副官の野望
                平方 一六
 
 中国人 韓非 曰く、「法王矛盾」
 イタリア人 マキャヴェリ 曰く、「目的は手段を正当化する」
 ドイツ人 クラウゼヴィツ 曰く、「戦争は政治の手段である」
 日本人 平方 曰く、「手段は目的を正当化する。確信犯たれ」
 
 セガ・サターン『サクラ大戦2』と『ギレンの野望』をヨドバシのポイントで入手したその日は社怪人本の母体『月刊 R_write』の〆切直前だった。
 私はサクサク進むサクゲー2を早々に切り上げて夜中まで原稿書きに勤しんでいた。
 普段の執筆中はCDやMDあるいはビデオなどを再生することが多い。
 その日は『ギレンの野望』オープニングムービーをエンドレスで再生しながらワープロに向かっていた。
 
 しかぁ〜し、しかし。
 順調に原稿が進まなくなり、ふとテレビを見て、
「タイトルが『ギレンの野望』でなく『レビルの希望』だったら売れないだろうなぁ」などと思っていて気が付くと私はSSのコントロールパットを握っていた。
 そのときから私はジオン軍人フォン・ダイムラー大佐となり、総帥の副官として戦争指導に当たることとなった。
 総統官邸の廊下は静かだ、自分の靴音がカツカツと良く響く、靴に鋲でも打ってあるのだろうか?
 そして私は総統と面会した。
 
副官 「本日、高級副官部から派遣されましたフォン・ダイムラー大佐です」
総統 「大佐?少尉の間違いじゃないのかね?
 帝国海軍所属でつい3時間前まで帝都防衛任務の対妖魔特殊部隊を率いていたと聞いていいるが・・・投げたのか?」
副官 「苦しいところを衝いてきますな。
 しかし総統、選ばれた優良種たるゲームが生き残り、劣るものが淘汰される。
 当然のことではありませんか?
 あんな調子でダラダラとCD3枚分もつき合うほど暇ではありません」
総統 「うむ。そういう理由ならよく分かる。
 存分に腕を振るえよ」
 
 というわけで私は一年戦争時のジオン軍を指揮する事となった。とくにジオンモードははターン始めに
秘書 「ご采配をお願いします」(CV:井上喜久子)
 と言われてとてもいい気分。士気も萌え騰がる。
 きっと連邦では巡洋艦ムサイの代わりにレビルがムサイ男に囲まれているに違いあるまい。
 さて、連邦との戦争において、かねてより考えていた作戦を実行するため命令書を作成した。
 
 ちなみに私は『分からなくなるまでマニュアルは読まない論者』であり、とりあえず雰囲気をつかむためにも最初は委任モードにして戦略の指示だけを出すことにした。
 
 総帥指令第一号
  『グレート・デギンの徴発』
 MSもいいが、デッカイ大砲を積んだ戦艦こそ戦力の象徴、そして男のロマン。
 公王には悪いが一隻たりとも遊ばせるわけにはいかない。
秘書 「そのようなコマンドありません」
副官 「なにぃ、無いだと。良く探せっ!」
 何処行った?デギン公王、迷子か?
 まっ、まさか単独和平工作!!
 
 総帥指令第二号
  『地球降下作戦の中止とフォン・ブラウンへの侵攻』
秘書 「そのようなコマンドありません」
副官 「なにぃ、無いだと。良く探せっ!」
 作戦提案がないと拠点の占領(進入)が不可能だと。
 月のフォン・ブラウンのすぐ隣のグラナダはジオン領だというのに中立地帯は近くて遠い国だ。
 役立たずな部下どもめ、早く作戦を提案せよ。
 
 総帥指令第三号
  『第2次コロニー落とし』
 地球降下作戦は帰ってくるのが大変そうだ。
 軍隊の代わりにコロニーを地球降下させたかったが、それも作戦提案されるまでは不能みたいだ。
 この際、落とすのはサイド3でもいい。
 後は大戦艦グワジンで悠々と暮らしたかったが・・・
秘書 「そのようなコマンドありません」
副官 「なにぃ、無いだと。良く探せっ!」
 
