2000年元旦・御来光ソロツーリング
新春ソロツーリングをしようと思い立ったのは、暇を持て余していた前日の12月31日。いいかげんに酒抜きをしなければと考えていたし、なによりもやたらと昼間暖かかったので北に向かわない限り大丈夫だと思ったのである。
ずいぶん長い間バイクを走らせてなかったので大慌てでバイクをチェック。案の定タイヤのエアーが抜けていた。スタンドでガソリンとエアーを入れてもらい、オイルを補充し、クローゼットから防寒兼用のレインウェアを引っ張り出して準備完了。
日も改まって2000年1月1日、懐中電灯を片手に何か起きるかと期待していたが、何にも起こらなかったので少しがっかりした。TVを見てもつまらないのでツーリングマップを見ながら行き先を考える。
どうせだったら日の出が見たいと思い、岡山の鷲羽山か徳島の鳴門かのどちらかにしようと考え、結局淡路島は走り飽きていたので鷲羽山を選んだ。今日はお正月、帰省ラッシュは2日からだし道も空いているだろうから、途中まで一般道を走っても3時間あったら着くだろうと楽観していた。
午前3時40分、自宅を出発。まず氏神様である近所の「敏馬神社」に安全祈願のお参り。丑三つ時の初詣をすませ、R2を西へ向かった。
須磨までは調子よく走れたが、垂水に来ていきなりの大渋滞。早速、路肩走行に変更。並ぶ四輪車を「へっへっへ〜」と笑いつつかわしていった。
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舞子浜では沢山の車が止まっていた。ほとんどカップルばっかしだ。どうせ明石大橋でも見ながらえっちな事してるんだろう。私も以前はそうだった。
ライトアップされた明石大橋を撮影しようと、舞子浜で一旦バイクを止めた。デジカメを使いこなしていないので夜間撮影の方法がわからず、思わぬところで苦労した。
かれこれ30分は悪戦苦闘しただろう、再出発したときには体が芯から冷えてしまった。
渋滞をかわしながら明石駅を通過。駅前にはやたらとドレスアップしたヤンキー車が多い。彼らは年中行事を結構大事にするようだ。そう言えば成人式に羽織袴を着るのも大抵はヤンキーの男の子だったような。
しかし、改造バイクに2ケツして鉄パイプを振り回している子はさすがに頂けない。おねえさん、若い男の子キライじゃないんだけどねえ...
時計を見ると5時前になっていた。このままじゃ日の出に間に合わないと思い、やむなく高速を使うことにした。
このままR250・明姫幹線を飛ばしてもいいのだけど、ヤンキー車取締のパトカーが絶対にうじゃうじゃいるはずだ。正月早々、罰金減点なんて縁起が悪い。
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売店で使い捨てカイロを探していると店のお兄ちゃんが「カイロは売ってないんです。代わりにあちらのレストランでお茶どうぞ」と、暖かい日本茶を出してくれた。その上「バイクでしょ、手を温めないと」と、熱いおしぼりまで出してくれた。
他に客がいないからとは言え、SAでこんなサービス受けるの初めてだし、お兄ちゃんは男前だ。う、嬉しすぎる。
お茶と可愛い笑顔のお陰で心身ともに温もりを取り戻せた。
シャツを着込んで再スタート、時刻は5時30分。冬の高速はやっぱし寒い、とっても寒い。おまけに雨まで降ってきた。スリップしそうですんごく怖い。さっき「へっへっへ〜」と笑い飛ばした四輪が羨ましく恨めしくなってきた。
GPXのエンジンもあんまし温まってないようだ。もうバイク自体の寿命が来てるのだろうか、なんとなく調子が悪いような気がする。以前ほどスピードがのらなくなって来た。パワー不足を強く感じる。きっと寒さのせいだけではないだろう。
姫路バイパスから播但道に入ったが、私以外の車両は全くいない。冬季夜間のソロツーリングなんてした事なかったので、孤独感が次第に強い不安へと変わっていく。いつもなら高速では何か歌いながら走っているけれど、今回はそんな余裕全くなかった。
70km/hほどのペースで真っ暗闇の播但道を走り、暗いよ〜怖いよ〜寒いよ〜とほざきながら山陽姫路東ICから山陽道に入った。ここから竜野ICまではいくつかのトンネルが続く。
いつもはうっとうしいトンネルも、今回ばかりは風を防いでくれる上に明るいから大歓迎してしまう。寒さもいくらか和らいできて、ペースはようやく100km/hまで上がった。
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熱いココアを飲みながら、地図を広げて現在地を確認すると、鷲羽山まではまだ半分も来ていない。これじゃあ日の出なんて到底無理なので、赤穂御崎に行き先を変更した。
赤穂ICまではあと14キロ、御崎までは20キロほど。ここなら何とか間に合うはず。一瞬帰ろうかとも考えたが、ここで帰っちゃ女がすたる。(んな大げさな...) だいたい高速代がもったいない。
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「赤穂14キロ」の看板を見たときにはほっとした。空は背後からどんどん明るくなってくる。視野が明るくなってついでに気分も明るくなり、気が付くと120km/hまで出ていた。やっとGPXものってきたようだ。
途中で3台で走っていた大阪ナンバーのバイクをゆっくりと追い越すと、ミラー越しにピースサインを送ってくれた。こちらも背中越しにピースでお返事。仲間がいる彼らがちょっと羨ましかった。静かな千種川を通過し、トンネルを3つ通過して赤穂ICに到着。やっとこさ一般道に降りれる〜! もう冬の高速はヤダ〜!
