「鋼の錬金術師」原作コミックス感想 〜我が愛しきマリアよ〜

我が愛しきマリアよ〜その理由

・「鋼の錬金術師」全体でのマリア・ロス (第10巻まで)
 科学的知識と研究の成果とはいえ、錬金術を行うには天賦の才能が必要。
それゆえに一般人から畏怖されることも多く、「錬金術は民衆のため」が暗黙
の約束になっている。しかし近年アメストリス国が軍事強大化を計るにあたり、
美味しい特権をエサに、錬金術師に国家資格をとらせ、戦場での効果的な利用
をもくろむようになってきている。
 最大の禁忌を犯し、自分たちの肉体を取り戻すため国家錬金術師となった
エドワード・エルリックにとって、12歳から15歳までの3年間は弟と共に
「賢者の石」の情報を求める放浪の日々となった。一般人には恐れさげすまれ、
心の交流があっても、目的が果たせない以上すぐに別れることになる。エドの
弱みを握り有能な才能を手中にしたマスタング大佐とは、そういういきさつで
どーにもそりが合わず、事情を知っている彼の腹心たちも上官にならってか、
少佐相当位の「鋼の錬金術師殿」に、敬意のひとつもありゃしねー

 そんな中でマリアたちは、軍人であるから「少佐」に敬意を払いつつ、実際
は一般人に近い感覚で「なにこれー!」「信じらんねー!」と反応してくれます。
エルリック兄弟にしてみれば、どう考えても護衛なんて「うざい」存在だった
と思いますが、深く事情を知らない特定の人物が長期間そばに付いていると
いう状況は、兄弟にとってかなり特殊な状況だったと思います。

 自らの立場が危うくなることを承知のうえで、少年たちを戒めたマリアたち
の真剣な思いは、この無鉄砲な(そしてかなり自信過剰になっていた)兄弟に
ビンタの衝撃と共に強く通じたはず。秘密があるゆえに孤独、大人以上の力を
使うことで大人社会の中で生きてきた意地。「信じてほしい」と語るマリアさ
んは、兄弟の中で信頼にたる大人としての存在を得ました。

 そんな彼女が、これまた素敵な大人だったヒューズ中佐を殺したのか?
判然としないまま、抹殺されてしまうロス少尉。何を信じればいいのか、少年
たちの心をぐらつかせます。多くの人の助けでマリアさんは命びろいしました
が、ヒューズさんの時と同様、兄弟が「賢者の石」を探し求める過程で巻き込
んでしまったことに違いはない。そのために、存在そのものが消され国外逃亡
を余儀なくされたのですが、運命を呪いながらも彼女は、エドワードを恨んだ
りはしなかった。
 ただ、任務だったから…そうして関わっていった護衛の仕事。
この間のワタワタした様子は読者である我々の感覚に近く、親近感が湧きまし
た。また、力は飛びぬけているけれど無茶で周囲を頼りにしない子どもたちに
対し、毅然とした大人らしさを発揮したところにも、強い魅力を感じました。
優しさから生まれ出る怒りを、こんな風に示すことができたら…素敵ですよね。
そしてやはり、旅立ちの際の決意にしびれます!多くのものを失って、取り戻
すために必死になっているエルリック兄弟と同じような場所に、彼女も来てし
まったのですから。でも、多くの人の、危険を伴う行動によって助けられたこ
と。陥れられた罠は事実無根だけれど、そこから引き出してくれた恩を、彼女
はいつか必ず返すことだろう。それが、いかなるものなのか…それを見届けて
いきたいのです。

 まぁ普通に考えれば、子どもヒロインはウィンリィ、大人ヒロインはホーク
アイ中尉ですので、全体の中では決してレギュラーキャラではなく、脇役と言っ
てしまえばそれまでなのですが。一度、殺されちゃったし。でもメインキャラ
の一人!だと思います。キャラクター紹介にもちゃんと出てるぜ!今後は表紙
や背表紙 (裏じゃなく) に登場してくれることを、切望しております!!

・マリアさんの生い立ち (推測)
 以下は、原作を読んでの私めの勝手な推測です。作者殿には作者殿なりの
設定がきちんとあるのでしょうから、今後それが公式に現れてみると素人の
浅はかな妄想が愚か〜に見えることでしょうが、ま、大目にみてくれ愛ゆえに。

