フランス演奏旅行の記録
〜リモージュでの音楽祭”イプシバル(Epsival)”に参加して〜

2005年
8月16日(火)リモージュへ
8月17日(水)Epsival開会式〜マスタークラスでのレッスン受講
8月18日(木)マスタークラスでのレッスン受講(ベッケ氏と共に)〜本番に向けての練習〜本番その1
8月19日(金)マスタークラスでのレッスン受講(ソロ曲)〜リハーサル〜グランド・テアトルでの本番その2


(3)リモージュでの充実した日々 

リモージュへ出発:パリで観光をしたあと、夕方からリモージュ行きの列車に乗るために、オステルリッツ駅へ行きました。見た目は古い建物ですが、大きな掲示板があり、分かりやすかったです。乗車する前に乗車券に日時をスタンプする機械に通すのを私は忘れて、係員の人の手を煩わせてしまいました。でも笑顔で対応してもらえて、助かりました。
 主催者からもらった乗車券は2等で、他の等がどうかは全く分かりませんが、2等の席は綺麗で、テーブルを広げることができ、快適でした。パリからは3時間ほど掛かったのですが、時間を感じないほどでした。車内販売では、慣れない英語とユーロを使うのがまだ楽しかったです。
   


リモージュ到着:リモージュ駅に到着すると、大柄な男性が私たちを笑顔で迎えてくれました。最初は恐い人かと思いましたが、私たちの楽団の名前が記された名札を持っていたので、すぐに分かりました。主催者が用意してくれたホテルは駅前で、とても安心しました。(右写真)ホテルはとても綺麗で、部屋も広かったです。
 ホテルに到着すると、従業員の人が鍵や食事のことをいろいろと説明してくれました。フランスの人は、英語があまり得意ではないようで、説明の前に自分でそう申告していたのが意外でした。このあと、すごくお世話になったマネージャーの方も、英語で話をするのは「十数年ぶりだ」と、他のメンバーに話をしていたそうです。
 到着したときの写真を見ると夕方のようですが、このときの現地時間は、夜の9時くらいです。サマータイムとはいえ、この時間にこの明るさというのには驚きました。
 この日の夕飯は、ホテルが用意してくれたスペシャル・メニューをいただきました。セテ・トレ・ボン!(おいしかった!)

Epsivalの開会式:リモージュのホテルに到着した翌日、17日からEpsivalのマスタークラスが始まるということで、朝8時半に、ホテルから歩いて10分ほど離れた音楽院のホールで開会式(?...「Information」と言っていました)が行われました。Epsivalに参加する受講生たちが全員集まり、舞台で講師の紹介を受けました。
 講師陣のメンバーは豪華で、トランペットではJ.カレ氏、C.カンス氏、J.ハルヤンネ氏、トロンボーンではM.ベッケ氏など、日本でも名声高い方々で、ほかの講師の方たちも、フランスのメジャーオケの首席など、素晴らしい人たちでした。
 このあと、楽器ごとに分かれて、マスタークラスでのレッスンが行われました。ホルンは4階、トロンボーンは3階で、バストロは部屋が用意されていなかったのか、隣のグランド・テアトル(大ホール)の舞台下だったそうです。またトランペットは音楽院の別館のような、少し離れた場所が会場でした。
 初日は音楽院から別館への移動が大変そうでしたが、別館の方がホテルに近かったので、2日目以降はラッパのメンバーも、楽そうでした。


マスタークラスでのレッスン受講:トロンボーンでは、左のような一覧が掲示されていて、レッスンの受講は基本的にこのグループごとで受けることになっていました。私たちはグループ3に入れてもらい、そこには若い3人の学生と一緒でした。
 レッスンの内容は、初日は午前も午後も基礎的なテクニックの練習でした

 ・スケール(下のEから上のBbからはじまるメジャースケール)
 ・リップスラー(1ポジションから7ポジションまでのさまざまなバリエーション)
 ・強制倍音を使った練習
 ・アルベジオ(メジャーの全12音階すべての調で演奏)

