コレクター・ユイ  二次創作小説

                           MEMORIAL GLOW


                         メモリアル・グロウ

                             chapter. 7


『こちらが、〈メモリアル・グロウ〉のメイン会場です…声をひそめて実況す
ることをお許しください。参加している皆さんは、静かに、そして穏やかに、
大切な時間を過ごしているわけです。では事前に、入場した際に録画したイン
タビュー映像をご覧ください…』

 コレクターズのチャットルームも、メイン会場と同様照明をおとし、特製の
〈メモリアル・カプセル〉で彩られていた。このカプセルの内部には、自然の
生物の発光体を参考にした特別な物質が入っていて、一定の時間のみ光り輝く。
メモリアル・グロウのチケットには、この物質に反応する印刷がなされている
というわけだ。
『…この秋に、結婚するんです。それで、記念に二人で……』
 エコは、モニターを見つめるふりをしながら、頬づえをついていた。
『クラスメイトで〜す!きっと、未来への記念になるから!』
 シンクロは、壁にもたれたまま、腕組みをしてうつむいていた。
『この子たちに、一生の思い出にしてやろうと思って、参加しました』
 指を組み合わせ、ユイは祈っていた。素敵なカレ氏?派手なイベント?
違う、違うから…わたしの大切な人たち、家族、友達、そして…コレクターズ。
みんながいるから、わたしの幸せがあるんだもの。だから……

 突然自動ドアが開き、ハッ、と顔を起こし、笑顔を取り戻した。すこし。
「ピース、フォロー!どうだった、何かわかった?」
「もちろん、バッチリだよユイちゃん。〈爽やか涼しい高原リゾートネット〉と
〈魅惑のジュエリーネット〉で〈偽バグルス〉をまいた、実行犯も捕まえたし
ね。もう少しで、また別のネットがバグルスに汚染されるところだったんだよ」
「…それにしても、〈偽バグルス〉を持っていた犯人が、あの『ポール三郎』
だったなんて…。3Dレッスルネットで、チャンピオンチームのクラッシュ・
ドリームのマネージャーをしてた人でしょ?」
「正確に言えば、元チャンピオン、いや、王座を剥奪され、コムネット内の公
式スポーツネットから永久追放されたわけだがな。しかし、けしからん。当の
クラッシュ・ドリームは三人とも立派に更生しておるのに、保釈金欲しさに
〈偽バグルス〉を売るとは…」
「やり方も、いかにもケチくさいよな〜 黒川の執事からは2回分しか買って
ないんだろ。それを別のコンピュータ・ウィルスで水増しして、3回分にして
隠してたなんてさ… だいたい、ポール三郎の持ち物をきちんと検査してなかっ
た警察だって、どうかしてるよ!」
 しかし今、コムネット警察の不備を批判をしてもはじまらない。そこを
フォローするために、コレクターズがいるわけだし。
「…ユイちゃん、もう心配はいらないよ。犯人も捕まって、事件は解決したん
だから。ほらほら、見てよ、ボクの見事な変身能力で、あのスケベおじさんを
見事逮捕したんだから!」
「じゅ、十分可愛いし、ポール三郎がうまく引っかかったのも分かったから、
フォロー、顔と声と体型が一致しない変身は、やめてくれない…?
かなり、不気味…」
「ふん、実際に捕まえたのは、ワシの作った武器だろうが。まぁ、こやつの言
う通り、連中の悪巧みもメモリアル・グロウには影響せずに済んだのだから、
良しとせんとな」
 でも…そのために、コントロル・アンティ・IRの三人が偽バグルスの後遺
症に、今も苦しんでいる… とりあえずレスキューの看護によって、体力回復
のためのメモリの注入…人間でいうところの〈点滴〉を受けているけれど…
(みんな、早く元気になって…お願い……!わたしの大切な仲間たち…!!)
「だいじょうぶだよ、ユイちゃん。レスキューの症状を参考に、犬養博士が最
善の治療法を考えて実行してるんだしさ。それに、医務室もちゃんとメモリア
ル・グロウの飾りつけがしてあるんだよ、けっこうロマンチックなんだから」
「そうなると…これ幸いと、口説きにかかるやつがおるかもしれんな。誰とは
言わんが」
 ピースがフッ、と呆れたようにパイプの煙を吐いたのと同時に、ユイも、
ふき出してしまった。たとえ身動きできなくても、口さえ達者ならコントロル
の回復は早いだろう。アンティやIRの邪魔にならないといいけれど…

