「ポケットモンスター アドバンス・ジェネレーション」
ロケット団SS

 
 

             「君の名は」


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 今日も今日とてロケット団、「ヤなカンジ〜」で吹き飛ばされて、流れ流れ
て山の中。夏涼しくて、冬も涼しい(というより凍える)洞窟で、ボロボロな
がらも生きている。白い明日が来ることを、信じて…

「なんだかんだと呼ばれなくても!」
「答えてあげるが、世の情け…」
「おいしい食料つかむため!」
「飢えとひもじさ、しのぐため…」
「愛と真実のためポケモンセンターを襲う!!」
「貧しくもはかない敵役…」
「ムサシ!」
「コジロウ…ちくちく」
「銀河を渡るロケット団の二人には!」
「ホワイトホール、白い空腹を満たせると、いいな…ぬいぬい」

「だーかーらー!さっさとポケモンセンターを襲って、食料と、ついでに預け
られてるポケモンどもを奪おうって、さっきから言ってるでしょーが!アンタ
たち、少しは人の話を聞けっつーの!」
 オリの中のリングマのようにうろうろしていたムサシが、ついに怒りを爆発
させた。が、コジロウとニャースは驚かなかった。いつものことだから。
「ニャ?針が折れたニャ。サボネア、針をよこすニャ…って『ミサイルばり』
じゃないニャー!!」
「よーしよし、サボネアは裁縫が上手だなぁ。その調子でがんばれよ…うあっ、
だから抱きつくな、と、トゲが刺さるー!!」
「んだから、おんどれらしまいにゃ火噴くぞおりゃー!」
 文字通り『火炎放射』しそうなムサシの勢いに、ため息交じりにボヤく二人。
「まぁ落ち着いて考えてみるニャ、ムサシ。ニャーが西向きゃ尾は東。
ニャーたちは、東からピュ〜っと、ヤなカンジ〜で吹き飛ばされて来たニャ。
当然、東の町にはニャーたちロケット団の手配書が、出回っているはず…」
「そんでもってここは、一本道の街道のド真ん中。西には大きな町があるけど、
すたこら逃げても、すぐに追いつかれちまうぜ。そろそろジャリンコ軍団が、
ふもとのポケモンセンターに着くだろうからなぁ。あいつらのしつこい追跡で、
何度ヤな目に遭ったことか…
 山越えする手段は気球しかないから、こうやって一所懸命破けたところを、
つくろってるんじゃないか。そんなに急かすんだったら、ムサシも少しは
手伝ったらどうなんだよ」
「ヤなこった、ベーッ!そんなチマチマしたこと、このクィーン・ムサシ様が
やってられっかってのっ」
 ムサシがソファ(どこで拾ってきたのか、かなり年季が入っている)に、
ふんぞり返っている間も、地道な作業を続ける男どもだった。
「それにしても、ここのふもとのリバティタウンのミルクは最高ニャ。いや、
ミルクだけじゃニャイ、チーズもヨーグルトも絶品だったニャ〜 あまりもの
でいいから、また分けてほしいニャ〜〜」
「うんうん、こういう平和な土地で、の〜んびり暮らすのも悪くないよな…」
「ケッ、な〜に言ってんだか。そんなの、アタシらがよそ者だからちょっと
サービスしてるだけでしょうが。こういうちっこい町はね、住んでみると結構
やりにくいんだから。どこの生まれだの、どういう素性だの…ほかの町で悪口
言いふらされたくないから、ちょっと媚を売ってるだけなのよ!」
 赤貧にして極貧の少女時代を過ごし、ねじれねじくれ果ててしまったムサシ
の言葉には、ヤケっぱちながらも、どこか真をついたものがあった。
「でもさぁ、恵んでもらうミルクの味が、その日によって違うんだよなぁ。
オレんち、専用の牧場があって、ミルタンクを何頭か飼ってて…ミルタンクの
体調によって、ミルクの味って変わるんだよな…」
 大金持ちの御曹司らしい、無意識のうちに現れるコジロウの育ちの良さは、
そのたびにムサシをいらだたせるのだった。
「あーそうですかい!アタシなんざ、腐ってなければミルクなんて御の字よ!
育ちの良いのは聞き飽きたっつーの、何不自由ないご幼少をお過ごしになり、
結構なことですねっ!!」
「そりゃあ、食うに困ったことはなかったけどさ…だからって、自由だったわ
けでもないんだぜ。屋敷の中で習い事やテーブルマナーやら詰め込まれてたん
だからさぁ…」
「んなこたどーでもいいの!もー付き合ってらんないわ、一人でポケモンセン
ター襲撃してくる!食料盗ってきても、アンタらには一切分けてやんないから
ねーっだ!!」
 捨て台詞の果てにアジトを後にする姐御の合羽姿を、篠つく雨のなかボンヤ
リ見送る二人。
「…止めたほうが、よかったんじゃニャーか?この雨の中、険しい山道を下る
のは、さすがのムサシでも無茶だと思うニャ」
「そう思うなら、おまえが止めてみろよ。オレは、『りゅうのいかり』を食ら
うのは、ゴメンだぜ…」
 ギャラドスとムサシは怒らせないのが無難だという事実は、コジロウの身に
染みついていた。体験上。

