栽培と管理 
2000/ 7/10


8月の栽培

 会誌「サキュレント」96年8月号掲載記事より(筆者N.W. 東京都在)

 梅雨あけの猛暑と寝苦しい熱帯夜に悩まされ、人も植物も青息吐息 正にダウン寸前の状態といつたところでしょう。サウナのような昼間の温室には当然ながら足が遠くなり、早朝か日が陰ってからになってしまうのは致し方ありません。遮光を施したうえ、扉や窓を開放し、更に換気扇をフル回転させても晴天の日には外気温より数度高い状態がこれから暫くの間続くものと覚悟せねばなりません。
 多肉やサボテンにとって、最も腐死率の高い李節は梅雨あけから9月上旬までといえそうです。これからが枯物を生かすか殺すかの正念場で、日頃習得されたノウハウをフルに発揮されて、この難局(?)を乗り切りましょう。
 私どもが栽培する多肉やサボテンは、一部を除き大半のものは砂漠的環境下に育ち、日中と夜間の温度差の激しい大陸性気象の下で気嫌よく育つものです。日中は40〜50℃、夜間は10℃前後といった気象は、私どもが住む海洋性気象とは大違いな環境といえます。猛烈な著さでも気湿は非常に低く、夜間の急冷は濃い霧を発生させ、これで植物は息を吹き返すパターンを繰り返します。いわば、これらの植物は、昼間は強烈な光と熱の下に息をひそめ、涼しい夜に蘇生するといえましょう。そんな特殊な生態の植物は、我が国では倒底栽培不能なはずですが.これら植物の持つ強い適応性と相まって、立派に育てている人も多数おられることを思うと、我が国の園芸技術も相当なものだと感心する次第。
 多肉の中でも特に暑さに弱いものに、センペルのような高山性で、耐寒と耐監の両性を備えたものや、南極海流の影響を受けて周年涼しい気象のカナリ一群島などに育つアエオニウム・グリノービア・モナンテスのようなもの、熱帯圏にありながら中南米の高地に自生するエケベリア・パキフイーツム・セダムなども著さをあまり好まない一群といえます。
 こうした夏に弱い植物を上手に夏越しさせる技法を習得することこそ多肉・サボテン人が身につけなければならぬ必須技術といえましょう。余談ながら戦前は、遮光材料といえば、スダレ・ヨシズ程度のものしかなく、温室のガラス面に石灰やペンキを塗ったりしたものでしたが、今日ではいろんな遮光材料が市販されており、日陰作りも至つて簡単になりました。当時の温室やフレームの材料もガラスだけで、ビニール・ファイロン等のプラスチック製品は皆無で、和紙に桐油を塗布した油紙程度でした。これを顧みると正に今昔の感がします。
 便利な材料が揃っている現在、これらをフルに活用して夏越しをしましょう。遮光材料は申すまでもなく、換気扇や不要になった家庭用首振り扇風機を使うなど・あらゆる方策を構じて、植物を少しでも涼しく残ごさせるよう心掛けましょう。
 くどいようですが、特に著さに弱いものの夏越しを要約しますと、水やりは日没後、やむを得ぬ場合は早朝に行う。水やり後に要すれば換気扇などで植物体や鉢を冷やす。扉や窓は全開とし、遮光は強目に実施するなどでしょう。
 終りに、夏は害虫との戦いといっても過言ではないでしょう。寒い期間中は、これらの虫も低温により繁殖を抑えられていますが、気温の上昇と共に除々に殖え始め、夏は正に彼等の天下、気付かない間に爆発的な大繁殖することがあります。たかが虫ケラ、されど虫ケラ!.思わぬ被害を受けることがあるので、水やりなどの度毎に気を付けて監視しましょう。特に被害を及ぼす悪役に、ワタムシ・アカダニ(ハムシ)、カイガラムシなどで、普段目や手の届きにくい棚の奥のほうにある鉢枯えには特に目を光らせましょう。ムシそれぞれが好んで寄りつく植物も大体決まっており、
 ワタムシ:ガガイモ料・ペンケイソウ科・ブドウ料・キョウチクトウ科・キク料。
 アカダニ:ロホホラ属・メセン属(翔鳳など)・ヒルガオ料。
 カイガラムシ:サボテン料全般・アガベ料。
 などが彼等の主な守備範囲ということになります。放置すると、肌に取り返しのきかない痕跡を壊し、最悪の場合は命取りともなり兼ねません。アルコール(燃料用)で簡単に駆除できますが、全面に蔓延している場合は薬剤に頼ることになります。高温時の薬剤散布は薬害を受けることがありますので、日が陰ってから行いましょう。
 土中にひそむ害虫に、ネジラミ・ネマトーダがありますが、前者はカルホス・スミチオンなどの溶液を水やりの要領で注いで容易に退治できます。後者は、いろんな種類があり、特に多肉やサボテンに被害を与えるものにネコプセンチュウがあり、これは珠子状にコブが連なった根を完全に切除して挿し直すことです。
 あとひと月ほどで秋期発動期を迎えます。9月上旬を過ぎると、植え替え、挿し木、種まきなどの好期となり、用土などは早目に準備しておきましょう。これら秋の作業は、これから次第に暖かくなる春の作業と違って、間もなく近ずく寒冷期を控えているので、なるべく早目に実施しましょう。寒くなるまでに充分に根を張らせ、夏の衰弱からの回復を図り、体力をつけて越冬の準備をさせるのに大切な時期です。


   戻 る