栽培と管理 
2000/ 9/16


サボテン多肉栽培中級講座 B

 会誌「サキュレント」2000年3月号掲載記事より(筆者Y.N. 埼玉県在)

 ◎これでいいのか、選抜園芸

 日本の園芸は、顔の園芸だと言われています。種をまいて出た苗の中から格好のいいものを選抜して育て、その他のものは捨ててしまうのです。捨てられた苗の中には、元気に育つ優良苗もあるのですが、選抜の対象からはずされたことで、残念ながら捨てられてしまうのです。
 これはサボテンだけではありません。錦鯉の世界では、昔から行われています。
 今、遺伝子の組み替えによる食料品が出回って、いろいろと議論が出ています。サボテンは食物ではないので、安全性についてはとやかく云うことはないでしょう。
 ★・昔、ちょっと前にあったものが、今では見当たらない!
 ご存知ハオルチアの十二の巻、今はとんどがゼブラ十二の巻でしょう。
 見た目が派手できれい、というのが人気の的で、売店でよく売れるというのがその理由だそうです。図鑑写真を撮るので捜し回って、やっとみすぼらしい苗に出会った若い経験をしました。昔からあった十二の巻は今は、入手しにくい珍品?になってしまったのでしょう。アメリカのサボテン屋ではいまゼブラ十二の巻が珍品?です。
 マミラリアのカルメナエが出回ってから、ずいぶん久しい年月がたちました。いまでは、当時のものは人気が薄れ、トゲ座が花のように開いたもの、ピンク花のものがたくさん出回るようになりました。近い将来、当時のタイプは姿を消してしまうでしょう。
 兜はその端正な形と美しい花が人気で、昭和の初期に日本に入って来た当時はたいへんな人気だったそうです。それから半世紀。実生の技術が進んで、兜の苗はイヤというほどに殖えて、ごく普通の頴をした苗はマニアの世界では敬遠される存在になりました。
 白点の密になったもの、アレオーレの大きいものが歓迎され、○○兜なるものが人気になると、マニアは先を争って改良?に精をだしました。
 その結果、優良なタイプはぞくぞく出てきました。しかし兜本来の底紅の花が咲くものは少なく、姿、形は兜でも、花はランボー玉の花です。
 ★・品評会の賞状には、‘必ず品種の正確さを維持して’…とあった。
 見た目だけにこだわって、品種本来の持ち味を考えない品種改良は、これはいかがなものかと思えてなりません。品評会も出たとこ勝負みたいなもので、いささかの権威もありません。これも時代の流れなのでしょうか。いま考え議論してほしいのは、品種の正確さです。何が正確か分かりにくい時代だからこそ、議論してほしいのです。
 ★・原種よりいいものが出ない品種改良はダメ
 ラン友会の元会長が私に言った言葉です。われもわれもと、品種改良に精を出しても、原種以上のものはなかなかでない、というのです。原種に劣るものがたくさん出回っているというわけです。ここで云う原種に劣るものとは、見た目だけではなく、品種としての正確さを意味しているのだと考えられるのです。
 ★・原種は原点です。
 どんないいタイプのものでもそれは園芸種です。サボテン趣味といっても、それはサボテン園芸であって、植物学的標本収集趣味ではないのです。趣味のサボテン園芸であるかぎり、園芸種はいいものについては評価されるべきです。しかしこれを忘れてはならないのです。
 ゼブラ十二の巻がいくら売れ筋で人気があっても、本来の十二の巻を大切に品種保存する人が欲しいのです。本来の十二の巻からゼブラ以上の品種が作出される可能性だってありうるからです。兜も、カルメナエもそうです。
 原種を大事に、品種の正確さを保持し、見た目にも優れた苗の育成に、こつこつと努める園芸家こそ、次代を担う立役者ということが出来ましょう。


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