翻訳についての個人的メモ04 「聖ペテロ祭の殺人」

プロの翻訳家でもなく仕事で翻訳をしているのでもないカドフェルファンの一個人が、己の英語力を省みず「これはおかしいじゃないか!」と思ったところについてあれこれ書き殴っています。気の向いたときにこっそり追加したり訂正したりしています。間違い・思い違いなどご指摘いただければ幸いです。
※ページ数は旧版(社会思想社)によります。

 p.23
訳文:「マークはそれを聞いて、安心した」(←どうしてこんな短い文に句点を入るのだろう??)
原文:"The word diverted Brother Mark's thoughts very agreeably."
Divertには「気を紛らわす、慰める」という意味もありますが、ここは単純に「夕食ときいて、マークの考えはあっさり別の方向に向けられた」(かなり意訳)。この方が後に続く文と釣り合いがとれている気がするんですが。ブラザー・マークって可愛いですね。

p.23
訳文:「彼女は、何度も見たことがある『受胎告知』のマリアの絵そっくりに輝いて見えた」
「受胎告知」は間違い。原文のここの部分は"Visiting Virgin"で、これは身重のマリアが、同じく聖霊によって聖ヨハネを身ごもった従姉妹のエリザベツを訪問したエピソードを指します。ちなみに『受胎告知』は"The Annuciation"。

  p.23
訳文:「あのときのことは、まるで夢のようです」
原文:"It was no more than a dream, then."
冬(『修道士の頭巾』)にヒューがカドフェルに会ったときにはおめでたの話は出なかったじゃないか、という問いかけに対し、ヒューは冬以来カドフェルに会ってないし、「その時は子供のことは夢見ていただけ」というのがここの文脈ではないでしょうか。

  p.24
アラインが買いにいったものは「乳母車」ではなく「ゆりかご」です。cradleっていつから乳母車になったんだ…。そして12世紀に乳母車はあったのだろうか…乳母(ナニー)はいただろうけど…。タイヤの無い時代の乳母車って乗り心地げっつ悪そう。

  p.92
訳文:「ラドルファスの厳格さはもうみんなが知っていたが、どちらかというと規律を守りさえすればよいというふうで、抜け目のないタフな商売人という一面もあった」
原文:"Radulfus had already shown himself both an austere but just disciplinarian and a shrewed and strong-minded business man."
"but"の解釈で意味が180度変わってしまうという例。
「ラドルファスはすでに、厳格ではあるが単なる規律一辺倒の人間ではなく、また鋭敏であり意志の強い実務家であることも充分示していた」 (うーんイマイチだな)。
こうして並べてみると何となくラドルファスの印象が変わりませんか?

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