 ほのぼのとした空気が漂ったチャットルームに入ってきた犬養博士は、やや
険しい表情だった。挨拶もそこそこに、自分の席に座って黙り込んでしまった。
「…どうかしたのですか、博士?」
「う、うむ…実は今、コムネット内の電力貯蔵ネットから連絡があって、電力
の減少傾向が、予定より多いというのだ…」
「それって、メモリアル・グロウに参加した人が、思ったより多かったからじゃ
ないですか?だったら、イベント大成功ってことじゃないですか!」
「それもあるかもしれんが、そもそもメモリアル・グロウ自体が節電イベント
なんだぞ。アクセス時はともかく、今電力が消費されているのは、おかしいじゃ
にないか」
 シンクロの説明に、そういわれると、そうかも…と、うなづくユイ。
「コムネット内の電力は、ほとんどすべて、現実世界での発電に頼っている。
そちらでの発電状況に問題は無い。となると、送電装置のいずれかに異状が
発生しているか、どこかのネットで大量に電力を消費しているか…今、調査中
だが、状況によっては諸君らにも手伝ってもらうことになるかもしれん。
せっかくのイベントだが…」
「それは構いません、博士。俺たちは、コレクターなんですから。しかし…
コムネットほど大規模なコンピュータネットワークなら、外部からの送電に
頼らず、自家発電装置が発達していても不思議ではないな…と思ったのですが」
「ボクのネットは、自家発電してるよ!動物たちにも手伝ってもらってるんだ!」
 それでも、エコのようなネットは、コムネット内の少数派に過ぎない。
「その疑問の答えは…ワシらの良く知っている事件のせいだと思うぞ、
シンクロ。そうではありませんか、犬養博士?」
「そうか…〈グロッサー事件〉!!」
 うむ…と、重くうなづき、博士はうつむいた。
「無論、コムネット内での自家発電の計画は、コムネット発足時から提案され
ていた。だが、ホスト・コンピュータであるグロッサーに異常が発生して以来、
その企画そのものが凍結されていたのだ。現在、ようやく計画が実行に移され
ようとしている…工事の手配、着工の準備等々が、な」

『コムネットの繁栄は、現実世界での我々の未来の発展のカギとなっているま
す。この夢のような光景は、永遠へと続く、希望の象徴といえるでしょう』
 モニターの音量を、ピースが少しおとした。一呼吸あって、誰に言うともな
しに、博士はつぶやいた。
 「コンピュータ・ソフトに心を与えること…黒川の警鐘が、現実となったのが
グロッサー事件だった。もちろん、君たちコレクターズを生み出したことを、
後悔しているわけではない。しかし、グロッサーの〈自我の芽生え〉を単なる
反乱としか受け取れず、君たちに〈消滅〉の恐怖を味あわせることになったの
は…ひとえに、ワシの至らなさが原因だった。そのたびに、ワシは篠崎の
早すぎる死に、思いをめぐらせた…彼が生きていてくれたら、そして、ワシを
導いてくれていたら…コムネット十周年は、より良い形で迎えることができた
のではないかと……」
「そんな、博士!俺たちは、いや俺は、心を持って、生まれて来たことを…」
 シンクロはそれ以上の言葉を、続けることができなかった。本当に、それが
幸福だったのか?そのことに没頭しすぎてたから、ユイがずいっ、と博士に近
づいたのに、気づかなかった。

