番号 : 066
題名 : 第1章 『目覚めるチカラ』
著作 : レイシス 様


TOP  〜the Endless Dream〜
第1章 『目覚めるチカラ』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



(・・・・・あれは・・・誰?)



混沌とした闇・・・見渡す限り何も見えない闇の中、誰かの声が響いた。              

声からしてまだ少女だろう・・・。



(・・・・・あの人は・・・いったい)



再び少女の声が闇に響く。

そしてその声に答えるように・・・除々に闇が晴れ・・・その光景が映し出される。


        
(・・・・戦って・・・る・・・?誰・・・と)



先ほどから少女には何かが・・・暗い闇の中で確かに何かが見えていた・・・。

それは・・・見知らぬ男女による戦いの光景・・・。

彼らが誰なのか、なぜ戦っているのか、まったく分からない。

そして自分がなぜ、この戦いを見ているのかも・・・。

そんな疑問を抱いた―――その瞬間、



―――カッ!!!



突然、目の前に広がる眩い光。

一瞬にして目の前に白い光が広がり・・・。

そして・・・その白い空間の中・・・彼女は出会った。



「・・・待っていたぞ」



ふいに投げ掛けられる声。

目の前の白い光の中・・・確かに、彼女は自分に話し掛けてくる者を見た・・・。



「・・・あの時・・・我が力を汝は受け継いだ」



逆光のため、それが誰なのか・・・顔も見えない・・・。

だが・・・その者は確かに・・・少女に語りかけていた。



「・・・すべて・・・見届けるのだ。それができるのは・・・ヒジリ・・・汝ただ1人・・・」



光の中・・・その者が・・・少女の名を・・・ヒジリを呼んだ。



「運命と・・・そして・・・彼らと供に・・・」



その者の声がこだまし、光が幾重にも輝く。

そして、さらに激しい光が辺りを照らし・・・。

刹那、再び少女の視界は闇に包まれた。





―――ゴトンッ!!ガンッ!ゴッ!!