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澄んだ空気の中で吸うタバコは格別だ。このタバコに掛かる税金が旧国鉄の赤字を解消してるかと思うと、また一段と美味しく思える...っちゅうのは喫煙者のエゴですな。吸殻を携帯灰皿に捨てて(灰皿の携帯は喫煙者のせめてものマナーです!)赤穂御崎へ向った。徐々に車の数が増えてきた。
御崎へ入る上り坂には縦列駐車の長い列。私は一番上まで上がってバイクを止めた。崖沿いの歩道には沢山の人がいた。
ここまでの走行距離、神戸から126.8km。
午前7時15分。海の向こうを見てみると、ちょうど日が昇る瞬間だった。小さな丸いお日様が家島の向こうから生まれようとしている。思わず溜息が出た。寒い道程だったけど本当に来てよかった、こんなに素敵な瞬間に会えたのだから。
柔らかい陽を浴びていると頬のあたりがポカポカしてきた。お日様がこんなに暖かいものと認識したのは初めてかもしれない。
お日様は恥ずかしげにゆっくりと家島の上に昇った。昨日食べたみかんのように真ん丸で眩しいオレンジ色。私は願い事を掛けるよりも先に「おはよう!」とお日様に向って呟いていた、そして「今年もよろしくお付き合いください」とも。

会長にミレニアムサンライズを報告しようと思い立ち、早速電話。
「明けましておめでとさんですう!」
「おう、おめでとさん」
「今ねえ赤穂御崎で初日の出見てんねん。会長は何やってんの、酒飲んでたん?」
「今、会社で仕事」
「...すんません」
すっかり忘れてた。今はY2K問題の真っ最中だった。他の友人数名も私の従兄もみ〜んな不眠不休でお仕事しているはず。私だって下手すりゃ会社から呼び出しくらうかも知れないのである。それなのに自宅待機もせず暢気にツーリングをしているのが(ちょびっとだけ)申し訳なくなった。
それにしても会長、管理職ってのは結構辛いものですな。まあ、あと生きてる間はもうこんな事起こらんよ。
続いて副会長にも電話。こちらは大阪・南港で初日の出を見ていたらしい。メンバーみんな、それぞれのお正月を迎えているようだ。他の友人連中にも電話してみたが、寝てるか、酒飲んでベロベロになってるか、カップルでイチャついてるかのどれかだった。
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手を清めて柏手を打ち、私の幸運とギャンブル運の向上、家族親族友人知人の幸運と健康、ツーリングクラブの安全、ついでに私の所得アップとタバコ税の減税も願った。
沢山お願い事をしたので、お賽銭は奮発してコインパースにあった全てのジャリ銭288円。きっと御利益があるはずだ。
日はずいぶんと高く昇り、かなり暖かくなってきた。さっきまでの寒さが嘘のように引いていく。いったん駐車場へ戻ってジャケットとセーターを脱いだ。散歩をするときはやっぱし軽装でいたい。
境内に戻って、おみくじなんぞ引いてみた。
ツーリングに関するところは「旅行」、利なし控えよ、との事。あんましフラフラすなってことかなあ。競馬は「相場」か? 変動激しい用心せよ、だって。いっつも用心してるよ。
「恋愛」は今の人が最高迷うな、と出た。今の人つってもいっぱいいるからどれかわかんにゃ〜い。笑えたのが「待ち人」、来ても遅い、とのお告げ。うわははは、いるいるこう言う奴。
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のんびりとしたせいか急に疲れが襲ってきた。考えてみると一昨日まで10日間連続暴飲をやらかしているし、昨日はあんまり眠っていない。
タンクバックに入れておいたドリンク剤を一気飲みして、赤穂を出発。この時点では大人しく家に帰ろうと考えていた。
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海沿いの道は土日二輪禁止らしいので、千草川沿いに北東へ走った。