「犬養博士…どうしてコンピュータ・ソフトが〈心〉を持っているの?って
聞かれたら、友だちになるため!って、わたし答えます。でも、それって
すっごく難しいってことも…知ってます。アイちゃんに…篠崎愛ちゃんに初め
て会ったころ、この子とは絶対友だちにはならない、なれないって思った。
何度ノックしても返事の戻って来ない、ドアみたいだった。でも…わたしたち、
同じことに立ち向かったりしながら、お互いぶつかり合いながら、わかりあう
ことができた。だから…グロッサーやコレクターズのこと、後悔しないでくだ
さい!だって、コレクターズは…グロッサーの犠牲になるためだけに、生まれ
てきたんじゃないんでしょ?じゃなきゃ、こんなにステキに生まれてこれる
わけないもの!」
 静かな…それでいて熱い訴えの、一瞬のちだった。呼び出し音が響く。
「ワシだ。なにっ?!その数値では…なぜ、今まで気づかなかったのだ?」
激しいやりとりの後、状況の随時報告を命じ、博士はキーボードを叩き始めた。
いったい、何を計算しているのか…?
「博士、バグルスなんですね?!電力蓄積ネットに、発生したんですね?!」
「偽バグルスの悪辣な面が現れたのだよ…少女@ちゃんの涙から生まれたバグ
ルスには無い、人為的な悪意が加えられた偽バグルスには、複雑で巧妙な行動
が見られる。データを改ざんし、自分たちが電力を食べている状況を隠してい
たのだ。このままでは、メモリアル・グロウに参加した人々のヴァーチャル・
アウトに影響が出てしまう。ヴァーチャル・アウト時の、データの保存を無効
化すれば、あるいは…」
「そんな!せっかくの〈思い出の灯火〉なんでしょ、それが…記憶に、心に
残らないってことですか?!」
 しばらく計算に集中していた博士は、落胆の色を隠さずため息をついた。
「無理だ…全員の記録を無効化しても、ヴァーチャル・アウト時の電力すら
確保できない。参加者の心身の安全を保障できない…なんということだ。
コムネット時間で、あと50分…すべてのバグルスをイニシャライズし、
すかさず現実世界からの電力の供給を復活させるのは…不可能だ」
「知らないんですか、博士?コレクターユイには、いえ、コレクターズの辞書
には〈不可能〉って文字は、無いんですよ。そうでしょ、みんな!」
 おおっ!と返事が戻ってきた。たとえ4人でも、コレクターがいれば…
「待ってくれ、電力蓄積ネットには、メインネットとサブネットの二つがある。
そして、サブネットにもバグルスが発生しているのだ、規模はメインの
四分の一ほどだが…両方を、同時にイニシャライズしなければ、イカンのだ」
「ワシが行こう。四分の一ならば、一人で十分じゃ。犬養博士、メインとサブ
のネット間のパイプラインは、遮断することは可能なのじゃろう?」
「ピース、あんた……!」
(もしバグルスの除去ができなかった時は、自分もろともネットを消去する気で…)
「俺が行く!俺もピースも火の属性で、攻撃力は同等だろ。俺が…」
「おまえさんはユイのそばについておれ、シンクロ。いらん心配はするな」
 しれっとした表情で、パイプをふかしてみせるピース。気づいているんだ、
気づいていて、それで自分から名乗り出て…… ユイの元には、シンクロ・
エコ・フォローがつくことになる。
「…みんな、そんな心配そうな顔しないでよ。これまでだってなんとかなって
きたんだもの、これからだってなんとかなるわよ!だって、わたしたちコレク
ターズでしょ、今までも、これからも… 一緒にやっていく、仲間だもの!
コムネットのヒロイン、電子の妖精・コレクターユイに、ド〜ンとまかせな
さいって!!」
 この人数では、成功率は低い…その事実に気づきながらも、やはり彼らに
頼るしかないのだ。犬養博士が、苦渋の決断を迫られた、その時だった。

「は、話は、全部聞かせてもらったぞ…ケホッ、ケホッ…」
「コントロル!アンティも?あなたたち、医務室で寝てたんじゃ…」
「コムネットの、ユイ殿のピンチに、のんびりしているわけには、いかないで
ありまする〜」
 IRがユイの胸に飛び込んできたとき、レスキューが困ったような、でも
仕方ないですよね〜という表情で、最後に入ってきた。
「リ、リーダーの回復能力を、なめてもらってはいかんなぁ…この一大事に、
この俺が登場しないでどうする、コホッコホッ」
「レスキューの看護のおかげで、かなり回復したわ。私の未来予測では、
コレクターズは全員一致でバグルスに立ち向かう、と出ているのだけれど」
 微熱のせいか、いつもより艶っぽい表情のアンティにこう言われてしまって
は、誰が反対できるだろうか。
「す、すべてに立ち向かう、それがリーダーの宿命なのだ…」
「刑事ドラマの受け売りだろ。まったく、しょうがないなぁ、コントロルは!」
「待ってください!わたしも…わたしも、皆さんの力になります!」
「ハルナ!」
 息を切らして、飛び込んできたハルナに、ユイが詰め寄った。
「もうっ、メモリアル・グロウにちゃんと参加してって言ったでしょ!博士、
ハルナに連絡しちゃダメじゃないですか!」
「でもユイちゃん…わたし、自分で決めたから。それに、ほら…」
 胸元に、チケットの半券が垣間見えた。ペンダントに加工してあるそれは、
かすかに虹色に光っている。にっこり微笑む天使の笑顔は、決意の表われ。
「事情を明かすことができなくても、ちゃんとわかってくれてるんですもの」
「あ〜はいはい、ノロケはその辺でいいから。本っ当に、みんなどうしようも
ないわよね〜いくらコムネットのためとはいえ、自分の幸せとか、なんだと
思ってるのよ?」
「わからないのか?答えは目の前にあるだろ。おまえを信じている…それが、
俺たちの答えだ」
 シンクロの言葉に、コレクターズ全員がうなづいた。みんな……!!