「いったぁぁぁい!!?」



盛大な物音と共に、誰かの悲鳴(?)が建物中を駆け巡った。



「あいたたた・・・夢かぁ」

そう言って頭を押さえる悲鳴の主。

肩までは届かないが、光沢のある茶髪。蒼にも見える翠の瞳。

まだ少々顔に幼さを残す少女だ。

眠そうに目をこすりながら、その少女が顔を上げる。

どうやらベッドから見事に転げ落ちたようだ。

「おまえ・・・相変わらず朝から賑やかだよな〜・・・ヒジリ」

そんな彼女を見ながら、扉の前で笑い声をあげる金髪の男性が1人・・・。

「う・・・だって」

「まあそんなことはどうでもいいな。どっちにしろお前は寝坊したんだから飯はないぞ」

「え・・・?嘘ぉ!?」

「早く顔を洗って服を着替え・・・」

「朝ご飯なくなっちゃうじゃない〜!ライちゃん!どいてよ〜」

服も着替えず、慌ててヒジリはライネスを押しのけて、食堂の方へと走っていった。



「・・・相変わらず・・・速いな・・・飯だと」



いつもの事だが、と少々笑って呟きながら、ライネスも食堂へと向かった。





アセリア暦 4357年

世界中を震撼させた魔王、ダオスとの戦いから3年後。

世界は平穏を取り戻していた。

各地に潜むモンスターも大人しくなり、人々はこの3年、戦いからの復興に務めた。

世界各国の国々はそれぞれが協力しあい、民を助け、国の復興に全力を注いだ。

そんな努力もあって世界はこの3年で豊かになり、失われた自然も戻ってきた。

戦乱が終わり、新たな時代に歓喜する人々。

だが、戦いの傷は全ての人々に深く残った。

そんな傷を乗り越え、人々は必死に生きている・・・。

彼らもまたそうであった。



とある田舎にある辺境の村の孤児院。

ここではモンスターに親を殺された子供などが預けられ、生活している。

とはいってもここには大人は居ない。

すべて孤児院に預けられた子供たちだけで生活しているのだ。

だからここではライネス、ヒジリ、そしてもう一人が小さな子供たちの面倒を見ている。



――――ダダダダダダッ・・・・



「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」



全速力で食堂に走ってきたヒジリ、だが、

「ヒジリ、遅いぞ〜」

「もうご飯食べちゃったぞ〜♪」

すでに彼女のぶんは他の子供たちに食べられていた。

「あ〜!あんたたち何してんのよ〜!」

「寝坊する奴が悪いんだろうが」

後からやってきたライネスがツッコミを入れる。

「ゔう・・・そんな〜・・・」

「さて・・・それじゃあ皆は後片付けをして、町の学校に行くんだぞ」

「「「は〜〜〜い!」」」

テーブルの上で伸びているヒジリを横目に見ながら、子供たちは後片付けを始めた。

「ふにゅ・・・ライちゃん〜、ご飯・・・」

無駄を承知でヒジリはライネスにご飯の残りがないかどうか確かめる。

なぜなら、ヒジリは子供たちを町まで送る仕事があるからだ。

ここから町まではそれなりに時間もかかるし、体力も使う。

だが、

「ちゃんと皆を町まで送ってこいよ〜」

そんな希望もライネスの一言で砕かれた。

「ゔう〜・・・そんな〜(泣)」

しかたなくヒジリは朝ご飯抜きで子供たちを送るはめになったのである。





―――――ヒュ・・・



「・・・帰ったか」



・・・漆黒の闇の中、その者はつぶやいた。

「・・・それで?手筈はどうだ?」

振り向く事もなく、その者は傍らに控えている者にそう問いかけた。

「はい・・・すでに各国の周辺の町は制圧・・・潰しております。残っているのは各都市とその近くの

城辺町、そして辺境の村などです」

女性・・・傍らに使えているその女性はその者の問いにそう答えた。

「そうか・・・」

「・・・ただ・・・」

その女性はさらに話を続けた。

「数は多くありませんが・・・各地の町で我々の軍団が撃破されています。おそらく・・・あのもの達

の仕業かと」

「ふ・・・『統べし者』の忘れ形見か・・・」



―――――カッ・・・



そういってその者は持っていた杖を床に打ちつけた。

「『統べし者』・・・虚空より来たりて・・・奴らとともに我らが王を封印した忌まわしき者・・・」

「そうだ・・・我らが王はあやつに封じられた・・・。しかし・・・それももうすぐ終わる」

そう言うとその者は天を見上げた。

「あやつの力は・・・すでに消えつつある。我らが王の復活も近い」

「左様で・・・」

そして・・・男は傍らに控える女性に言葉を発した。

「『統べし者』が消えたとはいえ・・・やつらの仲間はいまだ存在している・・・。それに・・・あの

者の行方もわかっておらん・・・」

「はい・・・」

彼らはさらに話を続ける。

「あの者を逃がすために送られた時代が分かっているとはいえ・・・すでに探し始めて5年がたっ

ております。年齢的にも・・・覚醒のおそれが」

「それはないであろう・・・。『統べし者』の力を受け継いだとはいえ・・・まだ15の子供だ・・・」

男はそういって椅子に座った。

「・・・送り込んでいる者たちからの連絡は?」

「いまだ発見には至ってないようです」

「そうか・・・では例の事はどうなっている」

「はい・・・すでに準備は終わっております。ただ・・・あの物達ではいささか不安では・・・?」

「かまわんさ・・・。奴らだけで事足りるだろう」

