1800\1800

高村薫の新作である。個人的に、極めて近しいものを感じた作品である。私の祖父母や、その兄弟が、登場人物として動いているように思えたのである。折に触れ、断片的に聞いてきた昔話が、この物語に集約されているような気がした。祖父は既に故人で、祖母は呆け始めている。最早、一貫性のある話を聞くのは無理だわな…。私的な印象はここまで。過酷な奴隷労働の描写は、読者を打ちのめさずにはいない悲惨さがある。いかに人生が過酷であろうとも、人は家族を作り、子供を育てる。圧倒的な、にもかかわらず、しなやかな晴子の強さが眩しい一冊。出来れば、加納兄のその後が読みたいんですけど…。(2002,7,4)

書名:失楽園
著者:ジョン・ミルトン 出版社:岩波文庫 価格:\760\760

今まで沢山のファンタジーを読んできたが、この『失楽園』はこれまで読んだ中で、最も良く出来たファンタジーであると思う。と言うより、ファンタジーは、この作品から始まったのではないかと思えてならないのである。最も印象的だったのは、堕天使サタンが地獄で行った演説である。彼は、私がキリスト教に対して持っていた疑問を、明確に示し、地獄の住民に神への再度の反逆を促す。実に、感動ものの演説であった。思わず、応援したくなったね。ミルトンはこの作品で、私が持っていたキリスト教に対する疑問を、一つの質問の形に集約させた。神とは、一体何者なのか? 是非とも、答えが知りたいもんだと思っている。(2002,6,28)

書名:マルテの手記
著者:ライナー・マリア・リルケ 出版社:岩波文庫 価格:\300

暇だったので、また読んでしまった。ここ10年余りの間に、4回再読している。この好きさ加減は、面白いというだけでは済まされない。もちろん、マルテはリルケと同一人物であるとは、一概には断言できない。しかしながら、リルケがマルテを通して語る芸術論、或は人間観察論は、リルケ本人の考察に根ざしたものであることには間違いない。そうした詩人の思考が、現代の読者に新鮮なインパクトを与えるわけだ。一青年の手記というには、余りにも繊細な描写に溢れる一冊。(2002,6,24)

書名:神曲
著者:ダンテ 出版社:岩波文庫 価格:\560\600\660

実に面白かった。ここまで面白い作品だとは思っていなかったので、心地好い感動を味わっている。難解であることは言うまでもないが、落ち着いて理解しようと努力すれば、勝ち目が全くないわけでもない。何しろ、1300年頃までに活躍した有名人がボコボコに批判されており、キリスト以前の人物は全て地獄ライフを善かれ悪しかれ満喫している。やはり地獄編が一番面白かったと思う。以前から思っていることだが、面白い文芸作品に、余計な権威付けをするのは、不必要なのではないだろうか。面白いから、読んでみて。それだけで、充分な気がするんだけど…。頭っから、優れた文芸作品だなどと決め付けられては、読む気も失せる。確かに優れてはいるのだろうが、面白いかどうかは、読者が決めれば良い。私にとっては、再読すれば、もっと面白さが増すに違いない。そう思える作品だった。(2002,6,17)

書名:人間以上
著者:シオドア・スタージョン 出版社:早川文庫 価格:\680

ジュリアスさんお勧めの一冊。ホモ・ゲシュタルトという概念は、私に『サイボーグ009』を想起させたが、一般的な認識はのび太くんらしい。のび太くんが恥を知ることによって、シリアル・ナンバーを得ることができるというわけだろうか。「汝ら神の如くなりて善悪を知る」という旧約聖書の言葉は、人が人間性を正しく認識することによって、人間以上の存在となることを意味しているのかもしれない。(2002,6,1)

書名:電撃戦
著者:レン・デイトン 出版社:早川文庫 価格:\860

イギリス軍がフランスから退却し、フランスが降伏したところで、この本が終ってしまった。戦争は、これからだろうに!!! タイトルが『電撃戦』なのだから、電撃戦が終ってしまったら終わりってのは納得せざるを得ないが、盛り上がったところだったので、何とも残念。こう書いたら、不謹慎だろうか…。従来の歴史観とは、些か異なったニュアンスを感じたのだが、これは著者が小説家だということに起因するのだろうか。ロンメルに関する考察には笑ったぜ。(2002,5,30)

