日本アルプスHeaven's Drive〜

平成14年5月25〜27日

 

 


 

 

 たった1年、されど1年。この5月で私と副会長は無事に結婚1周忌、もとい1周年を迎える事ができた。早かったような長かったような...

 1年前のこの日は、表向きハネムーンと称した米国ツーリングに心を躍らせていた日だった。1年後の今日、記念にと再び国外逃亡を期待していたのだが、所詮私たちはしがない会社員、金もなければ休みもない。

 でもどこかに行きたい、結婚記念日をダシにしてどこか遠くに走りに行きたい。そう思っていたころ、親友から「新穂高にすっごくいいペンションがあるで」との情報を得た。

 

 新穂高、スキーで訪れたことがあるが、なんだかとても険しく美しい姿だった記憶がある。地図で見てみると周りは山だらけ、そして温泉だらけ。しかもすぐ近くに乗鞍スカイラインがある。雑誌で幾度も見て、淡い憧れを抱いていた日本一高所の道。えっと、2泊3日あったら余裕で行けるかな...温泉いっぱい入れそうだし。よっしゃ!ここに決めた!

 いつも私のプランニングに必ず一度はケチをつける副会長、この人を説得して連れ出すにはちょっとしたコツがいる。しかし今回は「乗鞍スカイライン」をエサにすると、いとも簡単に釣られてくれた。

 有給休暇も無事に取れたし、これで私の行くてを遮るものはなし。

 

 


 

 

25日・土曜日

 

 と言う訳で25日は朝6時に自宅を出発。すぐに名神高速に乗り、いきなりハイペースで走行。陽が高くなった頃、大津SAにて給油&休憩。そしてすぐに東へ向かい出発。

 

 今日の目的地はいきなり新穂高ではなく長野県松本市にて一泊予定。大阪から行くのなら東海北陸道を走って新穂高に出たほうが早いのだが、副会長の「絶対に伊那市でローメン食う」との要望でわざわざ遠回りをすることになった。ローメン?見た事もなければ聞いた事も食べた事もないものなので、密かに期待は膨らむ。

 

 副会長は今回のツーリングのために新しいオモチャを用意していた。ビデオカメラをバイクにマウントし、ヘルメットには小型カメラを搭載。ビデオカメラだけだとどうしても激しくブレてしまうのだが、こうすればレンズ自体が受ける振動は軽減するので、多少は画像がマシになる。

 自分の姿は撮れないが、自分の見た景色がそのまま録画できるのだから文句ナシの記録である。しかし撮っているのが女の子ライダーの後姿ばっかりだったら...その時は躊躇なくしばく。

 

カメラ搭載

シールドの向こうにあるのが我が家のビデオカメラ

 

 

 滋賀を抜けて愛知に突入。広々とした水田には早くも稲が植えられ大きく成長していた。目の覚めるような緑色を眺めながら更に東へ進み、小牧JCTから中央道に入った。ここから道の状況は一変する。なだらかな名神に比べ、中央道は緩やかながらもアップダウンが繰り返す。少し眠気が差していた頭に良い刺激となった。

 70〜80kmごとに休憩や給油を繰り返し、9時過ぎには岐阜に入った。出発前にはお昼に伊那到着は難しいかと思っていたが、この調子なら余裕で到着できそうだ。

 

 高速に乗ってから延々とガムシャラに飛ばした訳ではなく、身体と車体に負担を掛け過ぎないよう90km/hくらいで走り続けた。これぐらいなら私もシェルパも機嫌良く、且つ安全なのだ。

 後続の副会長とR1100はイマイチつまらなさそうだが。

 

おでかけシェルパ

おでかけシェルパ

 

 長い長い恵那山トンネルを抜けて長野へ突入。県境を越えてからはずっと北上。右手には青空をバックに中央アルプスが軒を連ねる。山頂部分には白い雪、さすが六甲山とはレベルが違う。

 

 11時、ひときわ背の高い駒ケ岳を眺めながら駒ケ岳SAにて休憩。SAにはたくさんのバイクが停まっている。いっぱいいる。100台近くはいる。すごい、何かのショーかと思うくらい多種多様なバイクであふれている。

 しかしこのライダーの年齢層の高さはいったい何なんだ、シニアどころかシルバークラスが多い。あちこちで不良壮年の御仁たちが「ワシの老眼鏡どこ行った?眼鏡がないと地図が見えん」なんて会話を交わしている。

 この中では私達ごときはケツの青いガキ、旅とバイクを語るには50年は早いと言われそうだ。

 

 

 

 駒ケ岳SAを出たのが11時30分、伊那ICで下に降りて市街地に向かい、12時過ぎにはローメンのお店を検索。ちなみに名神尼崎〜中央道伊那までバイク1台6,060円也。あいや〜、高いあるね。

 伊那駅の周りや国道沿いにはローメンの看板がいくつも見られた。市をあげて観光の目玉にしているらしい。ツーリングマップルにも不思議中華・ローメンの店が並ぶ、と書かれている。

 

 私達は元祖ローメンの店と言われる"萬里"を選んだ。店内はほぼ満席、半分を団体のツーリングライダーが占めていた。メニューにはローメン以外に中華メニューが並ぶが、なんだか怪しいすっごく怪しい。

 「サフォークたたき」...なんですかこれ?(羊肉のことらしいです) 「コブラの焼酎漬け」...エグい。「虎の×××と○○の焼酎漬け」...あらあら、ちょん切られたのね。「海亀の刺身」...もしかして姿造り? 

