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髭はアホか?

信じられないかもしれないが、いや別に信じる信じないはこの話にはあまり関係がない。まあとりあえず、僕は今日初めてというか今さらこの歳になってというか、ついに自分で髭を剃ってみたりした。憧れのT字剃刀(髭剃り?)でだ。

これはどういうことかというと、僕は髭が殆ど生えない主義だからだ。主義? なんで生えないのかは僕にはわからないが、いや実際には生えないというわけでもない。生えるのだが、それが俗に言われるような髭ではなく、むしろ産毛と呼ばれているような毛なわけだ。そんなわけでイキもあまり宜しくなく、実に一ヶ月に一回くらいの割合で行く床屋での髭剃りで事足りてしまうというわけなのだ。

それがなんでまたわざわざ自宅でしかも自分の手を煩わせてまで髭を剃らなければならなかったのか。そこから物語は始まる、というわけでもないのだが、早い話が床屋へ行く金が無かったというのがトドのつまりで、都合良く今は冬ということで、下手に短く切ってしまうと寒くて自分の首を絞めることになりかねないというか、まあこれはちょっち大げさとしても、髪の毛というのはある種の防寒具、あるいはそれの名残なのであるから、あながち間違った見解ではないはずだ。

しかしさすがに3ヶ月以上床屋へ行かないと、気持ちが悪い。ていうか実は髪を伸ばしている最中だったりするのでその辺は全然桶なのだが、いわゆる髭の辺りとかがこれまたいわゆる髭剃り感覚を欲してくるわけだ。床屋、つまり理容院だが、僕は美容院へは行かず必ず理容院へ行く。理由はあの顔をあたって貰うのがたまらなく気持ちイイからであり、ていうか実は学生の頃、とある床屋のねーちゃんが超お気に入りで彼女に会うためだけに意味もなく理容院へ通ってみたりなんかしちゃったりして!!っていうか、意味なく通えるほど富豪な学生でもなかったから通えたらイイなぁというか、とりあえず通学路はソコの前を通るようにしてた。

ともかくそんな学生時代の甘酸っぱいアホな思い出はさておき、髭の辺りに髭ならまだしも産毛がフサフサしてくると何かと都合が宜しくないわけだ。なんせ産毛だから、牛乳を飲むと産毛にまとわりつくとか、いやそんなことは無い。ていうか牛乳は滅多に飲まない。じゃあ何だ? わからんがとにかく髭系の産毛を剃りたくなってくるのだ。

では剃ろうということになって、バビュンと愛車(姉の)をかっ飛ばしセブンイレブンでT字剃刀を買ってきた。使い捨てのものと迷ったが、やはりこれから末永く使うのだからと刃のトコだけ交換できるのにした。ていうか末永く使う気ならコンビニで買うなよというツッコミが自分に入ったがこの場はひとまず無視する。髭剃りのほかにアレも必要だ。アレ、つまりシェービングジェル、というと長いがようは泡だ。あの泡のスプレーがついて1500円のところを今なら900円とかいうセブンイレブン特価のヤツが気に入った。安いから。お買い得だから。末永く使えなくてもこれなら元はとれそうだから。

さあ買ってきたしパンツも脱いだ。ってことで途中経過は割愛して風呂に入った。やっぱ髭を剃る、しかもT字でときたら、風呂で桧椅子に座って鏡に向かわなくてはならない。これはこの歳になるまで自分で髭を剃ったことがない僕の固定観念だ。あまり通った覚えのない銭湯での記憶が刷り込まれているのだろうか。いやたぶん親父と一緒に入ってた頃の記憶だろう。まずタオルをしぼって背中を2回叩く。ピシャッピシャッってカンジ。これは何なのだろうか。気合いを入れるためなのは何となくわかるが、ていうか気合い入れてどーする。先祖が侍だった頃とかの名残か? ていうかウチは農家だ。

泡スプレーをぎゅっと押したら泡が出ると思ってたのだが、泡じゃなくてジェルが出てきた。しかもかなりの勢いだったため、目標(右手)を外れて後ろへ飛んでいった。かなり損したが、そのためのお買い得セットだ。気にしてはいけない。もう一度、今度は勢いのことも考えてちゃんと右手にジュルッと出して、さてここからの作業はかなり推測で行わねばならないのだが、とりあえずそのまま顔につけてぐちゃぐちゃと泡立てた。あんまし泡立たないようだが、そんなモンなのかもしれないし、ともかく鏡を見れば顔の下半分は真っ白。これこれ、これだよ。やっぱ男として生まれたからにはこれは必須の体験だよな。情緒あふれる雰囲気を醸す薬味というか調味料というか、ていうかココで超重大な問題が発生。刃が無い。

はじめから付いてたのは刃じゃなくてキャップだったのだ。おそるべしセブンイレブン。ここでとるべき道はひとつ。部屋に戻って刃をゲットしてくるのだが、問題は今僕はパンツすら履いていないことだ。ていうか風呂に入ってんだから当たり前だが、いや人によってはパンツを履いたまま風呂に入ったりするかもしれない。そういう可能性は無くは無い。二重否定は肯定なのだから。っつーかそんなことはどうでも良くて、とにかくいったん部屋へ戻った。めっちゃ寒い。風呂上がりは暑いからと部屋のストーブを切って窓を開け、室温を下げていたのが失敗だった。むちゃくちゃ震えながら刃をゲット。顔下半分真っ白で素っ裸という、このまま街を濶歩したら間違いなく捕まるが恐怖の大王が降ってくる前日とかなら是非とも新宿とかを歩いてみたい、とかいうあまりにマヌケな姿を姉とかに見られてはいけない。いや見られたところでどうというわけでもないのだが、そこはかとなくプライドってモンが。ていうかうーたんに思いっきり見られた。うーたんってのは猫だがとりあえずメスだし、何より超カワイイのだが、顔の下半分真っ白というのは恐るべき形相だったのだろうか。とりあえずミギャとかいって逃げてしまった。あとで謝っておこう。わけわか。