 マリア・ロス少尉は、おそらく中央シティもしくはその近郊で生まれ育った
と思われます。尋問室での会話で実家が近いらしく、両親が健在なのが語られ
ています。休日にちゃんと親を訪ねるところをみると、彼氏はいない?
 年齢は20代前半と思われます。少尉という階級は、士官としては一番下で
すが、兵や下士官から昇進していこうとすると、かなりの高位です。エルリッ
ク兄弟たちと接する様子をみると、5年前に終結したイシュヴァール内乱など
の実戦に赴いたようには思えませんねぇ。それに、兵からたたき上げてきた!
という風でもない。彼女からは「中流家庭の有能な娘」という、上品な空気が
ぷんぷんしてくるのです。そゆわけで、義務教育後に士官学校に進学して、
卒業と同時に少尉に任官したものと推測します。軍人の道を選んだ点について
は、この国が非常に軍事力に重きを置いた軍事国家というところからみて、
我々の国における国家公務員に就職するような感覚だったのではないでしょう
か。そういう、普通な人という感じが、私にとっては共感を抱かせるのです。

 もちろん、軍関係の正式な学校に入学・卒業するにはかなりの才能と努力と
基礎体力が必要でしょうね。彼女からは「有能!」という空気も伝わりまくっ
てくるので…(横に居る軍曹が彼女の引き立て役になっているのも事実だ(笑)
 軍人として職務に忠実で厳格でありながら、思いやりのある素敵な女性に育っ
たのは、ご両親が期待と愛情を十分に注いだからなのでしょうね。彼女が一番
申し訳ないと思っているのは、両親に対してなのでしょう。もう、二度と会え
ないと思いますが…

・マリアさんの人間関係(第10巻まで)
 ロス少尉の上司はアームストロング少佐です。少佐は名家の生まれで紳士だ
し、職務に真面目で軍人としても錬金術師としても有能です。…が、少尉が
正直なところ少佐に対して、困っている様子は明白です (^^;) まぁこれは、
エドワード君の反応も、ご同様ですが。
 護衛として約一ヶ月くらいそばに張り付いていた (賢者の石研究で15日間、
入院も同じくらいかかったと思う) エルリック兄弟に対しても、単なる仕事と
しての関係だけではなく、人間同士としての親密な感情が生まれたようです。
お姉さんと弟たち、という感じですね。
 同じようにエルリック兄弟を温かく見つめるヒューズ中佐にも、好感を抱い
ていたでしょう。この人の殺害犯人としての容疑が晴れないまま死んだことに
されているのは、本当に心苦しいだろうなぁ。マリアさんも、この素敵なパパ
ヒューズ准将の仇を討ちたい、と心から思っているはずです。
 目的としてはヒューズさんの死の真相を探るためでしょうが、危険を冒して
命を救ってくれたマスタング大佐に対しては、それこそ命を差し出す覚悟で
献身するつもりになっていると思います。同様に、逃走の手助けをしてくれた
ブレダ少尉、ハボック少尉に対してもね。ハボックくんがあんなことになって、
マリアさんも心痛めていると思いますが…
 シン国では、フーさん一家に世話になると思います。今後の情勢の変化で
アメストリスとシン…目に見えるところでは、エドや大佐とリンの間でなん
らかの対立が起こった際に、マリアさんが板ばさみになるのが心配です。

 さて、キャラクターにはコンビが重要でして、相方次第でいろいろ引き立っ
たり目立たなかったりいたします。マリアさんの相棒といえば、「色ボケ軍曹」
の二つ名をいただいたデニー・ブロッシュ軍曹。階級が全然下だけど、年齢は
そう変わらないとみました。ただし「いくら上官でも、年下に敬語を使うのは
苦痛」と語る軍曹が常に敬語を使っているので、いくらかロス少尉の方が年上
なのでしょう。
 このコンビはエルリック兄弟護衛のために、射撃の腕の立つ人選となったわ
けで、通常業務をいつも組んでいるわけではないようです。憲兵に連行された
際、マリアさんは事務系の女性軍人とお茶してましたしね。しかし、このコン
ビが読者として、とっても楽しいものだったのは事実。真面目で厳しい少尉と、
隠し事ができずなにかっていうとすぐ泣き崩れるヘタレな軍曹。お姉さんが弟
をぐいぐい引っ張ってる感じです。兄弟に説教したときも、打ち合わせの段階
で言い出したのは、少尉の方だと思います。まぁ、いざとなれば上官である
少尉の責任になったでしょうけど…
 マリアさんが連行された際、軍曹は弁護に駆けつけますが追い返されてしま
います。少佐によると「心配して落ち込んでいる」とのことでしたが、それが
どの程度のものかで今後の展開は変わるでしょうね。一時的に落ち込んでいた
けれど、立ち直って平穏な軍人生活を送っていく…でもいいけど、つまんない。
 だって「生贄の羊」になるかどうかは、紙一重だったんだし、第五研究所に
関わって消されずに済んだのはマリアさんのおかげなんですから!実際に手を
下したマスタング大佐を恨むくらいの気持ちを持ってくれたら、願ったり
かなったりなんですけどね〜〜〜            (05/04/29掲載)

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