男はそういうと再び天を見上げた。



「なんとしてでも・・・彼らを抹殺するのだ・・・」





「ふにゅ・・・今朝はきつかったよ〜・・・」

「おまえが寝坊するのが悪いんだろ」

「それ・・・朝から10回ぐらい聞いたよ・・・?」

「その10回は全部お前から話を振ってるけどな」

微妙な漫才をしながら、ヒジリとライネスは子供たちを迎えに町の学校へ向かっていた。

「・・・お?学校終わったみたいね」

「あ♪ヒジリ〜、ライネス〜♪」

そんな声をあげながら、子供たちが学校から走ってきた。

「今日ね!6英雄のこと習ったんだよ!」

「教科書に絵が載ってたけど、皆かっこいいんだよ〜♪」

そんなことを口々に子供たちが話す。

習った事を話そうとするのはいつもの事だ。

「はいはい、じゃあ帰ったらいっぱい聞いてあげるね」

「絶対だよ〜」

少々子供達の勢いにたじろきながら、ヒジリが子供達をなだめた。

と・・・ふと1人の子供が口を開く。

「・・・あ、そういえばヒジリ、ライネス。ヴァイがお昼に学校にきてたよ?」

「え・・・?ヴァイが」

「ヴァイが帰ってきてるの〜!?」

ヒジリがライネスの言葉をさえぎるように叫んだ。

「うん、学校が終わるまで町にいるって言ってたよ・・・」

「ライちゃん!あたし探してくるね!」

そう言った瞬間、ヒジリは街中に向かって走り出した。

「おい!探すのもいいが明日の食事の材料買って来いよ!」

「わかってるよ〜〜!!」

そう叫びながらヒジリは街中に消えていった。

「あいつ・・・まったく」

「いっつもだね〜ヴァイが来ると」

「ヒジリ、ヴァイのこと好きなのかな〜」

「おいおい・・・一応ヴァイヒジリや俺らの育ての親みたいなもんだろ」

ライネスが呆れたように子供たちに話す。

「けどかっこいいし〜」

「好きになるかもしれないよ〜?」

「はいはい、さっさと帰るぞおまえら。近頃モンスターが凶暴化してるっていうし、日が暮れる

までに帰り着かないとな」

そういってライネスは子供たちを連れて孤児院に向かった。





「ハアッ・・・ハアッ・・・」



行き交う人々を見回しながらら、ヒジリはヴァイを探して町中を走り回ってた。

「はふぅ・・・どこだろ・・・」

先ほどから町を5周ほどしているが見つからない。

・・・体力のある子だな・・・。

「もう〜・・・ヴァイ〜!でてこい〜!!」

やけになって叫んだりしてみる。

「お、呼んだか?」

と、突然ヒジリの真後ろから声がした。

「ひゃあ!?」

驚いてヒジリが振り向く。

茶色がかった琥珀色の髪色・・・同じ色の茶の瞳。

背の高い、やや武骨な雰囲気のある男性。

そこには懐かしい人物がいた。

「・・・うう・・・ヴァイ〜♪」

喜びの余り、ヒジリはヴァイの手を取った。

「痛い痛い痛い!!?」

「あ!・・・えへへ・・・ごめんごめん」

さすがに思いっきり手を握って振り回されれば痛いだろう。

「ったく・・・半年ぶりだなヒジリ」

そういってヴァイは手を放した。

「ほんと久しぶりだね〜♪今日は何でここに?」

「ん・・・今日はちょっと用事があってな、そのついで。だからもうこれからすぐ出発しないといけ

ないんだよ」

「じゃあ孤児院にはこないのかぁ・・・」

ヒジリがふてくされたようにつぶやく。

「悪い悪い、謝る」

「ちぇ〜・・・じゃあさ、あたし、明日の食事の買い物しないといけないの。だからちょっと付き合

って」

「へ?いいけど・・・俺がいてなんか変わるのか?」

もっともだ。

「う・・・いいじゃん久しぶりに会ったんだし」

なんとかごまかそうとするヒジリ。

「・・・まあ・・・まだ時間もあるし・・・いいぞ、付き合ってやる♪」

「・・・ほんと!?それじゃいこ♪」

そういって二人は食料店に足を運んだ。





「付き合ってくれてありがと〜♪」

「いいっていいって。暇だったしな♪・・・もう真っ暗だけど1人でだいじょぶか?なんなら送っ

て・・・」

「いいって、無理言って付き合わせちゃったし、お仕事あるんでしょ?」

「そうか・・・?それじゃ・・・ここでお別れだな」

「うん、またね♪」

そういってヒジリは歩き出した。

「・・・・・ヒジリ!」

突然ヴァイがヒジリを呼び止めた。

「ふにゅ?なに?」

ヒジリが振り返る。

「・・・・・いや、気をつけろよ」

「・・・?うん、じゃあね」

そういってヒジリは孤児院への道を歩いていった。



「・・・・・」



――――――ヒュウゥゥ・・・



「・・・ったく・・・嫌な風だな」

そういうとヴァイは町への道を引き返していった。





「ちょっと・・・買いすぎたかな〜・・・」



そう口走りながら、ヒジリは孤児院への帰り道を歩いていた。

「やっぱり・・・これは1人じゃ無理だよね・・・」

ヒジリの持っている買い物袋・・・両手に合計4つ、どう考えても無理だろう。

「もうすっかり真っ暗・・・」

すでに日は沈み、町の灯も見えない。

月明かりが森の中の小道を照らしているだけである。

「・・・静かだな〜・・・」

ヒジリがそうつぶやいた。

そう・・・虫の鳴き声も、風の音もない。



「・・・・・」



何か・・・変だ・・・。



ヒジリは得体の知れない不安を感じた。

・・・静か過ぎる・・・。

そうヒジリが思った・・・その時・・・



―――――ズドオオォォォォン!!!



