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7月8日 ヨセミテ国立公園〜ローンパイン
早朝6時前、みんなの声でやっと目覚めた。歯みがきセット片手に外へ出てみると冷たい空気と明るい空。鳥が機嫌良くさえずり今日もすこぶるいい天気。 早々に出立の準備を整え、落ち着いてから朝食。昨夜と同じ売店のデッキで軽い食事を済ませ、7時前カリービレッジを去った。
再び山を登って行くと昨日よりはカーブの角度がきつく道幅も狭く思えた。まだロードキングに慣れきっていない副会長は、1回だけだがとうとうステップを擦ってしまった。 車体を傾ける乗り方に慣れてしまっているので、アメリカンでのコーナリングにちょっと戸惑ったようだ。
ここで怖いのはコーナリングだけではない。注意していないと野生動物が道路に飛び出してくるのだ。実際、リスが飛び出してきて私達と馬場さんを驚かせたりした。私は気がつかなかったのだが、副会長は路肩で鹿の轢死体をも目撃したらしい。 動物も自分も傷つけたくなかったら、浮かれ気分ではなく住宅街を走っているつもりで注意しなければならない。
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肌寒い中1時間ほど走って到着したのはオルムステッドポイントと呼ばれる展望台。駐車場以外、人工施設は何もなく、駐車場の向こうに大きな岩畳がいくつも続く。白浜の千畳敷が波をうっているような景色だ。 岩の上に寝転がって空を仰いでみた。あまりにも近い空、吸い込まれそう。その色は澄んだ青ではなく、真夏の空のような、少し暗みを帯びたような深い青だった。
雲ひとつない空の下、いくつもの岩山が続き、そして遠く中心部には調度品のようにハーフドームが鎮座している。ここはハーフドームを中心にして、ヨセミテバレーの逆になる場所だ。 だから、昨日のハーフドームは左半分が欠けていたが、今日のは右半分が欠けている。 |
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再びバイクに乗って国立公園を脱出。でもまだまだ美しい景色が続く。勾配がなだらかになった頃からいくつもの湖が姿を表し出した。 深緑の森の中、遠目に見ても澄んでいるとわかる青い湖水、所々にカヌーも浮いているし、背後の山にはまだ雪が残っている。これでお城の一つでもあれば"ブルーシャトー"の歌詞そのまんまだ(古い...)。
オルムステッドポイントからは自由走行となっていたので、私達もみんなも好き勝手なペースで好きなポイントで停まっている。 ケンジさんが「ビューポイントは腐るほどあるよ。全部停まって見ていたら日が暮れちゃうほど」と言っていたが大げさでも何でもなかった。 風光明媚なポイントにはちゃんとパーキングスペースが設置されているので安心して駐輪できる。道も駐車場も考えて作られているなと感心してしまった。
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とうとう山を下りきって見覚えのある砂漠の光景が広がり出した。熱くなる風の中、T字路の向こうに姿をあらわしたのは洞爺湖を大きくしたようなモノ湖。
ヨセミテ国立公園の東にある町、リーバイニングには大きなガソリンスタンドがあった。そしてモノ湖を見渡せるスタンドの横には、なぜか空中ブランコの設備が... ブランコの先ではアメリカ人女性が器用にアクロバットをしている。ケンジさんがインストラクターと何やら話をして「一人10$でできるよ!」と私達を誘った。
しかし、高所及び絶叫マシン系が超苦手な副会長は「ワシは死んでもせえへんぞ」とのオーラを全身から滾らせている。 馬場さんも苦手なのか首を横に振り、リーダーは「おじいさんの遺言で高いとこには上るなと言われてて...」との事。
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結局ケンジさんのおだてに乗って挑戦したのは弘津さん。身軽に梯子を上り、さっとブランコにつかまってテイクオフ。 2度ほど大きく揺れて、3度目には命綱のサポートを受けてくるりと回転、バーに足をかけて大きく揺れて、またくるりと元に戻って優雅にネットへ落ちた。この弘津さん、聞いてみると以前は器械体操とかしていたらしく、昔とった杵柄とやらで、体のこなしが軽やかで無駄がない。
うーむ、見ていると簡単そうだし楽しそう。阿呆と煙は高いところが好き、私も前者に属する人間なので調子に乗って試してみた。 怪我しても死んでも文句言いません的誓約書にサインをして、しわくちゃの10$札を出して契約締結。頼りない梯子を上るときは命綱ナシ、これはさすがに怖かった。8m上の足場に着いて初めて命綱装着。インストラクターがあれこれ言ってくれるが英語なのでさっぱりわからない。 そしてビビリながらもバーをつかんでテイクオフ。足場を飛び出した瞬間はピーターパンの気分、空まで飛べるような心地だった。しかし腹筋も背筋も脚力も腐っている私には回転するどころかブラ下がっているのがやっと。