「ムサシのやつ、遅いニャ… ニャッ!今、悲鳴が聞こえなかったかニャ?」
「ああ、麻袋を破くようなバリバリという叫び声が…ムサシ!」
 土砂降りの雨でドロドロになった下り坂の途中、泥だらけになったムサシが
…
「ムサシ、しっかりするニャ!息はあるけど意識がない、ど、どうするニャ?!」
「こ、こういうときはだな、まず落ち着いて大量のお湯を沸かすんだ。それか
ら、清潔な布を用意して…」
「お産の用意をしてどうするニャ!と、とにかく医者を…」

「あ、あの…ここはポケモンセンターですから、人間の診察は…」
「ジョーイさん!今ここに、迷える子メリープがいるんですよ、救いの手を
差し伸べるのが、あなたの使命じゃないんですかっ!」
「そうですニャ、リングマやギャラドスを診るジョーイさんなら、たとえ凶暴
なムサシでも、全然だいじょうぶですニャ!」
 なんだかよく分らない剣幕の中、看護師姿もりりしいジョーイさんは、なん
とかムサシの容態を診てくれた。
「わ、分りました。人間のお医者さんは、東の町の急病人を診るために往診中
ですし。ええと、外傷は…頭部に打撲跡あり、コブになっていますね。ケガが
それだけなのは幸いですけど…意識が戻らないのが心配です。意識障害が起こ
らなければいいのですけど…」
「意識障害?それって、どういう……」
 言いかけた時、ポケモンセンターのドアが音をたてて開き、数人の少年少女
が駆け込んできた。

「まいったまいった、すんげぇ土砂降りになるんだもんなぁ……」
「あーん、服がぐしょぬれになっちゃった〜これって、最悪かも」
「ジョーイさん!!自分の雨降りハートを晴天のように照らしてくださるのは、
あなただけです。ぜひ、メールアドレ…いててて」
「はい、そこまでにしておこうね〜サトシ、お姉ちゃん、とにかくモンスター
ボールをジョーイさんに預けるんだよ。ボクら以上に、ポケモンたちの治療が
大切だよ。ほら、タケシも!」
 最年少のマサトが、四人組の中で一番しっかりしているのかもしれない。
サトシとハルカ、そしてタケシは手持ちのモンスターボールをジョーイさんに
預けた。残っているのは、しましま模様に長い耳、黄色い電気ネズミ・ピカ
チュウだけである。
「はい、モンスターボールはお預かりします。そのピカチュウは、ちょっと
待っててね。このポケモンセンターは規模が小さいから、治療は順番を待って
もらうことになります。部屋数も少ないので、さっきの患者さんと相部屋に
なりますから、そのつもりでいてちょうだいね」
「へぇ、ほかにも泊まりの人がいるんだ。って、どこに?」
 あら?と、ジョーイさんも辺りを見回した。ストレッチャーの上には、泥水
が残るばかり。
「おかしいわね…女性の患者さんと、付き添いの男の人と、ニャースがいたん
だけど……」
「それって、もしかして、ロケット団かも!悪の秘密結社の連中なんです!」
「きっと、ポケモンセンターの食料とモンスターボールを狙いに来たんだ…」
(ど、どうして、オレたちの目的が分ったんだ?あいつ、エスパーポケモンか?!)
(…んなこと考えるまでもなく、ニャーたちの常套手段だからだニャ…)
 すばやく身を隠した三人組。すると、ムサシの意識が戻ってきた?!