「・・・え?」

突然、爆発音が聞こえた。

「・・・まさか・・・そんな!?」

そう言ってヒジリは荷物を捨て、走り出した。





・・・ヒジリは頭に浮かぶ考えを必死に振り払おうとしていた。

孤児院の方角の空が赤い・・・。

(みんな・・・みんな!)

ヒジリは走りながら心の中でそう繰り返した。

そして、ヒジリはようやく森の小道を抜けた。

抜けた先にはいつものように見慣れた建物がある・・・はずだった。



「・・・・・・・・・・」



ヒジリはその場に立ち止まった・・・。

(何が・・・)

自分の視界に映る光景・・・そこにあったものは・・・燃え盛る業火・・・炎に包まれた建物・・・



―――――ゴオオオオオ・・・・ォォ・・・



「・・・いや・・・そんなの!?」

そういってヒジリは燃え盛る孤児院の中へと入ろうとした。



「・・・くっ・・・・・」



「!?」

かすかに聞こえたその声をヒジリは見逃さなかった。

「今の・・・声・・・」

孤児院から少し離れた場所に立つ木・・・その木陰に・・・ヒジリは見覚えのある顔を見つけた。

「ライちゃん!?」

そういうとヒジリは、一目散にライネスに駆け寄った。

「ヒジリ・・・か」

「ライちゃん!だいじょ・・・」

そこまで言ってライネスを見たヒジリは言葉を失った。

全身にひどい火傷・・・そして体の至る所に切り裂かれたような跡があった。

そして周りには何人かの見慣れた子供達がいき絶えている・・・。

「・・・なんで・・・こんな・・・」

かろうじて生きているライネスも、とても助かるような傷には見えない。

おそらくもう長くはないだろう。

「ヒジリ・・・逃げろ・・・あいつは・・・」

「もういいよ!喋っちゃだめ!」

必死に伝えようとするライネスを、ヒジリは制止した。

だが、ライネスは続けた。

「見たこともない・・・モンスターだった・・・。・・・あんなモンスターはこの辺にいるはずがないの
に・・・」



モンスター・・・。

この辺りには出現するはずの無い強大な力を持ったモンスターが孤児院を襲ったこと。

そのモンスターは逃げまどう子供達をなぜか執拗に狙ったこと。

その行為をとめようとしたライネスもまた、モンスターの餌食になったこと。

ライネスは残っていた命を振り絞って、ヒジリに事実を伝えた。



「ライちゃん・・・もう喋っちゃダメだよ!」

目に涙を浮かべながらも、ヒジリは話を続けようとするライネスを止めようとした。

「ヒジリ・・・逃げるんだ・・・はやく・・・」

だが・・・それは現れた・・・。



「ほう・・・まだ生きてる奴がいたのか・・・」



それは突然背後から聞こえた。

その声に反応して、ヒジリは後ろを振り返った。

そこにいたのは・・・

成人の男性のような声・・・しかし・・・その体はゆうに人の3倍はある。

一対の巨大なコウモリの翼・・・長い角・・・そして・・・長い黒髪の・・・モンスターだった。

「ほう・・・小僧もまだ生きてたのか・・・」

そう言ってそのモンスターは、左手の巨大な爪を振りかざした。

「まあいいか・・・まとめて殺せばいいこと・・・」

「逃げろぉ!!ヒジリぃ!!」



――ドン!!