 結局3ターンほどやってみて、総帥指令が何一つ実行できないことに気づいた。
 おまけに私が地球降下作戦を許可しないものだから地球周回軌道で待機している降下部隊を連邦軍がを次々と攻撃、ザク満載の無防備なHLVに被害が出始める。
副官 「総帥、申し訳ありませんリセットします」
 とここまでやっておいて初めてマニュアルを読み始める。フムフム・・・これは一筋縄では行かないゲームだ。
 次にエクセルを起ち上げて、ジオン軍人の初期能力データベースを作るためデータを打ち込む。
 我ながら怪社で鍛えた表作成能力がこんなところで生かされるとは思わなんだ。
 気がついたら午前3時になったので表をプリントアウトしてから寝た。
 
 さて、ギレン総帥の副官を務める私だが、夜が明ければ生計を立てるため怪社へ行かねばならない。
 しかし副官業務も疎かにするわけにもいかない。
 朝の6時に起床して眠い目を擦りながら通勤電車の中でジオン軍人能力名簿を眺めつつ作戦を練る。
 
 それにしても眠い。睡眠3時間では身が持たない。
 あぁ頭がクラクラする。仕事するフリしてFDで持ち込んだ能力データを指揮や格闘などの能力別に並べ替えたものをプリントアウト、帰りの電車で見る。
 そして、マニュアルもようやく読破、操作方法も把握して準備が整った。
 
 家に帰って、気を取り直して副官業務に復帰し、ゲームスタート今度は手動モード。
 地球に降下させるための兵力を全て連邦領のルナツーへ割り振って宇宙から連邦軍を排除。
 しかし、残業と前日の寝不足がたたり、ゲーム開始3時間ほどでバタンキュー。
 起きたときにコントロールパットを握っていた。
 私も一介の社怪人、家に帰れば週6時間前後の録画したアニメの消化をする必要があるし。
 全国9カ所に拠点を持つR_labのメンバーと連絡を取るために電子メールを打たねばならない。他にもニュースやプロ野球の結果も見たいしG1も始まった。
 しかしジオン魂がゲームを進行させろと要求してくる。
 
 翌日の通勤中に考えた。
 今のままの生活では仕事か生活かゲームに破綻をきたす恐れがある。戦争遂行のための総動員計画が必要だと痛感。
 まず移動時間も含めて6時から20時半まではどう見ても怪社に費やしてしまうだろう。帰宅後の食事を含めた家事に費やす時間を差し引いて、自由時間は22時〜翌6時までの8時間、経験的にいって5時間寝ないと死ぬので、1時から6時を睡眠時間(+怪社の昼寝が最大40分)に確保すると。私の残り稼働時間は3時間ということになる。
 普段のこの時間帯は大抵ニュースを見るかビデオを消化しつつメールを打つという作業をしていた。
 とりあえずニュースは見ない(朝夕の食事中に新聞を閲覧することで対応)ビデオは週末まで集積して一括処理するとして、メール環境を会社に移す必要が生じた。
 そんなこと考えて帰宅後直ぐゲームをガンガン進める。
 
 総帥指令第四号
  『役立たずと裏切り者は木星送り』
 というのもやりたかったが(シャアみたいな反乱分子もさんざん利用してポィしたかった)そんなコマンドはない、やむなくコンピューターの言いなりになってオデッサ、ニューヨーク、カリフォルニアと攻めたてる。
 そしてこの日もパッドを握ったまま目を覚ました。
 