書名:ファウスト
著者:ゲーテ 出版社:岩波文庫 価格:\600
\700

実に面白かった。特に第一部は圧巻だった。本編冒頭の「天井の高い、狭苦しいゴシック風の部屋」という舞台設定で、既に殿堂入りが決定。サム・シェパード演じるメフィストフェレスがゴシック調の背の高い書棚にもたれている様子を想像して、爆笑だった。しかしながら、第二部は冗漫な感じさえあった。悲劇はマルガレーテだけで充分だったのではないだろうか。これは私の人間への理解が、未だ不充分なことが原因だったのかもしれない。是非とも舞台で観たいもんだと思う。実際、既に定まった評価のある作品は、裏切られる心配がないので、婆さんになったら読もうと思っていたのだが、私も来年には40歳になる。こうした作品を楽しんでも良い年齢に達したのではないかと思うので、今後はこうした作品の書評を掲載する機会も増えるだろう。ご参考にしていただければ嬉しく思う。(2002,5,17)

書名:銀色の恋人
著者:タニス・リー 出版社:早川文庫 価格:\602

残念でしかたがない。面白くて、哀しくて、鼻水をかみながら、涙を拭いながら読んでいたのに、最終章の第5章でこけた。あの終わり方は反則だし、最低だと思うぞ。よくある話だとは思うが、あのラストさえなかったら、殿堂入りかと思うくらい面白かったのに、非常に残念だ。(2002,5,8)

書名:生きている過去
著者:アンリ・ド・レニエ 出版社:岩波文庫 価格:\700

面白い。ロマンティック小説だと思って読み始めたが、SFのような設定に興味をそそられ、最終的にはホラーの雰囲気まで味わうことができる。スケベの後の、ジャンとアントワネットの認識の違いには、余りにも悲劇的で、爆笑ものだった。もっと知られて良い作家だと思うのだが、日本での知名度は低いと言わざるを得ない。残念なことだと思う。殿堂入りの一冊。(2002,5,7)

書名:悪の華
著者:ボオドレール 出版社:岩波文庫 価格:\660

まあ、発禁になるわな…。そう納得させるだけの強烈なインパクトを持った一冊。10代の頃、一体私はどんな風にこれを読んだのか、今となっては覚えていない。虚無より地獄とは、よくぞ言ったもんだと感嘆するね。読んでいる最中、微熱を伴うような疲労感が心地好く感じられ、しばし背徳の幻想世界に酔った。(2002,4,17)

書名:ラオコオン
著者:レッシング 出版社:岩波文庫 価格:\670

15年程前になるが、ローマのヴァチカン博物館で、ラオコーン群像を見た。ルーヴル美術館のニケを初めて見た時と同じ感動を味わったものだったが、そのラオコーン群像を材料に、展開される美術と文学との比較芸術論である。著者は、美とは何ぞやという永遠のテーマを、頗る熱心に、時には倣岸なまでに独善的に論じている。醜い芸術の存在を許すか否か。濃いなあ…。(2002,4,16)

書名:美の構成学
著者:三井秀樹 出版社:中央公論社 価格:\740

カンディンスキー展で購入した、構成学の入門書。バウハウスに関する記述は丁寧で、分かり易い。黄金分割だの、シンメトリーだの、商業デザインにも数学は必須なのね。何のために学ぶのかと問われたなら、生きるためには、数学物理の知識が不可欠なのだと答えたいもんだと思う。デザイナーに大器晩成はないと断言する著者に、脱帽の一冊。(2002,4,12)

書名:ゲド戦記
著者:アーシュラ・ル・グウィン 出版社:岩波書店 価格:\6700(4冊セット価格)

第4巻『帰還』までを通しで読んだのは初めてだった。面白かった。人間の愚かしさを哀しいまでに描写する筆致には、恐れ入るばかりである。魔法使いは、いつでも悲しい運命を背負っているのね。人間としての悲哀もまたしかり。会社で読んでいて、泣いてしまったわ。『帰還』は子供に読ませるには、少々濃い内容なので要注意。殿堂入りです。(2002,4,11)

