大平並木の中ほどにある三軒屋の西辺りに天狗の休み松と云われる松があった。この松は枝が八方に伸びて鳥の巣のように、こんもりと繁った松で、この木に、時々、天狗が来ると赤い火が灯り輝くことがあったと云われる。この辺りは、天狗の通り路にあたるので、時々、天狗が来て休むと松に火が灯った。 里の若者が町で遊びすぎ、夜遅く、この並木道に通りかかり、天狗松の火を見て、天狗が来ているのを知り、頭に草履(天狗は不浄を嫌う)をのせて、天狗松の下を恐る恐る通り抜けようとすると「そこへいくのは誰だ」と雷のような怒り声が落ちてきたので、若者は驚いて逃げ帰った。それから、天狗のいる怖い並木道は通れないので、遠くの御用橋を通り、里に帰ったと云う。 里の農夫は、大平並木に天狗の火が輝くのを見て、「天狗さんの火が灯ったから」と言って野で働くのを止めて家に帰ることにしていた。 |