2000/ 4/15
4月の栽培
会誌「サキュレント」96年4月号掲載記事より(筆者N.W. 東京都在)
しばし,馥郁とした香りを早春の庭に漂わせていた沈丁花も梅の花も終りを告げ,桜の蕾もひと雨ごとに開花の間近いことを知らせ,大自然の接理の偉大さをしみじみ感じさせる昨今です。
厳冬期の間,棚下などに取り込んで,数ヶ月の間,断水状態で過ごさせた多肉・サボテンも,これからの春期発動期を迎え,そろそろ水やりを開始し,萎びた株に生気を取り戻させる季節です。水やりは一挙に与えず,最初は少量,間をおいて徐々に通常の状態にするほうがいいでしょう。この際,植え換えを何年も行わなかったものは,是非この機会に実施しましょう。大型のアガベや強刺類など,剃の強いものなどは,とかく植え換えを敬遠しがちで,何年も放置したものの鉢抜きは頭痛の種です。
植え換えを終ったものは,これからの生長最盛期を迎えて,日に日に生気を取り戻し,植え換えの苦労に報いてくれるものです。
4月から5月にかけては,冬型種にも,夏型種にも好適な気象となりますが,冬眠から目覚めた冬型種は,この頃は新葉を繰り出し,あるものは開花するものなど,楽しさも一入です。メセム・クラッスラ・アエオニウム・セネキオなどの冬型各種もこの時期は我が世の春を謳歌する季節となります。またこの時期は,植え換えを始めとして挿木・種蒔き・接木・更新などなど,多肉にもサボテンにも,年間を通じて最も通した時期となるので,この好期をのがさず実施しましょう。
サボテンは別として,多肉には木立状に育ち,そのまま放置すると,ヒョロヒョロと伸びて誠に見苦しい姿となるものが多数あり,こうしたものは,胴切り・芯えぐりなどで姿を整えましょう。成木になった姿を想像して,時には盆栽の手法を活用し,針金掛けや紐で誘引したり,無駄な懐枝や車枝などを切除するなどで樹勢を矯正することです。
春先の陽気は気まぐれで,ポカポカ陽気が一転して冬に逆戻りしたりで,”三寒四温”の日が続きますが,これも4月に入ると落着きをみせ,桜の花が散る頃を見計らって,多肉類の丈夫なものは戸外に放出しましょう。心地よい暖気と陽光,通風の恵みを受け,美しく発色し,引き縛った姿になるのはこの頃からです。生長が遅く,根腐れしやすいサボテン全般と多肉の一部には,長雨による被害もあるので,周年室内栽培を続けることになります。
玉型メセンのリトープスは脱皮を終え,コノフィーツムは外皮が黄褐色に変色しますが,これは完全に休眠して生長を中止しているのではなく,旧皮から新球に養分の移行が行われている状態で,根も今まで通り活動を続けるので,水やりは従前通り行います。この時期から断水して酷暑期を過ごさせると,細根が全部枯れて体力が著しく低下し,特に微小な小型種や実生の小苗は“蒸発“して枯死するので注意したいものです。
外気温も次第に高まり,晴天日の室内温度は急上昇するので,南側より順次窓や扉を開放して室温を調節することも大切です。閉めきって蒸し殺しにしないよう注意しましょう。日中在宅されない方で,朝方は寒く感じても,温室やフレームは適当に開放することをお忘れなく。
サボテンの接木は,コケシ人形のようで嫌いだと思われる方もいますが,生かすのも困難で実根では生長が極めて遅い難物を急速に育てて繁殖を図るためには止むを得ない手段といえます。接木はサボテンが主流で,多肉は一部のものを除いてほとんど行われていませんが,貴重種の増殖にはこの方法をもっと取り入れてもよいのではないでしょうか。拙宅のサボテンの花籠や多肉のEuphorbia piscidermis,E.adbdelkuri,Operculicarya decaryiなどは何れも好調に育っています。
中でも花籠は,昨年は単頭であったものが,今年は開花のうえ,2頭仔吹きする生長ぶりです。以前いたずら半分に,温室内で地植えの杢キリンに白檀を接いだら,バケ物のような巨大株に育ったので,接ぎ下ろしをしたところ,ベロベロに腐って失敗しました。急速に育ったものは組他が柔軟なためでしょう。接ぎ下ろしは,台木の一部をつけて切り取ったほうがよいとも聞いていますが,如何なものでしょう? サボテンの専門分野なので割愛。
この頃からは、窓・扉の開閉は忙しくなりますが,夕方は日没前にするべく早めに閉めて室温を保つよう心掛けましょう。閉め切った後,夜半まで続く残温は,僅かな空湿を保ちつつ,人にも植物にも快適な環境を作ってくれます。
→ 戻 る