 これ以外にも胡散臭い品が並んでいる。怪しい〜楽しい〜、こんなお店大好き。できることならお昼ゴハンではなく、夜に腰据えて飲みに来たい。

 

 

 

 いよいよ謎の中華・ローメンとご対面。これが謎の中華だ。

 

不思議中華ローメン

伊那市の名物だそうな。

豚ベースのスープでマトン肉(豚肉の店もある)を煮込み、

炒めた大量のキャベツとキクラゲを加え、

蒸し麺の上に肉も野菜もどわっとかける。でもスープは少なめ。

 このスープ風ローメン以外に焼きそば風ローメンなるものも存在するらしい。

 

 まずスープを一口...甘い、なんだか肉ジャガの味が薄まったよう。主体性があるようで、でもはっきりしない味。麺は蒸してあるだけにコシだとか粘り気だとかはない。でも確実にお腹いっぱいになれる。

 

 説明書きにある通り、一口食べてはウスターソースを足し、そしてまた一口食べてニンニク追加。どんどん味が化けてゆく。

 続いて酢、七味唐辛子、ゴマ油と順次投入。うーむ、元のスープの味がわからんようになってしもうた。

 終に試行錯誤のまま食べきってしまったが、感想としては確かに不思議中華、中国四千年の歴史にすら登場しない物だろう。このローメンの真価を認識するにはあと4〜5回は食べなきゃ無理だと観念した。

 

ローメンマニュアル

食べる前には説明書きを参照、見えにくくてごめんなさい。

♪うま伊那ローメンおいし伊那ローメン、信じていいのだろうか。

 

 今回は調味料を加えすぎたのが敗因だったようだ。辛口好みの私にはウスターソースは不要、酢大さじ1/2・ゴマ油小さじ1弱・ニンニク小さじ1/2・七味ひとつまみ、この辺りが私にとってのベスト配合だと推測。

 でももう2杯目はいらないや、ごちそうさまでした。副会長に2件目ハシゴするか?とたずねたら「もういらん」の一言、あまりお気に召さなかったみたいね。

 

 

 

 もたれる胃を抱えながら伊那市を出発。ここから松本市までは一般道を使ってツーリング。伊那〜松本の主要幹線であるR153は旧街道の趣を残した道だった。

 つまりは道幅狭い、建物が道に近すぎる、歩道がない、町の雰囲気は体感できるのだがあまり走りやすくはなかったりする。

 しばらく北上すると2車線の広い道に出た。午後の日差しはポカポカを通り過ぎて暑いくらい。道の流れはゆったりで、お腹はいっぱい。さすがに疲れて少し眠いなあ、と前を見ると副会長のR1100がリアを振りながらヘンな走り方をしている。横に並んで観察すると...あ、寝てる。バイクで居眠りなんて器用ね、と感心している場合ではない。

 

 大急ぎで通りがかりのコンビニに停まり、目覚ましのコーラで休憩。ついでに地図で現在地を確認するとここは塩尻市の南部。

 このままR153を走り続けても楽しくはなさそうだし渋滞もイヤ、他に抜け道はないものかと探すと手頃そうな広域農道と県道・松本塩尻線を見つけた。

 

 しっかりと目を覚まして再出発。塩尻ICの側を越えて中央道沿いに走り、畜産試験場前を牛や馬に見送られながら通過。そして道は緩やかに標高を上げ、南北に細長く伸びる塩尻市を一望する場所となった。

 街の向こうには乗鞍岳を中心とした山並み。矛盾する表現だが、とてつもなく精巧で巨大な箱庭を眺めているよう。

 

 ふと強い香りに誘われ、視線を遠くから近くに戻してみると、道沿いには何本も並ぶニセアカシアらしき街路樹。心地よい山風が吹くたび、藤のような白い花と個性的な香りを撒き散らしている。

 渋滞を避けるため気まぐれに選んだ県道だったが、思いがけない得をした。花の雨を浴びながら走れるなんてそうそう滅多にないことだ。

 今でもあの夢のような光景を思い出すと気分が晴れる。

 

 

 