「ロケット団?秘密結社?アクア団やマグマ団なら、聞いたことあるけど…」
「そのアクア団、マグマ団の上前をはねようっていう、セコイ連中です。オレ
の故郷や、ジョウト地方ではかなりの勢力をもつ、悪人どもなんです!」
「ホウエン地方で悪いことをしてるのは、ムサシっていう、いつも怒鳴りちら
している女の人と…」
「コジロウっていう、ムサシの尻に敷かれてるけど、ときどき本気で暴走し
だすヤツと…」
「二本足で立って人間の言葉をしゃべる、悪賢いニャースの三人組なんです!」
(あ、アイツら、言いたい放題・言いやがって…誰が尻に敷かれてるだ!)
(的を得ているだけに、ツラいニャ。しかし、ニャーの頭脳明晰を見抜いてる
とは、さすがは長年の宿敵のことだけはあるニャ〜)
 ジョーイさんの表情が、みるみる曇った。特に「しゃべるニャース」につい
ては、思い当たる節がある。部屋を見てくると言って、センターの奥に向かっ
ていった。
(チャンスだニャ!この隙に、食料と奴らのモンスターボールを奪うニャ!
コジロウ、早くポケモンを出すんだニャ!)
(そんなこと言ったって、サボネアは裁縫で疲れてて、戦える状態じゃないし
…おい、ムサシ、おまえのポケモンを出すんだよ!)
だが、ムサシ女史の視線はボンヤリとして、不確か。いったい、これは…
〈チリーン〉
「うわぁ、チリーンの『いやしのすず』だ!なごむなぁ…」
「ホント!雨でぐしょ濡れになった、イヤな気分が吹き飛ぶかも!」
「う〜ん、よく可愛がられて育った、いいチリーンだな。って、あれ?
チリーンがいるってことは…」
「ピッ、ピピッカチュウ!」

「こりゃー、敵をなごませてるニャー!しかも、まだ攻撃もしてないのに、
回復用の技を出してどうするニャ!」
「おお、愛しいチリーン、敵味方の区別なく回復させるなんて、さすがオレの
初恋の愛ポケ。離さない、オレはおまえのことを、ぜったいに守るぞチリーン
…うわぁ、前が見えない!わかった、わかったから、巻きつくなっ」
〈チリーン〉
「ラブシーンはそこまでニャ!相手はピカチュウ一匹、こっちのポケモンで
総攻撃すれば、勝ち目はあるニャ!食料ポケモン、まとめていただくニャ!」
「やっぱりロケット団だったのか!本当にまったく、懲りない連中だな!」
「マズイぞサトシ、オレたちのポケモンは全部ジョーイさんに預けちゃったか
らな、ピカチュウ一匹では…」
「おい、しっかりしろムサシ!滅多にないチャンスだぜ、ハブネークでも
ドクケイルでも、この際ソーナンスでもいいから、出してくれよっ」
「ソ〜ナンス!って、ニャーが言ってどうするニャ?!」
 ロケット団がグズグズしている間に、サトシはピカチュウに指示を出して
いた。相手はルール無用の悪党、先制攻撃をすべきと、判断したのだ。
「ピカチュウ、ロケット団に『10万ボルト』だ!」
〈ピ〜カ〜チューウ!!ピッ?ピカッ??〉
「き、効いた…ピカチュウの電撃は、毎度毎度で浴びなれてるけど、一人で
食らうと、ますます、効果抜群だぜ…」
「ニャニャ?!ムサシをかばって、コジロウが電撃を受けたニャ!!
こりゃムサシ、どうしたニャ、しっかりするニャ!」
「ムサシ…コジロウ… それって、いったい……」
「とにかくいったん撤収だ、ニャース!アジトに戻って、体制を立て直そう!」
 バイナラ・ナライバ〜と、とにかく逃げ足の速いのが、ロケット団の数少な
い取り柄の一つ。
「ど、どうしたの、いったいなんの騒ぎ?!」
「ジョーイさん、やっぱり先に来ていたのは、ロケット団だったんです!」
「ご安心ください、今まで会ったどのジョーイさんよりも美しいジョーイさん!
連中は、この自分がしっかり撃退いたしましたっ」
「…って、タケシは何もしていないじゃん」
 ピカチュウと顔を見合わせ、怪訝そうなサトシ。
「アイツら…どうして、攻撃してこなかったんだ…?」