 これらを最初に講師の先生が演奏し、それを聴いて、受講生たちが演奏するという形でした。

 レッスンでは、7ポジションの下のEから始めることが多く、またすべての音階が吹けることがあたりまえで、またソルフェージュがしっかりとできないとついていけないことに驚きました。これらすべてを、みんなあたりまえのようにこなしていました。また、講師の先生がどのレッスンでも、必ず模範演奏をし、それを決して省略しないことにも感心しました。(私が学生時代、日本国内で受けたレッスンでは、講師の先生は楽器を演奏することよりも言葉で伝えようとすることの方が多かったので。)そして、その模範演奏が、ものすごく上手くて、驚きました。

 3日目には、ソロ曲を見てもらう機会にも恵まれました。地元の受講生たちは、ダヴィットやグロンダールのコンチェルト、カストレーデのソナチネなどを演奏していました。時間が余ったようで、私たちにも講師のフラウ氏から声を掛けられたので、折角の機会と思い、ギルマンの小品を見てもらいました。
 この日の昼に、ベッケ氏がホールのラウンジでこの曲を演奏することを知っていたので、ベッケ氏と共演することになっていたフラウ氏もそのことを言っていました。しばらくすると、私のレッスン中にベッケ氏が昼の演奏の打ち合わせで部屋に突然入ってきて、とてもびっくりしました。ベッケ氏も私の楽譜を指差して、「あぁ、これ、あとで演奏するよ」みたいなことを言ってくれていました。とても興奮した体験でした。



講師陣たちのコンサート:Epsivalの開催中、昼、夕方、夜に大抵演奏会が予定されていました。特に夜のグランド・テアトルでの演奏会はリモージュの一般のみなさんが1000人以上来場して、とても盛り上がっていました。私は昼に行われた小さなコンサートがとても印象に残っています。大編成よりも小編成が好みの私にとって、金管楽器ソロの小品を世界トップレベルの演奏家の演奏を間近でみることができたことは、本当に嬉しいことでした。
 3日目の昼の演奏会では、ベッケ氏のギルマンの小品のほか、フラウ氏とのデュオなど、素晴らしい演奏を聴くことができました。ちなみに主催団体のEpsilonのメンバーでもあるフラウ氏は、当日の演奏はベッケ氏と遜色のない素晴らしい演奏でした。フランス金管アンサンブルのメンバーでもあるようです。音楽祭でいつも感じていましたが、今回の音楽祭に参加している講師の方たちの演奏レベルの高さは、本当に高かったです。
 (写真の右がベッケ氏、左がフラウ氏です))


本番に向けての練習:18日の午後、マスタークラスを休んで、全員で練習をすることができました。会場は、トランペットのマスタークラスが行われていた音楽院の別館でした。練習をしながら、トランペット・クラスからのものすごい音(大音量のハイトーンなど)が聴こえてきていました。
 この練習はあらかじめ用意されていたものではなく、現地で交渉して場所と時間を確保しました。現地では、本番までどう動いたらいいのかなど、よく分からないことが多かったです。私はこの時点で本番の衣装がないと困ることに気づきました。下り番の曲をやってもらっている時間にホテルまで取りに戻りました。昼食の時間に衣装は取りに行けばいいやと思っていたのですが、考えが甘かったです。この日、昼食をとる時間はありませんでした。みんな、差し入れのマドレーヌ1個と水でしのぎました。