「あ!?」

突然ヒジリはその場から突き飛ばされた。

何が起こったのか・・・その瞬間は分からなかったがすぐに理解できた。

ライネスが自分をかばって・・・・・

そしてすぐにヒジリはモンスターの方を振り返った。

・・・だがその瞬間・・・ヒジリはその場を動く事が出来なくなった。

「・・・お嬢ちゃんは運がよかったな。・・・だが・・・どうせお嬢ちゃんもこの小僧のように死ぬことに

なるんだ・・・逃げても無駄だよ」



・・・そこで見た光景は・・・



・・・モンスターに胴を貫かれ、横たわっている・・・



いつも一緒だった・・・親友の姿・・・



「うわあああああぁぁぁぁぁッッ!!!!」

瞬間、ヒジリは腰に差されたナイフを手に取り、地を蹴っていた。

「はっ・・・人間風情が・・・」

自らに向かってくるヒジリに対して、そのモンスターは口から炎を放った。

「ああッ!!」

灼熱の炎に包まれ、激痛がヒジリを襲う。

「う・・・ぐ・・・」

炎は消えたが、激しい火傷の痛みが体中を駆け巡った。

「じゃあな・・・お嬢ちゃん」

間髪入れず、モンスターが丸太のような尾をしならせ、ヒジリを弾き飛ばした。

その衝撃で、ヒジリは燃えさかる孤児院へと吹き飛ばされる。

人が耐えられるはずの無い衝撃。

そしてその瞬間、ヒジリの意識は閉ざされた。

そして・・・2度と動かなくなった・・・


・・・・・・・・・・



(・・・ここはどこ?)



誰にともなく、彼女・・・ヒジリは問いかけた。

自分は死んでしまった・・・モンスターの一撃で・・・。

・・・だが・・・なぜか自分には意識がある・・・。



そして・・・その人と出会った・・・。



『力を手に入れたいか?』



・・・誰かが・・・確かに誰かが語りかけてきた。

死んだはずの自分に・・・。



『自分の全てを失っても』



誰かは分からない・・・。

・・・しかし、ヒジリはその声に聞き覚えがあった。



『だが・・・それは過酷な運命の始まり・・・そして・・・汝はすべてを背負うこととなる・・・』



いつだったか夢で見た・・・なぜだか懐かしい人の声・・・。



『しかし・・・汝が望むならば』



・・・いったい誰なんだろう・・・。



『護るべきものが・・・あるならば』



けど・・・ヒジリはその声に



『我は力を貸そう』



自分を・・・身をゆだねた。



『我が名は・・・〈統べし者〉なり・・・』





「ふん・・・あっけないものだな・・・人間は・・・」

全てを終えたらしきモンスターが、そう呟いた。

「これで・・・あの御方の言ってた任務も一応は終了か。・・・しかし見つからないねものだな・・・。あ

るいは・・・もう既に殺してしまったか・・・」

そう言うとモンスターは、足元に横たわるライネスを見た。

「・・・そういえばこの小僧・・・大した力もないくせに・・・俺に傷をつけてくれたな・・・」

そう言ってモンスターは怒りを込め、頭を踏み潰そうとした。

・・・・・その瞬間・・・・・



―――――キイイイイイィィィィィィッッ・・・・・



「ん・・・なんだ・・・?」

突然響いた甲高い音を聞いて、モンスターは顔を上げた。

だが・・・そこで起こっていたことを見たモンスターは驚きの声を上げた。

「な・・・なんだこれは!?」

そう・・・燃えさかる孤児院を中心として幾千もの・・・まるで蛍のような淡い光の粒が漂っていた。

「まさか・・・これは・・・」

モンスターの顔に驚きと焦り、そして恐怖の顔が浮かんでくる。

そして周囲に漂っていた光の粒が、徐々に燃え盛る孤児院へと集まっていった。

そして・・・



―――カッ!!