 通常の通勤中はMD聞きながら読書に費やすのだが、もはや総動員の戦時体制なのでゲームマニュアルの再読
 そして手製のキャラクター能力データ表を見ながら誰を何処に配備展開させるか等の作戦を考えながら怪社へ行く。
 メール環境を怪社に移すことにはいろいろ障害がある。
 怪社ではパソコンがあまり発達していないのだ。
 業を煮やした私は出張したときなどに友人にメールを打つために自分で買ったノートパソコンを怪社に投入し、常駐させて使っていた。
 かつて私は怪社の電話回線をこっそり、見つからないように、無断で改造工事してノートパソコンに繋いでみたが失敗した。情報収集したところ、電話内線設定の事情により外部とパソ通する事は不可能と理解。
 そんな怪社にも最近LANが導入され事務所関係の人々はEメールアドレスを取得した。
 しかしである、当時私の部署に新配備されたEメール用のパソコンは同部署の7人の共有になっており。
「これではメールの着信がログインしている人しか分からないから、ワープロ打ちの外注のお姉さんに見てもらおう。
 これからは朝方と夕方に一回づつみんなのメールを一括して見てもらって報告してもらう」ということになった。
 こんな環境では、例えば怪社で
"【その他】マリナのブラは黒!とか"
 などのタイトルの付いた怪しい私用メールを着信すると今まで築いてきた社怪的地位が音を立てて崩れてしまう。
 メール送信だけは怪社の自分のパソコンで作成したデータをFDでメール用パソコンに移動させることにする。
 メール受信については家にいるときに連邦の攻撃ターン中に読むことだけは可能なのでそれで対処。
 なんと計算し尽くされた戦争計画。
 しかし、それは甘い計画だった。
 なぜなら怪社の私がいるフロアは、前後左右に1.5m間隔で机が並ぶ人口密集地帯だったからである。
 しかも私の左後方2mに位置する上司閣下からのプレッシャーは私のニュータイプとしての資質を開花させそうなぐらい強かった。
 だいたいパソコンを使っている人自体が少ないところに自分のパソコンを持ち込んでいるので目立って仕方がない。
 ニュータイプとして目覚めた私には、後方を通る人々がモニターを覗いていく気配がしきりとする。
「そんなに珍しいか?」と言うわけにもいかない。
 私は普段家では誰はばかることもなくモニター上に秀丸エディタを立ち上げてメールの打ち込みをする。
 怪社では偽装のためにワープロや表計算ソフトのウィンドを立ち上げたりその隙間に縮小したエディタで背後の陰におびえながらメールを打つ。しかし、読み込み時に怪しいメールが画面上に暴露してしまう。
 これでは誤字も多いし埒があかないのでいろいろ秀丸エディタの設定をいじった結果マクロ開発に成功した。
 名付けて「影丸マクロ」
 私は壁紙に重巡筑摩の白黒写真を使っているので背景が全体的に灰色である。
 そこでマクロを使ってエディタウィンドの背景色、文字色、入力行色を灰色系に設定した。
 これで他から見てもなにをやっているか分からない画面で作業することができる。
 さらにこのマクロを発展させてウィンドウを左下に縮小し、文字の大きさも縮小し3行だけ(見えるのは1行)表示されるようにした。
 しかもこのマクロではあらかじめ決めておいたファイルを開くようにしておいたので、作成途中のメールを暴露することなく開くことができる。
 名付けて「ステルス・マクロ」
 このマクロを使うときは
「ステルス・モード!!」(CV:緑川光)
 と叫びたいが、はやる心を抑えて我慢している。
 
 自由時間総動員法の実行によりゲーム時間の確保に成功した我が軍は順調にキリマンジャロ、北京、マドラス、トリントンと連邦の重要拠点を落としていった。
 あぁ、ザクとグワジンがあれば幸せな日々が続く。
 しかし、国力のないジオンは常に貧乏で後方基地に兵力を回すゆとりがないし個人的に「ジオンといえばMA」という嗜好があって結果的に見れば無駄金を使っていた。
 そこを狙い澄ましたように連邦のオデッサ作戦イベントが発生。連邦軍が地から湧いて来て不意を衝かれる。
 少数の駐屯部隊にマドラス、北京などからの援軍を結集して防戦し、そのほとんどを撃破するもアムロ搭乗のガンダム1機に前線が崩壊、オデッサは落ちた。
 おまけにブライトの指揮するホワイトベースがオデッサ周囲をうろついていて射撃精度が高く強ええのなんの。
 オデッサ奪回のために緊急出動したMS満載のザンジバルが2撃で沈没、オデッサにたどり着けなかった。
 ガンダム1機に占領されたオデッサに遅れた援軍で再攻撃をかけたが局地戦が長期化してセーブできないので電源つけっぱなしでその日は終了。
 
 怪社ではメール工作の続き。
 社内に個人で持参したパソコンをLANへ接続している人が居るという噂を聞きつけ情報を収集する。
 同じ大学のOB(遠い先輩)に重役で偉い人がいて、その人が自分のノートパソコンを怪社のLANに接続しているというので電話で聞いてみた。
 すると他に2人ほど(しかし2人とも重役)個人所有パソコンをLAN接続しているという。
 しかも社内LAN委員会(分かっていない偉い人ばかりが集まって方針を決めている恐ろしい組織。よって社内のOA調達・配備は神からの授かりもののようだ)で個人パソコンの接続規定が決まっている(秘密ではないが下々の者には公開されないので私にも当然初耳)という。
 最寄りの社内LAN委員である某部長に資料を要求してとくと規定を見る。
 