 やっとアジトにたどりつく、ボロボロ・ロケット団。追っ手に捕まらなかっ
たのが、なによりだった。
「いつもいつものことだけど、今日も痛い目に遭ったなぁ…例によって収穫・
ゼロだし…」
 思わず、ムサシをにらみつけてしまう。いつもは言われなくても名乗らなく
ても、ガンガン攻撃する暴力女が、今日はいったいどうしたことか。借りて
きたニャースのようにおとなしい、とは。だが、いきなり!
「救急箱!救急箱はどこ?!」
「きゅ、救急箱?!って、そこの岩棚のとこ…」
 ムサシは…すぐに救急箱を取りに行くと、中から消毒液と包帯を取り出した。
それから、不意に邪魔そうに髪に手をやると、手早くお下げ髪に結んでしまっ
た。
「腕を出してください、お兄さん。ごめんなさい、わたしをかばったせいで、
ケガしちゃって…すぐ、手当てしますから」
(お、お兄さん〜〜?!ムサシって、オレより年下だったのか?絶対同い年か、
それ以上だと思ってたけど)
(ムサシの性格からいって、年下だろーが年上だろーが、絶対支配的なのに
変わりはないニャ)
(じゃあ、本当はいくつなんだよ?)
 そんなおそろしいことを確かめた者はいない。コジロウもニャースも、まだ
命が惜しかったからだ。手際よく包帯を巻き終えて、ニッコリ微笑むムサシ?
「そんなに深い傷じゃなくて、よかったです。それで、ここはいったいどこで
すか…?それに、あなた方は、いったい…」
「ムサシ、いったいどうしたんだニャ、さっきから変だニャ?!」
 と、その声を聞いたとたん、彼女の顔がサーッと青ざめていった。
「ニャ、ニャースがしゃべった!あの子たちが言ってた『しゃべるニャース』
って、このニャースのこと?!それに、ムサシって、悪い人なんでしょ、
いったいどこ、どこにいるんです?!」
「ちょ、ちょっと待って、すぐ戻るから!(おいニャース、これってさっきの
ジョーイさんが言ってた『意識障害』ってやつじゃないか?ムサシのやつ、
頭を打ったショックで、記憶喪失になっちゃったんじゃないか?)」
(落ち着くんだコジロウ、それは、どうかニャア…)
 ニャースは、ツメをキラリとさせながら、静かな様子で焦るコジロウを
なだめた。
(記憶喪失のふりくらい、オミャーだってしたことがあっただろーが。都合の
悪い時にその場をごまかすための、古典的なワザだニャ)
(いいっ!な、何のことだ?わ、分からない、なにも思い出せない〜〜)
(ましてやムサシは、自称・女優ニャ。ニャーたちだって、何度だまされたこ
とか… さっきの包帯を巻く手際、「ラッキー看護学校」で身に着けた技術に
違いないニャ。やっぱり、ムサシがニャーたちをだまそうとしてるんじゃない
かニャ??)
 そう、敵をだますには、まず味方からとかなんとか。自分の利益になること
なら、誰を踏みつけにしようと、平気の平左なのがムサシ。正に、魔性の女。
コジロウとニャースも、その件ではこれまで何度も、痛い目を見てきたのだ。
「(よ、よーし、芝居かどうか、こっちも芝居で見極めてやろうじゃないか)
いやぁ、ごめんごめん。さっきしゃべってたのは、オレの腹話術なんだ。オレ、