というわけでまた所定の位置についた。戦闘再開。戦闘? ていうか所定の位置って? しかしまたココで超絶に重大な問題が発生。剃り方がわからない。ていうかそれ以前に刃を付けるのだが、どっちが上なのかわからない。さすが俺。

まあ刃の向きは何とかなった。手でこう触った時に、ひっかかりがあったら、それがつまり刃の付いてる向きなのだから、それに合わせて付けてやれば良いのだ。しかし剃り方が問題だ。わからないのだ。お買い得セットが入ってた箱っていうかケースっていうか、それを見ても「動く2枚刃」とか「特殊な5層構造のパーツが髭を根元から立たせます」とか「替刃の交換はスピーディ」とかしか書いてないのだ。はじめて髭を剃る人向けの説明が全くない。一体何事かというか、ホームページのURLすら書いてない。困ったものだ。ていうか書いてあったら嬉しいのかというとそうでもないが。お客様相談室の電話番号を発見するも、風呂に電話があるようなナイスな家庭でもないが、そうか、そのための携帯電話か。と思いもしたが、ここで電話して聞こうものなら面白くてネタにもなるってものだが、申し訳ない。そこまで僕は面白いヤツではないのだ。

人々はどうやって髭の剃り方というものを学ぶのだろう。顔の下半分真っ白にして髭をどう剃ったものかと悩む僕は、ふとそう考えた。小学校や中学校の授業で、髭の剃り方なんか習ってない。義務教育のくせに。家庭科で卵焼いてる暇あったら髭のひとつも剃れるようにしてくれぇっていうか、いや卵焼きは重要だというか僕の得意料理のひとつだ。っつーかマジでそんなことはどうでもよくって、とにかく髭を剃りたいのだ剃りたくて剃りたくて仕方ないのだそのためにT字剃刀も刃が替えられるヤツにしたんだしお買い得なヤツを買ってきたわけなのだし。

実はためしにスッと当ててみたらうまくいったりした。全然悩む必要なんかなかったのだ。親父がやってたようにやればそれで良かったわけで、つまり親父も親父の親父がやってるのを見て真似たんだろうし、親父の親父も親父の親父の親父のしぐさを見よう見真似したのだと思う。つまり親父の始祖だけが独自に髭の剃り方を開拓したのだと思われる。ていうか誰それ。

とにかくこれは気持ち良いことだけはわかった。もう床屋なんかいらない。嘘。でも床屋の良さの半分は失われたってカンジだね。これがもっと髭がジョリジョリの人だったりしたら、剃り心地もさらに良さそうな気がする。丸坊主にした時に髪の超短いところを撫でるような気持ち良さがあるに違いない。髭を剃るというのは基本的には男性のみに許されたものであって、これは男に生まれたからにはとことん楽しまねばならないと思う。基本的にってのが謎だが。ていうか許されたってのも。

つまり男と髭ってのは切っても切れない仲というか腐れ縁みたいなもので、髭を剃るというのはもはやお約束なことだったりするわけだから、それが惰性にならないように、楽しんでやれたら良いなあって思ったっていうか、そのためにももっと髭を濃くしたいなあとか思ったっていうか、いやそれはそれで面倒くさそうだからイイやこのままで。そのかわしたまぁ〜に、こうやってT字剃刀で髭を剃って、くぅ気持ちイイぜぇとかいってたりしたほうが、そのほうが絶対に普段は楽だし定期的に快感だし何かと良さげというか、それがささやかな幸せなのだなとか思った。

しかし、髭はアホか? 進化しないのか? なぜ毎回同じトコロから生えてくるのだ。どうせ剃られることはもうイイ加減わかってるだろうに。T字剃刀でたま〜に剃るのは気持ちイイが、髭にはもっと賢くなって欲しい。

草稿:平成11年2月21日 yuu
本稿:平成11年6月20日 yuu

髭はアホか? について寄せられた感想

読み物の感想文

僕はしごく簡潔にまとめると「髭剃るのは大変だけどローソンですね」です。

コンビニ内の雰囲気的にはローソンは通いなれていたせいか安心できるのですがCMではファミリーマートです。なぜかというと、ロドニーのキャラがかわいいからです。しかし、うーたんかわいいなぁとおもいました。

ところで、yuuが髭を剃る為に車にのって悩んでいて、それでジェルを買って帰ってきて素っ裸になってお風呂に入って刃が付いてなかった所は面白かったです。この冬のさなかにすごいなぁと思いました。

僕もこの物語の主人公みたいに活躍してみたいと思いました。

平成11年2月22日 匿名希望・グラスノスチ(当時23才・リーマン)

ロンリー髭ブルース

私の場合は髭が驚きの堅さを持っていて、これはもう床屋さんもあまりの堅さについむきになって剃ってしまうくらいのお墨付きなのです。堅いとナニがアレなのかというと単刀直入に表現してみれば剃れないということなので、そこを無理して剃られちゃったりすると髭でないものが剃れていくというかなんか痛いんですけど。

という感じで動く二枚刃などはもはや私の敵ではなく、特殊な5層構造のパーツも語るに落ちるのであります。ちなみに一番剃れるのが変え刃無しの何本組で売っているアレ。

平成11年2月24日 全世界の匿名希望の代理人