 やがて県道が少しずつ下り、街に入りだした。そして本日の目的地、松本に到着。今夜のお宿は松本城近くのビジネスホテル。

 バイクを駐車場に止めようとすると、従業員さんが「こちらにどうぞ」と入口側の軒下へと停めさせてくれた。親切な対応に気分を良くし、チェックインをしてみると...「宿泊料、先にお支払ください」の一言。

 え?ビジネスホテルなのに料金前払い?前払いなんてクーポン券利用時かラブホくらいのものだと思っていた。このホテルチェーンは全て前払制なのだろうか。それとも考えたくはないが、私達夫婦がよほど怪しげな人物に見えたのだろうか。今もってはっきりしない。

 

松本から

ホテル駐車場からの眺め

遠くに見えるのが「日本の屋根」

 

 気持ちの悪い疑問を抱えながらも部屋に入って荷物を解いた。タンクバックを整理しているとポケットに入れたはずのクレジットカードが見当たらない、ないないない!

 記憶を整理すると最後にカードを使ったのは伊那のガソリンスタンド。さてはそこで落としたか、でも店名も場所もはっきりとは覚えていない。ならばと心当たりのスタンドに片っ端から電話をかけまくったが見つからない。

 ついでに警察にも電話をかけてみたが見つかるわけがない。副会長はマップルでスタンドを調べながら「去年の今日の再現か!」とあきれている。(昨年5月、ロサンゼルスにて同じような事をやらかして大騒ぎしたのだ。)

 

 電話では埒があかないので、そのスタンドまでバイクを飛ばしてみようかと外に出ると...R1100RTの下に転がるは我がJCBカード。きっちりとタンクバックのファスナーを締めていなかったので落ちてしまったようだ。カードに描かれたスヌーピーが私をあざ笑う、「気ぃつけろやバカタレが」と。

 副会長は怒る気も失せた様で呆然としている。

 

 ふえ〜ん、無事だったから良かったけど、悪用でもされてたらシャレにならんかったよ〜。今度から5月にカード持ち歩くのはもう止めよう。

 

 

 

 カードを財布に収めたのが夕方4時ごろ。トラブルも無事片付いたし副会長はあきれっぱなしだし夕食には早いしお風呂にもまだ早かったので松本市内ちょっとだけ観光に出かけた。

 駅前の観光協会でパンフレットをもらい、おみやげ物屋でおやつを買い、城下町の縄手通りを散策。

 そして松本市が誇る国宝・松本城を傍から見学。日本最古と言われる天守閣はそれなりに立派な姿、そしてお堀で観光客相手にエサを求める鯉もまた立派なデカさだった。

 1mくらいの鯉が水面で「エサくれ」と口をパクパクしている姿は、可愛いような不気味なような。

 

 日が沈みかけた頃にホテルへ一旦戻り、お風呂セットを抱えて温泉へと再び出発。こんな時にバイクだとタンデムでさっと出かけられるのでたいへん便利。

 ホテルから約10分、浅間温泉街を物色して見つけたのは"ホットプラザ浅間"。民芸調の建物はどうみても旅館にしか見えないのだが、中は普通の公共温泉施設。

 待合室には囲炉裏があって雰囲気は悪くない。お風呂もそれなりに広く清潔、しかし840円の入浴料はちと高いと感じる。

 

ホットプラザあさま

ホットプラザ浅間

看板が出ていないから余計に旅館っぽい

 

 中に入ると幸いな事に誰もおらず、貸切状態で楽しめた。打たせ湯で肩をほぐした後、こわばった背中を露天風呂で伸ばそうかと勢い良く入ってみると、冷たい!思いっきり冷水やん! 

 露天には2つのお風呂が並んでいるのだが、そのうち一つが完全な水風呂だった。外気温が高く、片方の浴槽から湯気が立ってなかったのでわからなかったのだ。まぎらわしいな...

 

 お風呂の後は温泉街にて夕食。店を探すのも面倒だったので適当に近くの"あるぷす亭"と言う蕎麦屋に入ったのだが、これが結構良い店だった。店構えはちょっと高そうな雰囲気だが、メニューにはもりそば650円と妥当な値段。

 おそばは細身で上品なのが出てきて、もちろんそば湯つき。このそば湯が美味しくて、なおかつお腹に優しい。

 箸休めには信州名物の馬刺しを注文、口当たりが良くて臭みがなくてあっさりとして...ちょっとあっさりしすぎ。上品な刺身だけに、下賎な私の舌には物足りなかった。でもやっぱり美味。

 

 

 

 再びタンデムでホテルに帰ると時間はまだ10時前。しかし身体は睡眠を渇望していた。温泉で体をほぐしているから良いようなものの、やはり1日400kmの走行は疲れる。

 副会長も走行に疲れたのか、それとも私のお守りで疲れたのか、気が付くとイビキをかいて眠っていた。

 さてさて明日は乗鞍ツーリング、私も早めに休みましょうか。イビキに対抗して歯軋りでもしながら気分良く。

 

 


 

 

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