突然眩い光が当たり一面を包み込んだ。

「クゥッ!!・・・な・・・なんなんだ!?」

余りの眩しさに、モンスターは思わず目を塞いだ。

そして・・・

光が止んだその場所で、モンスターは信じられない光景を見た。

辺り一面を覆い尽くしていた炎は消え、



そして・・・目の前には・・・



「ば・・・ばかな・・・」

そこには青白い光の翼を広げ、淡い光を纏ったヒジリが立っていた。

「そんなはずはない!なぜ生きている!?」

何が起こったのか・・・それは誰にも分からなかった。

モンスターも・・・そしてヒジリ自身にさえも。

だが・・・モンスターはその時・・・思い出した・・・。

自分がなぜ世界中を回り、まだ大人になっていない幼い少年、少女を殺めてきたのかを・・・。

「・・・ま・・・まさか!?・・・お前が・・・」

モンスターの表情に明らかに恐怖の色が浮かぶ。



『・・・ヒジリの願い・・・』



そう言ってヒジリがモンスターに向かって歩みだす。

「ヒッ!?」

モンスターがたじろく。



『・・・大切な何かを護る・・・その願いに・・・』



・・・確かにその言葉はヒジリが発している・・・だが・・・。



『たとえ・・・過酷なものになろうとも・・・』



その言葉は・・・ヒジリと・・・そして別の何かが発している・・・。

おそらくそれは・・・≪統べし者≫と名乗った者・・・。

「くッ・・・来るなぁァァァァッッ!!!?」

モンスターが再び火炎を放つ。

そして、それはヒジリを包み込んだ。

「は・・・ハハハ・・・なんだ・・・弱いものだ・・・!?」

その光景は・・・またしても信じられないもの・・・。



『・・・私は力を貸し・・・わたしは・・・アナタを倒す!』



一瞬にしてヒジリを覆っていた火炎は消え去り・・・ヒジリの周りには・・・幾つもの光り輝く魔法

陣がえがかれていた。

そしてヒジリには・・・火傷の跡さえもない。

「う・・・うわぁぁぁぁッッ!!!!」

恐怖に刈られたモンスターが、ヒジリに向かって突進する。

だがその行為は、あまりに無駄なことであった。



『集え命の輝き、結っせよ・・・光の咆哮!!!』



周囲にえがかれていた魔法陣が、ヒジリの前方に集まり・・・青白い巨大な魔法陣へと変わった。



『滅べ・・・悪しきモノよッッッ!!!!!!』



その声とともに、魔法陣と背中の翼が青白い激しい光を放ち、一筋の槍となりモンスターを

つらぬいた。

「あ・・・あ゙ああああああぁぁぁぁぁッッ!!!?」

まるで、太陽のようなまばゆい光・・・。

絶叫とともに、モンスターはその光に飲み込まれた・・・。

蒼い・・・まばゆい閃光・・・。

その光が全てを包み・・・夜の闇を照らす・・・。



そして・・・辺りを再び静寂が包み込んだ。





―――チュンチュン



穏やかな陽射し・・・静かな朝。

薄暗かった孤児院に、陽射しが当たり始める。



―――ザッ!



「くそ・・・遅かった・・・」

すべての終わった場所に・・・ヴァイはやってきた。

昨日感じた不安・・・それにかられて戻ってきたが、今はその場所は廃墟となっている・・・。

「・・・・・」

確かめるように、ヴァイは孤児院の周りを歩む。

・・・と、先ほど居た場所からは見えなかった孤児院の裏手に、前まではなかった物を見つけた。

それは・・・辺りから集めた木を使って作られた幾つもの十字架・・・粗末であったが・・・墓には変わ

りなかった。

そして・・・その片隅には・・・自分のよく知る少女・・・。

「ヒジリ・・・」

「・・・ヴァイ・・・」

何か声をかけようとする。

・・・何も言葉が出てこない・・・。

夜あった出来事・・・それをすべて受け止めた・・・。

自分がこのことを≪判っていた≫だけに・・・。

「・・・あたしのこと・・・知ってたの・・・?」

そんな沈黙を破るように、ヒジリがヴァイに問うた。

昨日あった出来事、それをヒジリはよく覚えていない・・・。

けど・・・自分に何かがあるという事は・・・なんなく気づいてしまった・・・。

自分の・・・奥深くのモノ・・・。

「・・・ああ・・・知ってた・・・」

ヴァイが答える。

その言葉を聞いて、しばらくヒジリは黙っていた・・・。



「・・・あたし・・・決めたよ・・・一晩中考えて」



ヒジリが語りだす・・・。

「あたし・・・自分の事を・・・知りたい」

「・・・・・」

「お父さんやお母さんが誰なのか・・・なんであんな力があるのか・・・。あたし・・・自分のこと何にも

知らない・・・だから・・・」

目に・・・涙が溢れる。

「だから・・・みんな・・・」



―――ザッ!