がんばってはみたものの重たい下半身を持ち上げる事はできず、数回みっともなく揺れた後にボテッとネットに落ちた。これじゃあ空中ブランコじゃなくて空中ブラブラだ。 しゃあないやん。あたしってば鉄棒の逆上がりでさえできんかった人やし。 |
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予定外のイベントを楽しんで満足しながら再出発。次はハイウェイ395号を南下した。目指すは本日の宿泊地ローンパインだが、まだまだ先は長い。 モノ湖を後にするともう山間部の涼やかな景色ではなく熱い砂漠の景色に変わりだした。もちろん服装は真冬のジャケットからTシャツとGジャンにチェンジ。蒸れまくっていたタイツももちろん脱いだ。
395号は交通量も少なく制限速度も70mphなのでガンガンとばす。シールド越しにぶつかってくる風は乾いて砂混じり。それでもロードキングは気分よく軽快に進んで行く。 鏡のようなライトやハンドルに青空が映り、陽光が反射してキラキラ眩しく輝く。
熱い〜とわめきながら南下して、お昼にはビショップと言う小さな町に到着。BANZAI号の先導のもと、到着したのは"アメリカ一うまい"と言われるらしいパン屋さん。 |
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お店の名前はエリック・シャッツ・ベーカリー。創業1907年とか。 クーラーの利いた広い店内はちょうどお昼時と言う事もあって満員状態。ここでは自分の好きなようにサンドウッィチをオーダーするのが売りらしいが、カウンターには長蛇の列ができていた。 並ぶのが嫌いな私は、出来合いのチキンサンドとチーズバケッドとシナモンロールを買いこんだ。サンドウィッチもなかなかだったが、それ以上にバケッドが超美味。厚い皮が香ばしくて、中はふんわりもっちりしっとりあっさりしていて、何もつけずにいくらでも食べられる。 米国一かどうかは知らないが確かに旨い、お土産に持って帰りたいほどだった。しかしシナモンロールはかなり甘くて食べるのが苦しい。生地は悪くなかったのになあ...
ランチの後は1時間ほどビショップ観光。リーダー達はみやげ物屋に探検しに行き、私達夫婦と馬場さんは近所の公園でゆっくりと体を休めた。陽が強く暑かったが、木陰に入ると風が涼しく感じられて心地がいい。 私はベンチでぷかりぷかりとタバコを味わい、馬場さんは芝生の上でしばしの昼寝を堪能していた。さっきまでは70mphで駈けていたが、今は時間がのんびりと過ぎてゆく。ちょっとした贅沢。 |
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午後1時、また暑い中を南に向けて出発。正午を過ぎて気温はどんどん上昇していた。ビショップの南側にはビッグパインと言う小さな町、すぐそばにキングスキャニオン国立公園がある。ヨセミテと同じくらい大規模で、それ以上に険しく美しい山脈が続いていた。
ビックパインを越えてしばらく行くとインディペンデンスと言う町を通過。久々に信号機に引っかかった。町中は7月4日のお祭りムードの名残が漂う。「独立」の名を持つだけにお祝いも派手だったのだろう。 395号の西側はシェラネバダ山脈が沿うように続く。その山がだんだん険しくなりだした頃、ローンパインに到着。メインストリート1本だけの小さな町だ。その町を覆うようにそびえるのがマウントホイットニー。全米(アラスカ除く)中の、最高峰らしい。
モーテルに行く前にガソリンスタンドで給油。そして飲料水を1ガロンのタンクで購入。明日は灼熱地獄、二人分の飲み水がいるのに500ccのペットボトルでは到底間に合わない。
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スタンドの売店ではツーリングライダーらしきいかつい米国人男性が休んでいた。隣のベンチに腰掛けてタバコを吹かしていると「キミはどこから来たんだ?」と問い掛けられた。
「わてでっか?日本からですわ」 「いやそうじゃなくて、今日はどこからやって来たんだ?」 「はあ、今日ですか。今日はあのハーレーに乗ってヨセミテから来ましてん」 「そうか...私もバイクに乗って、これからヨセミテの向こうにあるリノまで行くんだ」 「えらい遠いとこまで行きますなあ」 「大した事はないさ」 「この辺りはムチャクチャ暑いでんなあ、えらい疲れましたわ」 「そうだろうな、私はヘルメットの中を水で濡らしてから被るんだ。キミもやってみろ、涼しいぞ」 「ええこと聞きました。わて明日デスバレー行きますねん、早速試してみまひょ。」