「では、ワシは先ほどの計画通り、サブネットに向かうぞ。ハルナ…」
「はい、一緒にがんばりましょう、ピースさん。ユイちゃんのエレメント
スーツは、対バグルス最終戦用に16倍に強化されたハイパースーツだから、
やはり、ユイちゃんがメインネットに行ったほうがいいと思うの」
「へっ?そうだったの〜 このノーマルスーツ、意外とスゴイんだ〜〜」
「お、俺もユイに同行するぞ、リーダーとして当然…ケホッケホッ」
「その半病人を頼むぞ、シンクロ。その代わり、ワシはアンティとIRを連れ
ていくからな。戦力としては、均衡がとれるじゃろう」
「ユイ殿と離れるのは、痛恨の極みでありまするが〜必ず、後で合流するで
ありまする〜」
「君と離れるのは、痛恨の極みだが…必ず、後で思い結ばれることだろう。
アンティ、別れはつかの間だ…ゴホッゴホッ」
「…何言ってるの?風の属性同士、同じチームになるはずないでしょ」
「アンティさんたちが心配ですから、わたしもピースさんの方に行きますね。
コントロルさんは、それだけ元気ならだいじょうぶでしょう。ユイちゃん、
コントロルさんの病状のことは、全然気にしないでくださいね」
 レスキューの、温かいのか冷酷なのか微妙〜な宣言により、チーム分けは
決まった。風・火・地・水の属性ソフトを、二手に分けたのだ。
「メインネットに、ユイくん・コントロル・シンクロ・エコ・フォロー、
サブネットには、ハルナくん・アンティ・レスキュー・ピース・IR、だな。
計算上、サブネットのバグルスのイニシャライズの方が早く済むはずだ。
バグルスの消滅を確認したら、すぐにユイくんの方に合流してくれたまえ!」
「よーし、みんな、張り切って行くわよ!『思い出の灯火』は、必ず守って
みせるわ!コレクターズ、出動!!」
「そ、それはリーダーのセリフだぞ、ユイ……ケホッケホッ」

「やだーもうっ、なんでヘビなのよー!!どうして、そうやってイヤなものに
ばっかりなるのー!」
 電力を流すパイプの束が、巨大なヘビとなって襲い掛かってきた。意外に
すばやい動きのこのオロチに、コレクターズは逃げるのがやっとだ。
「この空間には電気が充満してるから、ボクの水の力を使ったら危険だよな。
コントロルの風の力…」
「ヒ、ヒーローは不死身だ、ゴホッゴホッ」
「…は、無理か。なんでそんなに回復が遅いんだよ、医務室でまたアンティに
ちょっかい出してたんだろ!」
「それがー!男女を隣り合わせに寝かせるわけにはいかないって、分厚い
カーテンで仕切られてしまったのだーっ!メモリアル・グロウの灯火の元、
絶好のチャンスが…コホッコホッ」
 レスキューは実に立派な、そして容赦のない看護師であることを、あらため
て実感する一同だった。
「ユイちゃん、ボクの力を使って!〈プリズム・インストール!〉」
「わかったわ、フォロー!〈ソイル・エレメントスーツ、ダウンロード完了!〉
パワー全開でいくわよ!!」
 モコモコのアニマルスーツは伊達じゃない。頑丈な手袋は電気を通さず、
巨大ヘビの胴体をしっかりとつかんだ。大地の力が、いま発揮される。
「〈パワー・スイング!〉さぁヘビちゃん、おとなしくしなさいね!
〈コレクター・イニシャラーイズ!!〉」
 星型のエネルギーが、ヘビを元の電線に戻した。すかさず、修理工たちが出
てきて補修作業を行う。例の、マッチ棒に目鼻をつけた廉価版のソフトたちだ。
「バグルスは…消滅したの?って、キャーッ、ヘビが大群で落ちてきた〜!
シンクロ、あなたの力を貸して!〈ファイアー・エレメントスーツ、ダウン
ロード完了!〉時間がないから、まとめていくわよ〜〈フレイム・ボンバー!〉」
 炎にたじろいで隅に固まったところを、イニシャライズ!また、わらわらと
補修工員たちが飛び出してきた。激しい攻撃の背後で、地道な修復が続く。
「もう〜どうして、いっぺんに済まないのよ〜これじゃ時間がかかってしょう
がないじゃないのよ〜〜」
「それがバグルスの作戦なんだよ、ユイちゃん。犬養博士が言ってたよ、偽バ
グルスは、とても悪知恵がはたらくんだって。電力データを加工しちゃってた
のもそうだし、ボクらコレクターに感染するようにしていたのも、対抗する力
を最初から攻撃するように、変化してたからなんだって。最初のころのバグル
スみたいに、ただ増え続けることだけを考えてたのとは違って、すごい知能を
持つようになってるんだよ… 」