18日の本番:私たちに用意された本番の場は2回でした。当初3回の予定でしたが、渡仏2週間くらい前に2回に変更となりました。18日は夕方の18時から野外で45分、19日はグランド・テアトルで25分の予定でした。
 18日当日は、雨が降っていたために、野外から急きょ音楽院のホール(右写真)に場所が変更になりました。演奏する時間には雨がやんでいたので、演奏を聴きたい人たちも野外の予定会場で待っているのではとの心配がありましたが、演奏会が終わってみればたくさんの一般の方たちが来てくれていましたので、このあたりのアナウンスはしっかりとしてくれていたようです。すばらしい!
 この日の演奏後、会場を出るみなさんに「Merci!(ありがとう!)」と声をかけることができました。観客のみなさんは、演奏後、とても暖かく私たちに声をかけたり、親指を立てて「良かった」とサインを出したりしてくれていました。中には「CDはないのか?」とたずねる方もいました。また若い人が団員に、漢字でのサインを求めていました。日本のマンガを持っていたそうで、そこに漢字で名前を書いてあげたそうです。
 一般の人たちとの距離の近さもあり、終わった後に満足感が得られたいい演奏会でした。
 翌日には講師の先生や会場を管理している職員の人たちから「良かった」などと言ってもらえて、とても嬉しかったです。

プログラム(曲名にリンクが張られているものは、当日の演奏を聴くことができます)
ムーレ:組曲「シンフォニー」 I.Rondeau II.Graceiussement III.Allegro IV.Guay
ヘイゼル:猫の組曲から「ミスター・ジャムズ」「バレジ
文科省唱歌:組曲「日本の歌」
ビゼー:組曲「カルメン」 I.Aragonaise II.Les Dragons d'Alcala III.Habanera IV.La Garde Montante V.Danse Boheme
アンコール:「ロンドンデリーの歌」「あと一匹の猫 クラーケン」 「浜辺の歌

19日の本番:いよいよグランド・テアトルでの演奏会です。翌日には同じ舞台にロンドン・ブラスが演奏するのかと思うと、つくづくロンドン・ブラスの翌日でなくて良かったと思っていました。演奏する曲も直前まで「アブデラザール組曲」が1曲かぶっていて、びっくりしました。
 この日、私は午前中のフラウ氏のレッスンだけ受講し、午後はスーパーで職場用のおみやげ(お菓子)を買ったり、ホテルで過ごしたりしました。(ホテルの電話で航空会社に電話し、リコンファームの手続きをしようとしたら外線発信ができませんでした。フロントでプリペイドカードみたいなものを買う必要があったようです。結局、自分の携帯電話から国際電話で連絡して手続きを済ませました。8人分は2件分に分かれてて、ちょっと大変でした・・・。午後はゆっくり休みはずが、全然休めませんでした。)
 さて、20時の本番に向けて17時にホールに集合しました。開場する19時の直前までステリハをすることができましたが、結局最後の大曲は1回通すだけの時間しかなく、アンコールは練習なしのぶっつけ本番となりました。
 本番の時間になると、まず最初に私たちの団体紹介を主催者の方が観客に話しをしてくれました。フランス語だったので、どんな内容かは一切わかりませんでした。入場後、ムーレを演奏しまずまずの出足でした。司会担当の団員が、1曲目の紹介と団体紹介をしました。はじめの挨拶だけはフランス語で話しましたが、やはりフランス語の方が聴き手の反応はよかったです。フランス語だと全員が分かりますが、英語だと半分くらいの人にしか伝わらないという様子でした。私たちがアマチュアの演奏家で、銀行員やシステムエンジニア、教師などの職業をもっていることを伝えると、少し観客からの反応がありました。

プログラム(曲名にリンクが張られているものは、当日の演奏を聴くことができます)
ムーレ:組曲「シンフォニー」より I.Rondeau
ヘイゼル:猫の組曲から「ブラック・サム
マンシーニ:「酒とバラの日々
バッハ:管弦楽組曲より「バディネリ
ドビュッシー:「ゴリウォーグのケークウォーク
ラヴェル:「道化師の朝の歌
アンコール:「浜辺の歌」「あと一匹の猫 クラーケン」

 演奏中の観客の反応はとてもしびあで、音が外れたり、ソロを吹いているメンバーの音がゆれたりしたときに、少しざわめきが聴こえました。はやりヨーロッパの人たちの音楽に対する評価は厳しいと、強く感じました。
 しかし、最後は暖かい拍手をいただき、用意していたアンコール曲を全て終えてもまだ鳴り止まないほどで、感激しました。1000人をこえる暖かい観客の前で演奏できたことは、本当に貴重な体験でした。


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