子どもの頃ニャースを飼ってたから、ニャースの言葉が少し分かるんだよ。
こうして耳を近づけると…」
(子どもの頃飼ってたのは、ガーディじゃなかったかニャ?)
「(細かい設定に文句つけるなよ)お、オレの名前は、コ、コ、コタロウ!
な〜んか、ロケット団のコジロウによく間違えられるんだよな〜名前が似てる
し、ニャースを連れてるせいだろうけど、ホント迷惑してるんだよな〜
 さぁ、この真紅のバラを差し上げるから、美しいお嬢さん…君の名前を、
教えてくれるかい?」
(いつも思うんだけど、どこにバラを隠し持ってるんだニャ?)
(フッ、貴公子に真紅のバラはつきものさ。って、最近マネするヤツがいて、
困るんだよな〜ムサシにも、しょっちゅう強奪されるし。あ、これは純粋な
好意のつもりだけど、一応)
 彼女は頬赤らめて、花を受け取った。ちょっと、いや、かなり可愛い……
「名前…わたしの名前…」
 ムサシ?いや、お下げ髪にして、どうにも少女らしくみえる彼女は、沈痛な
面持ちでうつむいた。
「すみません、思い出せない…なにも……」
「あ、あのさ、さっきオレのことお兄さんって言ってたけど、君、何歳?
さっきポケモンセンターにいた連中と、同い年くらい?」
「あの子たちよりは、年上のような気がします…学校に行ったり、働いたりし
ていたことがあったような…でも、はっきりとは思い出せない… 分からない
…自分が今までどうしていたのか、どうしてここにいるのか、わたしが何者な
のか……」
 コジロウとニャースは、顔を見合わせた。演技だとしたら、迫真の演技と言
わざるを得ない。そこにいるのは本当に、十代後半の、とても気の毒で不幸な
女の子にしか見えなかった。
(そうニャ!こういう時は、奥の手を…ゴニョニョ、ゴニョゴニョ…)
(そ、それは禁句中の禁句、禁断の言葉だろーがっ んな名前口にしてみろ、
絶対『メガトンパンチ』が飛んでくるぞ!言いだしっぺなんだから、ニャース
が責任取れよ!)
 とかなんとか言いつつ、コジロウはその名を口にした。かなり、および腰で。
「あ、あのさ…古い友達が近くまで来てるらしいんだけど、会ってみるか?
名前は、ヤ、ヤな感じ〜(いてーっ、ひっかくな!)じゃなくて、ヤマト…
さん……」
 ごくり、と息を呑む二人の前で、ムサシ?は、苦しそうに…
(ほれ見ろ、ばけねこの皮がはがれるニャ!)
(ばけねこは、おまえだろうが… 知らないぞ、何が、どうなっても……)
「すみません、その人のことも、思い出せないんです。ごめんなさい。でも、
古くからのお友達だったら、ご挨拶しなきゃ。その人は、どこに…?」
 ライバル・ヤマトの名を耳にすれば、たとえ自称・女優であろうと、一瞬に
して理性を失い、怒り狂うはず。にっこりと微笑む様子に、演技のかけらも見
当たらない。ことここに至り、さすがに真っ青になるコジロウとニャースだっ
た。
(ヤバイニャ、これはマジで記憶喪失になったようだニャ!しかも、人格まで
変わってるニャ!!)
(ど、どうするんだよ、これから……)

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