聖歌

聖歌でまず思い出されるのはグレゴリオ聖歌ではないでしょうか。グレゴリオ聖歌はもともとローマ・カトリックの典礼音楽(聖書などからの言葉が音楽に乗せて歌われる。ラテン語)で、7世紀のグレゴリオ1世に因んだ命名ですが、実際にはそれ以前から各地で使われていた音楽を元に8〜9世紀に成立したと考えられています。

グレゴリオ聖歌はネウマ(右図)という記譜法で書かれており、音の高低はわかっても音の長さや強弱を記す符号はありません。『聖域の雀』でブラザー・アンセルムがリリウィンのメロディーを書きとめていたのもこのネウマであったと思われます。

典礼は大きくミサと聖務日課に分かれます。ミサは『最後の晩餐』に由来するもので、司祭が信徒に聖体拝領を行う儀式。ミサには通常文 (1年を通して原則的に変わらない部分) と固有文 (特定の祝祭日や行事のみに使われる部分) に分かれています。数あるミサの中でも一番多く作曲されているのは『死者のためのミサ』すなわち『レクイエム』です。勿論他にも復活祭のミサ、聖母マリアの祝日のミサ、クリスマスのミサなど各種のミサ曲がさまざまな作曲家によって作られているのはご存知のとおりです。

ミサでの重要な聖歌にはキリエ(Kylie:神の憐れみを乞う歌)、グロリア(Gloria:神の栄光を称える歌)、クレド(Credo:信仰を告白する歌)、サンクトゥス(Sanctus:神への感謝の歌)、アニュス・デイ (Agnes Dei:平和を祈願する歌)があります。だいたいどのミサ曲でも歌詞は同じです (当たり前か)。ちなみに『修道士の頭巾』9ページで聖歌先唱者のブラザーが『聖賛美歌として…云々』と言ってるのはSanctusでした。

グレゴリオ聖歌よりはるかに知られていませんが、別にアンブロジアン聖歌というものがあります。聖アンブロシウスはミラノの聖人で、アンブロジアン聖歌はグレゴリオ聖歌よりもメリスマ(母音を長く伸ばして歌うこと) と音程がより自由になっているのが特徴です。

聖歌の話からはちょっと外れますがヒルデガルト・フォン・ビンゲン(Hildegard von Bingen, 1098〜1179)について。彼女は『修道士カドフェル』シリーズとほぼ同じ年代の実在の人物です。ドイツのマインツ近郊に貴族階級の両親の元に生まれました。4歳のときに修道院に預けられ、十代半ばで修道女となり長じて尼僧院長となりました。
彼女は幻視者・予言者として非常に有名でしたが同時に優れた薬草師であり医学もたしなんでいました。それはもしかしたら彼女が病弱であったことと関係があるのかもしれません。充分なラテン語教育を受けることはありませんでしたがラテン語で本を書き、詩を書き、そして自分たちのための賛美歌を書いています。

百聞は一見に如かず(音楽の場合「百見は一聴に如かず」と訂正すべきでしょうか)、一度聖歌やミサ曲を聴いてみて下さい。ついでにキリスト教絵画なんぞ見ながらだと気分が盛り上がっていいかもしれません♪
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