 局地戦の続き。
 何しろアムロが乗っているのでガンダムは固い。
 そのうえ、首都に居座っているため、群がる我軍のザクが与える損害よりも回復力の方が大きい。
 しかも味方が攻撃や防御する度に射撃戦で落とされ、その後の接近戦でさらに必ず落とされ、被害は広がる。
 ガンダム1機のためにMe163BにおそわれたB29の編隊みたいに追い散らかされるジオン軍。人海戦術でオデッサを奪還後にハワイ、ベルファストと順調に攻略。
 また宇宙では給料の3ヶ月分、もとい3ターン分の収入を注ぎ込んで開発したビグザムの開発に成功、ドズルを乗せて待機。
 しかし宇宙ではザクを擁するジオンの敵はいなかった。
 ブラウ・ブロも開発完了しシャリア・ブルも登場。
 エルメスがの開発計画も提案される。
「やっぱりジオンの華はMAだよな」
 と使い所もないのに強がってみせる私。
 このころになるとすっかりサクゲー2を途中までやっていたことを忘れている。サクサク進むサクゲーはサクサク切れるサクゲーでもあったわけだ。
 ありがとう、あかほり君。
 
 個人パソコンの社内LAN接続の条件として「本体の他にLANカードは個人購入」という規定があって、「接続に関する機器は怪社支給」と矛盾すると抗議してみたが、
「実績上、何々重役がすでにそういう風にしているので前例に従う」との前例主義に則したつれないお返事。
 また「業務上やむ終えない事情がある」というのも条件の一つだったので、しばらく間をおいてからいろいろ理由をつけて自分の上司と社内LAN委員の某部長を説得して届出を提出した。
 そのときはこれらの工作が成功すると思っていたのだが・・・
 
 ベルファストを落とした直後に連邦の星一号作戦が発動。
 このイベントが始まる少し前に連邦軍のルナツーとジャブローから地球軌道に打ち上がって来る部隊が増えていたので、我が軍は戦力の大半をルナツーと地球軌道に部隊を誘引されてしまう。
 こうしてまんまと連邦の奸計に乗ってしまい丸腰のア・バオア・クーは降って湧いた連邦軍のため陥落、生産開始したばかりの量産型ゲルググを再上陸のため向かわせた。
 さらに星一号作戦開始時にデキン公王陛下がグレート・デキンに乗って和平交渉に行ってしまう(鉄砲玉めっ!)。 開発済みのソーラーレイを集結中の連邦艦隊に対して、ゲルドルバ照準で使うかと質問された。
 キシリア閣下が怖い顔をなさって「いやぁ〜ん」な気分だったのでグレートデギンから照準を外したら 連邦の艦隊の50%を撃滅した。
 でも丸腰だったア・バオア・クーはそのターンに落とされた。
 それはいい、それはいいだろう。しかし、デギン公王が連邦と勝手に和平条約を結んでしまう。
 デギンに実権がないので戦争は続いているのだが、国民感情が悪化して厭戦気分が漂い経済は悪化する。
 しょうがないので演説イベントを選択して兵士の志気を上げた。立てよ国民。
 畜生めっ!!こんなことなら奴を沈めときゃあ良かったぜっ!!
 
 興奮さめやらぬまま充血した目で怪社へ行く。
 数日後、社内LAN委員会で下された結論は1ヶ月後にパソコンが増設されるのでそれを「優先的に割り当ててもらったら?」という結論なのか何なのかよく分からない回答であった。
 現在、私の所にパソコンが配備されているが、それでも2人共有なので怪しいメール受信環境は整っていない。
 
 天秤は傾いた。ルナツー攻略によって宇宙は完全にジオンのものになる。
 デラーズが「第2次ブリテッシュ作戦」を提案。
 即座に承認する。
 サイド7のコロニー グリーンノア は狙い違わずジャブローに落着。
 偉いぞ、デラーズ大佐。
 私はこれがやりたかったのだ、今日から君は少将だ。
 そしてジャブロー降下作戦が提案された。
 もちろん即承認してジャブロー付近で待機していた部隊を突入させる。
 しかし、宇宙で総力戦をやっていた部隊の移動が滞り、先発部隊は時間稼ぎを余儀なくされるが、その後完全制圧。
 長い戦いだった。
 しかし戦時体制の整った私はすぐに第2回目を開始したという。目出度し目出度し。

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