自慢じゃないが私は英語がほとんどダメだ。しかし、幸いな事にこのおじさんは気だるそうにゆっくりとしゃべるのでなんとか聞き取れた。私は貧相な英単語データベースを駆使してポツリポツリと返答していたのだが、おじさんのヒマつぶしには丁度良かったようだ。 夕暮れの片田舎で交わされる、米国オヤジライダーと日本の小娘(娘なんて年じゃないが)のスローモーな会話。地味な一期一会だったが、それなりの味はあった。 |
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本日のお宿はマウントホイットニーを見渡せるモーテルだった。私達はしばらく部屋で休憩していたが、リーダーと弘津さんと馬場さんはプールに飛んでいって水遊びを楽しんでいたらしい。わざわざゴーグルまで持って来ていたのはさすが。
登山道を1マイルほど登ると景色がガラリと変わって涼やかな森に入った。キャンプ場やトイレや駐車場もある。車から降り、せせらぎの音につられて森に入ってみると気持ちのいい滝と小川があった。 清流に足をつけてみると氷のように冷たく、10秒もつけていると足が痺れてきた。滝の上にはホイットニー山頂が見渡せる。ゴツゴツした山頂にはまだ雪が残っていた。あの雪が解けて私の足元を流れていて、これから先も長い長い旅をするのだろう。
キャンプ場内には他の小川もあり、池になった場所では何人もの釣人が糸を垂らしている。池の中は無数のトラウトが泳いでいたが、あまりスレていないらしくいくらでも釣れるようだった。 この釣人達は清流のトラウトを吊り上げ、焚き火で焼いて夕飯のメインディッシュにするつもりだろう。ちょっと羨ましい。 |
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涼やかな森から暑いローンパインへ戻り、夕食へ出かけた。田舎町にしては雰囲気のいいレストランに入り全員でステーキを注文。あっさりとしたカルフォルニアワインで口を潤し、肉塊と言うに相応しいステーキに戦いを挑んだ。 焼き加減も程よく、単純な味付けながらもそれなりに美味しい。だがさすがに400グラム以上のステーキになると食べていて飽きてくる。ちょっとお姉ちゃん、ぽん酢持ってきたってんか。
食後はローンパインに1件しかないだろうと思われるみやげ物屋を物色。買いもしないでさんざん冷やかした頃に、ようやく日が沈んだ。空が暗くなったのは9時過ぎ、さすがに気温が下がって肌寒くなってきた。 「さあ次行くぞ」とケンジさんに連れて行かれたのは郊外の砂漠の中。何もない暗闇の道端に車を停めて、いったい何があるのだろうかと空を見上げてみると、数え切れないほどの星が出ていた。超巨大なプラネタリウム。天の川までちゃんと見える。
知っている星座の形を思い出して像を結んでみようとしたが、あまりにも星が多すぎて何が何だかわからない。辛うじて認識できたのはさそり座と北斗七星のみ。 他の人たちもこれだけの星を見るのは初めてなようで、飽きることなく見入っていた。みんな魂を抜かれたかのように口を開けたまま絶句。抜かれた魂は遠い星空へと飛んでいってしまった。
しばしの宇宙小旅行を楽しんで、モーテル帰着。まだ夜はこれから派のケンジさんと弘津さんは町のバーへと飲みに出かけ、残りは早々に就寝。明日は灼熱のラストラン、どんな事になってしまうのか楽しみだ。 |
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〜ローンパイン住宅街で見つけた親不孝なバイク〜
みんなで眺めていたら、住人らしき夫人が不信げに出てきて「あなた達なにやってるの」と聞いてきた。 ケンジさんが「珍しいバイクなので思わず眺めてしまったのです」と説明すると、このご婦人「ああ、これねえ。邪魔なのよ、タダでいいから持ってってくれない?」と言い出した。
察するにバイク好きのドラ息子と、息子の趣味が理解できないお母ちゃん、ってな感じ。国は違えど、どこ行っても一緒だなあ。
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〜ローンパインの土産物屋で遭遇したナゾの生物〜
ウサギの長い耳、その前部からシカのようなツノが生えている。...なんじゃこりゃあ? ツノの付け根を見てみると、後付にしては精巧にできていて、人為的な工作の跡があまり見えない。でもまさかねえ、ツノ生えたげっ歯類なんて聞いたことがない。
でも世界は広いしな、ケンジさんも「あのウサギはねえ、ジャガルーって言って、アメリカにはどこにでもいるんだよ。特に夜の酒場によく出てくるよ」つってたもんな。ひとつ勉強になりましたわあ (-_-メ)
ちなみにこのツノウサギ、売りものです。玄関先や床の間のアクセサリーに、おひとついかが?
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