| ドロシー・リー・セイヤーズ Dorothy L. Sayers (1893-1957)作家 真実を隠し続けた女のミステリー |
| ミステリーの女王と言うと、アガサ・クリスティ。そのクリスティと同じ頃のイギリスで人気を2分にしていたのが、ドロシー・リー・セイヤーズです。 ドロシーは、オックスフォードで聖歌隊の隊長を兼務する牧師の父と、知識人の家柄と言われる母との間に誕生。語学に優れていたおり、1912年にオックスフォード大学のサマヴィル・カレッジ(1879年創立。当時は女性に学位は授与されず、ドロシーも1920年になって学位を受けることが出来る。英国元首相のマーガレット・サッチャーもここの卒業生)に進学しています。 卒業後は、教師などをしながら、詩や小説を書いていますが、1917年に父の助力で書店兼出版社のブラックウェルズに転職。ここで彼女の代表作とも言えるウィムジー卿シリーズの彼自身のモデルと言われるエリック・ホェルプトンと出会います。彼に思いを寄せるドロシーは、エリックがフランスの学校経営を任されると、ブラックウェルズを解雇されたのを機にエリックの秘書兼事務として渡仏。けれど、この恋は実らず、ドロシーは一年で一人帰国することになります。 ロンドンにとどまった彼女はまた教師などの仕事を始めますが、かなり苦しい生活でした。安定した生活は出来ないのに、それでも書くことを諦められないドロシーは、再び父の経済的援助を得て、書き続けていた長編小説を出版社に送り続けます。そして、1921年に小説を受け入れてくれる出版社が現れたのです。 翌年、ロンドンの広告代理店ベンソンズにコピーライターとして就職。ここでジャーナリストであり作家のロシア系ユダヤ人のジョン・クルーノスと恋に落ちます。23年に「Who's Body?」が出版され、ドロシーはジョンと結婚し子供が欲しいと希望しますが、所詮彼は落ち着くことの出来ないボヘミアンの作家でした。 旅立つ彼を引き留めることが出来なかった彼女は、ジョンとは全く正反対の男性と交際します。「オートバイが好きな現実的な男。そんな彼こそが結婚に向く男性なのだ」とドロシーは結婚を夢見ます。が、それも儚い、けれど現実を伴う結末を迎えるのです。男は去って行き、ドロシーには妊娠という事実だけが残されました。 「両親には絶対知られたくない」、そう思ったドロシーは、密かに産んだ子供にアンソニーと名付け、幼なじみの年上の従姉妹であり大親友のアイビーに預け、時々訪ねるアンソニーには「おば」だと言っていました。そして、子供の父親になってくれるであろうオズワルド・アサートンと結婚します。12歳年上の彼は元軍人でジャーナリスト。今度こそドロシーの願いは叶うはずでしたが、オズワルドが渋っていたこともあり、実現しませんでした。彼女は人気作家となり、ベンソンズを退社し、家も購入しました。作家として自分以上に稼ぐ妻を夫は疎ましく思っていたようです。 ドロシーは成人したアンソニーに自分が母であることは告げたものの、夫が病死したあともアンソニーと暮らすことはありませんでした。 1957年12月に彼女は自宅で亡くなります。誰にも看取られない孤独な死でしたが、絶対に両親に知られたくないアンソニーの秘密は守られたのでした。(2001-04-15) |
| 派手でスキャンダラスのな印象のクリスティと正反対のドロシー。彼女が登場させたウィムジー卿は、ダンディーで紳士であり、女の子が夢中になる王子様のような探偵。つきあう男性と結婚を一途に願う彼女の姿は、時として結婚願望の強いお堅い女性の印象も受ける。恋する旅に失望し、結婚相手に求めるものをランクダウン(と言うべきか悩むところだが、私にはそう見える)していった彼女が男性に本当に求めていたものは、何だったのだろうか? 子供のためにも結婚したいと願っていたドロシー。人気作家となり書くことにその全精力を傾けたいと思う気持ちを子供のために譲ることが出来なかったドロシー。ロマンスなど、ミステリーなど何もないと常に言っていたドロシー。でも、ウィムジー卿のような男性を誰よりも何よりも待っていたのは彼女自身なのではないかと私には思えてならない。彼女はいつも言っていたという。「私について書くことは何もないわ。ごく平凡で何の面白みもない人生なのよ。だから、探偵小説の中で思い切り空想の冒険を繰り広げるの。ロマンスやミステリーは小説の中だけで、その後ろには何もない。うんざりするような毎日の繰り返しなんて知りたいと思わないでしょ。主人も社交が苦手なの。私は家では本当に平凡な主婦なのよ」 平凡の裏側に潜むものは何であろうか? 以下は彼女の著作である。日本では東京創元社、早川書房、光文社などから 文庫本として出版されている作品もある。長編小説 ●Whose Body? ●Clouds of Witness ●Unnatural Death ●The unpleasantness at tne Bellona Blub ●The Documents in the Case ●Strong Poison ●The Five Red Herrings ●Have His Carcase ●Murder Must Advertise ●The Nine Tailors:Changes Rung on an Old Theme in Two Short Touches and Two Full Pwals ●Gaudy Night ●Busman's Honeymoon 短編小説 ●Lord Peter Views to Body ●Hangman's Holiday ●In the Teeth of the Evidence and Othere Stories ●A Treasury of Sayers Stories ●Lord Peter:A Collection of All the Lord Peter Wimsey Stories ●Striding Folly その他 ●The Floating Admiral ●Ask a Policeman ●Six Against the Yard ●Double Death ●The Scoop,and Behind the Screen ●Crime on the Coast,and No Flowers by Request |
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