小春日和の中、穏やかな川を眺めながら走るのは本当に気持ちよかった。来る時は高速道で鼻毛も凍るような寒さを味わっているだけに、この時間は格別だった。
所々でバイクとすれ違う。たまに挨拶をしてくれる人もいる。のどかなツーリング、最高。
途中のバス停で写真を撮っていると、岡山ナンバーのCBRがすぐ後ろで停車した。?と思っていたらそのライダーがメットを脱いでこっちに来た。おおっと、TOKIOの松岡クン似、好みのタイプ!これは素敵な出会いってやつですかあ、と大きな期待。
彼は「姫路行くのはこっちかな」と聞いてきた。きっかけ作りに入ってんのかなと思い、マップを見せながら説明をすると話が盛り上がってきた。私も姫路を通過しますよ、と言うと、「一緒に行ってもいい?」と聞いてくる。もちろんOK!だったが...
話をするうちに、彼は姫路の実家に帰っているフィアンセの元へ行くと判明した。「昨日、彼女がタンデムでツーリングしたいってワガママ言ってきたんです。はははっ」だって。
私は声をワントーン下げて「姫路なら山陽道乗った方が絶対早いよ」と言い捨て、んじゃさいならとCBRを残し一人でとっとと出発した。
ラブラブな売約済みなんぞに用はない!だいたい岡山から来るんやったらハナから山陽道使えよ、ケチくさい。あー期待して損した。
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さすがに姫路市街は交通量が多い。お城へ向う歩道には振袖姿の女の子たちがいっぱいいる。白鷺城と振袖、何とも正月らしい組合せですな。
ドリンク剤のせいか、はたまた寒さで脳細胞がクラッシュしていたのか、この頃から私はハイになっていた。疲れてるはずなのに「こうなったら明石城も見て、大阪城も見て、京都の二条城なんかも見ちゃおう」としていた。
しかも阪神間の神社へ片っ端からお参りに行くつもりにもなっていた。どう考えてもムチャである。
明姫幹線に入った頃、ハイなのを通り越してただのヘンな人になった私に「プッチモニ」がとり憑いてたようだ。いくつも続く高架のアップダウンを越えるたびに「まるっ、まるっ、まるまるまるっ♪」とわめいていたのである。
さすがに両手は挙げなかったが、強風にめげず延々と首を振ってたような気がする。覚えているだけに自分が嫌になる。
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覚えているだけで敏馬神社、大石神社、姫路神社、柿本神社、海神社、網敷天満宮、長田神社、湊川神社、生田神社...
淡路の神社巡りもしたかったが、お金を払って海を渡る気がなかったので諦めた。
私は都合の良い時しか神様仏様を信じない。それなのにいったいどうしたのか、この行動は。ほとんどラリーみたくなっている。まあこれだけ廻ったのだから不信心者にも何かの御利益があるだろう。
午後3時、ようやく神戸に帰って来た。とりあえず敏馬神社にご報告をして、西宮のえべっさんに向おうとしていたが、ここに来て急に力が抜けた。きっと氏神様が「ええかげんにせんかい!」と私を正気に戻したのだろう。ガソリンも体力も空になっていることにようやく気付いた。
ちょっと悔しいけど、ここで帰宅を決意。まあ、お城を3つも見たのだからリッパ(?)なもんだ。
敏馬神社境内の焚き火にあたりながら一服して、やっとこさ帰宅。お風呂に入り、パジャマ姿でビールを飲みだした頃には腰が抜けたようになってしまった。
ミレニアムなソロツーリング、走行距離は256km。高速代1500円ぐらい。ガソリン代1000円ほど。使い捨てカイロ2個240円。喫茶代620円(食事を全く取ってない!)。お賽銭470円(敏馬神社150円・大石神社288円・生田神社32円)。おみくじ100円。あー疲れた。
今年もきっといい年だあ!