建物花火覚書

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秘伝の書


 でんがく
竹を適当な長さに切り一寸程度に割り縄で綴り篭状にし、反古紙を張り、防火及び下地として胡粉を塗る、絵は多く墨で書かれた。

 仕掛
仕掛には竹を形状に合わせて切り、これに麻縄を通し合わせ目に「ソロビン」(爆薬)を通して止める。
「ソロビン」又は「ソロリン」は、爆発花火で点火により継ぎ目を解く役をする。仮立を行う時は1つのでんがくには2つの仕掛をするを良とした。これは、仕掛の不発を防ぐ為である。

 みち火(導火線)
古くはみち火(導火線)は撚って作られたが、これは縦にすると火薬が片寄り、火が伝わらない事があったので、後に紙に糊を付けて糊で薬を溶いたのを置き、紙を二つ折としてみち火とする事が考えられ、火薬が固定され確実に導火する様になった。これを竹皮で巻き包み防湿とした。

 火薬
材料は硝石、桐灰、硫黄、鉄粉等で、これ等の原料は薬玄で細く煉り砕き混合した。混合の割合によりみち火その他の花火が作られるので、その調合の割合は秘密にされていた。当時の花火に色物はなかった。

 ソロリン
黄色花火で、仕掛に使用されたがこれは購入した。

 カル子
花火の筒として竹が多く利用されたが、筒に用いる竹は釜で煮て油を抜く必要がある。さもない時は火薬に湿りが来ると云う。長い竹筒の場合は節を抜くのであるが、この作業は難しかった。

 防湿
みち火の防湿用として葦(よし)を用いた。よしの茎に糊附けたみち火を四つ折にして通す。ロ火を付ける時は多く竹皮で巻いた。建物花火は、十時頃点火されるので夜露による湿りを防ぐ必要があった。

 火薬の詰方のこつ
火薬を筒に詰めるには、多小の湿りが有る方がよく、それかと云って湿りが多いと、鉄が錆びてだめになるのでその具合は難しく。普通、適度の湿りを得るために、木陰の土地に紙を広げて土地の湿りを火薬に移す事が行われた。

 流星
流星は筒に火薬を詰め粘土で穴を埋めてから噴出孔をあける。この穴は薬の奥深くまで通す必要があった。これは一時に多くの花火に点火させ噴出力を大きくする為である。流星は数間の大きなものも作られたが、普通は一間程のものである。時として「流星に傘をつけることもある。流星の打ち揚げは、点火してから相当の力が出るまで保持して放手すのがこつである。この様にして舞い揚がった流星は数間の長さのものが数尺に見える程高く揚がる。ある時打ち揚げた流星が流れて桑谷(くわがい)に落下したと伝う。流星は多く作られず町内で一本が普通で、時には荷が重い時は立小便と云って揚がらない事もあった。

 唐傘の打揚
唐傘の打揚には松などの筒を使用し、筒の中にゲス板を入れその上に薬と傘の順に入れ、導火線穴より点火する。火はゲス板を通り薬に入り爆発し傘を打揚げる。傘は空中で開きくるくる回転しながら落下する。

 ぼんでん
ロウソクにみち火を使用して点火することである。

 ブドウ
大平のぼんでんの変型と見られるものに御給村の「ぶどう」と称するものがある。これは棚に多くの提灯をつるしそのロウソクの点火に導火線を用いた。その点火は上手であり、みち火に樟脳を使うためとも云われる。

 手筒作り
村の青年は建物の制作には参加しなく主に手筒を作った。建物の準備には前後十日の日数がかかり、縄などは村民各自が藁を持ち寄り小舞縄(約二分五厘)程の太さの縄をなってこれを建物の縄とした。

 細川の建物
細川の建物は四方正面で大きなものであるが、二分程建物が見えるためほぼそれが何か知る事が出来た。これにくらべ大平は三方正面で点火されなければその物を知る事が出来なかった。

建物花火の出し物の名で記憶されていたものは。(西町)拝殿、(辻中)乃木さん、飛行機、電車、地蔵堂、秋葉堂、紫神殿、等がある。


 火薬の調合は秘伝とされ、一部の人に伝授されてきた。そして種々の工夫が加えられ、年毎に変わった花火が作られた。杉本に残る古記録によるとその数、六十余が知られている。
 記録は明治七年までの調合を記す某所有の手悵で、この人は、花火造りの指導者の一人とされる。
 
 調合の記録には略符号で薬を挙げているが次のようになる。
 ヱ=煙硝
 正=樟脳
 キ=桐灰
 イ=硫黄
 テ=鉄粉
 ハ=灰 即ち炭の事

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掌サイズの大きさ


 この灰には桐炭を最上とし、松、麻、竹、柳、ススキ、カル(不明)などの灰が使用された。ソリン又はソフリンとあるのは黄色花火で鶏かん石を主とする薬。その取り扱いは慎重であったのでソロリソロリと扱ったところから「そろりん」と呼ばれたと云う。鉄粉、焼?、ロクショウなどは花火に赤・黄・青の色を出すために混ぜ入れたものである。
 

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HP「大平町周辺の昔ばなし」
愛知県岡崎市東部口碑伝説覚書より
(c) Syouichi Masaki,1998 2000,JAPAN
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