以下は、映画自体には関係ない記事なので、要注意。 『クリムゾン・リバー』である。フランスでベストセラーとなったという小説を読んでから映画を見た。どっちも面白かったぞ。友人は、「フレンチ・ティストのマークスの山」だと言っていたが、全然違うと思うぞと言っておこう。映画は小説の複雑さ加減を、登場人物を減らし、ロケーションを限定することで、分かり易い作りになっている。これから映画を見ようと思っている人は、原作を読んでからにした方が、より楽しめるかもしれない。友人は、映画だけでは、見終わってから解明されない疑問が残ってしまうとメールに書いていたが、私もそうだろうと思う。 さて、この項で書こうとしているのは、原作となった小説に一行だけ登場する、フランスの詩人ブレーズ・サンドラールのことだ。 カリム・アブドゥフは捨て子だった。孤児院を脱走したカリム少年は、スラム街で育つが、自動車泥棒で自活できるようになると、高校に通い始め、大学の法学部に進学し、その後刑事となった。少年期のカリムが最も親しくしていたのが、マルセルという名のホームレスだった。マルセルは、粗暴な男だったが、冷静な観察眼を持っていたため、そこにカリムは惹かれたのだった。 脱色した短い髪に、毛皮のタンクトップを着て、リストの『ハンガリー狂詩曲』を聴く男。勝手に住み込んだ空家で、ブレーズ・サンドラールを読む男。それがマルセルだった。カリムはマルセルの奇妙なインテリ趣味によって、スラム街の外にも世界があることを知る。そしてカリムは別の生き方をすることを決意し、自動車泥棒を続けながら、高校に通うようになるんだな。 ブレーズ・サンドラールという名を、私は知らなかった。上記のような使い方をされるなら、当然知っていてしかるべき有名人に違いない。だから、調べたのだ。ヤフーで検索したところ、『世界の終わり』という黙示録的世界を近未来風に描いた詩集の作者だということが分かった。つまり詩人。この詩集には、フェルナン・レジェが広告デザインを思わせる、グラフィカルな挿絵を提供している。サンドラールはレジェと共に、コルビジェが主催する雑誌、『L’ Esprit Nouveau』に参加していた。 広告デザインに詳しい会社の同僚に尋ねてみたら、レジェという名前には聞き覚えがあると言う。そして、『L’ Esprit Nouveau』について記述がある、『Source of Modern Architecture』という本を、会社に持ってきてくれた。言ってみるもんだと思う。 2月8日木曜日、件の本を見せてもらった。この日は暇だったもんで、仕事中に読んだのだけど、内容は家具のデザインだの室内装飾だの建築様式だのの歴史、デザイナーの簡単な紹介記事と、入手可能な関連書籍のリストが掲載されている、プロフェッショナル向けのガイド・ブックのようなものだった。その筋の人にとっては、かなり有用な代物だとは思うが、英文であることに加え、目当ての記事がフランス語まじりなもんで、かなり手こずった。 しかしながら、これからの私の人生において、コルビジェだの、エスプリ・ヌーヴォーだのという言葉を耳にすることがあるとは思えない。sciatica坐骨神経痛の方が、まだ耳にする可能性がありそうな気がする。 映画では、カリム・アブドゥフ刑事は、マックス・ケルケリアンという名で登場し、ヴァンサン・カッセルが演じている。アラブ人ではないマックス刑事には、マルセルという名の友人もおらず、サンドラールとの接点も全くない。件の本には、サンドラールの名は掲載されておらず、結果的に知りたいことは何も分からなかった。『世界の終わり』が翻訳されているのかどうかさえ定かではないが、いずれ何らかの情報に接する機会もあるだろう。ともかく、私にとって新しい世界を垣間見たことは確かである。(2001,2,19)
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