「そんな… あれっ、エコ、どうしたの?具合悪いの?!」
「な、なんだか、急に寒気がするんだ…おかしいなぁ……」
「フォロー、あなたも顔が赤いわよ、フラフラしてる!」
「ゴーッホゴホッ、咳が、ひどくなってきてしまっている…」
「ど、どうしちゃったの、みんな!みんなまで、バグルスに感染しちゃったの?」
「違う、ユイ!原因は、俺だ…」
 シンクロが、うずくまりながら、しぼりだすように言った。胸のコムコンが、
異常な輝きを放っている…!
「バグルスに感染したのは、俺だ… ウィルス研究所のワクチンのおかげで、
重症化はしなかった。しかし、後遺症で俺の能力が過剰になっている…」
「シンクロの、能力……?」
「〈協調〉能力だ。俺の能力は、コレクターズ8人の力をまとめることにある。
そのせいで、バグルスの後遺症がみんなに、シンクロしてしまってるんだ…」
「それじゃ、どうすれば… って、またヘビが出た〜!しつこいわよー!!」
 作業員たちは、攻撃を受けないかなり後方で仕事を続けている。だが、バグ
ルスを消滅させない限り、電力を流すわけにはいかない。流したとしても、
連中のいいエサになるだけだ。この先、まだどれほどバグルスが残っているの
だろうか…?
(あと30分…電線を直して、電力をためて、メイン会場に安全に送る…
早く、早くしなきゃいけないのにー!)
「じゃ、じゃあシンクロ、あなただけ医務室に戻るのよ!そしたら、他の
みんなは…」
 言葉をさえぎり、かぶりを振った。妙に落ち着いた様子なのが、ひっかかる。
「ウォーウルフの時と違い、シンクロとして覚醒した今は…コムネット内の
どこにいても、コレクターズに能力が伝わってしまう。だから…ユイ」
「ちょ、ちょっと、まさか……」
「今頃、サブネットのみんなも苦戦しているはずだ。おまえが無理なら、犬養
博士に頼む。俺は…おまえにやってほしいがな、〈デリート〉するのは」
  渡せなかった半券 言えなかった言葉
「デリートなんかしないわよ!絶対、ぜったい〈消去〉したりしないから!!」
「このままだと、みんなを巻き込んでしまう!メモリアル・グロウに参加して
いる多くの人に危害が及ぶんだぞ。コレクターとして、なにをするべきなのか、
冷静に考えるんだ!俺は…俺が一番願うのは、おまえが無事でいることだ。
そう思える〈心〉があることは…たぶん……」
  永遠という場所があるなら 行きたいと思っていた

「だったら同じよ!コレクターズが…シンクロがいないコムネットなんて、
わたしも見たくない!!」
  おまえと

「危ない、ユイ!後ろから、バグルスが!!」
「ああっ、〈コ、コレクター・イニシャラーイズ……〉きゃあーっ!!」
「あんなに近い場所でイニシャライズしたら、ただでは済まんぞ!ユイーっ!
シンクロー!」
 激しい爆発音と、一面の煙の向こうになにが見えるのか、見えてしまうのか、
縮み上がった心臓を抱えたまま、コレクターズは近づこうとした。
でも、まったく無傷な二人を見ることになる。
「…隙だらけね、相変わらず」
 漆黒のスーツに、たなびく白いリボン。それは永遠の喪服なのか、それとも
すべてを生み出す、原初の闇なのか。
「コレクター・アイ!」
                           (04/09/08掲載)

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