ドイツビールめぐり(その5)
翌朝、ハンブルグに着きました。ハンブルグ行きは当初の予定ではなかったのですが、北部ドイツに足を延ばしたい、ただそれだけの理由で出発直前に予定に組み入れました。ですから特に行きたい場所が有るわけでなく、ドイツ中部のケルンへ戻る列車の時間まで街歩きをすることにしました。ハンブルグはエルベ川の河川港で、エルベ川沿いには煉瓦造りの倉庫が建ち並んでいます。朝のウォーミングアップにはちょうど良い距離で、大きな荷物をコインロッカーに入れてからそちらへ歩き出しました。朝の倉庫街は人影少なく、早春の冷たい風が吹いていて余計に寂しく感じられます。運河沿いの風が吹き抜ける倉庫街の散歩を早めに切り上げて、とりあえず高架線を走っていたUバーンに乗りこみました。ハンブルグ名物の「飾り窓」でも見に行こうかとも思いましたが、さすがに時間が早いのでパス。代わりに19世紀末期に建築されたというネオ・ルネッサンス様式の市庁舎を眺め、早めに駅に戻りました
ハンブルグから9時47分発のIC505列車に乗って大聖堂で有名なケルンKoln
に向かいます。途中にブレーメンBremen、ドルトムンドDortmund、エッセンEssenといった中学・高校の地理の授業で習ったような年を通過していきます。ハンブルグから4時間、13時51分にケルンに着きました。高架線で終着駅ではないものの、大きな鉄骨のドームに覆われたホームはヨーロッパの主要駅の風格を漂わせています。荷物をコインロッカーに入れて、駅前に出ると、目の前にケルンのシンボルでる大聖堂がありました。まさに駅前に大聖堂がある、というより大聖堂のすぐ近くに駅があるのですが、あまりに接近しているので、ちょっとびっくり。
私がケルンに行った理由は、ケルンのシンボルである大聖堂を見物するためでなく、ケルンのシンボルの一つであるケルンのビール、ケルシュKolschを飲むことでありました。ケルシュと言えば大聖堂の目の前にあるドーム醸造所Dom-BrauereiやキュッパーズKueppersあたりが有名でしょう。私は有名な醸造所の一つ、Atlstadt-BrauのジオンSionという銘柄ケルシュを飲むことにしました。駅から少し歩いた所に店があります。変な時間帯に行ったので店は空いていて、適当な席に座りました。注文するビールは当然ケルシュです、というよりケルシュしかありません。シュタンゲンと呼ばれるケルシュ専用のグラスに注がれ、クランツと呼ばれる独特の手提げのお盆で運ばれてきたケルシュは黄金色。見るからに爽やかな色合いです。フルーティな香りと爽やかな飲み口のおかげで、さーっと体に入ってゆきます。グラスのの容量は200mlと決まっていますから、すぐに飲み干してしまいます。するとケーベスとかヤコブと呼ばれているウェイターが空いたグラスをさっと引き取り新しいグラスを置いていくのです。そしてまた飲む、すぐにグラスが空く。するとウェイターが新しいグラスを持ってくる、それの繰り返し。グラスを置く度にコースターに鉛筆でチェックして、何杯飲んだか解るようになっています。

ジオンの名物である、直径4センチ長さ50センチの巨大ソーセージは一人では食べきれないので、「ハルバー・ハーン」と呼ばれるライ麦パンとチーズの盛り合わせを注文。ケルシュの苦みの効いた味にとても合う。もう一杯飲めと言わんばかりの強い視線を送るウェイターから、更に何杯もケルシュを頂戴して店を出ました。
ケルンからローカル列車に乗って30分ほどのブッパータールWuppertalに向かいました。文字通りブッパー川の谷間talに細長く開けた街は、地方工業都市の一つなのですが、この地方都市を世界的に有名にしているのが、ブッパー川の上を走る懸垂式のモノレールです。1900年に開通したという歴史を誇るモノレールは、いつかは乗りたいと思っていたモノレールでした。
ブッパータールは観光客が訪れるような街ではなさそうでガイドブックには掲載されていませんが、運良く事前に地図付きに観光パンフレットを入手することが出来た。それを頼りにブッパータールに向かいます。地図を見るとDBのブッパータール中央駅まで行かずに2つほど手前の駅で降りればモノレールの終点に近いようです。ローカル列車を降りて地図を頼りに歩いていくと、鉄骨で組まれたモノレールの線路が見えてきました。そしてオレンジ色に塗られたモノレールが通過してゆきました。一瞬にして永年の想いがかなえられたようで、うきうきしながらモノレールの駅に向かったのでした。

造られて100年以上建っている鉄骨は無骨そのもの。駅の造りもクラシカルです。モノレールの終点はトロリーバスに接続しているようで、それを眺めてから、モノレールの均一運賃の切符を買ってホームに上がります。ホームに立つとモノレールは発車待ちをしていました。数分間隔で運転されていますし席も埋まっていたので1本後の列車を待ちます。そして次の列車の運転席の後ろの特等席を確保。発車を待ちます。走り出して最初の数駅は街のメインストリートの上を走り、やがてブッパー川の上に飛び出しました。懸垂式モノレールは、日本では今ひとつ発達していないようで、乗り慣れていないせいか、真下が丸見えの光景にはスリルを感じます。水面からは15メートルほどでしょうか、車両の落下事故が起きないのか心配になりますが、やはり事故は起きたようで、途中の区間で鉄骨の取り替え作業が行われていました。
反対側の終着駅まで乗り通して空中散歩を堪能しました。再び切符を買ってブッパータール中央駅まで折り返し、ローカル列車に乗ってデュッセルドルフ
Dusseldolfへ向かいました。