「あッ・・・」

いつの間にか・・・抱きしめられていた。

「・・・ごめんな・・・ヒジリ」

ヴァイが語りだす。

「俺は・・・多分すべてを知ってる。けど・・・だからこそ言う事が出来なかった。ヒジリのお父さ

ん・・・あの人との約束だったんだ・・・」

「・・・ヴァイ・・・」

「今はそれを言う事は出来ない・・・けど・・・いつか時がくれば必ず分かる。そして・・・その時に話

す・・・全部を・・・」

ヴァイはそう言うと、抱きしめていたヒジリを離した。



「ヴァイ・・・ありがと」





「じゃあ、行ってくるね♪」

澄んだ声が、森の中の一角に響いた。

「ああ・・・またな」

崩れた孤児院の中から荷物を探し出し、旅支度を整えたヒジリを見送る為、ヴァイはヒジリと一

緒に森の出口にいた。

「ん、見送りありがと♪」

「ああ・・・ヒジリ」

「ん?なに?」

「俺は何も話す事が出来ない。けど・・・まずは、ある人物に会いにいくといい。それがこれからの

旅の始まりでもある・・・」

「ある人物・・・って・・・誰?」

ヒジリが尋ねる。

「ん・・・まあ・・・まずはミゲールの町を目指すといいさ。そこにいる・・・英雄に会えばいい・・・」

「英雄・・・」

「それと・・・これも渡しておく」

そう言ってヴァイは、腰の袋から1冊の本を取り出した。

「何?この本・・・」

不思議そうにヒジリがその本を眺める。

見た目はかなり古い本・・・。

所々痛みがひどいし、表紙もかすれている。

「ミゲールに行ったら、この本をみせるといい。そうすりゃ後はなんとかなるさ」

「ふぅん・・・わかった♪」

そう言ってヒジリはその本を受け取った。

「ああ・・・。・・・ごめんな、一緒に行けなくて」

申し訳なさそうにヴァイが答えた。

「いいよいいよ、これはあたしの問題だしさ!・・・それに・・・」

「ん?」

「何年か前にさ、隠れて見ちゃったし。ヴァイがいっつもどこにいっちゃうのか、んで、どうい

う人なのかも♪」

笑いながらヒジリが答えた。

「・・・お〜ま〜え〜!」

「あはは♪ごめんごめん。けど一緒にいた女の人、可愛かったね〜♪」

「そこは関係ないだろ!!」

すぐさまヴァイツッコミを入れる。

「あはは!じゃ、またね〜♪」

少々怒っているヴァイから逃げるように、ヒジリはミゲールの町の方向へ続く道を走っていった。

「・・・ったく・・・バレてたのか」

ヴァイが小さく呟いた。

「・・・やっぱ・・・心配だな、1人で行かせるってのは。いくらあの人の運命を受け継いでて

も・・・」



・・・・・でも・・・それが・・・あの人の意思・・・・・



ふいに聞こえた、澄んだ女性の声。

だが、ヴァイの周りには誰もいない。

「・・・そうだな。・・・あいつが・・・自分の意志で歩む道なら・・・おれらはただ見守る

だけ・・・か」

だが、ヴァイはまるで声の主がそこにいるかのように言葉を発した。

そして、腰に下げていた・・・細めの鎖で繋がれた銀色の紋章を手にとった。

比較的華美な装飾の施された、円形の小さなエンブレム・・・。

「・・・もう込められた力もこれで最後か・・・そして・・・始まる・・・」

手にとった銀色のエンブレムを見ながら、ヴァイが呟いた。

「・・・行くか」

そして・・・目を閉じ、祈るようなしぐさをする。

すると・・・手にもった紋章の中央・・・蒼い宝玉が輝きだした・・・。

瞬間・・・

―――カッ!!!!