書名:キルケゴール
著者:キルケゴール 出版社:中央公論社 価格:\1700

『哲学的断片』『不安の概念』『現代の批判』『死にいたる病』の4編を収録した一冊。実存主義哲学の入り口を示したキルケゴールの業績は、如何にも大きいと感じさせる。何度読んでも、厳しい自戒を求められる。今回は、彼のキリスト教に対する宗教観に、大いに関心を喚起させられた。キルケゴールは、奇跡は直接的に存在しているわけではないとし、創世記は人間の歴史に与えられた一つの空想的な始原であると考えている。100年前に既にこうした認識に達していた彼の思想を、信者の皆さんはどう考えているんだろうか。(2002,4,3)

書名:ナルニア国物語(1-7)
著者:C.S.ルイス 出版社:岩波少年文庫 価格:\680〜\760

大昔に読んだ覚えがあったが、忘れちゃってたので、頗る面白く読めた。ファンタジーってのは、こうでなくっちゃね。青少年には、是非とも世界を救うために戦って欲しいもんだと思う。でも、あのラストの一気終わりは、ちょっと淋しいね。現在『指輪物語』を読んでいる姪に薦めようと思っているのだが、人種差別的表現があるので、注意を促す必要があるだろう。ナルニア国に、一人だけ入ることが許されなかったスージーが哀しい。しかし、エドマンドが鉄っちゃんだったとは驚き…。(2002,3,27)

書名:Dogs
and Demons
著者:Alex Kerr 出版社:Hill
and Wing 価格:\3140

メル友のWimさんに薦められて原語で読んでしまった。かなり辛かったが、頑張った私を誉めてあげたいもんです。著者Alex
Kerrの怒りは、本物だわね。政治経済面での批判は、自分が日本人であることに恥ずかしさを覚えるほど。読んでいる最中に、次々と官僚、政治家、企業の不祥事が現出しては、日本人として申し訳ありませんの連続である。しかしながら、文化面での著者の批判は、大いに的外れであることを否定できない。現代日本のサブカルチャーで、最も評価できるアニメ作品が、『平成ポンポコ』ってのは、どうしたもんかい? この著作は、果たして翻訳されるのかどうか疑問だが、心ある日本人には、一度読んで欲しい著作であることは確かだ。異邦人の見た日本が、誤解を含め、克明に理解できる一冊。著者は、歌舞伎について書きたいと書いているが、その折には、是非とも関戸橋さくらの劇評を参考にしてもらいたいもんだと思う。(2002,3,14)

書名:ローマ人の物語]
著者:塩野七生 出版社:新潮社 価格:\3000

昨年中には出版されないのではないかと危惧したものの、年末近くなってやっとこさ書店に並んだ一冊。『暗黒の塔』を読んでいたので、これを読むのが今年になってしまった。内容が濃いわりには難解ではないシリーズだが、今回は尚更読むのが容易だった。良く知られたローマ帝国のインフラストラクチャーに関するものだからかもしれない。面白さは、期待した通り。日本のインフラと比較すると、日本人であることに恥ずかしさを覚えるわな。基礎医学は、アレキサンドリアが一番という記述には笑った。基礎医学、つまり解剖学は、ミイラ作りに欠かせないもんね。毎年楽しみにしている一冊だが、年々出版される時期が遅れている。次昨は、今年中に書店に並ぶのだろうか。心配…。(2002,1,31)

書名:暗黒の塔
ガンスリンガー、ザ・スリー、荒野、魔道師の虹
著者:スティーヴン・キング 出版社:角川書店 価格:\640〜\1800

伝説の騎士ガンスリンガー、ローランドとその仲間たちが、世界の流転の原因である暗黒の塔を目指して旅するファンタジー。面白い。この感覚は、一昨年に読んだ『魔術師の帝国』以来だね。シリーズが進むに連れて、ページ数が増えるってのが、著者のノリ具合を端的に表現していると言えるだろう。そもそも、スティーヴン・キングの推理小説は、推理すべき部分を不思議なことにしてしまっている辺りが気に入らなかった。しかしながら、不思議なこと三昧が可能なファンタジーであれば、全く問題ない。第4部まで翻訳されているが、第5部は未だ出版されていない。早く続きが読みたいもんです。メル友のWimさんお薦めの作品。(2002,1,26)



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