閃光とともに、そこにいたはずのヴァイは忽然と姿を消していた。





「・・・・・じゃあ、行ってくるよ」



風の音、木々のざわめき。

心地よい陽射しが降り注ぐ町。

その町の片隅にある一軒の家、そこで2人の人物が話をしている。

「ええ、行ってらっしゃい。・・・けど、ほんと随分時間がかかったんじゃないの?決心するまで」

片方の女性が、今までを思い出しながら男に尋ねた。

「うるさいな・・・まあ・・・決心のつかなかった私も私だったがな」

「けど、決めるのに1年もかかるのはさすがにおかしいんじゃないの?」

男性の言葉に、すかさず女性が指摘する。

「う゛・・・。だ、だがこうやって今日『これ』を封印に行く事にしたんだ!別にいいだろう」

女性の言葉に、男が顔を赤くしながら答えた。

「クスクス♪はいはい、そうね・・・♪」

「ふう・・・まったく・・・」

少々ばつが悪そうに、男はかぶっていた帽子を深くかぶる。

・・・やがて、決心した男は、女性に告げた。



「・・・じゃあ・・・行ってくるよミラルド」



「ええ・・・行ってらっしゃい・・・クラ―ス」





あとがき

レイシス「てなわけで知ってる人はお久しぶり!初めての人は初めまして!なレイシスです。小
説を書いたのはかなり久しぶりなんで忘れられてるでしょうが・・・」
アーチェ「まったくよ!あんた書くのサボりすぎでしょうが!!」
レイシス「・・・って!?今回出てないのになんでアーチェが!?」
アーチェ「後書きであたしが扱いやすいからでしょ・・・?作者・・・」
レイシス「う゛・・・そうですすいません」
アーチェ「まったく・・・で、今回の話って何?なんかかなりシリアスだけど・・・」
ヒジリ「というか書き方全然変わってるよね・・・」
レイシス「はい・・・なんせ前回の小説から今回まで約半年ちょいたってるからね・・・その間いろん
なとこの小説を見て影響されまくったよ。てか今見るとかなり前の小説恥ずかしい・・・」
ヴァイ「いいんじゃねえの?若さゆえのあやまちってことで」
レイシス「なんとなくどんどんオリキャラの皆さんが出てきてるな・・・」
アーチェ「そういえばほんと今回オリキャラばっかだけど・・・なんで?」
レイシス「あ、そうだった。ストーリーの紹介をしないと」
ヒジリ「遅いよ気づくの・・・」
レイシス「えっと・・・今回から続くこのストーリーはファンタジアの世界を中心にしたオリジナ
ルストーリーです!話の資料としては『TOP本編』あと小説の『語られざる歴史』と『魔剣忍
法帖』を基に書いてます。おなじみのファンタジアの面々と一緒に、今回この話の中で中心とな
るオリキャラのみんなが新たな冒険を繰り広げるって感じです!!ちなみに構想4ヶ月(爆)」
アーチェ「あんた・・・本気?オリキャラ出したりしてそんな無謀なことするなんて・・・。だいたい
今回から続くってことは・・・何話もあるってことでしょ!?」
レイシス「そうです。続きますしかもオリキャラのヒジリが中心というとんでもないストーリー
で」
ヒジリ「無謀よね・・・ストーリーもちゃんと出来てないのにこんなことしちゃってさ」
ヴァイ「アホだな」
レイシス「うう・・・話の大筋は出来てるからなんとか・・・それにちゃんとファンタジアのメンバー
だって大活躍させるんだし・・・」
ヒジリ「まったく・・・ちゃんと書いてよ?みんなから名前借りてるんだし」
アーチェ「・・・みんな?」
レイシス「実はね・・・この話の中に出てくるオリキャラはほとんどがエンドレス・ドリームのチャ
ットや掲示板の皆の名前からとってるんだ(それぞれ許可をもらって(1部例外あり))」
アーチェ「だから題名が・・・」
レイシス「うん、安直に」
アーチェ「うっわぁ・・・実はオリキャラの名前考えるのが面倒だったとかでしょ」
レイシス「ギクッ!・・・いやそれはないよ、うん!」
アーチェ「ふ〜ん・・・ま、そんなことやってんだったらほんとちゃんと書きなさいよ!」
レイシス「そりゃもちろん!」
ヴァイ「んじゃ、最後にオリキャラ設定を」
レイシス「おう!ではでは・・・」

ヒジリ・フォルトゥーナ 15歳
今回の物語の中心キャラの1人。10歳の時孤児院に入れられた。それ以前の記憶がなく、彼女
の名前はその頃孤児院で子供達の世話をしていた老人につけられた。明るく、前向きな性格で誰
からも好かれる性格。だが、彼女には秘められた謎の力が眠っている。はたしてその力とは・・・。
ヴァイ 24歳
ヒジリやライネスのいた孤児院をしばしば訪れていた剣士。彼が幼かったヒジリを孤児院へと預
けた。ライネスやヒジリ、孤児院の子供達に剣や格闘の手ほどきをしていた。ぶっきらぼうだが
根は優しく、気を許した相手には心を開く。だが、彼は重大な秘密を握るもう1つの顔がある・・・
それは・・・。
ライネス・フォルトゥーナ 17歳
孤児院の最年長、子供達をまとめるお兄ちゃん。セカンドネームがヒジリと一緒なのはヒジリと
同じようにかつて孤児院にいた老人に名をつけられたから。優しいお兄ちゃんという感じだが、
少々ひねくれた性格。ヴァイに稽古をつけられていたりしたため、剣の腕は中々。だが、そんな
彼や子供達を悲劇が襲う・・・。